冬休みに向けて毎日真面目に補習を受け る。
アヤともヒロとも一言も話すことがないま ま、
補習は終わった。
━12 月 24 日
「じゃあ今日のクリスマスパーティーは 6 時にヤマトの家で Ok?」
イズミが体を乗り出す。
「おぅ、俺んちな!」
「楽しみっ!!」
「美嘉は最後の補習頑張れよ」 補習のことなどすっかり忘れていた美嘉に
とってシンタロウからの応援の言葉はとてつも なく気持ちを重くさせた。
辛かった補習も やっと最終日。
今日はクリスマスイブ。そして明日からの 冬休みに期待を込めながら補習を受ける。
「補習は今日で終わりだ。よく頑張ったな。 いい冬休みを過ごせよ!」
先生の言葉で 急激に胸が弾む。
クリスマスパーティーがあるため、
家に帰って用意をしようと軽い足取りで教 室から出た時…
「美嘉!」 遠くから聞こえる
甲高い声。
…アヤだ。 アヤとは修学旅行以来話してないし、
補習の席も離れて座っていた。
アヤは遠くからこっちへ向かって走って来 る。
「美嘉話せる?」 携帯電話を開き時間を気にしながら答え
た。
「…ちょっとだけなら」
「あたしミヤビがヒロ君と付き合ってるなん て知らなくて…本当にごめん。前みたいに戻 りたい…」
頭を下げるアヤの姿を見ながら考えていた。
別に怒ってるわけじゃないんだ。 自分の好きな人が他の女に告白したらそり
ゃあ腹が立つし憎くなったりもする。
ノゾムにすぐ返事しなかった美嘉ももちもる 悪いから…
もう、いいよね。
「ん…、もう謝らなくても大丈夫だよっ。美 嘉こそごめんね」
重い沈黙の中 発した言葉にアヤの顔がほころぶ。
「良かった…本当ごめんね。美嘉今日予定あ る?遊ばない?」
「ごめん、今日はパーティーする予定だか ら…」
縮まりかけた二人の距離が再びひらく。
「あたしも参加したら…ダメかなぁ?」 アヤからの誘い。
…どうしよう。 アヤに助けてもらったこともたくさんある し…。
でも、 誰だって一人のクリスマスイブは嫌だよ ね。
「イズミに聞いてみるっ」 あとはイズミの
気持ち次第だ。
握っていた携帯電話でイズミに電話をかけ る。
♪プルルルル♪
『もしも~し!どうしたの~!?』 テンションが高いイズミには聞きにくい質
問。
『ちょっと……』
『アヤがクリスマスパーティー参加したいみ たいなんだ……』
『え?!』 聞き返すイズミ。
想像もしていなかったからだろう。
アヤから少し離れ、 アヤの姿をちらちらと気にしながら小声で話 した。
『やっぱ…無理??』 イズミはしばらく沈黙を続けたが、
しばらくして唸り声をあげながら答えた。
『私はアヤ苦手だけど…美嘉は大丈夫なの?』
『ん~…ごめんねって言ってくれたしもう あんまり気にしてないからいいかな!!』
『そっか。それなら私はいいよ!シンタロウにも 伝えておくね!じゃあまた後で♪』
電話を切りイズミの返事に胸を撫でおろしな がらアヤのほうへと戻る。
「一緒に行こう!!」 アヤの不安げな顔はみるみるうちに
涙目へと変化した。
「ありがと。美嘉と仲直りできて良かった ぁ…」
「泣くなぁバカっ!6時からだから早く帰 って用意しよっ!!」
『何~?!』
二人が校門を出た時、 目の前ではヒロとミヤビが手を繋いで歩いて いる。
「…大丈夫?」 心配するアヤに美嘉は真っ直ぐ二人を見つめ
ながら答えた。
「平気。新しい恋するって決めたから ぁ~!!」
その表情に 迷いは見えなかった。
「美嘉!新しい恋に向かってレッツゴー♪」
「うん、出会いに期待だね~!!」
美嘉とアヤはわざとヒロとミヤビに聞こえるよ う大声で叫び、 顔を見合わせながら大笑いした。
「「振ったこと、後悔させてやろうよ!!」」 声を揃える二人。
