「夢やったら嫌やな」
「勘弁してくれ」
「俺、ドMやで。。。?」
「知ってる」
「性格ややこしいし。。。」
「それも知ってる」
柔らかな雨が、二人に降り注ぐ。
小さく笑ったアキの額に、桐谷は触れるか触れないかぐらいの優しいキスをした。
「桐谷さん」
「。。。ん?」
「めっちゃ、好き」
玄関に入っても、アキはなかなか部屋に上がろうとしなかった。
「どうした?―入れよ」
先に入った桐谷はタオルを手渡しながら、アキの顔を覗き込む。
「何か、変な感じ」
「。。。アキ?」
「俺、すごい決心でここ出たはずやったのにな。。。」
「まさか、桐谷さんが、来てくれるなんて。。。思わ。。。かった。。。」
最後、アキは言葉に詰まった。
「泣き虫だなお前は。目が腫れるぞ」
目尻に指で触れると、不意に視界からアキが消えた。
アキが手にしていたタオルが桐谷の足元に落ちる。
すぐに、アキの手が背中に回されたのを感じた。
「誓えよ」
桐谷の声に、アキが顔を上げる。
「え。。。?」
「もう俺の前から、居なくならないって」
見据えたアキの瞳が、切なげに揺れる。
「。。。誓う」
小さいけれどはっきりとした声で言ったアキを、桐谷は抱き締め返した。
「アキ、そろそろ離せ」
桐谷はアキに回していた腕を解いて言った。
「え。。。?あ、ごめん。。。うざいな、俺」
しゅんとした声で言って、アキは腕の力を緩める。
「そうじゃなくて」
「。。。。。。?」
「切れそうだ」
「何が。。。?」
「理性が」
真顔で言った桐谷を見て、一瞬きょとんとした顔をしたアキが、その意味を理解して、かっと顔を赤らめた。
「お前、変な所でやたら純情だよな」
からかうように頬に触れる。
「いやや。。。。離れたくない」
アキは俯いて言って、再び桐谷の胸に顔を埋める。
「俺。。。ずっと桐谷さんのことばっか考えてた。あれからやっぱり。。。寂しくてどうしようもなくなる夜もあったけど、他の誰とも、出来ひんかった。もう俺、桐谷さんとじゃないと嫌や。。。」
桐谷は大きく息を吐いた。
「アキ。。。。今日はお前にどれだけねだられても、優しくしか抱けない。―それでもいいか?」
またアキが耳を赤くするのが分かった。
アキは何かを決心したかのように顔を上げると、ぎゅっと目を瞑り背伸びをして、桐谷に唇を寄せた。
「。。。いい。優しぃ抱いて―。。。?」
長い長いキスをした。
離れてはまた寄せることを、何度も繰り返す。
アキの唇は柔らかく、その甘い感触をいつまでも味わっていたいという気分にさせる。
熱を帯びた控えめな舌の動きにも煽られた。
「ん。。。桐谷さん、も。。。あかん。。。」
キスだけで達かせる気なん、と息を乱したアキの声は掠れている。
根を上げたアキの顎に滴る唾液を舌先で舐めとって、桐谷は顔を離した。
浅い呼吸を繰り返すアキの目元は赤く染まっている。
この表情をもっと乱したい――そんなことを抱く相手に対して強く思ったのは初めてだ。
桐谷は今にもその場に崩れ落ちそうなその身体を支えた。
「ここか、ベッドか、どっちがいい。。。?」
首筋にも舌を這わせながら耳元で訊いた桐谷の肩に、アキが腕を絡めた。
「ベッドがいい。。。」
宣言どおり優しく時間を掛けてその身体を蕩かす桐谷に、アキはただしがみついて、色付いた吐息を漏らす。
あらゆる箇所を探るように愛撫すると、アキは恥ずかしい、と何度も呟き、乱れた。
「。。。お前、感じすぎだ」
すでに一度、アキは達していたが、その身体はすぐにまた熱を帯びた。
先走りで濡れたアキの中心に指を絡めながら囁いた桐谷の声にすら、アキは反応する。
「桐谷さんの。。。せいやろ。。。っ」
非難するその口をキスで塞いで、桐谷はアキの半身を起こした。
向かい合って抱き締め、座った姿勢のまま繋がる。
ぐずぐずに溶かしたアキの中はひどく敏感になっていて、自分の体重で桐谷のものを飲み込みながら、アキは喉を反らせ甘い声で啼いた。
淫らなその声ときつく締め付ける内部に、桐谷も自身がひどく昂るのを感じた。
桐谷が奥まで挿ると、アキはしっとりと汗ばんだ腕を絡めてくる。
「あんまり締めるな、保たない」
「。。。っ。。。、だっ。。。て」
桐谷が少し身じろぎしただけで、アキはびくりと反応した。
何度か浅く突くと、絡めた腕に力を込めて縋り付いてくる。
「あ。。。っ。。。い。。。や。。。っ」
「。。。嫌なのか?」
囁くように訊いた桐谷にアキは濡れた目を向けて、微かに首を横に振った。
「どっちだよ」
桐谷は余裕のない顔で笑って口付けると、アキの奥深くをゆっくりと突いた。
動き始めると、アキは桐谷の髪に手を差し入れて掻き乱した。
「。。。ん、。。。んん。。。っ、桐谷さ。。。。。。好き。。。すき―。。。」
繋がりながら何度も口付けて、桐谷はアキの身体を優しく揺すり続けた。
アキが泣いて、悶えて、果てるまで―。。。
唇に柔らかな何かが触れた気がして、桐谷は目を開けた。
ぼんやりと焦点が定まったその先に、アキの顔がある。
「。。。何見てんだ」
「寝顔も超男前やな、桐谷さん。ずっと見てたいけど、もう7時やで」
「。。。。。。。。。」
に、と笑ったアキを、桐谷は抱き寄せる。
「今日はちゃんと、隣に居るんだな」
「。。。え?」
「この間は朝起きたら居なかった」
「。。。びっくりした。。。?
「びっくりしたし、悲しかった
ごめんなさい、と小さな声で言ったアキに、ちゅ、と音を立ててキスをする。
朝の柔らかな光が、部屋を包んでいた。
桐谷はアキの両頬に触れて目を合わせ、言った。
「―お帰り」
「ただいま。。。」
少し顔を赤らめて、照れたような、けれど曇りのない笑顔を見せたアキに、桐谷はもう一度キスをした。
Fin.
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