信じてないはずなのに…
気持ちとは裏腹に 涙が止まらない。
ノゾムは美嘉の肩を強い力で揺すり 病院中に響く大声で叫んだ。
「しっかりしろよ!あいつは死んだんだよ。 ヒロは死んだんだ!」
「死んだ…?」
「そうだよ。もう戻って来ねぇんだよ、ヒ ロは死んだんだよ!」
ノゾムの言葉で、 ようやくヒロの死を 実感する。
ヒロが死んだ。 ヒロは死んだんだ。 もう会話は出来ないんだ
もう温もり感じることは出来ないんだ。
そっか…。 ヒロは死んじゃったんだね…。
もっと一緒に 笑いたかったよ。
もっと一緒に 生きたかったよ。
その場に座り込む。
「戻るぞ」
美嘉の手を引くノゾム。
しかしヒロの死を実感した今、 お葬式なんか
出たくない…。
「やだ行きたくない…」 ノゾムはその場を動こうとしない美嘉を睨み
強引に起こした。
「行かねぇと一生顔見れなくなるんだよ」 ノゾムの目には涙がたまっている。
ノゾムも 辛いよね悲しいよね。
でもヒロにメールで 美嘉を支えてって頼まれたから…
ヒロの最後のお願いを聞いてあげるために 一生懸命なんだ。
起き上がり
ノゾムと共に再び告別式の会場へと向かっ た。
ヒロが入った小さな箱は火葬場へ運ばれよ うとしている。
「美嘉ちゃんも一緒に行こう?」 エリさんに手を引かれ、
ノゾムと共に火葬場へと向かった。
火葬場に着き、
近くにあったコンビニでたくさんのみかん
キャラメルを購入した。
……最後の別れ。 小さい窓から覗く
痩せ細ったヒロの顔。
綺麗な花や大好きだったお菓子に囲まれ て…
今にも 目を覚ましそうなのに。
「またいつか会おうな」
ノゾムはヒロの顔を見ながら涙を流してい た。
美嘉はヒロの顔の横に、箱から出したみか んキャラメルを
たくさん入れた。
【このキャラメル食うと美嘉から元気もら える気がするわ!】
ヒロの声。
…なぜか今よみがえる。
「ヒロ辛かったでしょ。よく頑張ったね。 苦しかったよね。ヒロ強いもん。良く頑張 ったね…」
その時、 ヒロとの思い出が
走馬灯のように頭を駆け巡った。
ノゾムからの一本の電話でヒロに出会った。 初めて遊んだ日に
一つになった。
ヒロには彼女がいて… 諦めようと思ったんだ。
それでもヒロは 美嘉を選んでくれたんだよね。
美嘉がレイプされた時…自転車で汗かきな がら探しに来てくれたっけ。
黒板に美嘉のアドレスや番号が書かれた時 も、
守ってくれたよね。 かっこよかったー。
ヒロは美嘉が困ったりピンチの時はいつも 助けに来てくれて、 スーパーマンみたいだったよ。
赤ちゃんが出来た時、 産もうねってすごい喜んでくれて…
親に反対されても何度も何度も頭下げて 頼んでくれた。
あの頭下げたりするのが苦手なヒロがだ よ??
信じられないよね。
流産した時も 一日中祈っててくれた。
頭に雪乗せて体震えながらも、 お守りを握っていた。
二人でさ、 鼻水出しながら 泣いたよね!!
ヒロは覚えているかな?
二人の場所だねって言って、 川原に連れて行ってくれた。
あの川原で学校サボってイチャイチャした りしてすごい楽しかったなぁ。
……突然の別れ。 去って行った後ろ姿。 それはヒロの精一杯の 優しさだったと知った。
ヒロ、 どのくらい苦しんだの?
あの時必死で追い掛けたら、 何か変わってたのかな?
今とは違う結果だった?
