年は明け、 冬休みも終わる。
今日から新学期。 相変わらず外は寒い。
マフラーをきつく巻いて学校へ向かった。
「おはょ。ってか明けましておめでと~♪美 嘉、大丈夫?」
アヤと会うのは あの日以来だ。
「大丈夫。アヤいろいろごめんね!!」
「なんもだよ♪ノゾムも心配してたよ。辛いけ ど頑張るんだよ!」
「うん、ありがと!!」 アヤは周りを見渡し、
誰もいないことを確認すると小さい声で話 し始めた。
「ヒロ君とはどうなったの?」
「いろいろ大変だったけどね、どうにか続 いてまぁ~す!!」
「やっぱりね!だってさっきヒロ君に会っ た時、美嘉がクリスマスにプレゼントした 香水つけてたよ♪二人とも指輪してるし ね!」
「ママママジ?香水つけてたの!?!?」
クリスマスにプレゼントした香水をヒロが つけてくれていたと聞いて、 一気にテンションが上がってしまった。
「興奮しすぎだからぁ(笑)美嘉はヒロ君 と結婚するの~?」
「当たり前~!!するする~っ♪ヒロ大好き だし(>_<)」
「この~ノロけやがって!!あたしもノゾムと する~♪」
「勝手にしてぇ~!!嘘っ。お互い頑張ろ♪」
「さっきノゾムと話してたんだけど~ヒロ君 って顔変わったよね!」
アヤは PHS の裏に貼ってある四人で撮ったプ リクラを見ている。
「えっ、そうかなぁ!?いつも見てるから わかんないやぁ!!」
「うん♪なんか顔が優しくなったよね~っ て話してたのぉ~!」
顔が優しくなった? 確かに そうかもしれない。
だって初めて会った時は怖かったもん。 でも今は全然
怖いとか思わない。
流産して以来、 ヒロはものすごく優しいんだ。
口や態度は相変わらず悪いけど、 さりげなく守ってくれているのがわかる。
ヒロはもともと優しかったけど、 今はそれ以上…。
顔も、 最初見た時はギャル男だし軽そうだし怖い しタイプではなかった。
でもなぜか今、 ヒロの顔が美嘉のタイプになってしまって いる。
恋って 本当に不思議だよ。
ヒロの事がすごく好きで好きで好きでしか たないんだ。
不安になる時もある。 ケンカする時もある。 二人でいろんな事を乗り越えて、
心が通じ合ったと思う。
だからね、 これからもずっと一緒にいれると思ってた んだ。
思ってたんだ…。 雪溶けて春。
ポカポカした陽射しの中三学期最後の授業 を受けていた時ポケットで PHS が震えた。
♪ブーブーブー♪
受信:ヒロ
《ツギノジュギョウ、ナニ?》 先生の目を盗んで
返事をする。
《タイイクダヨー》
ヒロからの返事は早い。
《サボロウゼ!》
《スゲェトコツレテク》
次は大嫌いな体育だし、すごい所って… 気になる。
《リョウカーイ》 あっさりと返信した。
だって授業なんかよりヒロといたいんだも ん。
授業が終わり、 アヤとユカに事情を説明して玄関まで走った。
玄関では ヒロが立って待っている
靴を履き変えていると、後ろから学年主任 の先生がやって来た。
「コラ!お前達どこ行くんだ?」
「外で体育なんすよ~」 ヒロが言う。
「そ~でーす!体育でーす!!」 美嘉が言う。
一瞬納得した先生は すぐに気付いたみたいだ
「嘘つくな。お前達クラス違うだろう!」
「美嘉逃げるぞ!」
ヒロは美嘉の手をぐいっと引っ張り、 自転車置場まで猛ダッシュ。
カバンを乱暴にカゴに入れ、 美嘉を持ち上げ自転車の後ろに乗せた。
「しっかり掴まれよ!」 すごいスピードで自転車を漕ぐヒロ。
おそらくバイク並の早さだっただろう…。
後ろから先生が走って追い掛けて来ている ことに気が付いた。
「ヒロっ!!先生追い掛けて来てるし~!!」
「待ぁてぇ~!」 大声で叫びながら
走る先生。
「美嘉、なんか言ってやれ!」
「なんかって何!?」
「普段言えねぇこと!」 先生に向かって
大声で叫んだ。
「先生の、のーろーまー~!!」
