『ちっ…違う。ヒロはいいの…今は誰とも付 き合う気にはなれないんだ』
『わかった。ダチではいてくれるか?』
『当たり前だしっ!!』 これで一つ
問題が解決した。
ノゾムごめんね。 でも嬉しかったよ、
……ありがとう。
━修学旅行当日 天気は快晴。
まるで遠足に行く子供のような期待感溢れ る表情でバスに乗り込む。
グループの点呼をとり、バスが発車した。 これだからリーダーは面倒。
「ふぁ~ 眠いよぉぉぉ~…」
大口を開け あくびをする。
「寝てないの?!」
「寝てにゃい~…」 イズミの問いに目をこすりながら答えた。
「ちゃんと寝なきゃダメ!体壊すよ?も ぅ~」
「俺酔い止め持ってるから飲め」 過保護ぶりを発揮するイズミとシンタロウを見て
ヤマトは呆れた顔で言う。
「お前ら美嘉の親みたいだな!」
「じゃあ夫婦だね♪」 美嘉の何気ない一言に
イズミは強く否定する。
「何言ってんのバカ!」
その一瞬でイズミが見せた変化を美嘉は見逃 さなかった。
イズミの顔が 赤くなったのを…。
さりげなく イズミの横へと移動する。
「シ・ン・タ・ロ・ウ」 周りに聞こえないよう
イズミの耳元で呟いた。
「…………なっ!?」 イズミの顔がみるみるうちに赤く染まる。
自分の予想に 確信を得た。
「シンタロウLOVE??」 イズミは手で顔をあおぎながら小さく頷く。
「告白はしないの??」 唐突で真っ直ぐな質問にイズミは戸惑いの表
情を見せた。
「だって自信ない…」
「自信持って!修学旅行がチャンスだ よ??」
根拠のない自信に満ち溢れる美嘉。 初めて話した日からシンタロウはイズミに気があ るように見えたから…。
「…頑張る。美嘉協力お願い!」 イズミは告白を決心した。
美嘉もまた、 イズミとシンタロウをくっつける決心をしていた。
飛行機に乗り 東京へと向かう。
自由行動。 ずっと計画を立てていたディズニーシーへ向か った。
着いてすぐアトラクションを選んでいる途中、 ヤマトの手を引きわざと人混みの中にはぐれ る。
そしてすぐに イズミにメールを送信。
《今がチャンス!!自信持ってガンバ(>_
<)》
焦るヤマトに説明。
「イズミシンタロウのこと好きだから告白させる ためにわざとはぐれたの!!」
開いた口が塞がらない様子のヤマト。
しめしめ…イズミの気持ちを知って驚いてい るみたいだ。
しかしヤマトが驚く理由は他にもあった。
「シンタロウも修学旅行中イズミに告白するって 言ってたぞ?」
「「…両想い?!」」 二人の声が重なる。
しばらくして待ち合わせ場所に現れた二人 は
手を握り合っていた。
「ヒューヒュー♪」
「うるさい」
からかうヤマトに 冷静に言葉を返すシンタロウ。
「おめでとっ!!」
「…ありがと♪」 祝福の言葉にイズミは幸せそうに笑って答え
た。
サバサバしたイズミ。 でも今は恋する女の子の顔をしている。 恋っていいなぁ。
美嘉もヒロと付き合ってた時
こんなに幸せな顔してたのかな。
大好きな友達が幸せに笑ってくれるのはこ んなに嬉しいことなのに、 ミヤビがヒロと付き合った時はどうして…。
美嘉に隠して付き合ってたミヤビを許せな い?
