「ねえ、あまり時間がとれないんだけど、あさっての午後にちょっとだけでもお宅に行っていいかしら」と彼女は言った。
背後でピアノ音楽が小さく聞こえた。どうやら夫はまだ帰宅していないらしい。いいよ、と天吾は言った。彼女が来れば『空気さなぎ』の改稿作業は一時中断されることになる。しかし声を聞いているうちに、自分が彼女の身体を強く求めていることに、天吾は気づいた。電話を切って台所に行き、ワイルド?ターキーをグラスに注ぎ、流し台の前に立ったままストレートで飲んだ。それからベッドに入り、本を数ページ読み、そして眠った。
天吾の長い奇妙な日曜日は、そのように終わりを告げた。