饭饭TXT > 海外名作 > 《桔梗庵の花盗人と貴族/桔梗庵的贵族之恋(日文版)》作者:[日]远野春日【完结】 > 【书香门第】《桔梗庵の花盗人と貴族(日文版)》.txt

文章简介

作者:日-远野春日 当前章节:15359 字 更新时间:2026-6-23 02:22

小说下载尽在http://bbs.txtnovel.com---书香门第【duansh1204】整理

附:【本作品来自互联网,本人不做任何负责】内容版权归作者所有!

桔梗庵の花盗人と貴族

トラック1

芦 名:確かこのあたりのはずなんだが、それにしても何なんだここは。銀座にこんなうらぶれた場所があったなんて…

(銀座尾張町の大通りと並行する、一本奥の狭い道。肩幅の張った男二人であれば並んで通るのもやっとと言うその裏路地には、私以外誰もいなかった。)

勝負に負けてしまったのは仕方がないが、しかし…

(なぜわたしがこんな馴染みのないところにいるのかといえば、昨日サロンで賭けポーカーに加わってしまったことが原因だった。)

楢 崎:面白いところに案内するから、明日必ず来てくれ、胤人様。それとも見知らぬ場所にお一人では怖いかな~~~

芦 名:あそこまでいわれて、おめおめと引き返すものか…「黄昏亭」ってここか。

A  :二階の部屋を取ってあるんだ、これからどうだい??

B  :どうしようかな――

芦 名:なんだ、思わせぶりの物言いをするから、どんな得体の知れない店かと思えば、いわゆる場末のバーみたいなものか。

(音楽)

優  :ねえ、重貴、ほら、今入ってきた彼。

重 貴:どうした。なんだか周りの連中も色めき立った様子だが、おまえまでそんな顔をするとは、よほど食指の動く男が現れたのか?

優  :綺麗だよ。掃き溜めに鶴って感じ。

重 貴:おお??

優  :とっても目立つんだ。ちょっと目が離せないくらい印象的。

重 貴:美形なら、女優仲間で見慣れていることだろう。役者のおまえならなあ…

(そろそろ中堅と呼ばれるようになった舞台俳優の優とは高等学校で寮生活を送ってきた頃からの仲だ。初めて寮の硬い寝台に押し倒してから7年、今では恋愛感情こそ薄れたものの、ときおり互い気が向けば、こうして男同士の待合場所に来て、2階の部屋を借りる関係が続いている。)

優  :あっ、カウンターに歩いていくよ!どこかいい家のお坊ちゃんだな、歩き方ひとつとっても品がある、プライドも高そうだ。こんな場所には不慣れそうなのに、平気を装って、無理してるところなんかそそられるね。

重 貴:ずいぶんとご執心だな、優。どの道、こういった場所に来るぐらいなんだから、ここにいる連中と大差ないだろう。どんなやつがお好みなのかは知らないが、気分が乗れば、おまえとも遊んでくれるかもしれないぜ。

優  :ちょっとその言い方はあからさま過ぎやしないか?

重 貴:なんだ?照れているのか?芸のこやしになるなら、どんな破廉恥なまねでもするおまえが……

優  :それとこれとは……でもあの彼はここがどういう店なのか知らずにやってきたんだと思うよ、誰かを探しているみたいだし。

重 貴:きれいなだけの男なら、俺はほかに知ってるぞ。

優  :んえ?

重 貴:時々暇つぶしに出かけるサロンで、少し前から顔を合わせるようになった男だ。とある家族の御曹司で、お高くとまった鼻持ちならないやつだから、親しくしたいとも思わないけどな。

優  :サロンってお金持ちが集まる社交場のこと?紳士クラブってやつだよね!!へえ~そんなにきれいな男もいるんだ。

重 貴:あの白皙の美貌は、何度見てもはっとする。最もいくら目鼻立ちがきれいでも、にっこりともしない、能面みたいなやつってな。あれにも興味を抱くのも通り越して、苛立ちさえ感じるぐらいだ。

優  :珍しいね、きみはそんな風に向きになって他人を表すのは…

重 貴:何だって??

優  :きみの口の悪さは今に始まったことじゃないけど。彼に対する口調からすると、いつもとはどこか違ったものを感じるよ。

重 貴:どこが違う?俺にはわからないぞ!

