饭饭TXT > 海外名作 > 《匣の中の失楽(日文版)》作者:[日]竹本健治【完结】 > 【《匣の中の失楽(日版)》@txtnovel.com.txt

第 9 页

作者:日-竹本健治 当前章节:15809 字 更新时间:2026-6-23 02:20

 杏子が叫んだ時、既にその羽虫の唸りのような高い音は、はっきりと皆の耳にも聞きとれた。

 無言のうちに布瀬と根戸が扉の方に駆け寄り、恐ろしいばかりに押し黙ったまま、合鍵を鍵穴にさしこんだ。それは布瀬以下六人の者にしてみれば、ほんの二時間ほど前の出来事の繰り返しだった。時間がそっくりそのまま、何かの故障で果てない空まわりを始めたのではないか。そんな刹那の想いは、扉が開け放たれた次の瞬間、一層皆の頭を|撲《う》ちのめした。

 部屋のなかにはまたしても、誰の姿もなかったのである。もとより、どこかしらに開いた筈の〈第四の扉〉も、今は既にその姿を留めてはいない――。

[#ここから3字下げ]

4 羽虫の正体

[#ここで字下げ終わり]

 それでも今度は真沼の時と違い、合鍵も用意されていたこともあって、扉を開いた時にも羽虫の唸りはやんでいなかったために、皆の頭には今にもその姿を消しつつある〈第四の扉〉のイメージが離れずにあった。

 床か? 壁か? 天井か?

 愚かしく眺め渡す一同に、三度目の鞭は背後から襲った。

「あ――ははははは、あはは――ははは……」

 牧神の笑い。あるいはそれは、彼ら自身の自嘲の変現だったのだろうか。書斎から慌てて『黒い部屋』に彼らが戻った時、心地よいほどの哄笑をあげてもう一方の扉からはいってきたのは、ほんの三十秒ほど前に書斎に消えた筈のホランドだった。ナイルズは赤茶、ホランドは青緑のサマー·セーターを着ており、先程書斎に消えた方は、確かに青緑のそれを皆の眼の前に|閃《ひらめ》かせたのだが、未だ刺すような笑いを留めることができずにいるこの少年のセーターもまた、間違いなく鮮やかな青緑に染められていた。

「あっははは、どうだいナイルズ、僕にだってこれくらいの魔術はできるんだよ」

 布瀬のうしろでポカンとしているナイルズにそう声をかけると、ホランドは再びくっくっと忍び笑いを洩らす。その異様な顛末は、確かにお|誂《あつら》え向きの黒ずくめの舞台で繰り展げられた魔術以外の何物でもなかっただろう。呆気にとられてただ|竚《たたず》みつくす一同に、やはり小悪魔のような|婀娜《あだ》な一暼をくれると、少年はその紅い脣を、まだ判らないのかい、とでもいったふうにきゅっと

 曲げてみせた。

 そういえば――と倉野は思った。そもそもナイルズとホランドという、この双生児達に与えられたニック·ネームは、トマス·トライオンの『悪を呼ぶ少年』という恐怖小説に由来するのだが、あの小説のなかにも、今のこの場と同じような場面があったような気がする。そうだ、あの小説のなかの双子も奇術を演じると言っていた。カーニヴァルで見た中国奇術をそっくりまねて、大きな倉庫のなかで奇術を。あの時には抜け穴があったのだ[#「あの時には抜け穴があったのだ」に傍点]。……

「やれやれ、どうやら皆さん、さっぱり判らないという顔だね。教えてあげようか? 〈第四の扉〉が開いたのは、ほかでもない。あのベッドの下なのさ」

 とすると、布瀬さえ知らないうちに、あのベッドの下の薄暗い空間には、何者かの細工が施されてあったのだろうか。

「そんなバカな」

 しかし、そう叫ぶ布瀬の声にも力はなく、部屋のなかは故知れぬ膚寒さに包まれた。

 ――そうだ。そんなことではない。あの小説とこの場とは違うのだ。どこが違う? と、すると。

「判ったわ」

 一瞬早く声をあげたのは杏子だった。その時まで見せていた気弱なそぶりは既にもう彼女の奥深くに押しやられていて、表にあるのはいつもの|驕慢《きょうまん》な美しさだった。

「探偵小説狂でないところが却ってよかったのかしら、最初のうちはびっくりしてしまって、何のことか判らなかったけれど、落着いて考えれば何でもないことだわ。……ふふ、あなた達も、なかなかの役者さんなのねえ」