それは固く揺らぐことのない決意…。
今の時間は四時。 パーティーまで あと二時間。
家に帰るのが面倒で、 学校から近いアヤの家へと向かう。
制服からあらかじめ持参していた黒いワン ピースに着替えた。
「ワンピ超かわいい~♪あたしもオシャレ しちゃおっかなぁ?」
「しちゃえ~!!」
ヒロとミヤビを見た時からなぜか気持ちがス ッキリしている。
苦しくはない。
全く気にしてないと言えば嘘になるけど、 今はこれで良かったと思ってるんだ。
アヤの長い髪を セットしてあげた。
「アヤ大人っぽ~い♪」
「マジで?ありがと♪美嘉メイクしてあげ る!」
パーティーにむけて盛り上がる二人。 ふと思い出したのは
イズミの姿。
イズミの私服と言えば決まってTシャツにジ
ーンズだ。
イズミのことだからパーティーといっても きっといつも通りなんだろうな。
一つの作戦が 頭に浮かんだ。
その作戦を実行させようとアヤと相談の末、 イズミにメールを送信。
《今すぐ学校近くのパチンコ屋の前に来 て!!》
イズミからの返事を待たずにパチンコ屋の前 へと向かう。
「イズミめちゃくちゃかわいいよ♪シンタロウ喜ぶ よっ!!」
「どうしたの!?」
しばらくして走って待ち合わせ場所に来た イズミはやっぱりTシャツにジーンズ姿。
美嘉は不敵な笑みを浮かべ 強引にイズミをアヤの家へと連れて行った。
「アヤ、作戦開始!!」
「ラジャー♪」
立ち上がり 敬礼をするアヤ。
アヤは呆気にとられているイズミの服を脱がし 勝負服に着替させメイクをする。
美嘉はイズミの短い髪をコテとワックスを使 ってセットする。
“イズミ変身大作戦”だ。 今日はクリスマスイブ。イズミにもオシャレ
をしてほしい。 同じ女の子だもん。
イズミは整った顔立ちにメイクがとても映 え、 すらっと長く伸びた足に黒いロングスカー トがとても似合っていた。
「イズミちゃんすごい変わった!」
べた褒めの二人にイズミは心配そうな顔をす る。
「私が化粧したりスカートはいたらおかし くないかな…?」
「な~に言ってんの!!自信もって♪」
美嘉の言葉を聞いたイズミは目に涙を浮かべ ながら照れくさそうに微笑んだ
「そっかな…ありがとう。本当にありがと う!」
用意に没頭してしまい時計を見ればもう5 時半。
「もうそろそろ行かないとやばくな い!? 」
時計を見つめたまま焦っているせいか 早口になる美嘉。
三人は ヤマトの家へと向かった。
ピンポーン 部屋のドアが開く。
「お、オシャレしてんな!俺の部屋二階の 一番奥だから先入ってて」
アヤの顔を見た瞬間ヤマトの動きが止まった。 アヤが来ることは知らなかったのだろう…。
「後で詳しく話す!!」
ヤマトに耳打ちし、 階段を駆け上った。
ベッドとテレビがあるだけでガラーンとし た
広いヤマトの部屋。
三人は緊張した面持ちでその場に座る。
「あれ~シンタロウは~?」 いじけるイズミにヤマトは
居間から叫んだ。
「少し遅れるって!」
そわそわしながら 待つ三人。 待つ側って
落ち着かないものだ。
玄関のドアが開く音が 聞こえる。
「来た!?」 興奮するアヤ。
階段を上る足音が だんだん近づいて来た。
アヤがカバンから手鏡を出し髪を整える。 美嘉とイズミも一緒になって手鏡を覗き込ん だ。
「お待たせ~」
突然開くドア。 先頭で部屋に入って来たのはシンタロウだ。
シンタロウは持っていた荷物から手を離し 荷物は音をたてて床に落ちた。
「…イズミ?」 イズミを
見て立ち尽くしている。
「変かな…?」
不安げな表情を見せるイズミにシンタロウが飛び 付いた。
「すげーかわいい!」 いつもはクールなシンタロウの意外な姿。