優  :冬来たりなば春遠からじ……

重 貴:おまえ何を……

優  :酔っ払った中年男が彼に近づいていく。あの男、サドっけがあるとかで、評判のよくないやつだよ。

重 貴:まったく、どんなお坊ちゃんだ??あっ、あいつ?

優  :重貴?あっ、まさか、彼が先話してた?

重 貴:ああ、そうだ。

優  :へえ、彼が……気になるなら、声をかけてくればいいじゃない?なんならここに連れきてもいいよ!

重 貴:いいや、やつがどこで何をしようと俺の知ったことじゃない。

優  :そう?ほっておいて平気なの?

重 貴:(畜生、あいつのことなんか無視すればいいのに、どうしてこう気になるんだ、まったくの無防備でこんな場所にのこのこやってきやがって。)

優  :重貴?

重 貴:あの身の程知らずをこの店から連れ出してやる。

優  :それがいいね。何なら今夜はここで分かれよう。どうせ僕明日は早朝から稽古だ。ちょっと急に個人的な稽古をつけてもらえることになってね。

重 貴:それはおまえが今憧れている相手だな。

優  :まあね。そっちの結果は、次期会うときにでも聞かせてもらうよ。っじゃ!!

重 貴:まったく、予想外の成り行きになったものだ。

酔払い:やあ~~~きれいな若さんださ~~~友達と待ち合わせかい??

芦 名:どなたですか??

酔払い:どなたですかァ?はっは!こ、こ、こいつはいい!どなたですかときたもんだ。

芦 名:(何なんだ?この男といい、この店の客といい、さっきから人を品定めをする目でじろじろと、私は見世物ではないぞ!!)

マスター、もう帰ります。お勘定を!!

酔払い:なあ…まってよ!!

芦 名:なっ、何??

酔払い:綺麗な指をしてる~~

芦 名:止めろ!!

酔払い:いったいどこの若様だ??

芦 名:手を放せ!!

(何でひざが震えるんだ?どうしてやめろと怒鳴ることもできない。情けないぞ、こんなとき体が動かないなんって。)

酔払い:なあ、もしあなたの連れがあと5分しても現れなかったらよ…

重 貴:ここにいったのか、芦名?

芦 名:千葉重貴?

重 貴:思いもよらぬ場所で、意外な顔を見るものだな!!

芦 名:(資産家の息子である千葉重貴はサロンの顔見知りの一人だ。年が近いこともあり、同じ輪に入っていることも多い、もっとも私のような世襲貴族をどこか馬鹿にした嫌いがあり、正直苦手だった。)

重 貴:って、誰かお眼鏡に適う相手が見つかったのか?

芦 名:変な誤解をよしてほしいな。私はここで待ち合わせをしているだけだ。

重 貴:ほう。わざわざこんな場所で。

芦 名:ここがどんなところか知らなかったんだ。

重 貴:なるほど。

芦 名:(千葉と二人きりだと、サロンでも大抵こんな風だ。何を話せばいいのか思いつかず、気が付くと、気まずい雰囲気になっている。かといって、席を立つのは負けを認めて逃げるようで、いい気がしない。つまらない意地を張っているとはわかっているのだが…

今、何時だ??

重 貴:五時半になったところだが?

芦 名:そうか。待ち合わせの時間から半時も過ぎたか…

重 貴:この期に及んで、まだ待ち合わせと言い張るのか、おまえは?

芦 名:きみは一昨日サロンに顔を出さなかったから、私がやむを得ず賭けポーカーをする羽目になったことを知らないだろう?

重 貴:それで負けて、金の代わりにここに付き合えと言われたと言いたいわけか?

芦 名:きみはいつも嫌な言い方ばかりする!

重 貴:おまえが素直に認めないからだ。ここに男を漁りに来たとなぁ!!

芦 名:違う!誰でも彼でも自分と同じきょうらく享楽的な悦楽主義者だと思うのは失礼だ!

重 貴:まぁ、熱くなるなよ。確かに俺は悦楽主義者かも知れないが、おまえみたいに体面ばかり気にして、うわべ上辺を取り繕うような卑怯な真似はしないぞ。

芦 名:だから、私は自分の意思でここに来たわけではいないと言っている。少しは人の話を耳に入れたらどうだ?かつて一度でも私がきみにうそをついたことがあったか?

重 貴:というより、実は俺はおまえのことほとんど知らないんだ。おまえが俺をよく知らないのと同じでな。

芦 名:あいにくだが、私はきみを知りたいとは少しも思わない。

重 貴:そうか。助けてもらったくせに、たいした物言いだな。だったら、今からお互いをよく知り合おうじゃないか?