ヒロには彼女が出来て、 美嘉にも優と言う彼氏が出来た。
お互い別々の道を 歩み始めたんだ。
卒業式の日に 指輪を返して…
握手した手が離れた。
ねぇ、
ヒロはいつから長く生きられないことを知
っていたの??
その時はもう 気付いてた??
クリスマスの日にノゾムに会って、 真実を知った。
美嘉は… ヒロを選んだ。
ヒロは自分が長く生きられないのを知って いながらも、
戻って来いと言った。
美嘉もそれを気付いていながらも、 ヒロを選んだの。
二人とも 奇跡を信じていたんだ。
いつか元気になってまた前のように戻れる って…
信じてた。
ヒロと戻ることが出来てから約一年半。 すごい楽しかったよ。
テレビ電話使って 赤ちゃんのお参りしたよね。
プチ結婚式もした。 ヒロのスーツ姿かっこ良かったなぁ!!
指輪もね、
左手にまだ光っているんだよ。
写真も撮ったし… ヒロ、美嘉の姿ばっかり撮ってんの!
美嘉の姿なんか撮ってもおもしろくないの にね!
お見舞いに行くたび、
ヒロが笑顔で迎えてくれたの嬉しかったな
ー。
おいしそうにみかんキャラメル食べてる 姿、
子供みたいでかわいかったなー。
外泊した時、 ヒロが初めて弱音吐いたんだよね。
あの時ね、 嬉しかった。
嬉しかったって表現は ちょっと変かな?
でも嬉しかったんだ。 強気なヒロが美嘉だけに弱音吐いた。
美嘉だけに…。
ねぇ、 今思い出すのは楽しいことばかりだよね。
これって、川原で別れた時と同じだね。
あの時も思い出すのは楽しいことばかりだ った。
ヒロの笑顔ばかりだった ヒロが夢の中に会いに来た時…
川原の別れとは 違うって言ってたよね。
どーゆー意味なのかな?いずれわかる日が 来るかな…??
最後に会った日、
ドアが閉まるまで笑顔で手を振っていたヒ ロの顔が忘れられません。
あの時何かを予感して戻っていたら、
こんな結果にはなってなかったでしょう か。
それとももっと辛くなっていたのでしょう か。
ヒロに毎日会えることは生き甲斐でした。
でもそれが無くなってしまった今、 明日から何を生き甲斐に生きたらいい??
泣いた時誰に涙を拭いてもらえばいい? 寂しい時誰の胸に飛び込めばいいの??
一人は嫌だよ…。 一生会えないなんて、
そんなの嫌だ。
「ヒロ…死ぬなんて嫌だ…追いてかないで よ…離れたくない…ヒロ」
さっきまでの冷静な自分はもういない。 我慢していたものが
全て溢れ出す。
離れたくないの。 もっと一緒に生きたい。ヒロ…
小さい窓から見えるヒロに助けを求めるか のようにすがりついた。
ヒロがいなくなってから初めて泣き叫ん だ。
泣き叫ぶことによって
ヒロが死んでしまったことを認めるのが怖 くて…
「ヒロ…ヒロ嫌だ…美嘉一人じゃ生きてい けないの…」
どんなに泣いても ヒロは戻って来ない。
もしかしたら空の上でそんな美嘉の姿を見 て笑っているのかもしれない。
小さい窓はパタンと閉められ ヒロの顔が見えなくなってしまった。
ヒロ… ヒロ…
幸せ過ぎて 涙が出た日もあった。 孤独の怖さに 涙が出た夜もあった。
こんなに自分が泣き虫で弱かったなんて… あなたに会うまで気付かなかった。
あなたの優しさに 自分がちっぽけな人間だって感じた。
ねぇ、一人じゃ生きていけないの。 ヒロに出会って、
一人じゃ生きていけなくなったの。
美嘉のために 自分を傷つけ…
一人で涙流していたの?