 そう言いながらつかつかとホランドの方に歩み寄ると、ついと|嫋《たお》やかな手を少年の腹に伸ばした。そうしてくるりと青緑のセーターを裏返すと――

「あっははは、いやあ、意外だったなあ。杏子さんに真先にトリックを見破られるなんて、みんな駄目じゃない」

 青緑の裏側には紛れもない赤茶があり、さっきまでのホランドの口調もすっかり消えて、そこには無邪気な笑みを湛えた、ナイルズ以外の何者でもない少年が居た。

 あッと言って振り返ると、布瀬のうしろで先程までぼんやりとしていたナイルズも、もう既に不思議な光を瞳に宿すホランドに変っていて、彼もゆっくりと、嘲けるように自らの服を捲ってみせる。赤茶の裏にはやはり青緑があった。

「じゃあ、あの音は?」

 気がつくと未だに、あの羽虫の唸りは続いていて、布瀬達が再び書斎を覗きこむと、最前はあり得る筈もない〈第四の扉〉に気を取られて気づかなかったのだが、それは確かにステレオのスピーカーから流れ出ていた。

「そうか。これは|発振《ハウリング》の音だな」

 倉野が叫ぶと、

「さすが倉野さん、薬学部」

 訳の判らないことを言いながらステレオのスイッチを切り、ナイルズはもう一度全員を『黒い部屋』の方に押し戻した。

「これはホランドの思いついた手品なんだ」

 皆を椅子に腰かけさせ、余った者には立たせると、えへんとばかりに咳をひとつくれてから、ナイルズはホランドと共に説明をし始めた。

「手順はもうみんな判ったでしょう。……まず、ホランドが書斎のなかにはいって扉に施錠する。急いでこのサマー·セーターを裏返しに着て……あはは、実は僕とホランドが赤と青を別々に着て来たのは全くの偶然だけど、それにしても効果的だったよね。――それから例の音を出すようにステレオに細工する。何、簡単なことなんだ。マイクをアンプに接続して、音量とマイクの位置さえ適当に調節すれば、スピーカーからの音がマイクにはいり、それが増幅されて再びスピーカーから出、それが再びマイクに……というハウリングが起こって、しーん、という音が出る。布瀬さんの形容によれば、羽虫の|蜚《と》びかうような、白蟻が木材を喰い荒すような高い音、というのはこれだったんだよ。

「はてさて、そういう具合にステレオをセットしておいて、ベッドの下にもぐりこむ。こっちの僕としては、わざと目立つようにオロオロしておいてから、例の羽虫の騒めきが聞こえてきて、みんなの注意が完全にそちらに向けられたあと、鍵をあけようとする時を見計らって、反対側の扉から外に出るんだ。みんなが扉を開いて書斎に雪崩れこみ、ホランドがいなくなってびっくりしてるあいだに、僕は急いでセーターを裏返しに着ておく。そしてさっきの〈第四の扉〉に惑わされて、|咄嗟《とっさ》に何もできずオタオタしているみんなが、ベッドの下まで調べようとする前に、僕が消えた筈のホランドとなって登場するという訳なんだ。……ひとしきり笑ってみせて、今度は僕が皆の注意をひいているその隙に、ホランドの方はベッドから芋虫の如く匍い出して、そっと布瀬さんの背後に寄りそったのさ。勿論、ここで必要なのは互いの演技力と呼吸だけど、そこは僕達、双子だものね。――あっはは、見事に皆さん騙されて、不思議な魔術の完成だよ。……どう? 説明してみりゃ、馬鹿馬鹿しいトリックでしょ。こんなのを探偵小説もロクに読んだことのないっていう杏子さんに真先に見破られるなんて、本当にどうかしてるよ。尤も曳問さんだけは、僕らがここに来る前に着更えするところを見てるから、最初っからみんな判ってて見物してたようだけど」

 そう説明し終わると、またぞろ納まりきれずに文句をつけ始めたのは、果たして甲斐だった。

「それで一体、どうしたというんだ。真沼にもそっくりの双子がいたとでもいうのか。それとも真沼はやっぱりベッドの下にひそんでいて、我々の気づかぬうちに、こっそり抜け出したとでもいうつもりか。……フフン、現場に居なかった者はこれだから恐い。まるで子供騙しだ! 我々をペテンにかけて喜んでるのは可愛いが、事件の真相ってのはそんなものじゃないぜ」

 自尊心を傷つけられることを極端に嫌う攻撃的な性格によってか、全体の均衡を欠いた醜い貌をさらに醜く歪めさせるだけでその恐ろしさは充分だが、|乱杭歯《らんぐいば》を剥き出し、唾を飛ばしながら|喚《わめ》くさまは、全く壮絶と言うほかなかった。

 しかし、その甲斐の剣幕に多少|怯《ひる》みはしたものの、ナイルズの方も決して負けてはいない。

「そうは言っても、さっきの手品に何の意味もなかった訳じゃないことは、甲斐さんだって認めるでしょう。少なくとも羽虫の正体は明らかにされたんだから」

「そう」

 と、ホランドもつけ加えて、

「ハウリングって、二般に耳障りなキンキンする音のイメージだけど、あのアンプはマイクの方も別個に音域調節ができるからね。しかも音量も音調も変化なく、微かな音で長時間流され、その上扉こしに聞かされるものだから、摩訶不思議な正体不明の音になってしまったんだ」