「…お前ら明日覚えておけよ!」 先生の声が遠くから聞こえ、
それと同時に先生の姿が見えなくなった。
「キャー!!明日覚悟しなきゃ~♪」
「美嘉~よく言った!」 逆風に押されながら二人で大笑いした。
キキーッ
学校を出てからしばらく漕ぎ続け、 自転車が止まる。
「着いたぞ~」 着いた場所は川原だ。 タンポポがたくさん咲いていて、
綺麗な水がチョロチョロと音をたて流れて
いる。
「何ここ~!?すごーい!!」
「この川原は俺が見つけた特別な場所。二 人だけの場所にしようぜ。ケンカしたりし た時はここで仲直りしような!」
「うん!うん!!ヒロと美嘉の二人だけの場 所だねっ!!」
自転車の後ろを 親指で指さすヒロ。
「俺の後ろは美嘉の特等席だから」
「わーいわーい!!ヒロ大好き~!!」 ヒロに抱き付くと
ヒロは頭をかいた。
「うるせーって!」
その日は結局学校には戻らず夜まで川原に いた。
次の日…
終業式が終わって、 明日から春休み♪
なのに、 先生に呼び出された。
どうせ昨日のこと…。 ため息をつきながら職員室のドアを開け
る。
「失礼しまぁ~っす」 ヒロがすでに
立っている。
ヒロも 呼び出されたか…。
二人は目を合わせて 舌を出した。
「お前達昨日どこ行ってたんだ?」 二人に向かって呆れたように問う先生。
「どこも行ってないっすよ~。なー美嘉!」
「そーですよぉ~具合悪いから帰っただけ で~す!!」
「嘘つくな。じゃあなんで逃げた?」
「逃げたんじゃありませ~ん。先生が遅か ったんだも~ん!!ね」
ヒロに助けを求める。
「大当たり~美嘉さすが!」
先生は煙草の煙りを 口から吐き出した。
「…ったくお前達には負けるな。これからは サボるなよ。そう言えばお前達春休みに補 習はないのか?」
「え~!?春休みなのに補習あるの??ぷ
ー」
「ありえねぇ~」 声を揃えて不満げに言う二人。
「お前達担任の話聞いてたか?テストで赤 点とったり出席日数足りない生徒は春休み の間、補習あるんだぞ」
「俺は~?」
「確か配ったプリントに書いてあったはず だが…あ、あった。これだぞ」
ヒロはプリントを 覗き込む。
「俺補習じゃん~マジありえね~」
「ぷぷっ!!ヒロ補習?かわいそうに…」 手で口をおさえながらわざとらしく同情す
る。
「残念ながらお前もだ」 根拠もなく安心しきっていた美嘉に、
先生からの衝撃的な一言
「美嘉もかよ!」
ヒロがプリントを再び覗き込む。 こうなれば色気作戦で補習を免れるしかな い。
「え!?美嘉も補習??やだ~やだやだ先 生許して~!!
お・ね・が・い(^3^)」
「頑張れよ!」 色気作戦はあっけなく失敗に終わり、
先生は二人肩をポンと叩いて去って行っ た。
春休み中は毎日補習…。 でも二人共補習のおかげで毎日学校で会え
るし、補習が終わると川原に行ってまった りとしたりお互いの家に行ったりしてい た。
そして 春休みは終わる…。
━四月 もう高校二年生。
新学期と言えば クラス替え。
いつも通り学校に向かい玄関に貼られたク ラス替えの紙を見に行こうとした時、 嬉しそうに歩いているアヤに会った。
「美嘉~また同じクラスだよ♪ノゾムも!」
「マジで??やったぁ!!ヒロとユカは!?」
「違うクラスぅ…」
「がび~ん↓↓」
アヤとノゾムとは同じクラスになれたが ヒロとユカとは違うクラスになってしまっ た…。
ユカと離れたのは寂しい。 しかしヒロとはもともと違うクラスだった
し そこまで寂しくも感じない。
ヒロはすごくヤキモチ焼きだから同じクラ スだと毎日ケンカになってしまうかもしれ ないし、 違うクラスのほうがいいのかも…。
ヒロは休み時間や昼休みに教室に遊びに来 てくれて、
毎日四人で話しをしていた。
クラス替えをして 一ヶ月。
この日も学校をサボってヒロと川原で遊 ぶ。