こんなに世界は広いのにあなたに出会って あなたを愛して…
あなたに愛された。 たった一人
あなただけ。
…偶然?? それとも運命かな。
好きでした。 大好きでした。
恥ずかしいくらい 大好きでした。
自分が思ってた以上に 大好きでした。
いつかはこうやって別れてしまう日が来る のはわかっていた。
だけど…
あんなに誰かを愛して、あんなに誰かに愛 されたのは初めてだったよ。
ねぇ、ヒロ?? 見える??
こんなにたくさんの人がヒロのことを想っ て泣いている。
ヒロはかわいそうなんかじゃないよね。 こんなにたくさんの人に愛されて、
幸せだったよね??
精一杯生きたもん。 一生懸命生きたもん。
幸せだったよ…。
…夢の中だったけど 最後に挨拶に来てくれてありがとう。
強くて 口が悪くて ぶっきらぼうで 短気
あなたは そんな人でした。
でも本当は
優しい心を持ってて 寂しがりやで 強がりで
一人じゃいられないこと
知ってた。 知ってたんだ。
ヒロ、 頑張ったね。 辛かったね。 よく闘ったね。
しばらく経ってヒロは、小さくて白いかけ らと
灰になって出てきた。
ヒロの目・鼻・唇。 手・足。
…全て無い。 これが現実。
わかってる… もう無いんだ。
エリさんが 一本の割り箸と小さい四角い箱をくれた。
ヒロの左手にあたる場所に、シルバー色の 何かがある。
形はほとんど わからない。
でもね、 なんとなく指輪のような気がするんだ。
そのシルバーの何かを割り箸で掴み、箱の 中にコロンと入れた。
白いかけらも 一緒に…。
人間ってはかないね。 つい最近まで元気に動いていても、
何日か後には形がなくなって白いかけらや 灰なってしまったりもすることもあるんだ から。
…はかないよ。
箱を大切に握り、 ノゾムの車に乗って 家に帰った。
「ただいま……」
「お帰り、大丈夫…?」 心配そうな顔で玄関まで走って来る
お父さんとお母さんとお姉ちゃん。
三人とも告別式に行ったのか黒い服を着て いる。
「ん、大丈夫…」 箱を握りしめたまま階段を駆け上がって
部屋に向かった。
布団にくるまり 寒いわけではないのに なぜか体がガタガタと震えている。
ピンポーン
玄関からは チャイムの音。
小さい音でも ビクッとしてしまう体。
お母さんが誰かと何かを話している様子 だ。
音が静まると同時に、 階段を上ってくる音が聞こえ… その音がだんだんと近づいて来た。
部屋のドアが開く。
「美嘉…?」 真っ暗な部屋の中
布団にくるまりガタガタと震えている美嘉 の姿を見て心配そうに言ったのはお母さん だ。
「……お母さん」
「あのね、今ヒロ君のお姉さんが来て…」 そう言って何かを
差し出している。
「これ、美嘉に渡してって言われたんだけ ど…」
お母さんが手に持っていたのは、 現像した写真と
一冊のノート。
お母さんはそれを 机の上に置いた。
「写真はね、美嘉が忘れて行ったからって… あとこのノートはね、ヒロ君の病室の枕の 下から出てきたんだって。」
お母さんはそう言い残し部屋から出て行っ てしまった。
今美嘉が一人にしておいて欲しいこと… きっと察してくれたのだろう。
ガチャ
布団から出て、
机の上に置かれた写真とノートを手に取っ
た。
小さなスタンドのぼんやりとした光を当て 写真とノートを照らす。
少し破けたぼろぼろの 一冊のノート。
今はこのノートの中身を見るのが怖い。 ノートを避け、
写真に手を伸ばした。
一枚一枚 じっくりと見つめる。
ヒロの写真 全部笑ってるね。
ヒロがいなくなる前の日に二人で撮った写 真。
ヒロだけが笑っている。どうして美嘉は笑 ってあげられなかったのかな。
突然撮られたってこともあるけど…
何か不吉な予感を感じていたのかもしれな いね。
ヒロは… ヒロは何か感じてたかな??