「そういうことだよ。そりゃあ後はちょっとした悪戯だったけど、まさかペテンにかけるなんて……」

「ふふん、全くそうだぜ、甲斐。ナイルズ達の演じてみせた|籠《かご》抜けのトリックは、そのままでは実際の事件の方には応用できそうもないが、何らかの示唆を含んでいるような気もするではないか。おまけにこのトリックは、『続·幻影城』の『類別トリック集成』にもはいってなかったと記憶するんだがね」

 布瀬は双子組にそう荷担すると、

「ふむ、そうするとさっきの魔術ショウもなかなかだったと思わんかね。いや、実は吾輩もあれによってひとつの天啓を得たのであってね、むしろ感謝したいくらいのものだよ」

 そう言って人差指で気障な鼻髭の下をそっと撫でると、急に想い出したように倉野が、

「天啓――? あっはは、どこかで見たような、聞いたような、と思ったけど、ナイルズの『いかにして密室はつくられたか』にそっくりじゃないか。あのなかでも布瀬、君が真先に真相を見抜いたなんて騒ぎまわるんだったね。ナイルズもなかなか先取りの才能があるんだね」

「騒ぎまわる、はないぜ。何だね、そうすると吾輩の推理力を信じてないとでも?」

「いや、そういう訳じゃないよ。ただ残念なのは、僕自身がやっぱりあの小説と同じにまるで見当がついてないってことなんだ。どう考えても判らない。……人間が部屋のなかから完全に消失してしまうなんて、僕には今もって信じられないんだよ。……しかしまあ、いつまでそう言ってても仕方ないから、とにかく一歩二歩考えていかなくてはね。――さて、僕の記憶によれば、合鍵であの部屋にはいっていった時には、確かにアンプにはマイクなど接続されてなかったんだが」

「そう」

「だとすると少なくともあの音が聞こえていた時までは、あの書斎に何者かがいたのは確実だろう。それより以前に脱出してしまうと、マイクのコードを片づけることができないからね」

「ふん、まあ、そういうことになるか」

「それでは、雛ちゃん、あの音がやんでから、僕達があの部屋にはいるまで、何分くらいかかったかな」

 今日は紺のトレーナーに|鶯色《うぐいす》のサロペットと、いっそう子供っぽい服装の雛子は、倉野にそう問いかけられると、大きな眼をくるりとまわして、

「布瀬さんが合鍵を取って来る問だから。ほんの二分くらいのものだったと思うわ」

「うん、僕もそんなものだったと思う。問題はその二分間なんだが。――はて、僕は考え違いをしていたんだよ。僕はあの羽虫の音は、犯人が密室を脱け出す時に必要な、何か、例えば器具のようなものがたてた音だろうと思ってたんだ。つまり、あの音は、犯人が密室を抜け出す時に必要な副次的なものだったと。――うん、しかしそれは間違いだった。あれがただの、ステレオのハウリングだとしたら、しかもその音がやんだ後も、犯人はマイクのコードを片づけるためにその場に居る必要があるとしたら、少なくともあの音の意味は密室脱出のためにあったのではない。甲斐には気にいらないようだが敢えてその言葉を使うなら、あの音は第四の扉をつくることとは直接的な関係はなかった[#「あの音は第四の扉をつくることとは直接的な関係はなかった」に傍点]んだよ。

「はて、そうすると一体何だったんだろうね、あの音の持つ意味は。まさか、全く意味もなしにあんな音をたててみせるなんて、そんな馬鹿なこともあるまいし。僕にはそれがどうしても判らないんだ。……こんなことを言うとこじつけになるかも知れないけど、あの『いかにして密室はつくられたか』にも同じような設定があって、あのなかでいちばん不可解な点は、なぜ靴を発見者――つまり僕に見せたかってところだろうけど、一見犯人側にとってさえ意味のなさそうな小細工が施されているという点では、全くよく似てるよ。尤も、あの小説で言われている〈さかさま〉という点が今度の事件では見当たらないけど、それも僕には、架空の小説でのさかさまが、今度の現実の事件ではもういっぺん裏返されてるんじゃないかとさえ思えるんだ。まあ、作者であるナイルズには、小説の思惑は訊かないことにしておくけど、どうだい、現実の事件の方に関しては、あの音の意味という問題にどういう答を出す?」