陽射しで温かい地面。 冷たい川の水が
心地良い。
美嘉とヒロは初めてここに来た日から川原 に来る機会が増えた。
時には学校をサボり 時には放課後。
「天気いいね♪」 草をむしりながら言うとヒロは地面にごろ
んと転がった。
「なんか眠くなっちゃったぁ~!!」
空に向かって大きく両手を広げながら言う と、 ヒロは地面に横になった状態で手招きをし た。
「来い!寝ようぜ~」 ヒロの腕枕にごろんと転がり、
ヒロの胸に埋まる。
制服からは 微かにスカルプチャーの香り。
「やべぇ~幸せだ」
「美嘉も幸せ~っ!!」
「早く結婚してぇな」
「うん♪ヒロ美嘉のこと好きっ??」 ヒロはぷいっと横を向きながら答えた。
「…おー」
「どれくらい好き??」 ヒロの横顔は
少し照れたように見える
「んなこと言えねーよ」
「えー…なんでぇ??」 いじけたようにほっぺに空気をぷくーっと
膨らませる美嘉。
「恥ずかしいじゃん!」 ヒロは咳ばらいをしながら答えた。
美嘉は体を起こし、 川へと歩き出す。
「どこに行くんだよ?」 ヒロの言葉を無視し、
その場に座り込み川の水を触っていると、 突然ヒロが後ろからがばっと抱きしめた。
「やめて!!どれくらい好きか言えないんで しょ!!もういい…」
最後まで言い終わらないうちに、 ヒロは唇を重ねた。
「…これぐらい好きだから。わかったか?」
「……うん…」
突然のキスに全ての思考が停止。 顔が熱くなっていくのがわかる。
「照れんな。俺も照れっから!」 ヒロは熱くなった美嘉のほっぺを撫でなが
ら呟いた。
この先ヒロが隣にいてくれるのなら 美嘉は何があっても怖くないよ。
この時ね 本当にそう思ったんだ。
しかしそれから三日後に思いがけない事件 が起きる…。
今日は朝から雨。 こんな日は学校へ行くのも憂鬱だ。 傘をさしながら
バスを待つ。
横から振り付ける雨で制服が濡れ 体を震わせながら教室に入った。
ヒロは川原に行った日から学校を休んでい る。
風邪らしい。 今日は来るかな??
早く会いたいなー。
「おはよ~」 いつも元気に挨拶をしてくるアヤの姿がな
い。
「アヤは??」 近くにいたノゾムに聞く。
「休み~」
「休みかぁ…。」 アヤが休むなんて珍しい。アヤも風邪かな?
そんなことを考えながら席についたと同時 に
激しい音をたてて教室のドアが開いた。
ヒロ。 ヒロが教室に入り
怒ったような表情で美嘉へと近付いて来 る。
ヒロは強引に美嘉の腕を引っ張り 立ち上がらせた。
「…風邪治ったの??」
ヒロは美嘉の問いに返事をせずノゾムに向か って低い声で言った。
「ノゾム後で話あっから」 ヒロは強引に美嘉を廊下へ出し
体を強く壁に叩きつける
「痛……何!?」
「俺に話すことない?」 美嘉を真っ直ぐ見るヒロから目が離せな
い。
「え…??」 ヒロは返事を急かすように舌を巻きながら
話し続ける。
「ノゾムのことでなんか話あるよな?」
ノゾムのこと? ノゾムが何…??
「意味がわかんない…」 ヒロから目をそらしながら答えた。
なんで怒ってるの??
ヒロの表情はみるみるうちに変わる。
「ノゾムとキスしたんだろ?」
ノゾムとキス。 クリスマスイブの夜ノゾムが酔って美嘉とアヤ を勘違いをしてキスしてきた。
でもノゾムはキスした相手が美嘉だなんて知 らないはずだし…。
「…ノゾムに聞けばわかるんじゃない??」
頭を抱えながらそう言うと、 ヒロは教室に戻りノゾムを無理矢理連れて再 び廊下に戻って来た。
「なんだよ?」 ヒロは不機嫌なノゾムの胸ぐらを掴む。
「なんだよじゃねー。美嘉とキスしたんだ ろ?」
ノゾムは… してないって言うに決まってる。
「…あぁ、した。」
ノゾムは開き直ったように認めた。 ノゾムは美嘉だって知っててキスをした の??
アヤと間違えたんだよね?