二人でうつってる写真を並べ、
今日火葬場でエリさんから受け取った小さな 箱をパカッと開けた。
すぐに壊れてしまいそうな白いかけら。 ヒロの骨のかけら。
白い骨のかけらとヒロが笑っている写真を 何度も見比べる。
この白くてちっちゃいかけらがヒロなん だ。
ヒロの姿を見ることは もう写真でしか無いんだね。
奇跡は 起こらなかったのかな?
いや…ヒロがここまで生きてくれたこと。 それが奇跡なのかもしれない。
枕に顔をうずめながら声をあげて泣いた。 まだ涙は
残ってたんだ。
時間が戻ればいいのに。まだ伝えたいこと がたくさんあるのに。
部屋の布団を持ってお姉ちゃんの部屋へ行 った。
「お姉ちゃん一緒に寝てもいい…??」 一人でいるのが嫌だったんだ。
誰かと一緒にいたい。
机に向かって勉強をしていたお姉ちゃん は、
勉強する手を止めて答えた。
「…もちろんいいよ!」 持っていた布団を敷き、
ゴロンと転がる。
「私もそろそろ寝ようかな。」
部屋の電気を消し、 自分のベッドへ入るお姉ちゃん。
「美嘉、寝れる?」
「大丈夫……」 どうにか…
頑張って寝なきゃ。
目が覚めたら 全てが夢かもしれない。
でも、 これは現実。
………そんなの嫌でも わかってる。
だからこそもし寝て何もかもを忘れたとし て、
朝起きた時に再びヒロの死を実感するのが 怖くて…
空はいつの間にか 明るくなっていた。
どんなに辛くても 朝は来るんだよね。
AM5 時。 布団から出て階段を下り
居間へと向かう。
「美嘉、早いな。」
すでに起きていた お父さん。
「お父さんも早いね!」 泣きすぎて腫れてしまい開きにくい目を、
無理矢理開いた。
「お父さん仕事あるからな。」
「頑張ってね!!」
無理に笑顔を作ると、 お父さんは美嘉の肩をポンッと叩いた。
「美嘉も頑張るんだぞ」 お父さんの優しい言葉に心が緩む。
「頑張る!!」
そのまま洗面所へ走り、 冷たい水で顔を洗った。
着替えるために 部屋へ戻る。
昨日は部屋の中が暗くて気付かなかったけ ど、
部屋の隅っこに淋しげに置いてある 編みかけの帽子。
ヒロごめんね。
渡せなかった。 間に合わなかった。 ごめんね。
完成間近の帽子の毛糸を一度ほどこうとし た手を考え直して止めた。
編みかけの帽子と ヒロの骨が入った 小さな箱。
そして昨日エリさんが届けてくれた一冊のノ
ートをかばんにつめて、 急ぎ足で家を出た。
朝の空気は爽快で…
ヒロがもういないなんてまるで信じられな い。
またいつもの一日が 始まる。
これからお見舞い行ってヒロに会って… そんな感じなのにね。
急ぎ足で向かった場所。
それは川原だ。 今日来ないと、
もう一生来れないような気がしたから…。
辛いけど、 それでも受け止めるしかないんだ。
坂を降り 草の上に腰を降ろした。
太陽は雲で 隠れてしまっている。
チョロチョロと流れる 川の音。
安らげる音。 今は悲しい音に
聞こえる。 ヒロの泣き声のように。
最後にここに来た時、 隣にヒロがいたね。
一つに繋がったね 一緒に手を繋いで
空を見た。
流れる一粒の涙も…。
神様にお願いしたのに。ヒロを連れて行か ないでってお願いしたのに…。
ヒロがいない世界なんかつまらない。 生きていく意味がない。
一旦かばんから取り出し開きかけたノート を、
かばんの上へ置いた。
まだ見る勇気がないの。
ゆっくりと立ち上がり、 流れる川の前へと 歩き始める。
…ここに飛び込めば、 ヒロに会える?
この川は ヒロに繋がってるの?