「うーん、倉野さんはあの音の意味がよく判らないっていうけど、脱出トリックに必要だっていう以外に、僕はいろいろ例をあげられるよ」

「へえ、こりゃあ意外だ。例えば?」

「例えば、何かの合図……」

「合図? こちら側の『黒い部屋』に居る誰かに対して……?」

 あの時、『黒い部屋』に居たのは、布瀬、倉野、杏子、雛子、影山。そのなかに、書斎からの合図を待っていた共犯者が居るというのだろうか。五人は互いに顔を見合わせた。

「それから、例えば、別の何かの音のカムフラージュ……」

 低く、|懶《ものう》い調子でナイルズの言葉は続いた。

 別の音。しかしそれならば、その隠されるべき音には、いかなる意味があったのか。あるいはそうして堂々巡りのまま、〈意味〉というものはいつも、ついに不可知の海のなかへと投げこまれてしまうものだとすれば。

「そして、例えば、犯人の脱出のためじゃなく、真沼さんの屍体を消すためにこそ、あの音が必要だった……」

 そうすると、やはりあの音は、〈第四の扉〉がぽっかりと姿を現わすために必要な何かだったのだろうか。突如として部屋は祈祷壇に変じ、羽虫の音は鬼神を呼び出す呪文として流されたのであって、凶刃に|斃《たお》れた真沼の|亡骸《なきがら》は、ブラック·ホールならぬ大暗夜叉の青黒の掌によって、何処とも知れぬ地へと運び去られてしまったのだろうか。倉野がその時微かに顫えたのは、そうした妄想のせいだけではなかったのだ。

「もうひとつあるよ。これはちょっと妙に聞こえるかも知れないけど、例えば、その音のために総ての惨劇は起こった……」

「何だって?」

 一同はそのあまりに突飛な意見に、呆れたようにナイルズの顔を覗きこんだ。殊に|癇《かん》に触ったのが甲斐で、大きな頭をぐいとつき出すなり、

「またか! そうすると、あの音が出るようにステレオをセットしたのはほかならぬ真沼で、そのいやらしい音を鳴らしたために犯人の怒りを買って、殺されたあげくにその屍体まで消されちまったという訳か。ふん、あの音が流れていたという時間もあわせて五分。……五分間のうちに殺人の動機がつくられ、犯人が凶器を携えて現われ、真沼は殺され、その血は鏡のうえに投げかけられ、そうして真沼の屍体を小脇に抱えると、あッという間に姿を消したというんだな。いやはや、そんなものは小説的面白味はあるか知らんが、ただそれだけのことだ」

「あら!」

 と、いきなり叫び声をあげたのは雛子で、

「そんなにあり得ない話じゃないわ。問題は動機の点だけで、あとはほかの考えを採った時と、その不可能度――というのかしら、とにかく条件はそんなに変わらないもの」

「何だって。そりゃあ、どういうことだい」

 癇の強い甲斐ではあるが、その彼も、杏子と雛子にだけは弱いらしい。急に|悄然《しょうぜん》と声を落として、|顳顴《こめかみ》を太い指で掻きながら尋ね返すと、

「だって、犯人が最初からあの書斎に居たとして、その人物が殺害の意志を持っていたにせよいなかったにせよ、時間内に真沼さんを殺害し、血をぶちまけ、部屋を抜け出る、それだけのことはやらなくちゃならないでしょ。だとしたら、準備というものの必要性を別にすれば、条件はおんなじよ。……犯人が最初からあの書斎に居たという点は、布瀬さんがさっき言ってた、トイレから戻ってくると既に真沼さんが来ていたという一時頃、真沼さんの寸前か、あるいはひょっとしたら真沼さんと一緒に犯人は訪れていたのかも知れないんですもの、大いに公算ありどころか、殆ど間違いないと思うわ」

 雛子は自信たっぷりにまだ膨らみの足りない胸を張った。そうするとナイルズの最後の説に従えば、犯人は殺意などまるでないまま、何らかの理由で姿を隠していたということになるのだろう。

 ただの人間。

 それがあの羽虫の唸りを聞いた瞬間、突如として殺人者の相貌を帯びるとすれば、そこに剥き出しにされた現実の貌というのも、ひどく歪められたものであったに違いない。

 倉野は慄然としてナイルズを眺めた。

[#ここから3字下げ]

5 二者択一の問題

[#ここで字下げ終わり]

「どうもいけないな」

 しばらく口を開いていなかった根戸が、雛子の腰かける椅子の背凭れに両手をかけ、上から顔を覗きこむようにして言った。

「なあに、何がいけないの」

 こちらも顎をあげて下から見上げる恰好になると、雛子はぷっと自分から吹き出した。

「いや、犯人があの部屋に潜りこんだ方法を指摘したのはさすがだよ。いけないというのは、話題の焦点がちょいと余計な方に行っちまってることだ。犯人はどうやって密室を抜け出したか。及び、果たして犯人は誰であったか。これがまず先決問題なんだよ」

