「おはぁ♪」 後ろから話に割り込んで来たアヤ。
隣のギャル男がヤマトだとは気付いていない 様子。
「美嘉雰囲気変わった~フェロモン出てる
♪」
「だよな俺も思った↑」
横から口を挟むヤマト。 アヤは眉をしかめながらヤマトの顔を凝視した。
「…は?ヤマト?何その髪の色に顔黒。ありえ ない!何が起きたの!?」
「彼女の好みがギャル男らしーよ」 興奮するアヤにシンタロウは冷静に答えた。
「彼女!?でもその変化はありえないから ぁ!それより美嘉は何かあった?!」
話題は美嘉へと変わる。嫌な予感…。
「確かに大人っぽくなった♪もしかして優 さんと…」
イズミが何を言いたいのか想像はつく。
「やっちゃった!?」 アヤからの一声。
やっぱりその話題か…。
「マジで?そこんとこどうなの↑」 髪をいじりながら問い質すヤマトをよそに
返事を考えていた。
待てよ。 いいことを考えた。
「みんなが先に教えてくれたら教え る~!!」
こうすれば みんな犠牲になるから。
最初に口を開いたのは 下ネタ上等のアヤだ。
「あたし達は毎日してる♪でもケンちゃん早 いんのぉ~イズミちゃん達は?」
「俺らもだよな~イズミなんてもう毎日うる さくて…痛っ」
イズミがシンタロウに 手加減なしでげんこつをする。
「シンタロウなんて口だけだよ!いざとなったら 勇気ないとか言い出すんだもん。まだ未遂
♪」
「残念ながらそーゆーこと。ヤマトはどうな の?」
ヤマトは彼女のことを思い出したのか ニヤッと不気味な笑いを浮かべた。
「彼女経験ねーし手出せねーよ↑↑」 みんなが思ったことは
ただ一つ。
ヤマトをここまでギャル男に変えてしまう彼 女は
本当に処女なのだろうか…。
「美嘉は美嘉は~!?」 返事を急ぐアヤ。
美嘉は親指と人差し指で小さな円を作っ た。
四人はいっきに 盛り上がる。
「マジで!?」
「どうだった!?」 立ち上がるみんなの勢いに圧倒されつつ
も、 両手を使ってハートを作り少し乙女ちっく に
答えてみた。
「超~幸せだったよ♪」
「ったく幸せそうな顔しやがって~↑」
そう言いながら 自分も幸せそうなヤマト。
「おめでと♪♪」 イズミはお母さんのように頭を撫でてくれ
た。
「みんなカップルだな」 シンタロウの言葉を聞き
アヤが一つの提案をする。
「卒業式の日カップルで集まって卒業パー ティーしない?」
「「賛成~♪」」 四人の声が揃った。
「とりあえず受験合格だね!」
「勉強頑張ろうぜ~」 現実味を帯びた
イズミとシンタロウの言葉。
みんなで合格して笑顔で卒業出来たらいい な。
この時あの人が会話を聞いていたことに全 く気付きもしなかった…。
その日の昼休み お弁当を食べるため
席を移動しようとしたその時…
「話せる?」 席を立とうとした美嘉の前に立ちはだかっ
た人…
ミヤビだ。
なんで今頃ミヤビが…。 ミヤビの腕をちらっと見るとヒロのブレスレ
ットがなくなっている。
……悪い予感。
避けようとしても その場を動こうとはしないミヤビ。
「話したいんだ。」
あ~イライラする。 今さら何を話すの?
まさかヒロの恋の相談を聞いてくれとでも 言うわけ??
「…話すことなんかないし。どけて!!」
強気な美嘉の言い方に、 ミヤビの顔色が
赤くなった。
「何よその態度。私知ってるんだからね。 美嘉が弘樹の子ども中絶したの知ってるん だから!」
教室中に響き渡る ミヤビの声。
その声にクラス中が 静まり返る。
「え…なんでそれ…」 ミヤビは顔をさらに真っ赤にして
怒りで震えながら叫び続ける。
「弘樹から聞いたんだから。中絶なんて最 低だよ!私なら絶対産むよ!人殺しのくせ に!」
「え…ちょっと待っ…」
「さっき聞いてたんだから。新しい彼氏と もヤリまくってんでしょ?男好きだね!」
イズミ達の顔を見ることが出来ない。 周りの視線が痛い。
雰囲気に耐えられず 机の横にかけてあるかばんを取り 教室を飛び出た。
どこかに行きたい。
ヒロ…ミヤビに言っちゃったの?? 美嘉のこと人殺しだって思ってたの??
階段を駆け降りようとしたその時…
「ちょっと待て」 腕を掴み、
引き止めた人。
…ノゾムだ。
「ヒロは悪くねぇよ!ミヤビがヒロの部屋に 飾ってある赤ちゃんの写真を見つけて、こ れ何?って聞いたんだ。でもあいつは何も 言わなかった」
「もう…いいの…」
「ミヤビは写真見て美嘉との子?って聞いた んだ。でもその時ヒロは大切な人とのこと だから言えねぇって…そう言った」
「もういいって…」
「俺その場にいたしヒロは悪くねぇよ。ミヤヒ
゙は振られたからって腹いせで言ってんだ よ!」
掴まれた手を振り払い、玄関まで走った。 今はノゾムの言葉を理解する余裕がない。
靴を履きかえ 逃げるように学校を飛び出た。
どこかに…
ヒロとの思い出の川原…そこには行かない。
過去には頼らないって 決めたから。
着いた場所は見知らぬ大きな公園。 噴水の近くにあったベンチに腰を降ろし た。
確かに… 確かにあれは世間一般からすれば“中絶” だったのかもしれないね。
でもね産みたかったの。 美嘉だって、
殺したくなんてなかったよ。
生きてほしかったよ…。
優とヤリまくってた? 男好き??