美嘉が死んだら、 ヒロに所に行けるの?
ヒロが見てたら 怒るかもしれない。
だけど、 だけどね。
ヒロのいない世界は 何も輝かない。
ヒロがいたから、 何もかもが輝いていた。
この色褪せた世界で、
何を頼りに何を求めて生きていけばいい の??
ヒロに会いたいの。 ヒロの所に行きたいの。
美嘉はこれから ヒロの後を追います…。
決心をし、 川を見つめながら深呼吸をした時、 遠くから声が聞こえたような気がした。
【あなたは一人じゃないよ。大好きな家族 も、大好きな友達もいる。あなたは一人じ ゃない】
この声は赤ちゃん? 赤ちゃんなの…??
でもね、 ヒロのそばにいたいの。ごめんなさい。
美嘉もヒロと赤ちゃんの所に行きたいん だ…。
そして川へ飛び込んでしまおうと足に力を 入れたその瞬間、 二羽の鳥が目の前を横切り、 それに驚き草の上にしりもちをついた。
しりもちをついたまま、空を見上げる。 さっき目の前を横切ったあの鳥は
どこにもいない。
もくもくと流れる 白い雲。
その瞬間、 雲間から太陽がピカッと顔を出した。
目を閉じてしまいたくなるくらいの眩し さ。
でもね、 美嘉は見たんだ。
雲間から覗いたその眩しい太陽の向こう に、
赤ちゃんを抱いたヒロの姿を…。
【美嘉… おまえは生きろ!】
幻聴かもしれない。 だけどね、 そう聞こえたの。
二人はね、 すごく幸せそうに笑っていたんだよ。
守ってくれる手は もうない。
優しく頭を撫でてくれる手はもうない。
ヒロがいないと生きていけないと思ってい た。
ヒロがいなくなった今…それでも生きてい くしかないの??
まだね、 ヒロがどこかにいるような気がするの。
振り向けばいる… そんな気がするの。
もういないのは わかってる。
でもそう思わないと心が壊れちゃいそうな んだ。
風がフワッと吹き、
かばんの上に置いたままのノートがぺらぺ らと開いた。
飛び込もうとした足を止め、 立ち上がってノートを手に取る。
ノートを握ったまま、 再び草に腰を降ろした。
このノートを見たら、 もっと苦しくなるかもしれない。
だけどヒロが見ろって言ってる… そんな気がするから。
ノートの 1 ページを めくる、
鉛筆で書かれた 雑な文字。
━2001 年 5 月 13 日━ 俺は今日癌だと告知された。
最初の一行を読んですぐにノートを閉じ た。
…これは
ヒロが癌を告知された日から書かれた日 記。
胸の鼓動が早まる。 読みたくない。 だけど読まなくちゃ… ヒロの日記。
ヒロが生きていた記録を読まなくちゃ…。
━2001 年 5 月 13 日━ 俺は今日癌だと告知された。
病名は悪性リンパ腫。
最近喉が痛いと思って病院に行ったら癌だ ったとは…。
だから今日から俺は日記を書くことにす る。
俺が死ぬまで書く。
卒業するまで入院は嫌だったので通院する ことにする。治療が始まる。
━5 月 14 日━
クラスのダチから美嘉とノゾムがキスしたと 聞いた。 ノゾムの気持ちはなんとなく気付いていた。
だけど美嘉が俺に言ってくんなかったのが すごく悲しい
━5 月 15 日━ 美嘉に別れようとメールした。
本当は別れたくない。 だけど俺は長くは生きられないから。
でもやっぱり美嘉のことが好きだから、夜 中会いに行ってしまった。 やっぱり別れたくないと思った。
━5 月 18 日━ ずっと考えている。
自分の気持ちを貫くか、美嘉の幸せを願う か。
俺はどうしたらいいのだろうか。 今日病院へ行った。
━5 月 23 日━ 最低だ。