イズミに向かって舌を出すとイズミは照れなが ら小声で呟いた。
「ありがと…」
“イズミイメチェン作戦”大成功♪
「ラブラブだな~。シンタロウせっかく買って来 たケーキ落とすなよな~」
そう言いながら部屋に入って来たのは、 お兄系のケンちゃん。
寝癖っぽくセットされた黒髪に ダボダボのジーンズ。
茶色いジャケットのえりを立て白いマフラ
ーを巻いている。
ケンちゃんの後に軽く頭を下げて部屋に入っ て来たのは、
ホスト系の優。
確実に 180 ㎝はある長身に黒いスーツ。 少しメッシュの入ったツイストパーマに
ほんのり茶色っぽい肌。
車の鍵を指でくるくると回していたのが 印象的だった。
「ね~最後に入って来た背高い人かなりい い~♪イケメン!」
耳打ちするアヤ。 最後に入って来たホスト系の優を
じっと見つめた。
確かにかっこいい。
…だけどなんでだろう、胸が痛い。
ヤマトが大量の缶酎ハイを一人一缶配る。 美嘉・イズミ・アヤ・ヤマト・シンタロウ・ケンちゃん・優の 7
人が集まり クリスマスパーティーは開始された。
「カンパーイ♪」 じゃんけんで負けたヤマトが代表して
乾杯の音頭をとる。
「優さんとケンさんは 19 歳だから俺らの二 個上だから」
シンタロウが 二人を紹介する。
二個上… どうりで大人っぽい。
だから車の鍵を持っていたんだ。
「とりあえずみんな自己紹介しねぇ?」
ヤマトの余計な提案のせいで一人ずつ自己紹 介をするハメに…。
「じゃああたしから♪」 やる気満々のアヤが
立ち上がった。
「アヤです。ピチピチの 17 で~す♪仲良くし て下さいぁ♪ちなみに彼氏募集中~!」
のっけからテンションの高いアヤ。
「じゃあ次は俺。」 次に立ち上がったのは、シンタロウだ。
「え~シンタロウです。知っての通りイズミは俺の 彼女なんで手出したらだめで~す」
「のろけるな!」
シンタロウの自己紹介に 野次が起きる。
続けてシンタロウの隣に座っていたイズミが 立ち上がった。
「あ、イズミで~す。シンタロウの彼女です♪今日 は楽しみましょう~!」
いかにもイズミらしい あっさりした自己紹介。
次に煙草に火を着けたばかりのケンちゃんが 煙草を一旦灰皿の上に置き
立ち上がった。
「ケンです。二個上の大学生~どうぞよろし く~」
ケンちゃんが座ったすぐ後に、 優が床に手をつきながら立ち上がる。
イケメン大好きのアヤの目は輝きを増す。
「名前は優。スーツ着とるけど今日大学の 授業で仕方なく着とるだけやから!ホスト と勘違いしないでな!」
…初めて聞いた関西弁。なぜか目が離せな い。
「次美嘉やりなよ♪」 アヤに急かされ
しぶしぶ立ち上がった。
自己紹介とか 苦手なんだよなぁ。
注目されて 顔が熱くなる。
「美嘉です。よろしくなのです…」 緊張のあまり
言葉がつまる。
ヤマトが勢いよく 立ち上がった。
「女はみんなわかってると思うけどヤマト で~す!じゃ飲み始めようぜ!」
美嘉は持っていた酎ハイをごくんと一口だ け飲み
みんなはそれぞれ騒ぎ始めた。
「優さんってぇ~関西出身なんですか ぁ?」
少し酔ったのか頬をほんのりピンク色に染 めたアヤが優の肩に寄り掛かる。
「俺関西出身やで。家におったら邪魔やか らって追い出されたんだわ!」
楽しそうな二人の会話を聞きながら 壁にもたれ掛かった。
頭が痛い…。 お酒弱いからなぁ。
ボーッとしていると、 隣に誰かが座った。
顔を真っ赤にして ベロベロに酔っ払っているヤマトだ。
「元気かぁぁぁ!?」
「ん?元気元気♪ヤマト酔い過ぎだし~」
「俺酔ってねぇって~なぁ~酔ってねぇか ら~」
「俺もい~れて~」 話に割り込んで来たのはヤマトに負けないく
