饭饭TXT > 海外名作 > 《蛇淫の血(日文版)》作者:[日] 沙野风结子【完结】 > [沙野風結子/奈良千春]蛇淫の血.txt

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作者:日- 沙野风结子 当前章节:14770 字 更新时间:2026-6-16 06:22

四代目になるならないとは関系なく、角能はいらないと、角能を二度と自分のボディガードにしないでほしいと、告げなければならない――このいまにも揺らぎそうな自分の决意を一刻も早く父亲に伝えて、角能との関系を终わらせなければならない。

山根(やまね)というすらりとした体躯の二十代後半ぐらいのボディガードに连れられて、凪斗は病院の驻车场に驻められていた车の後部座席に乗り込んだ。

病院内では切っていた携帯电话の电源を入れると、メッセージが届いていた。未登録の携帯からだ。讶しみながら留守録を再生する。

『凪斗。おにいちゃんだ』

浊った男の声。岐柳辰久、异母兄だ。

『谁にも言わずに、すぐ电话をしろ。さもないと、おまえの周りの人间がどうなっても保证しない』

――……周りの人间って。

头から血の気が引いた。そんなに亲しい人间は作らないできたつもりだけれども、それでも日本画の早河教授や雕刻科の岩泉、昼饭を学食で一绪にする知人たちなど、関わりのある人间はいる。あるいは、祖母の居所を突き止められたのかもしれない。

凪斗は山根にちょっとだけ车外で待ってほしいと告げて、紧张する指で履歴の番号に电话をかけた。数コールで电话が繋がる。

「……凪斗です。辰久さんですか?」

『おせぇよ』

午前中から酒でも饮んでいるのか、吕律が怪しい。

「関系ない周りの人は巻き込まないでください!」

ボディガードに闻こえないように小声になりつつも、鋭い语调で诘(なじ)る。

『凪斗。おにいちゃんはなぁ、おまえ络みのことをいろいろと调べたんだ。可爱い弟のことはなんでも知っときたいからなぁ。そーそー。おまえを日展にコネ入选させた教授の娘、今度结婚するらしいじゃないか』

「……っ。教授のお嬢さんなんて、関系ないだろっ」

『それがまた腰の细(ほ)っそい、缔まりのよさそーな女なんだよなぁ。ここんとこ、俺の下の奴ら、素人のガキに梦中な组长に邪険にされて郁愤(うっぷん)が溜まってんだよなー』

「……いったい、俺にどうしろっていうんだよ?」

辰久がくぐもるような喉笑いをした。

『まぁ、兄弟でいろいろと仲良く协力しようじゃないか。病院の前の道路に黒涂りの车を回してある。一分だけ待ってやるから、それに乗れ。じゃあ、またあとでな』

通话が切れる。

凪斗の様子がおかしいことに気づいたらしい。山根がウインドウをコンコンと叩いた。凪斗は携帯电话をジャケットのポケットに突っ込んで、窓を下げた。

「どうかなさいましたか?」

「いいえ、もうすみました。运転、お愿いします」

そう促しておいて、山根が运転席に乗り込んだのと同时に、凪斗は後部座席のドアから外に飞び出した。広い驻车场を駆け抜けて、病院前の道路に飞び出す。路肩から黒いベンツが走り出そうとしていた。

「その车、待てよ! 待ってくれっ」

凪斗は、车の後部ドアに飞びついた。

「円城さんっ!?」

ボディガードの声が追ってくる。

ベンツが一瞬だけ停まる。凪斗がシートに身を投げるようにして乗り込むと、ふたたび车は走り出し、一気に加速したのだった…

* * *

目を开けても、すぐには焦点が定まらない。白い世界がぼわぼわしている。

瞬きを缲り返すうちに、ようやっとものの轮郭が生まれだす。

――ここはどこだ?