今日地元のダチとシンナー吸って、記憶が戻 った時美嘉が部屋にいて襲われそうになっ てた。
助けてやりたかった。
でも美嘉が俺を嫌いになって振ってくれた ら1番いいのかもしれないと思い俺は近く にいた女を襲った。 今思えばこんなやり方最低だ。
━5 月 24 日━ 美嘉と別れることを決めた。
最低な俺に美嘉を守る資格はない。
いつかいなくなるかもしれない俺は、美嘉 と付き合う資格はない。
━6 月 1 日━ 美嘉が俺んちに来てくれた。
正直嬉しかった。 でも俺は嫌われなければならない。 俺の命令聞けって言ったらマジで聞いた。 聞いてんじゃねーよ。
最低だって殴れよ。
もう嫌いだって言えよ。美嘉が根性焼きを した時手首の傷が見えた。 やっぱり俺は別れる。 美嘉をたくさん傷つけてしまった。 夜美嘉からメールが来た
川原へ行くべきか行かないべきか…
━6 月 2 日━ 川原へ言ってしまった。
マジで最低だ。 別れたくねぇ
だけど、寂しがり屋の美嘉をいつか一人に することはできない
俺なんかといて楽しそうな美嘉を見て苦し かった
美嘉、ごめんな。 マジでごめんな。
━6 月 3 日━ ずっと友達だったサリナから告白される。
美嘉が俺を嫌いになるいい機会かもしれな い。
付き合うことにした。 病院へ行く。治療が辛い
━6 月 6 日━ 美嘉を見た。
俺は自転車の後ろにサリナを乗せて横切った。 美嘉ごめんな
━6 月 9 日━
今日美嘉と男が話していた。
美嘉にメールを送った。彼氏ではないらし い。
中途半端なことをしてしまった
━6 月 15 日━ サリナと別れた。
あいつに他に男がいるのはなんとなく知っ てた。治療でいらいらしてたこともあって 美嘉が悪くないのはわかってるのに八つ当 たりしてしまった。
俺は今でも…
━6 月 27 日━
美嘉が風邪で休んでいるとノゾムから聞い た。
あいつ体弱いから心配だ
━8 月 12 日━
突然美嘉に会いたくなって電話をしたけど 繋がらなかった。 番号を変えてしまったのか…
━9 月 9 日━ 病院。
これで何回目なのか。 卒業まで入院はしたくない。 少しでも長く美嘉の顔を見ていたい。
━10 月 17 日━ 学校祭。
美嘉がステージでよく二人で聞いていた曲
を歌っていた。 偶然か…少し期待してしまう。 俺も廊下で歌った。 美嘉に届くわけねぇのに
喉の痛み悪化。 病院へ行く。
━10 月 27 日━ ミヤビって女に告白される 確か美嘉の友達。
ずるい考えかもしれねーけど少しでも美嘉
の近くにいたい。
俺は好きな人がいると断ったが、それでも いいと言われたので付き合うことにした。 ノゾムには俺から告ったことにした。 また美嘉を傷つけることになる。 でも俺は美嘉に忘れられたくはない。 最低な男だ
━11 月 12 日━ 修学旅行。
つまんねぇ。 全然つまんねぇ。 美嘉と回りたかった。
━11 月 26 日━ 最近具合悪い。
ほぼ毎日病院へ行ってる
疲れた。 美嘉は風邪引いてねぇかな
━12 月 14 日━ 補習だ。
美嘉もいる。 勇気を出して手紙を投げた。 帰りに幸せにって言われた。 追い掛けたかった。 でも俺には出来ない 美嘉は俺のこともう嫌いになったよな
━12 月 24 日━
クリスマスイブ。 ミヤビの誘いを断る。 手袋とお菓子を買いだめする。
60 歳のぶんまで買った。そんなに生きれね ぇだろうけど
お参りに行った。
美嘉は来てないみたいだ。俺のこと嫌いに なったから来ないのかも
━2002 年 1 月 1 日━ 年が明けた。
俺は今年も生きられるのだろうか。