 すると羽仁も椅子のなかで首を斜めにして、

「そりゃそうだ。すると、君には見当がついたってことかい。え、根戸ホームズ」

「からかっちゃあいけない。ナイルズの小説では羽仁と一緒にされて、頭の鈍い探偵に成りさがっていたが、現実はそうでない。……と言いたいが、まあ聞いてくれ。俺がいちばん不思議に思うのは、この事件には、実際のところ犯人なんている筈がないということなんだ。それはみんなもそうだろう。もしも犯人がいるとすれば、それは当然、我々ファミリーのうちのひとりということになる。でなけりゃこんな手のこんだ密室トリックなんて思いつかないだろうしね。――すると妙なんだ。まず犯人の可能性を持つ者から除外されるのは、羽仁、曳間、ナイルズ、ホランドの四人だね。なぜかというに、甲斐が電話で連絡した四時過ぎには、ここから一時間かかるところに居たからね。それから布瀬、倉野、杏子さん、雛ちゃん、影山の五人は、ずっとこの『黒い部屋』に居たんだし、誰も書斎の方にはいらなかったことはお互いに証言できるっていうんだから、あとは甲斐と俺が残る……」

 根戸はふとまじめな顔になって一同を見渡した。皆もうすうす根戸の言いたいことは判っているのか、沈鬱な表情で彼の次の言葉を待っていた。

「さて、そこで考えてほしいんだが、『黒い部屋』に足を踏み入れさえしなかった甲斐と俺が、果たして犯人だと考えられるのかどうか。……そりゃあ勿論、雛ちゃんの言うように、真沼の前かあるいは一緒に、あの部屋に忍びこむことはできるだろうよ。しかし、壁を通り抜けでもする以外、この部屋にいた五人の眼に触れずに密室を出ることは絶対に不可能だ。……もう一度はっきりさせておくけど、布瀬。真沼が来てからは、一度でもトイレに行くか何かで『黒い部屋』を出たことはなかったんだろうね」

「おお、それは絶対にない」

「ふむ、それでこの二人も除外される。……さて、そうすると除外されたのは合計十一人。で、ファミリーの総数は十二人。これは簡単な引き算じゃないか。十二ひく十一は一。犯人の可能性を持ってる者は、あと真沼しかいないんだ。……勿論、みんなもこれくらい最初っから判っていた筈なんだ。でも、殺人事件があってほしいという心理も心の奥底に|蠢《うごめ》いてて、それが密室に出入りした殺人者という存在を頭の隅に植えつけちまったんだな。しかし実際、考えれば考えるほど、この事件には犯人がいる訳がない。……いや、待ってくれ。言いたいことは判る。続きを聞いてくれよ。ここまでが俺の推理――と言えるほどのものじゃないが――その第一段階で、これからが第二段階なんだ。……はてさて、この事件には犯人がいないとする。そうすると結局、今度のは総て真沼の悪戯だということになるが、そういう仮定に立って推理を押し進めるとどうなるだろう。……考えなきゃいけないのはそこなんだ。そもそもあの部屋から[#「そもそもあの部屋から」に傍点]、真沼であれ誰であれ出入りすることなんてできるだろうか[#「真沼であれ誰であれ出入りすることなんてできるだろうか」に傍点]。俺は考えたよ。しかし、いくら考えても駄目なんだ。あの密室は単純すぎるんだよ。単純ゆえに不可能なんだ。ただひとつ可能性があると思えるのは、〈単純には単純を〉で、例の、発見者が部屋のなかにはいって来る時に扉の陰に隠れてやりすごすっていう、あれだね。しかし今度の場合、発見者は五人もいた。――いや、その時は甲斐もいて六人か。六人なんて多人数を、扉の陰に隠れてやりすごすことなど、ちょっとできそうにもないから、必然、これの変形になる。そうするとあとは隠れるところはベッドしかない。ということになると、どうもさっきのナイルズとホランドの演じてみせた魔術と似てくるね。だからあれを例にとって考えてみよう。あの場合、どこが最も重要かといえば、ナイルズがホランドのまねをして大声で笑うってところだ。あれによって皆の注意を集めておくからこそ、本物のホランドの方がベッドから抜け出ることができる。ミス·ディレクションという奴さ。さて、それでは本番の時にそれにあたるものは何だったかというと――もう言うまでもない、あの鏡だ。……鏡」

 ふと微かな不安に襲われたように、急に呟くような口調で繰り返すと、殆ど眼に見えないくらい首を振って、それを打ち消すかのように後を続けるのだった。

「ふふん、あの見事な血模様に彩られた鏡。それは皆の気持ちをひきつけてしまうに充分だった。その心理的効果を充分に計算してあんな小細工をしたのなら、真沼もたいした心理学者だよ。いや、本当は、曳間に確固とした不在証明がなけりゃ、こいつは絶対お前の仕業なんだが、と俺は思ったね。――まあとにかく、これでミス·ディレクションとやらも揃った訳で、それでひとりふたりならともかく、五人も六人もの眼を誤魔化せるかどうかという疑問も残るが、そこは余程巧妙にやったのだと認めちまうことにしよう。……問題はその後にあって、鉄よりも堅牢な壁は、その六人の位置だったんだ」