意识をはっきりさせようと手で顔を擦ると、腕になにか邪魔なものがついている。见れば点滴のチューブだった。テープと针を毟り取る。

どうやらここは病院らしい。起き上がろうとすると脇腹が重く痛み、それでマンションの地下驻车场での铳撃戦を思い出す。

车を运転して自力で病院に辿り着き、驻车场に驻めてエンジンを切ったところで记忆は途切れている。凪斗のすすり泣きが思い出された。

「……なぎと?」

呼ぶけてども、応えはない。

胸につけられた心电図の电极を乱暴に剥がしていると、ドアがノックされて、看护师が入ってきた。

「あら、角能さん、目が覚めたんですね。具合はいかがです?」

「――凪斗……ここに俺と一绪に来た子はどこだ?」

「え? 朝まではいましたけど」

と、看护师の背後からがっしりした体躯にダークスーツを着た男が入ってきた。八十岛セキュリティサービスの同僚、元自卫官の三田村(みたむら)だ。

「看护师さん、ちょっと席を外していただけますか?」

柄の悪い一重睑に见诘められて、看护师は「早くすませてくださいね。先生に诊てもらわないといけませんから」とビクつきながら出て行った。

「角能さん、お加减はどうですか?」

前身の习い性で背筋をピンと伸ばして、三田村はベッド脇に立った。角能のほうが二歳年上なこともあって、三田村は常に礼仪正しい。

「ああ、大丈夫だ。それより、円城凪斗はどうした?」

「それなんですが、実は二时间ほど前にアクシデントが起きまして……」

「アクシデント?」

「円城さんが自分から辰久さんのところの车に乗り込んで、行ってしまわれたんです」

その报告に、角能の背筋は冷えた。思わず、声を荒げる。

「自分からって、どういうことだっ? どこに行ったんだ?」

PART 5

「それが、携帯でどこかに电话をかけたあと、急に病院前で车に飞び乗ったそうで……山根が円城さんについてたんですが、予想外の行动で止めることができなかったそうです。山根が车のナンバーは覚えてたので、それで照合したところ、辰久さんのところのものだとわかった次第です。行き先は、现在捜査中です」

「捜査中って、あいつの携帯电话にはGPS机能がついてるだろう。电源を切ってあっても、定期的に居场所を発信してるはずだ」

「携帯电话は、环七の路上に投げ舍てられてました」

角能は大きく舌打ちすると、ベッドのスプリングを拳で殴った。そしてすぐに立ち上がり、クローゼットを开けた。血に汚れたスーツがぶら下がっている。抽斗を开けると、さすがは岐柳久祯ご用达の病院だけあって、角能が所持していた铳とホルダーがひっそりしまわれていた。

ワイシャツはおそらく手术时に铗(はさみ)を入れられて、舍てられたのだろう。见当たらない。患者衣を脱いでスラックスを穿く。

「三田村、ワイシャツを贷せ」

「えっ?」

「早くしろっ」

叱责する调子で言うと、三田村は慌ててジャケットを脱いで、ネクタイを外す。

体格は大差ないから、ワイシャツの大きさは丁度よかった。铳のホルダーを装着して、ジャケットを羽织る。

「俺の代わりに、ゆっくりしてろ」

半裸の三田村にそう告げると、角能は部屋を飞び出した。

* * *

「そんな怖い顔すんなよ。俺の言うとおりにすりゃあ、ババァにも周りの奴らにも、危害は加えないって言ってんだ」

辰久の瞳は寻常でなく煌(きら)めいている。なまじ男前な顔をしているだけに、崩れた精神がいっそう际立って窥(うかが)われた。

……病院前で指定されたベンツに飞び乗った凪斗は、そのまま目黒にある小ぢんまりしたホテルへと连れてこられた。凪斗が自主的に来たこともあって、途中で携帯电话を车外に投げ舍てられた以外は、特に乱暴なこともされなかった。

そしていま、この広いスイートルームには、凪斗と辰久、そして数井という眼镜をかけた男の三人がいる。数井は辰久の配下の者らしかったが、言动のどれひとつをとっても理知的な印象で、まったく极道者らしい匂いがしない。

「……言うとおりにするって、俺にどうしろっていうんですか?」

敌阵に孤立无援の状态だ。肌がピリピリするような紧张を覚えながらも、凪斗は向かいのソファでふんぞり返っている异母兄をまっすぐ见て寻ねた。

「なぁに。难しいことじゃないってっ」

辰久は立ち上がると、凪斗の横へと移动してきた。ジャケットの上から腰を抚で上げられる。

「俺の盃を受けろ」

「さかずき?」

「そうだ。そうして俺の下に入れ」

ヤクザは盃を交わすことで亲子兄弟の関系を结ぶと闻いたことがあるけれども、その盃のことだろうか?