ら酔っているケンちゃん。
「どーぞどーぞ♪」 座る場所を
ちょっと詰める。
「ケンさん元気っすか~?!シンタロウと同じバイ トなんすよね~?」
ケンちゃんに絡むヤマト。
「お~同じバイト~。ってか~二人付き合 ってんのぉ?」
「美嘉とヤマトが?まっさかぁ!!」
「俺達マブダチだもんなぁ~美嘉ちん~」 ケンちゃんの問いに
強く否定する二人。
「そーなんだ~!」 ベロベロに酔った二人から発するお酒の匂
いに耐えられなくなり 部屋を出た。
酔いが少し冷めた頃部屋へ戻ると、 みんなは潰れていた。
イズミとシンタロウは手を繋いだまま壁に寄り掛 かったまま寝ていて、 ヤマトとケンちゃんは床に倒れている。
机の上には数え切れないくらい大量の 酎ハイの空き缶。
潰れても仕方ない。
アヤは相変わらず優に質問攻めをしている様 子。
部屋のドアに寄り掛かりズキズキと痛む頭 をおさえた。
「美嘉ぁ~ちょっとごめ~ん♪」 アヤがトイレに行くため部屋から出て行った
その時…
「こんちわ~!」 一人の美嘉に声をかけたのは優だ。
「……こんにちわ!!」
突然声を掛けられたので声が裏返ってしま う。
「美嘉ちゃんって静かな子なん?」 痛む頭をおさえながら首をゆっくり横に振
った。
「そうなんや。あまり喋らへんから静かな 子なんかと思ったわぁ!俺のこと年上と思 わんで、気軽に話かけてな!」
ニコッと笑った優は 子供みたいで…
また胸が痛んだ。 なんでだろ…。
アヤが部屋に戻り、 優に質問攻めを続ける。
優と初めて会話して 感じた印象。
モテそうだし、 ちょっと軽そう…。
そんなことを考えながら眠りについた。 具合いが悪くて
目が覚めた。
6 人全員が寝てしまっている。
カバンから携帯を取り出し時間を見ると もう夜の 11 時半…。
行かなきゃ。 みんなを起こさないよう静かに起き上が
り、 コートを羽織った。
「あれ…帰んの?」 騒がしい音に目が覚めてしまったのか
寝ぼけた様子で口を開いたのは優だ。
「用事あるんで帰ります!!」 頭をぺこりと下げて立ち上がると
優は車の鍵をポケットから取り出した。
「こんな夜中に女の子が一人だと危ないや ん。車出すで?」
「ありがとう。でも大丈夫です!また!!」 優の気遣いを避けるように家を飛び出て、
歩いて学校のほうへと向かった。
途中コンビニに寄り 小さい花束とチョコレートを買う。
12 月 25 日 クリスマス
去年の今頃流産して 大切な大切な
一つの命を失った。
一年前
…まだヒロと付き合っていた頃
【毎年クリスマスの日にここに お参りに来ようね】
学校の近くにある公園の花壇に手を合わせ ながらそんな約束したっけ…。
ヒロは 覚えていないだろう。 いや、
例え覚えくれているとしても来ることはな いだろう。
今日は約束をした クリスマスの日。
【美嘉、また来年ここに来ような。】
【来年~?毎年だよ!!来年も再来年もずっ とずーっと
二人で来るの!!】
一年前に二人で交わした会話が 雪と共にはかなく溶けてゆく。
買ったばかりの花束とチョコレートを握り しめ
一年ぶりの公園へと向かった。
公園の前に着いた時には AM0:30。
花壇へと足を運ぶ。 花壇を見た瞬間、
花束とチョコレートを落とした。
そこに置いてあったのは 雪のように真っ白な花。
赤いブーツに入った お菓子。
小さい ピンク色の手袋…。
ヒロ来てくれたんだ。 忘れてはいなかった。
覚えていてくれた。
去年のクリスマス、 指輪と一緒に黄色い手袋をくれたよね。
男の子か女の子かわからないから黄色にし たって言ってたね。
赤ちゃんにはめさせてあげたいねって。
女の子だから ピンク色の手袋なの…?