優とのあんなに温かくてやさしかった日を そんなふうに言わないでよ。
イズミにもヤマトにもシンタロウにも、 妊娠してたことは言ってなかった。
言えなかったの。 もう嫌われちゃうかもしれないね…。
“中絶”
中絶は
人殺しなの??
それをすることによって必ずたくさんの傷 みを
背負う。
理由も無しにしてしまう人も中にはいると 思う。
でもね、 産みたくても流産しちゃった人… 親に反対されてしまった人。
彼氏に反対された人… レイプをされて妊娠してしまった人。
いろんな事情があるの。 みんなそれぞれ
苦しんでいるんだ。
自分の赤ちゃんが嫌いで殺す人なんていな い。
ヒロがミヤビに話をしたことはショックだっ た。
でもノゾムの言葉に少し助けられたんだ。
それよりイズミ達と、 友達ではいられなくなっちゃうのか な…??
♪ピロリンピロリン♪
考え込んでいた美嘉に届いた一通のメー ル。
唯一あの中で妊娠を知っていたアヤからだ。
《駅前のカラオケ集合》
駅前のカラオケ…?? 頭の中を整理し、
メールで届いた通り駅前のカラオケへと走 った。
カラオケの前にいるのはアヤとイズミとヤマトとシ ンタロウ。
全員集合。
「さぁ行くぞ~♪」 気まずい雰囲気の中アヤに腕を組まれ
強制的にカラオケへと連れて行かれる。
その間、 アヤ以外とは一言も会話を交わさなかった。
イスに座る。
……沈黙…。
隣の部屋から聞こえる歌声だけが 虚しく響き渡っている。
「あ~あマジひでぇよな~↑↑」 手を天井に向かって伸ばし、ため息をつき
ながら最初に口を開いたのはヤマトだ。
腕を組んでいたシンタロウが続ける。
「俺らってそんなに信用ねぇかな~」
そして怒った表情のイズミが美嘉のほっぺを ペチッと音が鳴るくらいの軽い力で叩い た。
「私達どんなこと聞いても美嘉のこと嫌い になったりなんかしないよ?」
「全部話したらスッキリするよぉ!」 アヤが美嘉の肩に
手をかける。
気持ちの整理がつかないまま、 口はなぜか自然に動いてしまっていた。
妊娠… 流産…
毎年クリスマスにお参りに行っているこ と。
思い出すのが辛くて事細かに話すことは出 来なかった。 でもみんなには言えなかっただいたいのこ とは
伝えられたと思う。
全てを話し終え、おそるおそる顔をあげた。
「な゙ん゙でも゙っ゙と早゙ぐ言゙っ゙でぐれ
゙な゙い゙の…辛かったでしょ…」
「俺らの友情は…それくらいじゃ壊れね ぇ…よ。美嘉のバカヤロー」
イズミとヤマトは涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃ だ。
シンタロウは何も言わず、 頭を撫でてくれた。
アヤは美嘉が話してる間ずっと手を握ってい てくれた。 流産した時もそばにいて助けてくれた。
ねぇ、 イズミもアヤもヤマトもシンタロウも…本当に本当に大 切な友達だよ。
落ち着いた頃、 話題はミヤビの悪口へと変わる。
「何あの女!」
「ありえねーマジで↑」
「振られたからって八つ当たりするなっつ
ーの」
怒りが最高潮の イズミとヤマトとアヤ。
「でもイズミのビンタは効いてたみたいだ な」
シンタロウの 意味深な一言。
「…イズミのビンタ??」
「美嘉が教室から出て行った後、イズミがミヤヒ
゙にビンタくらわした↑すげー音鳴ったし↑」
ヤマトの言葉が、 理解出来ない。
「スッキリした♪その後ヤマトがミヤビに向かっ て“だから男に振られるんだよ”って言っ たらミヤビ引きつってたよね!」
イズミ… 何の話してるの??
「それでシンタロウがミヤビの胸ぐら掴んで“二度 と美嘉に近寄るな”って言ったんだよね ぇ!」
「最後にアヤがミヤビの机蹴ってみんなで学校 抜け出したんだよな~」
アヤもシンタロウも… それどーゆーこと??
「「ざまあみろ~って感じっしょ!」」 四人は声を揃えた。
頭の中で整理。
……みんな美嘉をかばって守ってくれたん だ。
仲間の心強さに 我慢してた涙がポロッと流れる。
「泣かないのぉ!」 手を強く握るアヤ。
「俺らの友情に感動したか↑↑」 ヤマトだって…
目腫れてるくせに。
「またも゙ら゙い゙泣ぎしちゃゔ~」 イズミは再び
泣き始めてしまった。
シンタロウは何も言わないままティッシュで 美嘉とイズミの涙を拭いてくれていた。
「みんな大好きいぃぃぃぃ~え~ん」
美嘉の泣き声が 部屋中に響く。
「俺らと優さんどっちが好き?↑」 ヤマトがマイクのスイッチを入れて美嘉に向け
る。
「難問だね♪」 期待した表情のアヤ。
「………優」
美嘉の答えに ヤマトとアヤは大袈裟にずっこけた。
「嘘~!!どっちも同じくらい好きだも ん!!」
立ち上がり 頭をかくヤマト。
「びっくり~↑」
「私もみんな大゙好゙ぎぃぃ~」 イズミが鼻声で叫ぶと
アヤとヤマトも続けて叫んだ
「あったしもぉ♪」
「俺も~↑↑」
「みんなバカ友だな」 シンタロウの冷静な言葉に
みんなは大声で笑った。
笑い合えるも今のうち。 もうすぐ受験日だ。