「血だけじゃなくて、もっと深い绊を俺と结ぶんだ。で、四代目を継ぐなんてアホらしい考えは舍てて、俺に可爱らしく尻尾を振ってろ」

――……そういうことか。

要するに、盃を交わすことで上下関系を确定させてしまえば、辰久を抜いて凪斗が迹目を継ぐのは仁义に反することになる、というような理屈なのだろう。

もともと四代目を継ぎたくなどないし、盃を交わすぐらいで自分の周りの人间に危害を加えないと约束してもらえるのなら易(やす)いものだ。

「わかりました。盃を受けます」

「さすが俺の弟だ。ものわかりがいいじゃねぇか」

凪斗の答えに辰久は満足げに喉を鸣らして笑った。そして、ふいに凪斗の上半身を抱きすくめてきた。

「な、に」

惊いてもがく凪斗の抵抗を封じながら、辰久が数井に命じる。

「夜のために、下の用意をしといてやれ」

「下の、って、なんだよっ……」

数井にスラックスのベルトを外されて、凪斗は目を见开いた。ジッパー下ろされる音。下着とスラックスをひと缠めに掴まれる。脱がそうとしているのだ。

「やめろよ! 下ろすなって」

蹴り飞ばそうとした脚の胫を数井に逆に蹴られて、痛みに身体を竦める。ずるっと衣服を足首まで下ろされて、靴下と一绪に抜かれてしまう。

着惯れないスーツのジャケットとワイシャツを身につけたまま、下半身だけ裸に剥かれてしまっていた。

以前、拉致されたときのことが思い出された。

「まさか、また変なドラッグ使うつもりじゃ…」

「ああ。使うさ。おまえのためにな。俺んとこの奴らの溜まってる郁愤を晴らすのには、ど淫乱になってもらわないとならねぇからな。媒酌人が来て盃を交わしたら、その後は乱交だ」

言いながら、辰久は凪斗の身体をソファへと引きずり倒した。両手首を掴まれて、头上で押えられる。

「それは、嫌だっ! ちゃんと盃は受けるから……」

さかしまに辰久が覗き込んでくる。

「おまえは、俺の隷属(れいぞく)ものになるんだ。どう使おうが、俺の胜手だ。ァ」なのが难だが、おまえぐらい可爱けりゃ、野郎どももおっ勃つだろうさ」

凪斗の腿を数井が掴み、押し开いた。脚のあいだに座ってくる。

「これが、あの三代目雕滝に入れてもらったという噂の刺青ですか」

数井の指が、右足の付け根に巻きつく蛇の尻尾を抚でた。

「触るなっ」

凪斗は咄嗟に怒鸣った。嫌だった。角能が自分にくれたものを、他人に触られるのが、とても嫌で。脚を悬命にばたつかせる。シャツの裾が卷くれて、性器が剥き出しになる。

「社长の弟君は、なかなかの跳(は)ねっ返りですね」

凪斗の脚を押さえ込みながら、数井は苦笑した。

「刺青はあとでよく拝ませていただきましょう。いまはこちらの准备が先です」

そう落ち着いた口调で言うと、凪斗の脚の付け根にひんやりした指を添えて、割り拡げた。双丘に力を笼めて见られまいとしたけれども、両の亲指で狭间を开かれてしまう。

「心配すんな。ドラッグとディルドを突っ込んどけば、夜には楽に何十人分も咥えられるようになってるって」

残忍な悦びを渗ませる辰久の声に、数井のひとり言めいた言叶が被さる。

「ずいぶんと可爱がってもらったようですね。いやらしく肿れてる」

蕾の肿れを教えるように、冷たい指がゆっくりと狭间を抚で上げた。

「冗谈はよせ。俺がこないだ见たときは肿れてなかったぞ……ちょっと见せてみろ」

「ほら、こんなになっていますよ」

数井は凪斗の腰の下に膝を押し込み、さらに身体をふたつに折るように腿を持ち上げた。

「や、だっ」

抗おうとしたけれども、数井は见た目以上に力が强かった。手は辰久に拘束されているから、隠すこともできない。

凪斗は、角能を受け入れてきた场所を男たちに眺められた。

「……本当だ。前はいかにも処女って感じだったのにな」

「その後に男を知ったんでしょう」

「いったい谁が――――」

辰久は唇を大きく歪めた。吐き弃(す)てるように呟く。

「角能か」

凪斗は角能とのセックスの形迹を暴かれ、言及されたことに、激しい羞耻と愤りを覚えた。なんだか、角能との関系を他人に踏み汚されたみたいな気がして。頬や首筋を红く火照らせながら悬命にもがく。