━2 月 5 日━ 病院が辛い。
入院することになるかも
━3 月 22 日━ 足にできものが出来る。
━4 月 15 日━
学校で進路を聞かれる。俺は卒業と同時に 入院。 専門学校に行きたかったけどしかたねぇ
━6 月 2 日━ 美嘉と別れて一年。
意味もなく川原へ行く
━8 月 23 日━ 暑い。
病院行くのだりぃ。
━9 月 21 日━ 美嘉が校門の前で男と話してるのを見た。
彼氏か? でもこれで良かったんだよな。
あの男が美嘉を幸せにしてくれることを願 う
でも少し寂しい
━10月2 日━
美嘉は K 大学に行くとノゾムから聞いた。 やっぱり専門学校ではなかった。
━10 月 18 日━ 薬の副作用か、 髪が抜ける
笑える かっこわりぃ
━11月2 日━ ミヤビと別れた。
あいつが赤ちゃんの写真捨てろってうるせ
ーから喧嘩した
美嘉に近付くために利用した俺も悪かっ た。
━12 月 24 日━ 美嘉に会う。
嬉しかった。 美嘉を抱きしめたかった
病気のことを話してしまいそうになった 弱い
美嘉も赤ちゃんを忘れてなかったのが嬉し い
━2003 年 1 月 15 日━
おそらくもうすぐ美嘉は受験だろう。 受かればいいけど
━2 月 27 日━ 今日は卒業式の練習。
入院の準備のためサボる
━3 月 1 日━ 卒業式。
美嘉が話かけてくれた。俺はまた病気のこ とを言ってしまいそうになった。 指輪を返された。
もう完璧に終わりだ。 俺はまだ好きなのに…
━3 月 2 日━
卒アルを見たら美嘉とうつっている写真が 載っていた。
嬉しかった。 未練がましい。 明日から入院だ。
赤ちゃんの写真、そしてこの日記を持って 行く。
━4 月 20 日━ 家に帰りたい。
━5 月 6 日━ もう死んでもいいかも
━7 月 18 日━ 病院食がまずい。
美嘉はにんじん食べられるようになった か?
━9 月 20 日━ あ~焼肉食いてぇ
━9 月 25 日━ やっぱり寿司が食いてぇ
━10 月 22 日━ 俺はこのままだらだら生きるのか。
意味があるのか。
━11月4 日━
髪はもう生えねぇのか?美嘉は風邪引いて ねぇかな
━11 月 20 日━ できものが痛む。
体重がかなり痩せてしまった
━12 月 12 日━ 雪がすごい。
外に出たい。
━12 月 24 日━ ノゾムにお参りを頼む。
行けない自分が情けない美嘉は来るのだろ うか
━12 月 27 日━
今日信じられないことが起きた。 美嘉が病院来た。 ノゾムに聞いたのか? 夢かと思った。
美嘉の指には指輪があり幸せそうで良かっ た
本当は少し苦しい
━2004 年 1 月 10 日━
美嘉はもう来るはずないのに、待ってしま う
━1 月 22 日━ 美嘉が来た日から頭から美嘉が離れない。
どうしたらいいのか
━2 月 4 日━ 俺は決めた。
美嘉に気持ちを伝える。俺がもうすぐいな くなっても、俺は伝える。 後悔して死にたくない。ノゾムに頼む
━2 月 9 日━
美嘉に気持ちを伝えた。美嘉は戻って来て くれた
もう長くないかもしれない俺は美嘉を悲し ませるかもしれない。 それでも一緒にいたい わがままなのはわかる でももう離したくない
絶対治してみせる
━2 月 10 日━
あれから美嘉は毎日お見舞いに来てくれ
る。 嬉しい
前までは死んでもいいと思ってた でも今は死にたくねぇ
━2 月 13 日━
テストの帰り美嘉が来る。こんな俺でもい いって言ってくれた。嬉しかった
━2 月 14 日━ 美嘉にチョコを貰う。
うまい
