でも、それはそれ、これはこれ。この通り、機械はちゃーんと死者を復活させることが出来るんですよぉ。
傷ついた体のパーツを入れ替えて、足りないものを補って、生命を蘇生させるんです。すごいでしょう?」
ねぇ? と男は同意を求めるように彼の顔をのぞき込む。仕方なしに、彼は短く唸った。
混乱は未だとれていない。ただそのまま、彼は言葉を続けた。
「すごすぎてとても信じられない」
「でも現に、アナタは生き返ったじゃないですかぁ。そして試験は、残念ながら不合格でした」
そんな彼をよそに、男はサラッと言った。少し気の毒そうな表情はしていたが、しかしすぐに切り替えた。
「前に申しましたように、試験にはパスするまで何度でも受けてもらいます。今度の試験は午後九時からです。そして今は午後八時」
腕時計を見てそう言い、機械の傍を離れ、突っ立っている彼の背中を、前に進めと言うように押す。
「一時間後です。少し早めにお迎えにあがります。なのでアナタは時間まで、隣室で休んでいて下さいね。さ、どうぞ」
「ちょ、ちょっと。ちょっと!」
背中をぐいぐい押されて連れられつつ、ドアをくぐり、つづく階段を上されられる。
「待ってくれよ。俺、もうイヤだよ。怖いよ、やりたくないよ!」
力にあらがえないまま、彼はわめいた。
「だめです」
「そんなぁ。あんまりだろ? 俺は不合格になったんだ。素質がないんだよ、諦めてくれよ」
「一回落ちたくらいでなんですか。中には二十回も受験された方もいるんですよ」
「イヤだって。あんなのを一から繰り返すなんて、耐えられない。気が狂う!」
何が何だか分からないが、とにかくあんな思いは絶対にイヤだ。逃げようと暴れたが、男はひょいっと彼の手を掴んで固定してしまった。
彼と男では、体格的には相手の男の方がちょっと大きいくらいで大差ない。なのに、慣れているらしくずいぶん余裕だ。
こうして彼をおさえながら、男は残酷に言い続ける。
「狂っても大丈夫。その場合は殺して、ちょっと頭を調べて、そしてまた復活してもらいますから」
「イヤだあああああああ!」
「ま、頭をいじるので少々記憶が飛ぶかもしれませんが、あの機械は優秀です。ちゃーんと復活してくれますよ」
「やめてくれえええええ!」
だが抵抗もむなしく、すぐ横のドアが開かれたと思った次の瞬間、彼はある部屋の中に突き飛ばされた。
「いてっ」
「もう、暴れないでくださいよ。こっちだって抑えるの大変なんですから」
言う割に、ずいぶん男はケロッとしている。見ればそこは、前に彼が寝かされていた場所だった。シャンデリアもソファーも相変わらずの様子で鎮座している。
無様に転がる彼に対し、部屋の中には入らず、戸口にたって男は言う。
「もがいたって無駄ですよ。逃げられません。もう何度も言ってるじゃありませんか。いいですか」
「ひいぃ…」
鏡にしか見えない扉をしめ、情けない声をあげる彼を閉じ込めて。男は扉の外からまた繰り返した。
「試験には、パスするまで何度でも受験してもらうって」
「いやだぁ、助けてよ。もうイヤだよ。出してえぇ!」
「ダメです。時間が来たらお迎えに上がりますよ。もう一度、受験して…そして合格して下さいね」
「ぎゃあああああ!」
「ちなみに、前も言いましたけど。再試験の一回目は無料です。ただ二回目からは一回につき三十万かかります。
あの機械、維持費がかなりかかるんです。またその他、諸経費もあわせますからねぇ。だからそうならないように」
「待ってよぉ、お金なら払うから、だから俺を出してえええええ!」
「……」
男はもう何も言わなかった。扉に隔てられ、互いに姿は見えない。ただ扉の前から動く気配がした。
「待って、待ってよぉ。解放して、俺を解放してええええ!」
彼は泣き叫び、扉がわりの鏡を叩いたがどうしようもなかった。
ここからは出れない。逃げられない。
そして、男が言うように……また前に彼が説明をされたように、試験はパスするまで受けなければならない。
追いかけ回され切り刻まれて、刺し殺されて血だらけになる。
何度も、何度でも。合格するまで、地獄の苦しみは終わらない。
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