そうじゃない。 まだ心のどこかで忘れられずにいるからか
な…。
隠れていた気持ちが 見え隠れする。
楽しい時間は早く過ぎ、 四人はホテルに戻った。
部屋割りはグループごと つまりあの二人と同室。
わざとらしく大きな音をたてて部屋のドア を開くと、 楽しそうに笑っていた二人の声が一瞬静ま った。
さっさと制服を脱ぎパジャマに着替え ベッドに潜り込む。
「美嘉…」 布団ごしに聞こえる
アヤの声。
「ノゾムの告白断ったんだってね…」 何も答えず
寝返りをうった。
「あたしノゾムが美嘉に告ったの聞いちゃっ たんだ。まだノゾムに未練あったから美嘉に 嫉妬したの。無視とかしてごめん…」
「ごめんね。」 アヤに続けて謝るミヤビ。 もう遅いよ。
アヤは美嘉の話聞いてくれようともしなかっ た。
ミヤビだって謝るより言うことあるよね? ヒロのこと。
「明日の大阪の自由行動なんだけどミヤビ彼 氏とまわるからあたし一人なんだ。一緒に まわろ…?」
アヤの言葉で 思考は停止。
……ミヤビの彼氏。
それはヒロ。 胸がきゅうっとなる。
ミヤビが 羨ましい。
ミヤビになりたい。 もう一度ヒロに 愛されたいよ。
情けない考え。
……本音。
「明日イズミとヤマトとシンタロウと USJ 行く約束し たから無理…」
声は布団でこもる。 アヤはそれから何も言わなかった。
修学旅行一日目の夜が 更けてゆく。
━修学旅行二日目
新幹線で 大阪向へかう。
昨日の自由行動は ディズニーシー。 今日は USJ。
修学旅行最高!!
USJ には同じ制服を着た生徒がたくさんい る。 所詮考えることなんてみんな同じか…。
もともと遊園地が大好きな美嘉は、 いろんなアトラクションに乗りはしゃいでいた。
少しだけ… アヤのことが気にかかる。
アヤは 一人なのかな…??
でももう関係ないし。 何も考えずに楽しもう。
「ラブラブいいなっ!!」 手を繋いで歩くイズミとシンタロウを見て、
美嘉は羨ましそうに指をくわえた。
「おっ、俺と繋ぐか?」 手を差し出すヤマト。
「ヤマトっち~(>3<)」
「じゃあ四人で繋ごうよぉ♪」 イズミの提案で四人は手を繋ぎ横一例に並
ぶ。 その姿ははっきり言って奇妙だっただろ う。
でもいいの。 楽しいから!!
冬が近く日が落ちるのが早いせいか 外はすでに薄暗い。
「クリスマス近いしツリー点灯されてるじ ゃん。見に行こう♪」
目を輝かせるイズミ。 ツリーがある場所へと向かいもう少しで見
えそう…とその時シンタロウが足を止めた。
「あ~、ツリー見るのは後にしようぜ。違 う場所に行こう」
「え~、行こうよ!」
駄々をこねるイズミ。
「そーだぁ!!行こうよ♪せっかくだしっ。」 美嘉もすかさず
イズミのフォロー。
シンタロウはイズミに耳打ちをした直後に遠くを 指さし
イズミは背伸びをしながらその方向を見て深 く頷いた。
「ツリーは中止!」
「なんで~??」 指さした方向を見ようと背伸びをしたが、
イズミとシンタロウがわざとらしく美嘉の前に立 ちはだかっているせいで見えない。
ぴょんぴょん跳ねて無駄な抵抗をすると ヤマトが後ろから手の平で目隠しをしてきた。
「…なに?!」 ヤマトの指を無理矢理開き
イズミとシンタロウの間に割り込んで覗いた。
そこにいたのは… ヒロとミヤビ。
二人でいる姿を見るのは初めてだった。 二人が付き合ってるのは噂かも…
そう思うことで逃げ道を作ってきた。
今目の前に飛び込んでき光景によって 逃げ道はふさがれる。
「行こ!」 イズミは美嘉の手を引いたが、
体が硬直して動かない。
二人が仲良くツリーを見ている光景を 目に焼き付けておく。
そうすれば 嫌でも忘れられると思ったから。
その時、 ヤマトが美嘉を抱え二人が見えない場所まで 運んだ
「大丈夫…?」 乾いた沈黙の中
イズミが切り出す。
二人の姿を見たのはショックじゃないと言 えば
嘘になる。
だけど… だけど今そんなことより気になっているこ
とがあるんだ。
「イズミ達はヒロとミヤビが付き合ってたこと 知ってたの…??」