辰久は不愉快げに鼻を鸣らしてから、凪斗の頬を平手で叩いた。

「男を咥え惯れてんなら、素面(しらふ)のままマリしてやる。そのほうがおまえだって、たっぷり楽しめるだろ」

「嫌だっ! 四代目はあんたが胜手になればいいだろ――俺はそんなもの、初めからなりたくなかったんだ! 盃なんていますぐ交わせばいいだろ? それで帰る……帰してくれってば!」

角能以外の男など、ただのひとりも受け入れたくない。

想像するだけでおぞましくて、吐き気がする。

「おにおちゃんに歯向かっていいのか? なぁ、このスーツとシャツについてる血、角能のなんだろ?」

嗜虐(しぎゃく)に目的を细めながら、异母兄が胁す。

「あいつの身体の血を、今度は一滴残らず抜いてやろうか?」

「……」

凪斗は顔を强张らせた。

角能の血が手指を伝う感触が、なまなましく思い出されて。その时の胸の痛みが、苏ってきて。

絶望がねっとりと心を押し包んでいく。

凪斗の身体は大きく震えてから、がくりと力を失った。

数井に睡眠薬らしきものを注射されて、そのままことりと意识が途絶えた。もうずっと途絶えたままでいいと思ったのに、辰久に頬を张られて目が覚めた。

バスルームに放り込まれて、シャワーを浴びるように言われた。

男たちの嬲り者にされるために、みずからの身体を洗う。食肉用に屠杀(とさつ)される动物にでもなった気分だった。

怖くて、気持ち悪くて、バスルームから出られないでいると、焦れた辰久に引きずり出された。そして、数井に白い着物を着せられ、足袋(たび)を履かされる。部屋の壁の姿见に映る自分の着物姿は、苍褪めた顔と相俟って、あたかも死に装束のようだ。

「本来の盃事は羽织袴で细かな手顺で行うのですが、昨今は盃事自体を省いたり略式でやることが多いんです。今日も略式で手短に行う予定です」

数井がそう説明する。

……凪斗にしてみれば、むしろ正式な方法で时间をかけてもらったほうが、ありがたかった。盃を交わしたあとには、纷れもない悪梦が待ち受けているのだから。

现実感が远退いたり袭い挂かってきたりするような不安定な心持ちで、仪式が行われるという部屋へと向かう。凪斗が履きなれない草履(ぞうり)ぎくしゃくと歩くのを冷笑を浮かべて眺めながら、辰久が追い打ちをかけように言う。

「今晩、このホテルは俺たちの贷切だ。どんだけ大声を出しても构わないからな。せいぜい、いい声を啼きまくれよ」

四十畳ほどの和室へと连れて行かれた。

奥には立派な床の间があって、そこには三本の挂け轴が吊るされている。「八幡大菩萨(はちまんだいぼさつ)」「天照大神(あまてらすおおみかみ)」「春日大明神(かすがだいみょうじん)」という文字が、それぞれたっぷりとした墨で力强くしたためられていた。床の间の前には漆(うるし)を涂られた黒くて低い台が置かれ、その上に白木作りの供物(くもつ)台が并べられている。

「ここで『固めの盃』を交わしたら、おまえは俺の奴隷だ」

略仪とはいえ、いかにも神前の仪式といった仰々(ぎょうぎょう)しさがあり、それがいっそう凪斗を追い诘めた気持ちにさせるのだった。

そんな凪斗の手首を掴んで、辰久は红殻(べんがら)色の绒毯(じゅうたん)の敷かれた廊下へ戻ると、角をひとつ曲がって、新たな部屋へと上がる。

そこには宴会场だった。朱色の座布団と膳(ぜん)がずらずらと并べられている。六、七十席ほどもあるだろうか。

部屋の奥へと引っ张っていかれ、朱幕が左右に引かれた低い段になっている舞台へと载せられる。

「ここが今夜、おまえが俎板(まないた)プレイをする舞台だ。どうだ? 兴奋するだろう」

「……」

逃げたい。

逃げたいけれども、そうしたら、角能や自分の周りの人たちにどんな危害が及ぶかわからない。谁にもこれ以上迷惑をかけないためには、ここで朝まで男たちに身を投げ出すしかないのだ。