━3 月 14 日━ 美嘉に飴をあげたら喜んでた。
嬉しい
━5 月 7 日━ 美嘉は相変わらずチビだ にんじん残すからだな
━6 月 18 日━ 美嘉が大学を辞めたいと言った。
俺のせいか
途中で寝てしまい、起きたら美嘉はいなか った
━8 月 10 日━ 美嘉の目が腫れてた。
また泣いたのか。 泣き虫だからな 治療辛い
━8 月 18 日━ 美嘉がみかんキャラメルを買ってきた。
意外にうまい カメラも買って来た
このカメラで美嘉のいろんな顔撮りたい
━10 月 12 日━ 退院したい
━10 月 26 日━
具合悪かったからみかんキャラメルを食べ たら元気出た
━12 月 24 日━ 美嘉がテレビ電話でお参りをさせてくれた
最高のプレゼント 少し涙出る
俺が退院したら絶対お返しする
━12 月 27 日━ 美嘉から貰った携帯を自分名義に変えた
これからこの携帯を使うつもり
━2005 年 1 月 9 日━ ノゾム来る。
明日は成人式。 美嘉と軽い結婚式をする予定をたてる
━1 月 10 日━ 成人式。
着物マジかわいい。
軽い結婚式をした。 指輪も渡した。 早く籍入れたい。
━2 月 14 日━
美嘉からチョコもらう。あれからもう一年 か
━4 月 25 日━ 今日は雨。
美嘉が濡れてないといいけど
━5 月 5 日━ 死にたくねぇ
もっと生きたい
━6 月 10 日━ 起きたら鶴が置いてあった。
嬉しい。 元気になれた。
━6 月 27 日━ 元気がない。
みかんキャラメル食う 美嘉の寝顔撮る
━7 月 3 日━ カメラの残りもあと少し
早く現像して美嘉と見たい。
━7 月 16 日━ 早く退院して美嘉とデートしてぇなー
━8 月 12 日━ 俺は死ぬのか?
━8 月 23 日━ 食べ物を吐いた。
頭が痛い。
━9 月 5 日━ 寒くなってきた。
美嘉が風邪引きませんよーに
━9 月 12 日━ 三日間の外泊許可が出た 明日は家に帰る。
━9 月 13 日━ 家にいた。
久しぶりに家の飯食った。 ずっとここにいたい
━9 月 14 日━
今日はダチがたくさん来た。久しぶりに話 せて楽しかった
明日は美嘉に会える
━9 月 15 日━ 久しぶりに病院以外で美嘉に会った。
学校へ行く。
図書室の黒板にはまだ俺が書いた文字が残 っていた。
あれを書いたのが美嘉じゃなかったら困る から聞けなかった
川原へも言った
雪降る季節にまた来たい美嘉に弱さを見せ てしまった
かっこわりぃ
美嘉も泣いていた
━9 月 23 日━ 死ぬのが怖い。
美嘉を置いていきたくねーよ 美嘉を一人にさせたくない
━10月1 日━ 病室が移動になった
そろそろか
━10 月 10 日━ 最近ずっと具合悪い
みかんキャラメル食ってもなかなか元気に ならない
━10 月 14 日━ ノゾムにメール送る。
そろそろ嫌な予感がする俺はまだ生きたい 美嘉と一緒に生きたい
生きたい生きたい生きたい生きたい生きた い
最後のページに 何か書かれている。
━10 月 15 日━
カメラは残り一枚。 明日美嘉と二人で撮って現像頼もう。 楽しみた。 みかんキャラメル食べる元気でた。 美嘉に早く会いたい
━10 月 16 日━ 美嘉俺は…
日記はここで終わっていた。
“美嘉俺は…”
続き、 何書きたかったの??
震えた字で… 苦しいのに書いてくれたのかな?
ヒロは一生懸命生きてたんだね。 辛くて苦しくて…
それでも必死で生きようと闘っていたんだ ね。
日記、 美嘉のことばっかりじゃん。
バカだよ…。 バカだよ…。