イズミはシンタロウと目を合わせて少し気まずそ うに答えた。
「何回か一緒に歩いてるの見たことあるか ら…なんとなく知ってたよ…」
美嘉は
返事をせかすように問う
「美嘉がヒロに未練あるのは…?」
「ヤマトから聞いてたから知ってたよ!」
「…勝手に話してごめんな」 美嘉の頭に
手を乗せるヤマト。
「じゃあ、全部知ってて美嘉と仲良くして くれてたの??」
イズミは地面に 視線をずらす。
「美嘉が元気になってくれれば嬉しいっ て、三人で話してたんだ」
不器用なシンタロウの言葉。
ヒロのこともミヤビのことも全部知ってたの に、 何も聞かないで一緒にいてくれたんだ。
一人になった美嘉に声かけてくれて、 たくさん元気くれた。
美嘉がヒロとミヤビに遭遇しないように してくれてた。
ヒロとミヤビの姿を見たことより、 三人の心遣いと優しさに感動していた。
三人のおかげでね、 美嘉は助けられたよ。
実際さっきみた光景も 前ほど苦しくはならなかった。
今まで、 恋のせいで変わった人を何人も見てきた。
ヒロの元カノも、 アヤも…。
友達なんて…仲間なんてガラスのようにも ろく、すぐに壊れてしまうものだと思って いたよ。
だけど… きっとこの三人は違う。
変わることのない本当の“仲間”だね。
「ありがとぉ~……」 イズミに抱き付き、
すすり泣いた。
「よしよし、ポップコーン買ってあげるから泣 かないの!」
美嘉を抱きしめるイズミ。
「ヤマト様はジュース買ってやる♪」
「じゃあ俺は…思いつかねぇ~」 みんな子供扱い
するんだから。
どうにか泣きやみ歩き始めた時、 アヤが違うクラスの子と興奮気味に走って来 た。
一人ぽっちではないアヤに心のとげが一本抜 ける。
「美嘉~大変!」
「……何??」
流れないようまばたきをせずに上を向く。
内容はだいたい わかってるけど。
「ミヤビとヒロ君付き合ってるんだって!」 まさに予想通り。
「知ってる……」 今そのことには
触れないでほしい。
せっかく楽しい修学旅行なのに 余計なことは考えたくないの。
「いつから知ってたの!?」
アヤの声が裏返る。 それとは反対に美嘉は低く一定の音程で答 えた。
「……無視される前」
「ありえなくない?だってミヤビずっと彼氏 いないって言ってたんだよ!彼氏いるって 聞いたの昨日だし。しかも美嘉がヒロ君好 きなの知っててでしょ?裏切り者じゃん!」
嫌な映像が 頭をよぎった。
楽しそうに歩く ヒロとミヤビの姿を…。
「ミヤビは裏切り者なんかじゃないよ。ヒロ がミヤビを選んだんだから…美嘉はもうヒロ にとって彼女でもなんでもないし…ヒロが 幸せならいいの…」
感情的になり 涙が溢れた。
ヒロと別れてから 泣き虫になったなぁ。
かっこ悪いくらい何回も幸せだった日々を 思い返して
いつか戻れることを夢見てた。
想ってるだけ
……なんて嘘。
本当はもう一度愛されたいと願っていた。 叶わない願い
この世に一つだけある。
繋いだ手を離すのは簡単だけれど、 離した手をもう一度繋ぐのは難しくてとて も勇気がいるんだね。
追い掛けるものがなくなった今、 怖いものは何もない。
前に進む。 イズミは頭を
撫でてくれた。
「行こうぜ!」 ヤマトの一声で
美嘉はアヤから離れた。
アヤの何か言いたげな視線を見ないふりし て、
美嘉はイズミと腕を組み歩き出した。
ホテルの部屋の中は 最悪な雰囲気…。
アヤもミヤビも美嘉も、
言葉を発する人は誰一人としていない。
唯一テレビの音だけが 沈黙を掻き消す役目を果たしている。
アヤは何度か美嘉に話かけようとしていたみ たいだったけど、 あえて目を合わさないよう避けた。
次の日から何かが吹っ切れたかのように怖 いくらいテンションが上がり、
三日目の京都も最終日の広島も無理してい るわけではなく純粋に楽しかった。
疲れて寝てしまった帰りの飛行機は、 気が付けば空港に無事到着。
イズミとヤマトとシンタロウのおかげで、 楽しい修学旅行だったよ!!