芦 名:な、何だと……?

重 貴:胤人。芦名家といえば、現当主、つまりきみの父上である芦名弦市朗子爵の品行方正さととく篤し志か家ぶりで有名だ。

芦 名:なぜ父上の名を……

重 貴:そういう立派の家の跡継ぎが、男欲しさにいかがわしい待合い場所に出入りしていると世間に知られたら、さぞかし面目ないだろうな?

芦 名:でも、……それは全然事実じゃない。

重 貴:(おー、芦名家の名を出したことは、思ったより効果があったようだな。こいつも所詮家名に縛られたお坊ちゃんの一人というか。まあいい、さっさと脅してしまうとしよう)

真偽など関係なく、面白おかしく広がる。噂とはそういうものだ。

芦 名:一体、何が目的だ??

重 貴:わかっているはずだ。

芦 名:わからない。

重 貴:俺の口を封じておきたいのなら、代償はおまえ自身にしよう、ということさ。

芦 名:あっ!?

重 貴:どうした?声も出ないか?まあ、これでも飲んで落ち着けよう。

芦 名:卑怯だ!

重 貴:それがどうした?言っておくが、俺はここに出入りしていることを誰にも隠し立てしていないんだ。サロンの連中はまだ知らないだろうが、ばれたところで構わない。

芦 名:きみの家はどうなんだ?千葉家ではこんなところに出入りして、あまつさえ人を脅して不埒な振る舞いをすることを許しているのか?

重 貴:うちは元々武士の出なんだ。武士は武士でも華族の称号までたまわ賜れなかった下級だがな。一族も三男の俺に寛容で、両手が背中に回るような不祥事さえ起さなければ、多少のことは目をつむ瞑る。

芦 名:それは素晴らしく寛容だな!

重 貴:付加えれば、侍にとって男色は嗜みのようなものだ。特に珍しいことじゃない。それに今回は合意を求めた上でことに及ぼうというのだから、少なくとも強姦ではないはずだ。

芦 名:この……、厚顔無恥!

重 貴:くっくっくっ

芦 名:じきにその無謀の言動を後悔させてやる。

重 貴:(この期に及んで、まだ減らず口をたたくとはなあ。一度ぐらい真相の花に泥を引っ掛けて、怪我してみるのも面白いと思ったが、徹底的に思い知らせてやりたくなってきたぞ!)

さぁ、今ならまだおまえに寛大になれる。俺の機嫌がこれ以上悪くならないうちに、今後俺が飽きるまで、その体を預けると約束をしろ。

芦 名:なんでそんな……?

重 貴:そういえば、ちょっとした知り合いに、しゅう醜ぶん聞専門のきょう恐かつ喝屋がいるらしいんだが、そいつに頼んで芦名子爵の後継ぎ息子の噂を……

芦 名:やめろ!

重 貴:だったら、うんと言えよ、胤人。

芦 名:……わかった。きみの、言う通りになる。

重 貴:いいだろう。来い。二階に時間貸しの部屋がある。

芦 名:(そこは三畳程度の広さの板の間だった。堅いマットレスを敷いた寝台だけ置かれた情緒もないも部屋だ。隣の建物の電飾看板がシーツにちかちかと光をちらつかせ、さながら安っぽいショウの舞台を思わせる。)

重 貴:脱げよ。

芦 名:きみはもう少し余裕のある振る舞いをするのかと思っていた。ちょっと失望したかも。

重 貴:言いたいことはそれだけか?俺に向かって生意気な態度を取れば後悔することになる。謝るなら今のうちだ。

芦 名:なぜ私が?

重 貴:(おう、ここに来てもなお気丈に振る舞おうとするとは、見た目によらず気骨があるようだ。だがしょせんは虚勢に過ぎない。華族の若様の意地をどうやって剥ぎ取ってやろうか)

芦 名:あっ!止めろ……いやだ!

重 貴:俺は嫌や否は聞きたくない。

芦 名:放せよ、千葉。やっぱり私はいやだ。できない。

重 貴:意外と往生際の悪い男だな。心配しなくても、ちゃんとおまえを気持ちよくさせてやる。癖になってやめられなくなるほど悦楽を、俺がたっぷりと味わわせてやろう。

芦 名:いらない。そんなこと……ん……んん、っ……あ、う、……うっ

重 貴:そろそろ脱ぐ気になったか?それとも、俺の手で剥ぎ取られたいのか?