辰久に手首を握られたまま、凪斗は膝を舞台の板床に打ちつけて、くったりと座り込んでしまう。

「いっそ、ここに布団でも敷いとくか? 板敷きじゃあ、揺さぶられたときに痛いだろうからなぁ」

辰久が吊上げたままの凪斗の右手を乱暴に揺する。

このまま目も耳も、五感をすべて闭ざしてしまえたら、どんなにかいいだろう。

ふいに指がぬるく濡れる感触を覚えて、凪斗は目を上げた。异母兄が右手の指に舌を络めているのを见る。卑猥な舐め音がたち、指を唾液がツウ…と伝い落ちていく。

「……っ」

人差し指の第一関节のあたりを容赦ない力で噛まれて、凪斗は眉を歪めた。

辰久が肉感的な唇を嫌な感じににやつかせる。

「凪斗、俺に逆らってみろ。おまえの指を一本ずつ、落としてやる。まずは右手の人差し指だ。絵笔を持つのに、苦労するだろうなぁ」

「……」

「何本の指がなくなったら、お得意の絵を描けなくなるんだろうな?」

人差し指を根元のほうまで咥えられて、付け根に噛みつかれた。食い千切ろうとするみたいに、犬歯を指にめり込ませてくる。そうしながら、口内の指をれろれろと舐めまわす。

「痛、い――ぅ、う」

ズクンとした痛みが、腕を伝って脳天へと响く。恐怖が背筋を突き抜ける。

と、バタバタと荒い足音が闻こえてきた。スーツ姿のいかめしい顔をした男が宴会场に飞び込んでくる。

「若っ!」

ようやっと凪斗の指は辰久の口から抜き出された。噛まれた付け根がズキズキと痛む。

「兄弟仲良くしてんのに邪魔するな」

「しかし若……いまさっき大沢の亲分さんから电话がありまして、こっちには来られなくなったっておっしゃるんで」

「ああ? 来られないって。大沢の叔父贵(おじき)に今日の媒酌人を頼んでるんだぞっ?」

凪斗の手を床に叩きつけるように投げ、辰久は子供のように地団駄(じだんだ)を踏む。报告に来た男に突っかかろうとする辰久を、数井がやんわりとした手つきで押し止めた。

「组长サイドの妨害ですか?」

「はい。どうやら、そのようで」

「この机会に、大沢さんをこちらに取り込もうとしたのは失败したようですね。どうしますか、社长」

辰久が野犬のように狞猛(どうもう)な念り声を漏らす。

そして、兴奋に血走った目でぎろりと凪斗を见下ろした。

「どこまで俺の邪魔をするんだっ」

凪斗が画策したわけでもないのに、首筋をむんずと掴まれて揺さぶられる。视界が激しく飞ぶ。辰久の手を剥がそうとしたけれども、睡眠薬が抜けきっていない身体はすぐにぐったりと脱力した。

舞台に唾を吐くと、辰久は凪斗を引きずり起こした。二の腕を掴まれて、もつれる足で歩かされる。

「今日の盃事は中止だ! その代り、デザートをメインディッシュにしてやる。手隙の奴らをあっちの部屋に集めろ」

凪斗は『固めの盃』を交わすための部屋へと连れ込まれた。床の间の前にしつらえられた祭坛へと突き飞ばされる。スーツ姿の男たちが次々と部屋へと入ってくる。いかにもならず者らしい顔つきの者もいれば、経済ヤクザらしい坚気っぽい者もいる。彼らに向かって、辰久が荒い声で言う。

「おまえたちに无駄な手间をかけさせた诧びを、うちの弟がしたいそうだ。このガキはこう见えて、あの雕滝の刺青を背负った、なかなかの玉だ――ほらな」

辰久は凪斗の着物の左右の衿(えり)を掴むと、一気に引き摺り下ろした。背中の刺青が暴かれると、男たちがざわついた。下卑(げび)た口笛を谁かが吹く。

「どうだ? 白い肌に、双头の黒蛇、见事なもんだろ?」

凪斗の背を抚でまわしていた辰久の手が裾へと流れるのに、凪斗はさすがに抵抗を试みる。けれども、もがく凪斗を正面から抱きすくめると、异母兄はべらっと裾を卷ってしまった。下着をつけさせてもらえなかったから、紧张に强张る双丘を丸出しにされる。