自分自身も、 この修学旅行中に何かが変われたような気 がするんだ。
イズミとシンタロウの恋も 成就したし…
ただ一つ心残りなのは、ヒロとの付き合い をミヤビの口から聞きたかったということ。
言ってくれるのずっと待ってたんだよ?? 今さら言っても、
きりがないけどね。
こんな感じで修学旅行は終わった。
もう 雪降る季節だ…。
修学旅行以来開き直ったのだろうか…
ヒロとミヤビは付き合いを堂々と公表した。
ミヤビとは地元が同じなだけあって、 バスが一緒になることもある。
もちろん ヒロも一緒。
だからわざとバスの時間を変えたりした。
ヒロが教室までミヤビを迎えに来ることもあ って…
だからわざと見ないようにして 窓を見つめたりした。
今でもヒロのことは好きだよ。 でももう戻りたいとは思わないの。 だって戻れないことをわかってるから。
まだ時々胸が痛む時もあるよ? いつか忘れられるよね…
大好きだった人が今幸せならそれでいいん だ。
━12 月…。 雪がちらちら降る。
四人はクリスマスの話題で盛り上がってい た。
「クリスマス近いね♪」 シンタロウに
甘く微笑みかけるイズミ。
「お前らはラブラブクリスマスか~」
「うらやましっ♪」
美嘉とヤマトは 嫉妬の目で二人を見る。
「みんなでクリスマスパーティやんねぇ?ワイワイ したほうが楽しいし。俺バイトの先輩呼ぶ から」
「「大賛成♪」」
シンタロウのナイスな提案に 三人は声を揃えて立ち上がった。
このクリスマスパーティで 美嘉の第二の人生が始まる。
クリスマスの前には 期末テスト。
大健闘もむなしく、 結果は散々だ。
数学のテストを受け取って席に着いた時、 席替えをして前の席になったヤマトが振り向 いた。
「何点だった~!?」 ヤマトの行動に
予想する美嘉。
点数を聞いてくるあたりヤマトは良くなかっ たんだな…と。
「ヤマトが先教えてくれたら教えまぁ~す♪」 ヤマトは美嘉の予想とは逆に自信満々の笑み
を浮かべた。
「100-32 点だぜ!」
100-32 点…68 点。
68 点!?
「美嘉は?」 辺りを見回し
しぶしぶ答える。
「1+2+3+10 点…」 ヤマトはプッと吹き出しチョップで頭を叩い
た。
「ばーか♪でも俺歴史それより低かった し!」
「30 点以下は今日から補習だからな~」 タイミングがいい先生の言葉。
案の定美嘉は補習だ。
もうすぐクリスマスなのに。 冬休みなのに…。
今日最後の 授業が終わる。
「補習頑張れよ~。俺はデートだけどな」 嫌みなシンタロウ。
「ほっとけぇ!!」
「頑張れ~♪」 優しいイズミ。
「は~い、頑張るっ。じゃあまた明日ねぇ♪」
別れを告げ 補習がある教室へと向かった。
出来るだけ後ろの席に座るため教室の後ろ のドアを開ける。
ガララララ ガラーンとした教室。
一番窓側の真ん中あたりの席に見えた眩し いくらいの金髪。
あの後ろ姿は、 ヒロだ。
一年間一緒に いたんだもん。 間違えるはずがない。
ヒロにバレないよう 廊下側の後ろの席に座った。
まさか ヒロも補習だとは…。
先生が来た。
「補習始めるぞ~!1、2、3、4、5…あれ、 一人足りないな。高田アヤ。高田休みか~?」
アヤ… アヤも補習なんだ。
今日はサボりかな。
「高田アヤは今日休みか?学校に来てた か?」
先生が美嘉のほうを見て言うので生徒がこ っちを注目する。
先生のバカッ! ヒロにバレないようにしてたのに。 バレたかも…。
「学校には来てました~でもわかりませ~ ん」
どうせバレたのなら… と開き直る。
「そうか~」 頷く先生に
質問を投げ掛けた。
「先生~補習っていつまで??」 先生は手に持つ紙を
じっと見つめる。
「冬休み前までだからな~、24 日までだ!」
「え~そんなにあるの?!嫌だぁぁ~」
「頑張れ!頑張れば早く帰らせてやるから な!」
補習を受けていた時…
~ゴツッ
何かが飛んできて頭に当たり、 その何かが反動で床に落ちた。
白く丸まった…紙。 何これ。
顔を上げて紙が飛んできた方向に目をやる と、
感じたのはヒロの視線。
ヒロはジェスチャーをしている。 そのジェスチャーの意味はおそらく
“その紙を拾え”…だ。
紙を拾い ゆっくりと広げる。
紙に書かれた 小さな文字。
【美嘉、なんか変わったな!】
…変わった?? 何が??