芦 名:……どちらもごめんだ!

重 貴:なるほど。それもそうだな!

芦 名:千葉…うわっ!

油断させるとは卑怯だぞ!!

重 貴:卑怯もくそもあるか。ここまでついてきたのはおまえ自身だ。今さら待ったは聞かない。

芦 名:放せ!私の上からどけ、無礼者!!

重 貴:悪いが、俺も決して気の長いほうじゃないんでな。腕を縛らせてもらうぞ!

芦 名:こんな、こんなこと、許さない!放せよ!

重 貴:素直になれないおまえが悪いんだろう!

芦 名:や、止めろ、千葉。こいつを解け!こういう形は私を征服できると思うなら大間違いだ!きみはもう少し冷静で、誇り高い男かと思っていた。

重 貴:あいにくと、庶民の俺はおまえたち華族のように無益な見栄は張らないんだ。俺は今、無性におまえが欲しい。ほら、もうこんなになってしまっているからな!

芦 名:ああ……やめろ!そんなものを押し付けるな!

重 貴:怖がるなよ。俺はおまえを可愛がりたいだけだ。

芦 名:本当に、脅されなくてはいけないようなことは何もしていない。

重 貴:俺には事実など関係ないことだ。体面を守りたいんだろう?

芦 名:このまま野卑の行為を続ける気なら、私はきみを一生軽蔑してやる。

重 貴:しろよ。せいぜい俺を憎め。俺はおまえの体だけ好きにできればいいんだ。心まで求めるつもりはない。

芦 名:なら、もう、勝手にしろ……私も男だ。孕ませるわけじゃないし、一晩で忘れてやる。

重 貴:ははは。気の強いお姫様だ。

芦 名:ああ……っ、う

重 貴:胸が弱いのか?ひどく感じやすい体をしているみたいだな。

芦 名:ん…んんっ、……いやだ……

重 貴:いやじゃないだろう?胸のここ硬くなっているぞ。

芦 名:……い、たい……もう痛い

重 貴:痛くても感じるんだろう。

芦 名:か、感じない!

重 貴:嘘をつくな!こっちの方もずいぶん硬くなってるじゃないか。

芦 名:いやだ、ああっ、あ

重 貴:感じていると認めろよ。ここはお上品なサロンじゃない。俺とおまえしかいないんだ。

芦 名:は……あ……

重 貴:触ってくれと俺に頼め、胤人。そうすれば楽にしてやる。

芦 名:…触って……

重 貴:やっと協力する気になったようだな。それじゃ、腰を浮かせろよ。意外と立派だな。俺の顔を見ろよ、胤人。

芦 名:こんなこと許さないぞ!

重 貴:なんだ、その目は?まだ懲りていないようだな?

芦 名:いいから、早く済ませて、私の上からどいてくれ!

重 貴:ふん、いいだろう。仰せのままに、だ!

トラック2

宗 篤:お起こしてしまいましたか、兄上?

芦 名:むね宗あつ篤……

宗 篤:すみません。寝苦しそうになさっておいでしたので、熱でもあるのかと、こうして額に手を…

芦 名:(そういえば、私は夕べ…)うっ…!

宗 篤:だ、大丈夫ですか!

芦 名:なんでもない!

宗 篤:兄上…それにしても夕べは驚きました。滅多に酒を嗜まれない兄上が、おひとりでは歩けないほど酔ってお戻りになるとは。千葉様がご一緒で安堵いたしましたよ。

芦 名:千葉は何か言っていたか?私を送り届けてくれた後、すぐに帰ったのか?

宗 篤:ええ、ぜひともお茶でもと父上や母上共々お勧めしたのですが、千葉様は今夜はもう遅いのでまた日を改めてと、固辞なさいました。

芦 名:それだけか?

宗 篤:帰り際、飲ませすぎてしまい申し訳なかった――とおっしゃられておりました。あとは特に何も。

芦 名:そうか……

(あいつめ、人の体をもてあそんだあげく、親友気取りの恩着せがましい。きっと父上は私がだらしなく酔い潰れ、千葉に迷惑にかけたと思っているに違いない。事実はまったく違うのに!悔しい、腹が立つ!)