 静かに言いきって、根戸は一同を見まわした。殊に緊張していたのは杏子で、彼女は曳間達四人が来るまでの間に、根戸にしつこく問い|質《ただ》されたことがあったのだが、それがどういう意味を持っていたのか、ようやくにして判ってきたのである。それを耳にしていた者もやはり心当たりがあるらしく、そんななかで根戸の声は、黒い、この深い闇に鎖されたような空間のなかに、ぼおんと|谺《こだま》するようにも思われた。根戸はあたかもその反響に耳を|欹《そばだ》てるように、低く息を吐くと、再び静かに語り出した。

「位置。ああ、俺はこれに気がついて訊いてみたんだ。果たして、合鍵で扉をあけてあの書斎にはいったのは本当に全員だったのかどうか……。答はノンで、幸か不幸か、だいぶ後、布瀬達がベッドを調べ、鍵の存在も点検したその後まで、ずっと書斎の方にははいらなかった人がいた。それが杏子さんだったんだ。彼女は自分から密室殺人なんて言葉を口に出しはしたが、まるでそれを信じちゃいなかった。そうしてひとり、今腰かけているその椅子に凭れかかって、あの書斎の方を見てたんだよ。ふむ、恰度真正面だ、扉から出てくる者があれば見逃す筈がない。で、果たしてそんな人物がいたのかどうか……。これも答はノンだった。あんまり皆の様子がただごとではないので不安になって、自分も書斎の方にはいるまで、彼女はそこから出てゆく者の姿など、誰ひとりとして目撃しなかったそうだ。――よく考えてくれ、この脱出方法は、俺が考えに考えて、もうこれしかないと結論した方法なんだ。どうだい、ほかに考えられるなら言ってくれ。布瀬はさっき、天啓を得たって言ってたが、それはこの方法とはまた別の、全く違った推理なのか」

「ふうむ。いやあ。こいつはどうも恐れいった。全く一言もない、吾輩が得た結論もそこだったんだが、ふむ。久藤女史はあちらには行かなかったのか。そいつを聞いとらんものだから、てっきり真相だろうと思いこんじまっておった。いやはや、それにしても曳間達が到着する以前に既になされていた推理を今頃になって、天の恵みもないもんだ。うむ、さすが根戸ホームズだと言っておくよ」

 半ば口惜しげな苦笑いで布瀬が答えると、根戸も少し鼻白んだように笑って、

「そういうことだ。どう考えてもほかに方法はない。で、その唯一の方法がこうやって否定されちまうと、一体どういうことになるんだろう。犯人もいない。と言って真沼自身の仕業でもない。……ここで再び役に立つのは簡単な引き算なんだ。即ち、十二ひく十二は|零《ゼロ》。そうさ。つまり最初っから犯人どころでない[#「最初っから犯人どころでない」に傍点]、真沼すらあの部屋にはいなかった[#「真沼すらあの部屋にはいなかった」に傍点]、と、どうしてもそういうことになる」

 苦笑の名残りが消え、布瀬の表情は凍りついた。それを敢えて黙殺するかのように、根戸は言葉を切らず喋り続けた。

「そうだ、それはどうしてもそうなっちまうんだよ。とすると、当然|齟齬《くいちがい》が起こる。……真沼を見たというのは、布瀬と雛ちゃんのふたり。いいかい、既に推理は第三段階にはいってるんだぜ。――そこで俺はある実験をしてみたんだ。ほんのちょっとした実験。俺は、布瀬と雛ちゃんに、それぞれあることを尋ねてみたのさ。それは、真沼の着てた服についてなんだが。……答はまことに奇妙なものだった。ふたりはそれぞれ全く別に、全く異なった色を指摘したんだよ。さっき俺がナイルズ達の演じてみせた魔術にいちばん驚いたのは、それをさらに裏返したかのようなことが眼の前に起こったという点なんだが、――ふむ。俺の問いに答えて、布瀬は真沼のシャツの色は青っぽい感じだと言った。それで俺は雛ちゃんも当然同じ答を返すだろうと思ったんだ。が、しかし、実際の雛ちゃんの答は、なんと、真沼のシャツの色は青色とは正反対の鮮やかな赤だったと――」

 その時羽仁は、闇のなかにさらに闇が、半ば|煌《きらめ》くように吹きあげるのを見ていた。一秒一秒がそのまた一瞬一瞬に寸断され、その切れぎれの断片が色とりどりの光を反射しながら、ただ深い闇に鎖された宙空に舞いあがっていた。身近な、しかし決して慣れ親しむことのできない症状だった。

