饭饭TXT > 海外名作 > 《浮云(日文版)》作者:[日]二叶亭四迷【完结】 > 浮云.txt

     第十三回

作者:日-二叶亭四迷 当前章节:2155 字 更新时间:2026-6-16 03:24

 心理の上から観(み)れば、智愚の別なく人咸(ことごと)く面白味は有る。内海文三の心状を観れば、それは解ろう。

 前回参看※[#白ゴマ点、169-10]文三は既にお勢に窘(たしな)められて、憤然として部屋へ駈戻(かけもど)ッた。さてそれからは独り演劇(しばい)、泡(あわ)を噛(かん)だり、拳(こぶし)を握ッたり。どう考えて見ても心外でたまらぬ。「本田さんが気に入りました」それは一時の激語、も承知しているでもなく、又いないでも無い。から、強(あなが)ちそればかりを怒ッた訳でもないが、只(ただ)腹が立つ、まだ何か他(た)の事で、おそろしくお勢に欺(あざむ)かれたような心地がして、訳もなく腹が立つ。

 腹の立つまま、遂(つい)に下宿と決心して宿所を出た。ではお勢の事は既にすッぱり思切ッているか、というに、そうではない、思切ッてはいない。思切ッてはいないが、思切らぬ訳にもゆかぬから、そこで悶々(むしゃくしゃ)する。利害得喪、今はそのような事に頓着無い。只己(おの)れに逆らッてみたい、己れの望まない事をして見たい。鴆毒(ちんどく)? 持ッて来い。甞(な)めてこの一生をむちゃくちゃにして見せよう!……

 そこで宿所を出た。同じ下宿するなら、遠方がよいというので、本郷辺へ往(い)ッて尋ねてみたが、どうも無かッた。から、彼地(あれ)から小石川へ下りて、其処此処(そこここ)と尋廻(たずねまわ)るうちに、ふと水道町(すいどうちょう)で一軒見当てた。宿料も廉(れん)、その割には坐舗(ざしき)も清潔、下宿をするなら、まず此所等(ここら)と定めなければならぬ……となると文三急に考え出した。「いずれ考えてから、またそのうちに……」言葉を濁してその家(うち)を出た。

「お勢と諍論(いいあ)ッて家を出た――叔父が聞いたら、さぞ心持を悪くするだろうなア……」と歩きながら徐々(そろそろ)畏縮(いじけ)だした。「と云ッて、どうもこのままには済まされん……思切ッて今の家に下宿しようか?……」

 今更心が動く、どうしてよいか訳がわからない。時計を見れば、まだ漸(ようや)く三時半すこし廻わッたばかり。今から帰るも何となく気が進まぬ。から、彼所(あれ)から牛込見附(うしごめみつけ)へ懸ッて、腹の屈托(くったく)を口へ出して、折々往来の人を驚かしながら、いつ来るともなく番町へ来て、例の教師の家を訪問(おとずれ)てみた。

 折善くもう学校から帰ッていたので、すぐ面会した。が、授業の模様、旧生徒の噂(うわさ)、留学、竜動(ロンドン)、「たいむす」、はッばァと、すぺんさあー――相変らぬ噺(はなし)で、おもしろくも何ともない。「私……事に寄ると……この頃に下宿するかも知れません」、唐突に宛(あて)もない事を云ッてみたが、先生少しも驚かず、何故(なにゆえ)かふむと鼻を鳴らして、只「羨(うらや)ましいな。もう一度そんな身になってみたい」とばかり。とんと方角が違う。面白くないから、また辞して教師の宅をも出てしまッた。

 出た時の勢(いきおい)に引替えて、すごすご帰宅したは八時ごろの事で有ッたろう。まず眼を配ッてお勢を探す。見えない、お勢が……棄てた者に用も何もないが、それでも、文三に云わせると、人情というものは妙なもので、何となく気に懸るから、火を持ッて上ッて来たお鍋にこッそり聞いてみると、お嬢さまは気分が悪いと仰(おっ)しゃッて、御膳(ごぜん)も碌(ろく)に召上らずに、モウお休みなさいました、という。

「御膳も碌に?……」

「御膳も碌に召しやがらずに」

 確められて文三急に萎(しお)れかけた……が、ふと気をかえて、「ヘ、ヘ、ヘ、御膳も召上らずに……今に鍋焼饂飩(なべやきうどん)でも喰(くい)たくなるだろう」

 おかしな事をいうとは思ッたが、使に出ていて今朝の騒動を知らないから、お鍋はそのまま降りてしまう。

 と、独りになる。「ヘ、ヘ、ヘ」とまた思出して冷笑(あざわら)ッた……が、ふと心附いてみれば、今はそんな、つまらぬ、くだらぬ、薬袋(やくたい)も無い事に拘(かかわ)ッている時ではない。「叔父の手前何と云ッて出たものだろう?」と改めて首を捻(ひね)ッて見たが、もウ何となく馬鹿気ていて、真面目(まじめ)になって考えられない。「何と云ッて出たものだろう?」と強(し)いて考えてみても、心奴(め)がいう事を聴かず、それとは全く関繋(かんけい)もない余所事(よそごと)を何時(いつ)からともなく思ッてしまう。いろいろに紛れようとしてみても、どうも紛れられない、意地悪くもその余所事が気に懸ッて、気に懸ッて、どうもならない。怺(こら)えに、怺えに、怺えて見たが、とうどう怺え切れなくなッて、「して見ると、同じように苦しんでいるかしらん」、はッと云ッても追付かず、こう思うと、急におそろしく気の毒になッて来て、文三は狼狽(あわ)てて後悔をしてしまッた。

 叱(しか)るよりは謝罪(あやま)る方が文三には似合うと誰やらが云ッたが、そうかも知れない。

目录
设置
设置
阅读主题
字体风格
雅黑 宋体 楷书 卡通
字体大小
适中 偏大 超大
保存设置
恢复默认
手机
手机阅读
扫码获取链接,使用浏览器打开
书架同步,随时随地,手机阅读
首 页 < 上一章 章节列表 下一章 > 尾 页