どうして。 どうして…? その場に
座り込んだ。
わからない ヒロの気持ちがわからないよ。
どんな気持ちで ここに来たの…?
花壇に置いてあったピンク色の手袋を きつく握りしめた。
花壇に花束とチョコレートを置き、 腰を降ろして手を合わせた。
赤ちゃん、 産んであげられなくて 本当にごめんね。
天国には 行けましたか…??
ヒロは別れても赤ちゃんのことを 忘れてはいなかった。
すごく嬉しかった。
赤ちゃんへの想いを伝え終えて立ち上がっ た時、
大粒の雪がちらちらと降り始めて空を見上 げた。
『お参りに来てくれてありがとう、 天国に行けたよ。』
赤ちゃんがそう伝えようとしてくれてる… そんな気がしたんだ。
冷たい頬に温かい涙がぽろぽろとこぼれ落 ちた。
公園を出て家に帰ろうと歩き始める。 プップー
後ろから鳴らされた 車のクラクション。
横に止まった白い車。 その車の運転席のスモークガラスが開い
た。
「やっと見つけた!」 窓から顔を覗かせたのは優だ。
「……なんでここにいるんですか?!」
「女の子一人だから心配やん」
「ずっと探してくれてたんですか…??」
「お~。家まで送ったるから横乗りぃ!」
“男はそう簡単に 信用しない。”
それが今の美嘉の モットー。
「…車には乗れません」
勇気を出して頭を下げながら断ると車のス モークガラスが閉まった。
…怒らせちゃったかもしれない。 そんな不安をよそに優は車のエンジンを切
り、 鍵を抜いて車から降りて来た。
「じゃあ俺も歩く!それなら嫌じゃないや ろ?」
一緒に歩き始める優。 予想外の行動。 予想外の展開。
「えっ……家遠いですよ??」
「大丈夫やって。最近運動不足やったしち ょうどええわ♪」
今日初めて会ったばっかりなのに。 なんでこんなに優しくしてくれるんだろ う…。
「…優さんって~ホストなんですか??」 沈黙に耐えられず
質問を投げ掛ける。
「スーツ着とるのは大学の授業のためや で!美嘉ちゃんはシンタロウと同じ学校なん?」
顔を覗き込んむ優。 泣いたばかりで腫れた目を見られないため 視線をそらした。
「…泣いたんか?」 バレた…
でも泣いたことは知られたくない。
「……泣いてないです」 優は何も言わずにポケットからハンカチを
出し、そこに雪を包んで腫れた目にあてて くれた。
「俺おせっかい焼きやからな。ウザいや ろ?」
そう言って 優は微笑む。
「そんな……嬉しいです!!」
優の笑顔につられて 一緒に微笑む。
優はそんな美嘉の顔を見て両手を上に伸ば した。
「あ~やっと笑ってくれたな。良かった良 かった~。美嘉ちゃんって俺の妹に似とる わ!」
「妹?妹って何歳??」
「5 歳やでぇ!」
「……5 歳って!!」
「俺の親、俺が 12 歳の時離婚しとる。せや から 5 歳までの妹しか知らへん!」
「そうなんだぁ……」
優の過去。 今日初めてあったのに、なぜか初めてって 感じがしない。
たわいない話をしているうちに 家の前に着いた。
「ここ家だから!!えっと~ありがとう!! じゃあ…」
「ちょっと待った!」 玄関のドアに手をかけた美嘉は
その声に振り返る。
「連絡先とか聞いたらあかん?」
「……いいですよ!!」 お互いの連絡先を交換。
「また遊ぼうな!」 美嘉の頭を軽くポンと叩き、
子供みたいに笑う優。
その時 気付いてしまった。
優って
……ヒロに似てる。
だから最初に優の顔を見た時 胸が痛かったんだ。
全体の雰囲気も話し方もしぐさも、 どことなく似ている。
冷えた体を温めるため 布団にくるまっていた時に届いた一通のメ
ール。
♪ピロリンピロリン♪
受信相手はさっき 連絡先を交換したばかりの優だ。