 その想いは、布瀬と雛子にしても同じだったのかも知れない。言葉にならないどよめきが呼び交わされ、ひどい罵声さえ飛ぶような気がするなかで、影山の、

「|赤方偏移《せきほうへんい》だ!」

 という鋭い呟きだけは本物のような気がした。

「どうした、羽仁!?」

 自身さえ支えきれぬようになると、声という声が、糸の切れた風船のように、自分と|拘《かかわ》りのないところに逃げ去ってゆく。羽仁にはその声が誰のものかすら確かめることができなかった。

 声は果てしもない遠方から聞こえて来るようで、それは永遠に続くようでもあった。

 そうだ。真沼の想いもやはりまた、そこにあった筈なのだ。ナイルズだかの小説に書かれていた真沼の奇妙な|既視感《デジャ·ヴュ》も現実のものだったが、あいつもその時、同じように自分自身と重なることができなくなり、そうして姿と形が互いに手を切り放すように、一度跳びあがった躯が同じ地に戻るタイミングを失ってしまったように、あいつの躯に|捺《お》された見知らぬ手形の主によって連れ去られてしまったというならば、その一瞬でも前に、ほかならぬこの僕こそが、手をさし出してやらねばならなかったのに。

 ふつふつと湧きたつようにさえ思われた躯じゅうの血液が、見る間に蒼褪め、冷えきって、そのまま引潮のように奥深いところへと吸いこまれてゆく様が、羽仁にはありありと感じられた。その気の遠くなるような感覚を罰のように受け止めながら、やはり声は果てしもない遠方から伝わって来るのだろう、しかしそれはほんの一瞬のことで、

「どうした、羽仁!?」

 と曳間が叫んだ時には、蒼白な顔で腰を浮かしかけていた羽仁は、その叫び声が終わらぬうちに、眠りにつくかのようにうっとりと崩れ落ちていった。

「大丈夫だ。大丈夫」

 いち迅く駆け寄った倉野が力強い声で言って、羽仁をもとの椅子に凭れかけさせると、

「僕はいちばんよく知ってるからね。そりゃあ突然こいつが起こると、この僕でもぞっとするんだが、なあに、別に心配することはないんだよ。……どれ」

 と言って羽仁の表情を覗きこんでいたが、

「ほら、もう赤みがさしてきた。症状の割には時間は短いみたいだな。とにかく心配いらないから、根戸、続きを喋ってくれ」

 皆の心配を追い払うような倉野の口調に、立ち上がりかけていた者もようやく腰をおろした。心配ないことは最初から判ってはいるし、それにやはり、布瀬と雛子の証言の喰い違いという思いもよらぬ事態が明るみに出た惑乱で、羽仁のことは気になりつつも、皆は順ぐりに、根戸と布瀬、雛子の三人を眺め渡した。

「しかし、……そんな馬鹿な!」

 真先に口を開いたのは布瀬だった。普段の青白い顔を気味の悪いほど赤く膨れあがらせながらの剣幕に、雛子はそれでも、

「だって本当よ。あたしがちょっと扉を開いて覗いた時は、確かに、真沼さん、赤いシャツを着てたわ。ベッドの上に|胡座《あらぐら》をかいて、あっちを向いていたから、シャツの背中がまともに見えたの。絶対に間違いないわ」

 と、こちらも負けてはいない。

 布瀬はぶるぶる躯を顫わせながら、雛子と根戸を交互に睨みつけていたが、ふとその表情が、にんまりと恐ろしい笑みに変わると、

「ははあ。判った、判った。お前の言いたいことが。根戸、つまりこうなのだな。……久藤女史の証言が真実のものとすれば、お前の言った通り、真沼は最初からあの部屋にいなかったと|看做《みな》さなければ説明がつかない。よって、真沼を目撃したという吾輩と雛子君が、嘘をついていると、こう言うのだな。総ては吾輩と雛子君で仕組んだ狂言だと。……ふむ、そしてお前は考えたんだ。架空の殺人の演出を受け持った我らふたりは、しかしどこかしらそのうちあわせに手抜かりをやらかしているかも知れん。そうしてちょいと探りを入れると、たちどころに服の色の相違というポロが出た。これでいよいよふたりが共謀して殺人劇を仕組んだに間違いない。そうなんだな。……ふむ、まあ一応、鋭い推察だとは言っておこうか。吾輩にしても、まさか真沼の服の色が変わっていようなどとは思いもよらなかったしね。その不可解な事実を結果的にせよ発見したというのは、やはりお前の殊勲打だろう。ふん、しかし間違えて貰っちゃ困るぜ。お前の推理は飽くまでも、書斎から出てゆくものはひとりも見なかったという久藤女史の証言の上に成り立っている。お前が久藤女史を|贔屓《ひいき》するのは判らないでもないが、――ははあ、その久藤女史の方が嘘の証言をしているとすればどうだ。ふん、そうすると吾輩がナイルズ達の|幕間劇《インテルメッツオ》から得た天啓というのも、間違いなくそこを指すことになるのだが」