宗 篤:でも、たいしたことがなくて本当によかったです。昨晩の兄上のお顔驚くほど蒼白で、表情も苦しげでしたから。

芦 名:心配をかけたな。もう大丈夫だ。

宗 篤:兄上、少し熱があるようですが……

芦 名:大丈夫だと言っている。おまえは、私のこと心配しすぎた!

宗 篤:出すぎたまねをして、申し訳ありません。(ノックの音)誰か?

馬 渡:馬渡でございます。

宗 篤:ああ、すぐに行く。

芦 名:(優しくて、思いやり深く、私と違って、体も丈夫の弟を前にすると、いつも劣等感を刺激されてしまう。誰が見ても、芦名家の跡継ぎにどちらかふさわしいか、一目瞭然だからだ。だから私は、つい弟に冷たく当たってしまう。我ながら情けない話だ。

宗 篤:兄上、千葉様がお見舞いにいらしたくださったそうです。

芦 名:えっ?

宗 篤:いかがなさいますか?まだお加減が悪いようでしたら、私が千葉様の相手をいたします。

芦 名:いや、いい。私が会おう!

宗 篤:兄上、ご無理を……!

芦 名:いいから、こちらにご案内しろ。それから、千葉と二人だけで話したい。

宗 篤:わかりました。すぐにご案内いたします。

芦 名:(千葉のやつ、何をしに来たんだ?昨日のことは二人だけの秘密だと確かに言っていたが、信用できるのか?あんなことが父上の耳に知れたら、私はおしまいだ。)

重 貴:いい部屋だな。さすがは芦名子爵家の跡継ぎだけある。

芦 名:来るな。それ以上私に近づくな、千葉!

重 貴:俺のことは重貴と呼んでいいと言っただろう。心外だな。そんなに怖がることはないだろう?

芦 名:……頼むから、今日は帰ってくれないか……

重 貴:弱って、台に臥しているおまえも色気があるな。

芦 名:誰のせいだ。宗篤…弟と、何を話すつもりだ?

重 貴:さぁな。おまえも、俺に盾突くことより媚びることを覚えろ。……まさか、昨夜の一度で俺が手を退くと思ったわけではあるまい?

芦 名:嫌だ!もうあんなこと、二度と断る!

重 貴:なら、俺はおまえの弟とどんな話してもかまわないわけだな。

芦 名:そんな…卑怯だぞ。

重 貴:どうした。弟に対してえらく過敏だな?押さえつけられてせっ接ぷん吻でもされたか?

芦 名:ばかばかしい!

重 貴:いや、その美貌だ。ありえないことでもあるまい。おまえを弟になど渡せないな!

芦 名:だから、私はっ……い、痛い……!

重 貴:おおっと、悪かった。

芦 名:えっ?

(そういえば、昨日もやりたい放題したくせに、その後、あやすように髪を撫で続けてくれた。無体なことをしたり、やさしさを見せたり、いったいどれが本当の千葉重貴なんだ?)

重 貴:どうした?

芦 名:あっ、なん、なんでもない。

重 貴:そうか。

芦 名:うう……やめて、お願いだから、……んっ、う

重 貴:このまま、押し倒そうか?

芦 名:嫌だ!

重 貴:おまえも強情だな。もう少し素直な振りをすれば、俺も許してやる気になるかもしれないというのに。

芦 名:十分、私を好きにしたはずだ。この上何を求める?

重 貴:とりあえず、普通に体が動かせるようになるまでは勘弁してやる。怪我をさせなかったつもりだが、初めてのおまえに酷だったことは確かだ。よく効くと評判の薬だ。塗ると少しは楽になる。

芦 名:……本当?

重 貴:信じる信じないはおまえの自由だ。明後日の夜だ、迎えの車を寄越す。

芦 名:……

重 貴:それでは、また。

芦 名:(言うだけ言い、したいようにした、千葉は部屋を後にした。結局、私は己の立場を再確認させられた。最後は何を言っても、聞き入れてもらえないとあきらめ、千葉が置いていた薬を握り締めていた。)

宗 篤:兄上との話はお済ですか?

重 貴:(こいつ、いつからここに?まさか聞き耳を立ててと思えないが、温室育ちの兄と違って、この男からは一筋縄ではいけない強かさを感じてならない。)

宗篤くんだったね。兄上とはあまり仲はよくない?

宗 篤:私は兄を好きですが、兄は私があまり好きではないようです。

重 貴:おう?できのいい弟に嫉妬でもしてるのか?