《優やで~わかるか?》
冷えて動きが鈍い指で 返信する。
《わかりますぅ。今日はいろいろありがと うございましたですっ!!》
返信してすぐ…
♪プルルル♪
電話の相手は これまた優だ。
『もしも~し』
『メールとか電話とか忙しくてごめんな!』 運転中なのか
声の向こうに側に音楽が聞こえる。
『大丈夫ですよぉ!!』
『それなら安心や。また遊ぼうな!暇な時 連絡したってや。ほなまた~』
電話を切り 一人で呟いた。
「………変な人!!」
男はすぐに信用しない。これが美嘉のモッ トー。…だったはずなのに。
一人でクリスマスを過ごしていたら、 ヒロを想ってずっと泣いていたかもしれな い。
去年のクリスマスのこと…思い出していた かもしれない。
でもみんなと一緒にいたおかげで 帰り道を一緒に歩いてくれて 何も考えずにいられた。
みんなに… そして優に感謝。
クリスマスが終わり 新年を迎えた。
━1 月 1 日元旦
《今日昼 3 時に駅前の神社に集合♪遅刻厳 禁!》
ヤマトから届いたメールのせいで新年早々大 忙し。
メールに気付いたのは 待ち合わせ時間 1 時間前の 2 時…。
走って神社に向かったが結局到着したのは
3 時 15 分だった。
神社の前にはクリスマスパーティーをした メンバーが集っている。
「遅れたぁ!!マジでごめんっ……」
「罰ゲームだな~」 意地悪く言うシンタロウの頭をイズミが叩く。
「シンタロウだってさっき来たじゃん!」
「遅刻やぁ。でも女の子は用意大変やし仕 方ないよな!妹♪」
優が発した【妹】の言葉にアヤが反応した。
「えっ、妹って何~?何~?」
「美嘉ちゃんは俺の妹やねん。な~?」 優がら首を曲げて美嘉に同意を求めてい
る。
「ねっ!!」 優のマネをして
首を曲げた。 アヤに対するちょっとした意地悪…。
「とりあえず~お参りに行こうぜ!」 その場をまとめるヤマト。 大勢の人が並ぶ最後列に並び順番を待つ。 しばらくして自分の番が来て
おさい銭を投げ入れガラガラと鳴らした
後、 手を合わせた。
“ん~とん~と みんなが幸せになれますように!!”
お参りが終わったと同時にシンタロウが言う。
「ちょっと俺ら別行動していい?」
「おー好きにしな~」 適当に答えるケンちゃん。
シンタロウとイズミは手を繋いで、どこかに行って しまった。
「あたしちょっと~優さん借りま~す♪」 積極的なアヤは
お気に入りの優を強引に連れて行く。
残されたのは 美嘉・ヤマト・ケンちゃん。
気まずい三人。
「俺用事あっから帰るな~!じゃあまた!」 ヤマトは気をきかせたのか本当に用事があっ
たのかはわからないが、 帰ってしまった。
ケンちゃんと 二人きり。
会話が見つからない。 このまま沈黙だったらどうしよぉ…。
「じゃあおみくじでも引くか~?」 ケンちゃんが普通に話かけてくれたおかげで
小さい不安はあっさり消え去った。
「…うん!!」
「滑るなよ~!」 ケンちゃんは意外と
話しやすいことが判明。
おみくじの場所へ行くとすでに優とアヤがい る。
「中吉~がっかり!」 とても楽しそうな
アヤのもとへと近づく。
「優は~?」 優におみくじの結果を
問うケンちゃん。
「俺大吉やった♪」 優は自慢げにおみくじを開いて見せびらか
した。
「俺らも引こうぜ~」
ケンちゃんに誘われるがまま
100 円を入れておみくじを引いた。
「俺も大吉だった~」 ケンちゃんは嬉しそうに
おみくじを握りしめる。
美嘉は占いとかをすごく信じるタイプ。 悪いのが出ると落ち込んでしまう。
大吉でありますように。おそるおそる おみくじを開いた。
凶。
………凶って!!