 厳しい眼差しの杏子を見返すと、ふたりの問に板挟みになった恰好の雛子も何かを言おうとしたが、その前に根戸が布瀬の言葉に答えて、

「その通りさ」

 と、はっきり言いきった。

「俺の言うところはそれにつきる。つまり、これは二者択一の問題なんだよ。一方の解決では、総て真沼の狂言であり、杏子さんは見誤りをしたのか、それとも何らかの理由で虚偽の証言をしている。そしてもう一方の解決では、総て布瀬と雛ちゃんの仕組んだ狂言である。……俺はどっちが真相であるなんて言わないさ。ふたつにひとつ。俺の能力では、これ以外の解決を見つけることができない。……さて、そこで皆の頭に入れてほしいんだが、このふたつのいずれを採るにしても、この事件は狂言であるということになるんだよ。結局、殺人なんてことは起こらなかったんだ。だから俺は、このふたつの解決のどちらが真相にしろ、それ以上敢えて追究する気持ちにもなれないね。どちらでもいい。それが正直なところさ。……ここで影山のお株を奪うのも何だけど、ひとつ俺にも純粋物理学的な|喩《たと》え話をさせて貰おうか。いいかい、ここに一枚の板があるとするんだ」

 途中までの沈鬱な口調をふっきって、再び明るい表情を取り戻すと、根戸は何もない宙空に、四角い板を描いてみせた。それは十人の見守るなかで、確かな実在性を伴って出現したように思われた。

「そこにはふたつの穴があいている。こう、僅かな間隔をおいて平行に|穿《うが》たれた、縦に細長い穴。そう、ふたつの|細隙《スリット》だね。さて、一方に小さな光源を用意して、この板に向かって光をあてるとしよう。そして光源の反対側にもう一枚の板を持って来ると、そこにはどんな光の像が浮かびあがるかな。……常識的には、ふたつの、やはり細長い光の像が映る筈だが、はて、実際にはそうはならないんだ。それぞれのスリットが充分に細く、スリット同士がある程度近ければ、もう一枚の板に映る像はきれいな縞模様になる。こう、縦の縞模様にね。これはふたつ以上の波がぶつかり合う時に観察される干渉という現象と同じなんだが、この実験は、光には粒子の性質以外に波としての性質もあるということが提唱されるもととなるもので、実際、これらの実験を重ねた上で、光は粒子性と波動性を兼ね具えたものであるということが実証されるんだ。そればかりじゃない。光にそういう二重性があるなら、ほかの粒子はどうなんだ、ってんで|験《ため》してみたら、電子や陽子や中性子や、そしてついにはそれらで構成された原子や分子までもが、はっきりと波としての性質を持っていることが観察されたんだね。この物質が本来持っている粒子と波動の二重性は、さっき影山の話に出てきた、〈不確定性原理〉にそのまま繋がってゆくんだが。

「……いやあ、これはちょっと横道に逸れたかな。そこで板の問題に立ち還るとだね、ここに奇妙な逆説が持ちあがるんだ。光は波の性質を持っている。――これはいい。だけども、光はやはり、飽くまで光子という素粒子であることにも間違いないんだ。さて、では一個の光子がどういう振舞いをするのかという観点にたつと、これはどう説明をつければいいのか。スリットのある板をA、光源の反対側に置いた板をBとすると、Bの板に到達した光子は、Aの板にあいた穴のどちらかを通ってやってきたのだとすると、そこに来る筈のない処にやってきた光子は[#「そこに来る筈のない処にやってきた光子は」に傍点]、一体どちらを通ってやってきたのだろう[#「一体どちらを通ってやってきたのだろう」に傍点]。これは、一個の光子はどちらかの穴を通ってやって来たのだという常識的な見方をすると、どうしても解決できない問題なんだ。……結論を言ってしまえば、一個の光子は、どちらかの穴を通過するのではない、同時に両方の穴を通過[#「同時に両方の穴を通過」に傍点]するのさ。そう考えなければ、どうしても説明がつかず、しかもそう考えて初めて総てが合理的に解釈できるんだ。詳しい説明は影山にでも任せるが、このことは、現代物理学が認めている事実なんだぜ。一個の光子は、同時に両方の穴を通過する。そうして、Bの板に到達した処で、初めてもとの一個の光子に戻る。つまり〝どちらか_ではない〝どちらも_なんだよ。奇妙に聞こえるけど、そうなんだ。

目录
设置
设置
阅读主题
字体风格
雅黑 宋体 楷书 卡通
字体大小
适中 偏大 超大
保存设置
恢复默认
手机
手机阅读
扫码获取链接,使用浏览器打开
书架同步,随时随地,手机阅读
首 页 < 上一章 章节列表 下一章 > 尾 页