右の尻朶を包むように流れる蛇の胴を、いやらしい手つきで辿られる。

「スケベなモンモンだよなぁ。こんなふうに脚の内侧に这い込んで、こいつのケツを犯してるみたいだろ」

脚の付け根を抚でさすられて、凪斗の身体はビクンッと跳ねた。

辰久が嘲(あざけ)るように鼻で笑った。

「しかも、男を喰い惯れてて超高感度ときてる……こいつにしっぽり喰ってもらいたい奴はこっちに来い。远虑すんな。无礼讲だ」

「や――嫌だ……っ」

背後に寄ってくる复数の人间の気配。

ぞおっと鸟肌が立って、凪斗は浑身の力で辰久を突き飞ばした。逃げようとすると手首足首を男たちの强い手に掴まれ、うつ伏せに引き倒された。ほとんど身体を隠していない着物を缠わりつかせて、凪斗は必死にもがく。

「见ろよ。モンモンの蛇がくねってるぜ、生きてるめてぇだなぁ」

墨の沈む肌を、无骨な掌にべたべたと触られる。

……いったい、何人の手がいま自分にかかっているのだろう? 畳へと伏せられている平らな胸をまさぐられた。いかにも女に扱いに惯れた指使いで、乳首を掘り起こすようにいじられる。腰や脇の下をすぐられる。ふたりの手が同时に凪斗の性器を掴んできた。脚を左右に大きく开かされる。双丘が何人もの手で割られる。 ご开帐など、卑猥な言叶が飞び交う。

まだ二、三分しか経っていないのに、すでに凪斗は気の狂いそうな混乱に呑み込まれていた。男たちの热が重い呪缚となって、心と肢体を雁字搦みにしていく。

性器の先端を露骨に擦られながら、角能によってとっくり快楽を教え込まれた蕾を指先でつつかれる。

「入らないでぇって、キュッて缔まるぜ。可爱いなぁ」

「っ……ふ、やめろっ」

「もっと大声でイヤイヤ唤けよ。そのほうが盛り上がる」

なにをしても、男たちは悦ぶのだ。凪斗ができることといえば、唇を切れるほど噛み缔め、畳を引っ掻くことだけだった。

恐怖とおぞましさに支配された身体は强烈な寒気に袭われるばかりで、快楽をまったく示さない。焦れた男たちの兴味は、自身の欲望を満たすほうに向かったらしい。後孔の襞を押し开いて、无理やり指が入ってきた。

「やだ――やだぁっっ!!」

さすがに堪えられなくて、凪斗は悲鸣を上げた。

「あー、あったかくて、きっついぜ」

男の指が拒絶しようと激しく蠕动する粘膜を捏ねる。

「けど、朝になるころにはガバガバだな」

「じゃあ、まずは俺が一発目を决めてやるか」

ベルトが外されジッパーが下される、慌ただしい音。

指が体内から引き抜かれる。

双丘が男たちの手によって无残に押し拡げられ、露になった粘膜の口に雄の刚直が押し当てられる。

絶望に喉が震えた。

これだけの数の男に轮奸されたら、きっと自分の心も身体も壊れきってしまう。朝まで生きていられないかもしれない。

そうしたら、もう本当に、二度と角能に会えない。

あの最後のとき、彼に触れておけばよかった。キスしておけばよかった。最後に、もう一度だけ……

「い……や、嫌、嫌だっ! 角能さんっ」

凪斗は喉が裂けんばかりの声で、角能の名前を呼んだ。

何度も缲り返し呼びながら暴れる。涙が頬を伝う。最奥に男が入ってくる……

* * *

八十岛の运転するRV车は、目黒通りを疾走していた。

後部座席、角能の横では折原が黄色いバックバックを膝に载せて、なかに诘まっている卵形の手榴弾(しゅりゅうだん)を点検している。手榴弾といっても爆破タイプではなく、催涙スプレーが散布されるものだ。

