饭饭TXT > 海外名作 > 《赤,雨,青春(日文版)》作者:[日]皆川テツオ【完结】 > 赤,雨,青春.txt

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作者:日-皆川テツオ 当前章节:15357 字 更新时间:2026-6-23 02:14

そんなヨウコさんの言葉に動せず、上野さんは話した。

「怒りが形を…愛の形を変えてしまう…」

私もびっくりしてしまった。でも、比較的温厚な上野さんは更に続けた。

「ヨウコ、君が酷い目にあって、君の復讐をしたとしよう。それは君に対する愛情ではなく、怒りなんだ。

怒りは確実に愛の形を変質させる…理屈では分かっていても、怒りが変質させた愛情は反比例していく。そして君の方はそれを見抜き、そしては姿を消す。

その時僕は内心ほっとするんだよ…きっと。

怒りは憎しみに変わり、愛する者をも恨んでいくんだ…」

誰も反論出来なかった。

飯田さんも舌打ちをして、黙り込む。

確かにそうかも知れない…。でも…

「でも…そんなの極端じゃない!?相手の苦しみも分かち合って生きていく。それが愛じゃないの!?簡単に諦めないで!」

私は思わず声を荒げて言った。

そして…私は市川さんに更に言った。

「これは、私達を試しているというの?…あなたは人を愛した事があるとでもいうの?!」

市川さんは窓の外の更に遠くを見て、静かに語りかけた。

「ずっと…昔の話ですよ。愛は恋のように美しい思い出にはならない。

失えば、人を二度と好きにはなれないかもしれないもの…」

「だから何だって言うんだよ!!」

飯田さんが突然怒鳴った。

「それが今関係あるのかよ!?そんなメロドラマを聞いて、俺達が助かるとでもいうのか?いいか!?ここから早く出せ!