宗 篤:いいえ、きっと、怖がられているのでしょう。

重 貴:怖がられている?

宗 篤:隙あれば、と狙っていましたから。

重 貴:あっ?

宗 篤:兄も薄々私の気持ちを察しているのだと思います。本能的に感じているだけなのでしょうけど。

重 貴:なるほど。

宗 篤:もっとも、実の兄弟なので、私もなかなか踏み越える勇気を出せなくて――どうやら、千葉さんに先を越されてしまったようです。

重 貴:すべてお見通しというわけか?きみは俺が兄上を好き勝手に扱うのは不服だろうな!

宗 篤:まぁ、どうせなら、心のある方に奪っていただきたかったかもしれません。今の兄に必要なのは、本当にぶつかり合える人間ですから。

重 貴:遊びの息を出ない俺では不服だと?

宗 篤:いいえ、私には禁忌を犯すだけの度胸はなかったと思うので、他の誰かにと奪られること自体は仕方がないと割り切っています。

重 貴:達観しているな、きみは。

宗 篤:さぁどうでしょうか。自分で言うのもなんですが、兄に対して本当におかしな感情を持っていました。誰かが先を越してこなければ、ずっとこんな気持ちを抱えたのでしょうから、正直、千葉さんには救われた気持ちですよ。

重 貴:本気か?

宗 篤:勿論本気です。ですから、できれば、兄を遊びとしてでなく見ていただきたい。

重 貴:よくわからないな、なぜそこまで兄に肩入れする?うわさでは芦名家の跡継ぎにはきみのほうがふさわしいという声も多いと聞くが。

重 貴:きっとそのことに責任を感じているからだと思います。私のせいで、兄はあそこまで家名にとらわれ、誰に対しても、固くな態度をとるようになってしまったから。馬渡、千葉様はもうお帰りだそうだ。

馬 渡:はい。お車までご案内いたします。

重 貴:また寄らせていただくよ、宗篤くん。

宗 篤:兄共々よろしくお願いします。もし兄を呪縛から解き放ってくれたら、私は千葉さんのことをもっと好きになれると思いますよ。

重 貴:ご期待に添えるかどうか。まあ、俺もそのうち本気になるかもしれないな。

(まったくおかしな兄弟だ。実に退廃的で、ある意味、家族らしいとも言えるな。どの道俺は胤人を飽きるまで抱ければそれでいいさ。)

トラック3

碩 徳:そう言えば、重貴、きみ、最近とみに芦名と一緒にいることが多いようだが、なにか心境の変化でもあったのか?

重 貴:べつに。たまたま二人で話をする機会があってから、芦名も少しは俺と打ち解けられるようになったんだろう。

碩 徳:俺はてっきりきみたちはあい相い容れないと思っていたよ。

重 貴:今でもそれほど親密なわけじゃない。

碩 徳:じゃあ俺の勘違いかな。

重 貴:何が?

碩 徳:まあ、気にするな。

重 貴:(クラブの常連である、画廊を経営する碩徳はいつも飄々としていて、喰えない男という印象が強い。年は一つしか違わないのに、ともすると、年齢以上の大人びた雰囲気があった。)

  せき碩とく徳、芦名のことで何か俺に言いたいことでもあったのか?

碩 徳:いや、最近芦名の雰囲気が変わったなぁと思っただけだよ。そこで思い当たったのはきみだ。ここのところ、よく二人で会っていると耳にしてね。

重 貴:芦名の雰囲気がどう変わったんだ?

碩 徳:さぁ……何というか、妙に艶っぽくなった感じかな。

重 貴:ああ。

碩 徳:きみが彼に婦女子との付き合い方でも伝授した?

重 貴:どうかな?

碩 徳:まぁ、何があったにせよう、俺は最近の芦名の方が好きだな。ようやく血が通って来た感じがしてさ。今の彼、ぞくぞくするよ。絵心のある人間なら、描きたい、と思うだろうな。

重 貴:そんなに言うなら碩徳が描けばいい。

碩 徳:俺は絵を売る側の人間だ。多少は嗜むけれど、俺のかく絵は趣味の域を出ていない。

重 貴:そいつは残念だったな。碩徳が描くというのなら、芦名も知り合いのよしみでモデルになってくれたかもしれないのに。

碩 徳:本気で言ってるわけじゃないんだろう?