鈍器のような物で頭を殴られたような感覚 にめまいがする。
「だってあれは……」 美嘉の言い訳を最後まで聞かずに、
ヒロが叫んだ。
「てめぇ人の女に手出してんじゃねーよ。 ふざけんな!」
ヒロはノゾムの頭を壁に押し付け、 その瞬間ヒロの拳がノゾムの頬を強く直撃 し、 ノゾムは鼻血を出してその場に倒れ込んだ。
「………ヒロ」 ヒロは美嘉を横目で睨みポケットに手を入
れたまま自分の教室へと帰って行ってしま った。
ヒロが美嘉にあんな怖い顔を見せたのは初 めて…
倒れているノゾムに制服のポケットからハン カチを差し出し、 涙声のままノゾムに質問を投げ掛けた。
「ノゾム、あの時美嘉起きてたんだ。でも美 嘉とアヤを間違えてチュウしたんじゃない の??よくわかんない。説明して…」
「ごめんな」 ノゾムはそう言って美嘉の手からハンカチを
取り、鼻血を拭きながらゆっくりと説明を 始めた。
ノゾムが説明してくれた内容はこうだ。
“ヒロは高校に入学した当時から美嘉のこ とを狙っていた。 ノゾムも少しだけ美嘉のことを気になっては いたけど、ヒロのことを考えたら言えなか った。
アヤと付き合ってから、 アヤのことはもちろん本気で好きだったけれ ど、美嘉のこともまだほんの少しだけ気に なっていた。
クリスマスイブの夜に四人で飲んだ時みん な寝ていたし、少し酔っていたこともあっ て軽いノリで美嘉にキスをしてしまった。
後からキスしたことをすごく反省して、そ れを親友であるショウに相談をした…”
こんな内容だった。
ノゾムが美嘉にキスした理由は… だいたいわかった。 でもなんでヒロが知ってるの…??
唯一の共通点と言えば…
「ノゾムが相談したショウって確か今ヒロと同 じクラスだよね??」
「おぅ」
「じゃあノゾムが美嘉にキスしたってことを ショウがヒロにチクッたってこと??」
「それしかないな。信じてたから相談した のにな…なんかヒロ誤解してるよな。俺が勝 手に美嘉にキスしただけなのに、ごめん」
「ノゾムは今アヤのことちゃんと好きだよ ね…??」
ノゾムはしばらく沈黙を続け 静かにうなずいた。
深い穴に落ちたような…まさにそんな表現 がぴったりあてはまるだろう。
アヤの耳にこの話が入ったらどうなる??
……ヒロ。 怒ってた。
今までたくさんケンカしたけどあんなに怒 ってたヒロは初めて見た。
ヒロは本当のことを知らない。 美嘉はノゾムがアヤと美嘉を間違えたんだと思 ったんだ。
だから何も言わなかった
隠してたわけじゃないの ごめんなさい…。
学校で何回もヒロにメールを送った。
《ゴメンネ》
《ハナシタイ》
しかし返事は来ない。 教室まで会いに行く勇気も電話をする勇気
も出ないよ。
ノゾムは鼻血が止まらないためか早退してし まった
昼休みになってもヒロから返事が来ない。 これで最後にしようと二通のメールを送っ た。
《ホウカゴハナソウ》
《トショシツニイマス》
放課後… ほんの少しの望みに期待しながら図書室へ 向かう
図書室のイスに座り 顔を伏せた。
ここで愛し合ったこともあったね。 説明したらわかってくれるよね…?
ヒロが来る気配は全くなく外も暗くなって きた。
その時… ガララララ
ドアが開く音。
顔をパッと上げた。
「学校閉めるから早く帰りなさい」
…用務員さんだ。 ヒロは来なかった。
当たり前だよね…。
帰り道、 暗い道を歩きながら空を見上げる。
星が綺麗。 手を伸ばせば
届きそうなくらいに。
いつもなら隣にヒロがいて、
「星取って~!!」 って冗談で言えば
「ったくガキだな~」 とか言って笑いながら頭クシャクシャして
くれていたのにな。
一人じゃ 全然届きそうにもない。
ヒロ。 ヒロと星見たいよ。
家に着き 勇気を出して電話をかけてみた。
予想通り繋がらない。
メールはしないつもりだったのに手が自然 に P メール DX というロングメールを送信 していた。
直接話して説明したいけど電話には出てく れないから…
クリスマスイブの夜、 美嘉は寝ていたこと。
ノゾムが間違えてキスしたと思っていたとい うこと
今日ノゾムから聞いた話。 誤解だということ全てを書いて送信。 その時…
♪ピロリンピロリン♪
メール受信:ヒロ
ヒロから 返事が来た。
震える手で
受信 BOX を開く。
《ゴメン、ワカレヨウ》 電話を持っている手が
激しく震える。
ヒロに電話をかけた。
『留守番電話サービスです』 電話は
繋がらない。
メール返してくれたってことは、 電話も出れるはず。