俺達を解放しろよこのクソ野郎!!」

…言葉使いは乱暴者のままみたい。

ーーー9月27日ーーー

10:00 田沼ヨウコ

ヨウコは黙る事しか出来なかった。

端から見たらこんな監禁劇でさえ、茶番なのかもしれない。

恋人が足を撃たれ、女の子が首を絞められ、犯人は自身の左腕を撃った。

次は私の番かも知れない。

ヨウコは自分の精神を何とか保つことで精一杯の状態だった。

これが夢ならば…。

現実に戻れば、すぐに忘れてしまえるのに。…夢ならば。

コツ…コツ…

市川がヨウコの方にやってきた。

「田沼さん」

ヨウコは返事ができなかった。

「お話をしましょう」

ヨウコはわずかに首を市川に向け、つぶやいた。

「話…?」

すると、市川は思いがけないことを言い出した。

「小岩カズユキという人物について」

ヨウコは一瞬何のことだか解らなかった。

すると、飯田がその名前に反応した。

「小岩…だと!?」

解らない。私には。

ヨウコには解らない。でも…

すごく重要な事のような気がしてならない。

「ね…ねぇ、小岩…なんとかさんって…誰なんですか…?」

秋葉は誰に向けるわけでもなく問いかけた。

「小岩の話の前に、上野さんに伺いたい事があります」

市川は上野に尋ねていた。上野はただ、首を縦に降った。

「もしかして…田沼さんは…記憶障害にかかっていませんか?」

間を空けて上野が話す。

「…何でもお見通しみたいだ…。確かにヨウコは記憶の一部が欠けているんだ。

僕と付き合い初めの時に教えてくれた。

でも私生活に支障をきたすことはないと、医者の判断に従ってそのまま生活していたんだ。

だから僕もその欠けた記憶については何も知らない」

上野が話している最中、ヨウコの隣にいる飯田は顔面蒼白…脂汗がびっしり流れていた。

そして…飯田が口を挟む。

「ホントに覚えていないのか…?」

その飯田の発言を不審に思いながらも、上野は話した。

「……。ああ。僕が保障する。ホントにその部分の記憶だけ欠けてしまっているみたいで」

「…そうか…ははは…まぁ、支障をきたさなければ…なぁ、いいんじゃねーか…?」

飯田はそう言った。気になった秋葉は尋ねた。

「先輩、どうかしたんですか…?」

「それでは、話をしましょうか」

市川が声を少し大きくして言った。

「小岩カズユキ。彼はどこにでもいる普通の男でした。ところが彼は5年前に付き合っていた彼女に浮気をされ、

さらに心身ともに深く傷付けられ…行方不明になりました」

「行方不明?」

上野が反応した。そして市川は続けた。

「まるで神隠しにあったようにね。」

痺れを切らしたのか、飯田が反論した。

「それがなんなんだよ?小岩とてめぇは友達だったってことか?」

「………」

市川が無言になり、そしてこう言った。

「ある意味、一番身近な人間でした」

親友だったのか?

そして飯田が追い討ちをする。

「はっ!?解ったぜ!要するにターゲットはこの俺なんだろう。ダチを苦しめたこの俺に復讐がしてぇんだろうが!」

秋葉が言う。

「復讐って…?先輩、小岩って人知っているの?」

ヨウコは何だか気が気でなかった…。

私にどういう関係が…?

視界が捻じ曲げなれるような感覚…。

ーーー9月27日ーーー

10:30 飯田ヨシオ

ユリちゃんにそう聞かれ、俺は硬直した。

「…いや…別に」

すると今度は上野が言う。

「飯田さん、あなたは何をしたんだ?この際言ってくれないか?昔の事なんだろう?」

…そうだ、昔の事なんだ。

あいつに感づかれなければいい…。それだけだ。

俺は話し始めた

「まぁ…なんつーのかな。俺と小岩は知り合いだったんだ。ちょっとワケありのな。

ある日些細なことで奴ともめてよ、取っ組み合いのケンカになったんだ。

お互い血まみれになるくらいのケンカでよ、それっきり会ってもないぜ。」

この言い方で問題ない。

だが上野が食いついてきた。

「一体何が原因でケンカに…?」

まずい。

「何でもねーよ!些細なガキみてぇな理由だよ」

上野はため息をひとつこぼして、

「飯田さん。一般的に血まみれのケンカになるには、余程の理由が無ければそんなことにはならない。

あなたには悪いが、その些細な理由がこのゲームに勝つ『ヒント』になるかも知れないんだ」

俺は激昂した。

「うるせーな!!何でもねーよ!!そんな特別な理由じゃねーから、とっくに理由なんか忘れたよ!」

俺は焦った。

頼むから、理由だけは聞かないでくれ…!