重 貴:むろん、冗談だ。

碩 徳:きみも人が悪い。

重 貴:俺の知る限り、芦名は相変わらず無愛想でプライドの高い、可愛げのない男だ。絵の鑑賞はしても、人から頼まれてモデルになるなど、考えたこともないだろう。

碩 徳:おや、噂をすれば影だな。おい、芦名、何だか顔が赤い様だが、熱でもあるじゃないのか?

芦 名:そうか。重貴……話がある。出ないか?

重 貴:せっかく来たんだ、座れよ。

芦 名:私は時間がない。

重 貴:なら、さっさとひとりで帰るんだな。

芦 名:早く、こんな物、早く抜いてくれ。

重 貴:ずいぶん息が荒いじゃないか?感じているのか?

碩 徳:おいおい、どうしたんだよ、おまえたち。喧嘩でもしているのか?

重 貴:いや?今夜、ここに来れば俺がお屋敷まで送って差し上げると約束していたんだ。ところが、若様は虫の居所がお悪いらしく、今すぐ帰りたくわがままをおっしゃって…

芦 名:千葉、勝手のこと言うのは……

重 貴:だが碩徳が勧めたら、椅子に座ってコーヒー珈琲の一杯くらいお飲みになるんじゃないか?

碩 徳:そうだな。きみは少し休んでから帰ったほうがいいようだ。

重 貴:芦名、碩徳も心配している、座れ。

芦 名:あっ!

重 貴:早く二人になりたいのなら、おとなしく言うとおりにしろ。

碩 徳:飲み物を頼んでくる、芦名は珈琲でいいよな。

重 貴:辛いか?

芦 名:もう……たくさんだ……

重 貴:もう少し辛抱しろ。うまく取り繕わないと、あそこでキューを握っている医者が診察しようと言い出さないとも限らないぞ。体を見られたら困るだろう?それともおまえの中に突っ込んだ物を、ここで抜いてもらって楽になるか?

芦 名:やめろ。

重 貴:桔梗庵に戻って、二人きりになったら、いつも通りたっぷり可愛がってやるよ。そう言えば、さっきもいった途端に気を失ったような。

芦 名:言うな。

重 貴:だからつい悪戯してしまったんだが、ところで、帰りは馬車と自動車どっちがいい?

芦 名:……自動車。

重 貴:馬車にしよう。

芦 名:だったら、最初から聞くな!

芦 名:(こうじ麹まち町く区の一角にある桔梗庵は、江戸のたたずまいを残した日本家屋で、元は重貴の祖父のしょうたく妾宅だったらしい。今は重貴の住まいとなっており、「黄昏亭」での一件からずっと私はここで辱めを受け続けていた。)

重 貴:いい格好だなあ。そうして俺に尻を向いていると、まるで獣みたいだ。

芦 名:(桔梗庵に戻った私は、すぐに裸にされ、四つん這いで尻を高くあげるという屈辱的な格好させられていた。)

きみがそうさせたんだろう。

(自分では見えないが、きっと尻の中からは……)

  抜いてくれ、早く!

重 貴:慌てるなよ、これは祖父がその道の専門家に依頼して作らせた玩具なんたが、おまえのここ、しっかり銜え込んでいるじゃないか。

芦 名:や、……やめてっ、……ひ、あ、あああ

重 貴:馬車の中で、感じまくっていたようだなあ。気取りたくった普段のおまえより、裸になって淫らが格好で喘ぐお前のほうが、俺は数段好きだ。もっといろいろしたくなる。

芦 名:もう、取って、お願いだから、重貴、……抜いて……

重 貴:これを抜くにはおまえを縛っている腰紐を解かないといけないんだ。

芦 名:私には無理だ。

重 貴:当然だ。これは知り合いの縄師に教えてもらった、特殊な結び方だからなあ。歯が立たないと分かったから、書き置きに従ってサロンに来たんだろう。

芦 名:そこまで分かっているなら、早く解いてくれ!

重 貴:可愛げのないやつ。いっそこのまま屋敷まで送って、おまえの弟に縄の解き方を教えてやろうか?

芦 名:やめろ、そんな!

重 貴:安心しろ。抜いてやるよ。縄は外したぞ。後はおまえがいきんで出してみるか?

芦 名:いやだ。冗談じゃない。

重 貴:おっと、急に動くな!