なんで 出てくれないの…。
仕方なく
P メールを送信する。
《ナンデ??》 ヒロからは一分もたたずに返事が来た。
《クルシイ》
メールだけじゃ わからないよ。
気持ちも言いたいことも伝わらない。 何度も電話をかけてもずっと留守番電話の
ままなので連絡を取るのを諦めることにし た。
明日 教室まで会いに行く。
会ってちゃんと 話をしたいから。
その日の夜中の2時。
♪プルルルル♪
突然の電話。 寝ぼけ半分で出る。
『ふぁい…もしもし』
『俺だけど…』 ガバっと起き上がる。
電話の相手はすぐにわかった。
『…ヒロ』
『おぅ。今窓から顔出せるか?』 布団から出て
窓を開けた。
ヒロが立っている。
「ヒロ…どうしたの?こんな時間に…」 ヒロは美嘉の寝癖をそっと触った。
「突然話したくなって…話せるか?」
「………今そっち行くから!!」 そーっと玄関から外に出てヒロのもとへ走
る。
「ヒロぉ‥‥‥」
外は静かで 車の音さえ聞こえない。
「こんな時間にごめん」
「美嘉ね、ヒロにちゃんと説明したくて…」
「説明しなくてもわかる。ノゾムから聞いた し、俺美嘉のこと信じてっから。誤解して ごめんな」
咳込みながら話すヒロの声が静まり返った 空間に響く。
「うん…」
「ずっと考えてた。俺美嘉が他の男とキス したのマジで悲しかった」
「……ごめん」
「別れたら楽になると思った。でも赤ちゃ んの写真見て…俺美嘉のことすげー好きだ し、やっぱり別れたくねぇよ…」
美嘉は涙ぐむヒロの手を握りしめた。
「美嘉も別れたくない……ごめんなさい…」 美嘉の唇を冷たい指でなぞるヒロ。
「…何回された?」
「えっ??」
「ノゾムに何回キスされた?」
「多分三回くらい…」
「じゃあ俺はその 10 倍の 30 回する」 そう言って
チュッと音をたてながら軽いキスを何度も した。
本当に 30 回キスをするとゆっくりと唇を 離し
美嘉の頭を自分の胸へと押し付けた。
「もう俺以外とはすんなよ?」
「…しないっ」
ヒロの胸があったかくて涙が溢れそうなの を必死で堪えていた。
今日は学校だ言うことも忘れ、 外が明るくなるまで話していた。
「もう朝になるね!!」 鳥の鳴き声に負けないよう大声を張り上げ
る。
「美嘉は帰って寝ろ。俺は多分寝れねぇか ら寝ないで学校行くわ」
「わかったぁ。ヒロ来てくれてありがと う!!」
「遅刻すんなよ!」
「ヒロもねっ♪」
「おぅ。じゃあ今日学校でな!」 本当は
もっと一緒にいたい。
だけど…。
ヒロは美嘉の頭をポンと叩き帰って行く。 何度も振り向いて手を振ってくれていて…
姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
一時間弱寝て 寝不足のせいで出来た目の下のクマをファ ンデーションで隠して学校に向かう。
「おはよぉ♪」 教室に入ると同時に挨拶をしてきたのはアヤ
だ。
「おはよ…」
アヤはノゾムとのことをどこまで知っているの かな。
気が重い。
「ノゾムから~全部聞いたぁ!」 アヤの言葉に美嘉の疑問は打ち砕かれた。
「…えっ??」
「キスのことも、ノゾムが美嘉を気になって たことも…」
「ごめん…」
「クリスマスイブの夜見ちゃった。ノゾムが 美嘉にキスしてる所。だから美嘉が悪くな いの知ってる!」
何か納得したような言い方で話し続けるア ヤ。
「昨日ノゾムと話した~今はあたしを好きっ て言ってくれたからもういいんだぁ!」
「……アヤごめんね」
「気にすんなってぇ!それよりヒロ君とは どうなったの?ノゾムとケンカしたんでし ょ?」
アヤは美嘉の顔面を殴るマネをする。
「別れようって言われたぁ……」
「別れちゃったの?!」
「夜中にヒロが会いに来てくれて仲直りし たっ。朝まで話してたの!!今日も会う予定 なんだ♪」
「なーんだ良かった♪」
仲直りできた事はすごい嬉しい。 もうダメなのかと思ったから…。 別れそうになる時って、改めてその人の大
切さに気付くもんだね。
ヒロと別れそうになって絶対に離れたくな いと強く思ったんだ。
しかしその日一日、 ヒロから連絡は来なかった。
朝までずっと一緒にいてくれて寝てなかっ たから体壊しちゃったのかなぁ…。
それから一週間経っても連絡が来ることは なかった。
学校も 休んでいるみたい。
一週間前の朝、
「今日学校でな!」 って言って別れたのに…
体を乗り出すアヤに、 美嘉はさっきとは打って変わって明るい表 情で答えた。