「大沢の亲分サンが辰久サンに付こうとしとったなんた意外やったなぁ。あの人、蝙蝠(こうもり)やから傍観しとって胜ったほうに付くんやと思ってた」

折原がぶつぶつ言うのに、运転席から八十岛が返す。

「まぁ、组长の第二舎弟の大沢にしてみりゃ、第一舎弟の桜沢が凪斗くんの後见になって天下を取ったら、やっぱり面白くないって话だろ」

「あーあ、権力闘争はメンドーであきません」

「ま、なんにしろ、角能のお手柄だな。角能が辰久んとこの三下の抱き込み工作しといたから、こうやって大沢が媒酌人指名されたことも、凪斗くんの居场所も、情报が流れきたわけだからな」

――それでも、时间がかかりすぎた…

角能は窓のむこうを飞んでいく暮れなずむ街并みに、苛立った视线を投げる。

凪斗が消えてから、すでに六时间余りが経过していた。相手が相手だから、酷い仕打ちをされていることも充分に考えられる。

――凪斗、无事でいてくれ。

いま、凪斗がいる黒目のホテルへと急行しているのは、组长および桜沢の先鋭の配下三十名と、八十岛セキュリティサービスの十三名でだ。组长と桜沢も向かっている。

街中のホテルだから、极力铳は使わないようにと言われているが、事と次第によっては自分が辰久を処分してやるつもりだ。角能はスーツの内侧のホルダーへと手を滑り込ませて、铳のグリップを握り缔めた。

ひと昔前に建てられた様子の、小ぢんまりしたホテルの前に车が横付けされるやいなや、角能は降车し、エントランスへと走りだした。他の八十岛セキュリティサービスの面子を乗せたワゴン车からもスーツ姿の男たちが降り立ち、角能に続く。

ロビーに突入した彼らの姿に、见张りに立っていた辰久に下の者たちが気色(けしき)ばむ。

このホテルは、今日は辰久の贷切となっているから、従业员以外の素人はいないはずだ。

地下一阶にある宴会场で盃事が行われる予定になっていると、角能が抱き込んでおいた辰久のところの三下は言っていた。ロビーを突っ切ったところにある阶段へと走る。

「おまえら、SSの盾だな! なにしに来やがったっ!?」

「円城凪斗を返してもらう」

「そんな奴いねぇよっ、帰(け)ぇれ」

飞び挂かってきた男の腕を左手で掴み、角能は相手の眉间に掌底を叩き込んだ。「ぐわっ」と声を上げて、男が古びた红色の绒毯へと転がる。SSの面々はそれぞれにたかってくる人间を薙(な)ぎ倒し、一気に阶段を駆け下りた。

地阶に着く。脱ぎ散らかされた靴のお阴で、どこに人が集まっているかは知れた。角能は土足のまま、広い畳部屋へと踏み込んだ。

四十畳ほどの部屋の奥に人だかりがある。突然の乱入者たちに度肝を抜かれた様子、戦闘态势も整わないまま、彼らは角能たちを迎え撃った。なかにはドスを抜く者もいたが、こういう正面冲突の戦いにおいては武术を习得し、现场も踏んできたSSのメンバーのほうが数段有利だ。

「凪斗っ」

飞び挂かってくる男の鸠尾に靴の硬い踵をめり込ませながら、角能はいまだ姿の见えない凪斗を呼んだ。奥へ向かおうとするが、さすがに简単には突破できない。頬に一発拳を入れてきた男を殴り返すと、左脇腹に激しい违和感と痛みが生じた。铳创(じゅうそう)が开いたらしい。

敌を畳に沈めながら进んでいくと、入り乱れる人影のあいだから、妙になまめかしい肌色が垣间见(かいまみ)えた。それが凪斗の剥き出しの脚だと気づく。白い足袋をつけている。

「邪魔だ、どけっ」

うるさく飞び挂かってくる男たちを蹴散らしながら、角能の视线はちらちらと见える凪斗の姿を追う。

白い着物は乱れてはだけ、辛(かろ)うじて帯で身体を巻きつけられているような有りさまだ。うつ伏せのまま倒れている凪斗のすぐ傍に、谁かが取り落としたらしい匕首(あいくち)が落ちていた。凪斗の涙に濡れた顔が上げられて、それを见つける。手がゆるりと伸びて、匕首に柄を掴む。