芦 名:……頼むから、もう……どれだけ私を辱めたら気が済むんだ……

重 貴:おまえが強情だから、最後はいつもこんなふうに泣くはめになるんだろう。

芦 名:最低だ。

  (どうして、いつも無駄な意地を張ってしまうんだろう。結局は痛い目にあうと分かっているのに。あっ、もしかして、心の奥底では重貴の気を引きたかっているのか?いや、そんなことあるはずがない。)

重 貴:何か言ったか?

芦 名:いや、何でも。

重 貴:取ってほしければ、布団の上に俯せになれ。

芦 名:ああ……っ

重 貴:いい眺めだ。

芦 名:や、めて…

重 貴:すごいな。ぐっしょり濡れているのに、おまえの中が絡みついて抜かせないようにしているぜ。

芦 名:違う、早く、早く抜け、重貴!

重 貴:ふん。こんな時でも命令口調か

芦 名:ああっ!もう、いや、もう……もう、これ以上なぶ嬲られるのは、いやだ。

重 貴:そんなに泣くくらいなら、少しは立場をわきま弁えることを覚えたらどうだ。俺は年下から命令されるのは大嫌いだ。抜いてくださいと頼み直せ。

芦 名:ぬ…いて……ください。

重 貴:いいだろう。もう懲りたか?いや、淫乱なおまえのことだ。案外気持ちよくて、またして欲しいと思っているのかもしれないな。

芦 名:勝手なことを……

重 貴:どうかな。ここはいい解れ具合だぜ。

芦 名:ああっ、しないで。もう辛い。

重 貴:まだこれからだろ。

芦 名:……お願いだから、酷くしないでくれ。

重 貴:優しくするから力を緩めろ。

芦 名:んんっ、……う、あっ

重 貴:もっとよくしてやる。

芦 名:……あああ、あ

重 貴:ようさそうな顔しているな。おい、顔をよく見せてくれ。

芦 名:ああ、んっ、あ、んっ

重 貴:その姿勢で苦しいんじゃないのか?

芦 名:あ、ん…あっ……いやっ……で、出る……!あああ、いくっ……ああ……はあ……は…

重 貴:はあ……んんっ……く

  それほど悪くなかっただろう?いや、気を失うほど刺激は強かったってことか。 (こうして事の後に抱き合っていると、まるで、好き合っている恋人同士だ。考えて見れば他の男とこんなふうにしたことはなかった。あっ!まずいな、抱いているうちにいずれ情も出てくるだろうと予想はしていたが、この感情の高まりかとは、それとは違う気がする。まさか…この俺が本気に?確かに、狙った相手を脅すのに、ここまで本気になったことはなかった。そろそろ潮時かもしれないな。これ以上深みに嵌るのも面倒だ。)

トラック4

宗 篤:読書がもうお止めになるのですか?兄上。

芦 名:宗篤。

宗 篤:ここのところ、ずっと屋敷に引き籠ってばかりで、あまりお出かけになりませんね。どこか体調でもお悪いのですか?

芦 名:べつに。

宗 篤:千葉様とは、仲違いでもなさったのですか?

芦 名:どういう意味だ?

宗 篤:いえ、特に深い意味はありませんが、ここしばらくお会いしていないのでは、と思いまして。

芦 名:(淫らの道具で辱めを受けたあの日以来、重貴からの呼び出しがふっつりと途絶えていた。その間、私は一人悶々と悩み続けていた。重貴との関係に、けりをつけるべきかとうか。)

宗 篤:私は千葉様を大層気に入っているのですが、兄上はお嫌いですか?

芦 名:好きとか嫌いとか、考えたこともない。

宗 篤:そうですか。残念ですね。

芦 名:ふん。

宗 篤:千葉様のことがどうのこうのという以前に、どうやら兄上は、私が傍にいることがお気に召さないようですね。

芦 名:誤解だ。

宗 篤:さぁ、どうでしょう?

芦 名:あっ!

宗 篤:ほらやっぱり。誤解だと言うなら、どうして私から身を遠ざけようとなさるのですか?兄上はつれない。私が千葉様ならきっともう少しうまくやるでしょう。

芦 名:宗篤!何が言いたい?

目录
设置
设置
阅读主题
字体风格
雅黑 宋体 楷书 卡通
字体大小
适中 偏大 超大
保存设置
恢复默认
手机
手机阅读
扫码获取链接,使用浏览器打开
书架同步,随时随地,手机阅读
首 页 < 上一章 章节列表 下一章 > 尾 页