「美嘉はぁ~?」 アヤの問いに
深いため息をつきながら答えた。
「凶だって~…」
「ありゃ。でもおみくじなんてただの気休 めだよ!なぁ、優?」
ケンちゃんは優に 同意を求める。
優はケンちゃんの同意に軽く頷き 美嘉の両目を手の平で隠した。
「美嘉ちゃん、目閉じたらええこと起こる かもな!」
意味はわからないが とりあえず言われるがままに目を閉じる。
「開けてええよ!」 ゆっくり目を開けたが、さっきと変わった
様子はない。
「……ん??」 おみくじを指さす優。
引いたおみくじは凶だったはずなのに、 大吉にかわっていた。
「美嘉ちゃん今年ええことあるわ!」
優は自分が引いた大吉と美嘉の引いた凶を 目を閉じている間に交換してくれたのだ。
「これ優さん引いた大吉じゃん!!悪い よ~…」
大吉のおみくじを返そうとしたが、 優は受け取ろうとしなかった。
「美嘉ちゃんが自分で大吉引いてたやん。 俺が凶引いたんやで!」
優にお礼を言って木におみくじを縛ろうと した時アヤが耳元で呟く。
「そのおみくじちょうだ~い!」
…確信。 アヤは優に
惚れたな。
アヤは恋愛が絡むと 変わる子だから
何も起きないと いいけど…。
心の奥に 小さい不安が生まれた。
「これからどうする?」 首の骨を鳴らす
ケンちゃん。
「ドライブ行きたい♪」 飛びはねるアヤ。
もう帰りたい…。
アヤは優さんのこと好きみたいだし面倒くさ い。
「美嘉調子悪いから帰るぅ…ごめんね。」 嘘をついてしまった。
「わかったよ♪また遊ぼうね!」
アヤは心なしか嬉しそう。 気のせいだといいけど…
車を見送り 家まで歩き始めた。
20 分くらい歩いて 家の前に着いた時…
♪プルルル♪ 着信:優 突然の
優からの電話。
『はぁい』
『電話してごめんな。調子大丈夫か?』
『大丈夫!!』 調子悪いなんて
もともと嘘だもん。
『それならええけど!今どこにおるん?』
『ちょうど家の前にいます!!』
『今からちょっと会えへんかな?調子悪く なかったらでええんやけど!』
『……はぁ』
『じゃ 10 分でそっち行くから待っててな ぁ!』
アヤとは 解散したのかな??