寻常でないなにかを感じて、角能は凪斗のもとへ走ろうとした。しかし、後ろからがしっと敌に羽交い缔めにされて、それを振りほどくのに手间取る。

数秒、目を离したあいだのことだった。

「……若っ!!」

ビンと空気を揺るがすような声が响いて、一同は争い合う手を思わず止めた。

そして、角能は见る。

辰久が仰向けに倒れていた。そのスーツの胸元には、つるりとした剥き出しの膝が体重をかけて乗せられている。

上気した腿の付け根に巻きつく、蛇の尾。肘までぞろりと脱げた着物から覗く细っそりとした背では、黒蛇が荒く息づいている。少年ぽさを残す横顔、乱れた髪が汗で頬に张りついているさまは壮絶なまでに艶(あで)やかだ。

凪斗は、眼下の异母兄を睨み据えていた。

辰久のほうはといえば、惊愕と恐怖に目を见开いている。震える唇から掠れ声が漏れる。

「やめ、ろ……っ」

凪斗の手に握られた匕首は、ぴたりと辰久の喉に押し当てられていた。わずかに角度を変えて力を入れれば、すっぱりと頚动脉(けいどうみゃく)が切れる位置だ。

いきなりのチェックメイトに、あたりがシンと静まり返る。すべての人间が凪斗の気迫に呑まれてしまっていた。

角能ですら声をかけることができないほどで。

その紧迫に冻てついた空间へと、畳をミシと踏み鸣らして入ってきた者たちがいた。

「く、组长……」

谁かが、ほんの小声で呟く。

岐柳久祯と、それに従う桜沢宗平。ふたりの前に立つ者たちは慌てて左右に退いて、道を作った。

ちょうど角能の横まで来て、久祯は立ち止まった。

床の间にしつらえられた盃事のための祭坛の前、异母兄に乗っている凪斗が顔を上げた。凪斗はまず、角能を见た。背筋がぞっとするほど深い目をしている。

それから彼の视线はするりと横に流れて、父亲である组长に注がれた。

「おまえは相当の玉だな。凪斗」

久祯の声には、満足げな响きが笼められていた。

凪斗の淡色の瞳が、昏く强く煌めく。

そして欲情しているときのように肿れた唇が动いた。

「父さん」

水を打ったような静けさの中、わずかに掠れた声质がきっぱりと言った。

「俺は、岐柳组四代目になります」

反発の念り声ひとつ、上がらない。格が违う者の発言に闻き入るとき特有の厳(おごそ)かな重い空気が、広い部屋を満たしていた。

凪斗の瞳が、ふたたび角能のうえに戻ってくる。光る虹彩にひたと见据えられた。

「だから、俺に角能さんをください」

鸟肌が立った。

それはあたかも、蛇が获物を丸呑みするときのように。

角能は、自分の精神が凪斗に呑まれていくのを、感じる。

──ああ、そうか…

背筋を震えが駆け抜けた。

──俺はこいつに、すべてを捧げるのか。

円城凪斗を护り、そして彼に跪く。

そのことが、なにか腑に落ちるように、すとんと理解された。

人も组织も二度と信じまいと坚く誓い、极道のボディガードに身を堕とした。そうして投げやりに、命を雨风に晒すようにして过ごした四年の歳月。

その末に辿り着いた……ここが、终(つい)の场所なのだ。

この一幕のために、すべての物事は组まれていたのではないかと思うほどの、完全な纳得が胸に落ちてきていた。

ゆっくると深く呼吸をする。

岐柳久祯が、任せるぞ、とでも言うかのように、角能の肩をポンを叩いた。

そして、久祯は桜沢に寻ねる。

「凪斗の後见に立ってくれるな」

桜沢は「よろこんで」と答え、それから小さく笑った。

「岐柳の大蛇は赛(さい)の目だって思いどおりにする──今回もまた、欲しいものをふたつ同时に手に入れて、ひとり胜ちですか」

*  *  *

辰久の処分は後日改めて取り决められることとなり、岐柳久祯の鹤の一声によって、场は开かれた。

凪斗は世田谷にある组长宅へと身を寄せることになったが、角能の伤口が开いてしまっていたため、まずは病院に寄って再缝合(ほうごう)をしてもらった。

入院を强く勧める医者を振りきり、八十岛たちの护卫を受けて、本宅のいかめしい瓦葺(かわらぶ)きの门を角能とともにくぐる。広々とした庭も赘沢(ぜいたく)な平屋作りの家屋も、重厚な和の趣(おもむき)だ。极道の家なのに、なんだか神社の境内を思わせる静やかな空気が流れていた。

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