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第1章 ちっぽけな楽園.2

作者:日-叶月香 当前章节:1296 字 更新时间:2026-6-15 17:38

 レイフはくすぐる手を止めて、顔色を変え、そう叫んだ。

「病院に行かないと」

 懇願するような目を上げるレイフの頭を撫でながら、ヘレナは微笑んだ。

「心配しないで、レイフ。クリスターは声がわりが始まったのよ。学校でも習ったことがあるでしょう? あなた達くらいの年から、男の子は皆、大人の声に変わっていくのよ」

「こえがわり…」

 レイフは目を大きく見開き、呆然となって、呟いた。彼の注視を向けられて、クリスターは何やら気恥ずかしげに顔を背けた。

「大人の声…」

 そう囁いた自分の声、相変わらず甲高くて弱々しい子供の声に驚いたように、レイフは口をつぐんだ。喉をそっと押さえた。

 12分の差。

「でも、オレは、まだ…だよ…」

 レイフは、クリスターが自分より先に変声期を迎えたことに激しく動揺していた。

「あなたも、もうすぐだと思うわ、レイフ。それ程差はないはずよ」

 慰めるような母の声も、レイフの沈んでしまった気持ちを引き上げることはできなかった。

 クリスターに置いて行かれてしまうと、レイフはいつも不安だったのだ。

 クリスターにもレイフの不安が分かるのだろう、後ろめたそうな顔をして喉を押さえている。

 突然、レイフはかっとなった。

「変な声! オレ、その声、大っ嫌いだ!」

 そう叫ぶなり、ヘレナが止める間もなく、レイフはキッチンを飛び出し、家の外に駆け出していた。

 なぜか裏切られたような気がして、しばらくクリスターの顔など見たくないレイフは思った。

(にいちゃんの馬鹿! また自分1人だけ先に行っちゃうなんて、ひどいよ。少しくらい待っててくれたって、いいのに)

 無茶な要求だとは分かっていたが、それはレイフの正直な気持ちだった。

 そのまま近くの公園に行って、ベンチに坐り、レイフはしばらの間1人でしくしく泣いていた。しかし、散歩やジョギングにやってくる人々の注視を向けられ、そのうちの何人かにどうしたの坊やと声をかけられて、さすがに恥ずかしくなった彼は家に引き返した。

(絶対、口なんかきいてやるものか)

 夕食の時も、その後子供部屋で2人きりになっても、レイフは強情に口を開かなかったが、彼の我慢がもったのはそれまでで、一晩寝て目が覚めると、いつものように真っ先に上のベッドによじ登って、クリスターに向かって「おはようっ」と叫んでしまった。

 そうすると、別にもういいやという気持ちになった。

 クリスターを無視することなど不可能だし、そうすることで寂しくて仕方がなくなるのは、結局レイフなのだ。

 またしても先を越されてしまったというこだわりはあるけれど、きっとすぐに追いつくから。

 そう思って、レイフは自分を慰めることにした

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