沸き上がる疑問。 不安。
10 分後、 白い車が家の前に止まり車を降りて焦った 表情の優が美嘉のもとへと駆け寄って来 た。
「ずっと外におったん?待たせてごめん な。あ~鼻赤くなっとるやん…」
優は美嘉の鼻を 指先で突く。
「平気だしっ!!」
「はよ車乗って体温めへんと。あ…まだ乗る のはきついか?」
…迷い。 決断は早かった。
この人なら信用できる。
「…乗る!!」 優は助手席のドアを開け美嘉が座ったのを
確認するとドアを閉めた。
さりげない行動が 年上ということを感じさせる。
優が運転席に座った時、疑問を問い掛けた。
「……アヤは??」
「アヤちゃんはケンにまかせたわぁ!」 アヤの気持ちを知ってか知らずか
しれっと答える優。
「大丈夫なんですか??」
「大丈夫やって。あの二人意気投合してた みたいやし!」
アヤまた怒ったり しないかなぁ。
不安が募る。 大丈夫だとは 言い切れない。
「どこか行きたい場所あるか?お姫様!」 優の明るい声は
不安を少しだけ取り除いてくれた。
まだアヤが優を好きかどうかもハッキリして ないし…大丈夫だよ。
都合のいい勝手な解釈で罪悪感を消し去 る。
「夜景見に行きたいっ!!夜景~!!」
「よっしゃ!じゃあ夜景見に行くで。穴場 スポット連れて行ったるわ」
車はエンジンの音を大きく鳴らして動き出 す。
ラジオも音楽もかかっていない車内は不思 議と二人の会話で
盛り上がっていた。
車は山道を登り続ける。 外はもう真っ暗だ。
「到着~!」 優はそう叫ぶと運転席から降りて助手席の
ドアを開けてくれた。
刺さるような冷たい風にあたりながら 車を降りる。
「わぁぁぁ~!!」 目に飛び込んで来た景色は言葉では言い表
せないほど綺麗で…
赤・白・黄色や紫のライトがキラキラ光って いる。
夜なのに 目が痛いくらい眩しい。
「すごいやろ?」
「超キレイ!!」 二人はちょうど夜景が見える場所にあった
ベンチに腰をかけた。
「白い光がダイヤモンドでぇ~赤い光がル ビーでぇ~…」
子供みたいに はしゃぐ美嘉。
そんな美嘉の頭を優はそっと撫でた。
「ほんまに子供みたいやな~!」 優は美嘉と重ねて別れてしまった妹を
見ているのだろう。
今の優の笑顔とか頭を撫でるタイミングと か…
悲しいくらい ヒロに似ていた。
笑顔だった表情は次第に曇ってゆく。 優はまっすぐに前を向きながら口を開い
た。
「こう見ると世界って広いな。この光の中 でたくさんの人が生活しとるなんて不思議 やなぁ!」
夜景が映ってキラキラと輝いている優の 瞳。
その真っ直ぐな瞳に 見とれる。
「みんなそれぞれ悩み抱えてるんやろな ぁ。ここなら誰も話聞いてへんで?悩み話 してみる気にならへん?」
優はクリスマスの日美嘉が泣いていたこと を知ってて
心配してるのかな??
だから今日も会おうって言ってくれた の??
もしそうだとしたら
…嬉しい。 だけど勘違いかもしれない。
「大丈夫ぅ…」
本当は大丈夫じゃないくせに!! 素直になれない。
「大丈夫やったら泣いたりせぇへん。話し たらスッキリするで?ほら、俺おせっかい やから」
黙ってうつむく美嘉に向かって優は話し続 けた。
「この前も言うたけど、美嘉ちゃん俺の妹 に似とってなんかほっとけへんねん…」
優のやさしさは美嘉が必死で隠している弱 さをどんどん引き出してゆく。
「元彼に… 未練あるかも……」
気がつくと心の底に張り付いていた言葉が 自然と剥がれてしまっていた。
「かも…ってことはわからへんの?」 優は変わらず
落ち着いた声で問う。
「忘れようと思ってるんだけどたまに思い 出す時あるんだぁ……」
「忘れよう忘れよう思ってる時点で、その 人のことを考えてることと同じやと思う で!」
確かにそうだね。
“忘れなきゃ” そう思ってる時点で、
その人のこと考えてるってことだね。
「ヨリ戻したいとかは思っとるん?」
「ヨリ戻したいとは思わない……戻しても きっと前みたいに楽しく過ごせない気がす るから…」
優は立ち上がり 大きく息を吸った。
「でも無理に忘れなくてええと思う。だっ てな、その人と出会えたから今の自分がい るんやで。その人と出会ってなかったら今 大好きな友達とも出会ってないかもしれへ んし!」
もしヒロに出会っていなかったら 別れがこんなに辛いだなんてきっと一生わ からなかった。