それが良い意味か悪い意味かはわからな い。
でもヒロが別れてから初めてくれたメッセ
ージ。
単純かもしれないけど、手紙で“美嘉”と 呼んでくれたのが嬉しかった。
ヒロに向かってあっかんべーをすると、 ヒロはあの頃と変わらないあどけない笑顔 で笑っていた。
補習が終わり教室に忘れ物を取り玄関に行 った時…
玄関の前で話しをしているヒロとミヤビの 姿。
反射的に 靴箱の陰に隠れる。
なんで 隠れてるんだろ…
身動きが出来ないまま、二人の会話がリア ルに耳に入ってくる。
「弘樹補習お疲れ!」 甘えたミヤビの声。
「おー待ってたのか?寒かったろ」
「寒かった!嘘~」
「これ~してやる!」
「やだぁやめてよ!キャハハハ!」 姿は見えないけれど、
情景はわかる。
その場から 動けなかった。
こんな時に… どうしてだろう。
ヒロに出会ったこと レイプされたこと 元カノに嫌がらせされたこと 手首を切ったこと。
妊娠したこと 流産して
抱き合って泣いたこと 川原に行ったこと。
最後のデート 別れの言葉 去ってく後ろ姿。
ヒロが名前を呼ぶ声 ヒロの大きい手 ヒロのやわらかい髪 ヒロの温かい唇。
楽しかったこと 悲しかったこと。
全て…。 全てを
思い出している。
ヒロのこと 恨んだりなんかしない。
今でも好きだよ。 大好きだよ。
でももうヒロの目に 美嘉は映らないんだ。
流した涙は 無駄じゃなかったよね?
ヒロはどんどん前に進んでるのに 美嘉は立ち止まったまま進めずにいた。
別れは確かに辛いこと。でも、他の人と出 会えるチャンスでもあるんだ。
ヒロのお姉ちゃんが言っていたようにもし 運命があるなら またいつかどこかで会えるよ。
大好きだった人の 幸せを願う。
そう決めた…。 唇をぎゅっと噛み締めたのは、
決心をしたから。
ヒロとミヤビにゆっくり近づき、 精一杯の笑顔で言った。
「ヒロ、ミヤビ
………幸せにねっ!!」
この言葉が本音なのか。今はわからない。 返事を聞かず
真っ直ぐ歩き出した。
もう、 絶対に後ろを振り向きはしない。
立ち止まらない。 迷わない。 夢見ない。
うまく 笑えてたかな?
声 震えてなかったよね?
美嘉 頑張ったよね?
強く握り締めていたせいか汗でしめった白 い紙を…
ヒロからのメッセージを… 強い決意を胸に 雪の中へ投げつけた。
「そろそろ恋 したいなぁ」
込み上げる想いに 空を見上げる。
雲が流れー…
ヒロと別れた日も、 こんなふうに流れていたっけ。
でもあの頃とは違う。 確実に進み始めてる。
この空は今もヒロと繋がっているけど… あの日遠くなってゆく背中を追い掛けなか
った自分を
笑顔で大好きな人の幸せを願った自分を いつか誇りに
思えるように…。
大好きな人 幸せになれますように。
たくさんの日々を ありがとう。
この日を最後に 新しい恋を見つける決意をした。