「では私が教えましょうか?」

市川はそう言うと、スーツの上着をゆっくり脱ぎ、その下のYシャツの赤く染まった左肩の辺りを

ビリッと破いた。

肩に500円玉ほどの黒い穴が見え、そこから赤い血が止め処なく流れていた。

あいつが自分で撃った、銃創だ。

「…はっ…!!」

横の女がそれを見て過敏に反応する。

そして…

ーーー9月27日ーーー

11:00 田沼ヨウコ

『 鋭く響いた銃声。

少年は倒れる。

しかし少年は立ち上がり、男に殴りかかる。

男は地面に仰向けで起き上がれない。

私は男が心配で仕方無かった。 』

「あああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」

ヨウコは顔を歪め、咆哮した。

「あああああああああああああああああああっっ!!!ああっ!!ああ…

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

ヨウコのそれは悲鳴を通りこしていた。

まるで子供のように泣き叫んでいる。

「ヨウコ!?どうした…?ヨウコ!!」

上野は繋がれた手足のせいですぐにはそばにはいけない。イモムシのように少しずつ這いつくばってヨウコの元に向かおうとしていた。

だが市川が上野の目の前に立ちはだかる。そして市川は上野に銃口を向ける。

「だめです、上野さん。」

「どいてくれ!!ヨウコに…ヨウコのそばに行って彼女を救ってあげなければ…だからどいてくれ!!」

ヨウコの目から涙が溢れ出ている。咆哮は止まらない。

「頼む!市川さん!僕をヨウコのところに!!」

ヨウコの鼻から水性の液体が溢れ出ている。咆哮は止まらない。

「だめです、上野さん」

「なぜだ!!なぜ彼女のそばに行かせてくれないっ!?」

ヨウコの口から唾液が溢れ出ている。咆哮は止まらない。

ヨウコは繋がれた両手で自らの両頬に爪を立てる。上から下へ掻き毟りだした。何回も何回も。

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」

見る見るうちに、ヨウコの頬の皮膚が裂け、肉が散り、血が流れ始めた。

それでもなお、ヨウコは自らの頬を掻き毟る。

「ああっ!?ヨウコさん!!やめて!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」

秋葉がすかさずヨウコに大声で叫ぶ。しかし、ヨウコには秋葉の声は届かない!

「だめぇぇぇっ!!!ヨウコさん!!!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

もう悲鳴でも、咆哮でもなく、断末魔に等しく全員の耳を劈いた。

「ヨウコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!僕が今行く!!!」

「行ってどうなる!?」

「ゴフッ!!ブリュッ!!ゴバァァァッ!!」

ヨウコは嘔吐した。胃の内容物がヨウコ自身の目の前に撒かれた。

「うわぁぁっ!!きたねーなぁあぁぁぁぁ!!!」

飯田は自分の所に飛び散った液体を、身をよじらせて避けた。

するとヨウコは飯田の顔を見た。

「…あなた…ま…まさか…どうして…」

市川の次の言葉はヨウコの元に向かう上野を止めた。

「彼女を止められる自信が、上野さん…あなたにはあるのか?」

「じゃあどうしろというんだ!!僕の彼女だぞぉぉぉぉっ!!」

上野のその言葉に秋葉が後押しする。

「私からもお願いっ!!これ以上見ていられない!!」

ヨウコの口の両端が裂けてまた血が流れ出ている。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!ううううううう…うううああぁあぁぁぁあぁ…ぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

もはや人間の叫び声では無かった。

ヨウコの爪は額、瞼、鼻筋、頬、耳たぶ…ありとあらゆる顔のパーツを傷つけて、

涙、鼻水、唾液、胃の内容物、汗、失禁…ありとあらゆる液体をぶちまけた。

目は白目を向き、声は擦れ、体中が痙攣して、

そしてヨウコは後ろに仰向けに力なく倒れた。

上野はそれを見て、体がすくみ…

秋葉は顔を背け、歯を食いしばりながら泣き…

飯田は隣のヨウコに怯え失禁した…

それは地獄の光景だった。

全員の時間が完全に止まった。

胃液と血とアンモニアの異臭が立ち込めるだけ。。。

ーーー9月27日ーーー

15:00 市川コウジ

俺は間違っていたのか?

いや、もうそんな事を問う必要など無い。

このゲームを計画する時、

俺は心に決めたのだから。

あれから誰も口を開こうとしない。

俺はさすがに田沼の前の「液体」に新聞紙をかぶせ、臭いを紛らわせるために

バーボンを撒いた。

「どういうつもりだ…?」

その言葉は上野のものだった。

「ヨウコになにをしたんだ…」

さすがの上野も怒りが露になる。だが俺はこう言った。

「何も?何もしていない」

「ふざけるなッ!!」

誰彼の怒号にもう秋葉も飯田も反応しない。響くのは上野の声のみだった。

「何もしていなくて、こうなるか!?気絶したんだぞ!しかもこんなことにまでなって!!」

確かにやりすぎたかもしれない。しかし気付いてくれ。

これが大きなヒントだということに…。

「あのさ…」

その細い声は今までとは想像できないが飯田のものだった。

「まさか、記憶…この女の記憶を…」

「記憶…?ヨウコさんの記憶を…市川さんが思い出させたってこと…?」

秋葉も口を開く。

これは予想外だ。まさか、真相に近づかせすぎたか…。

「…答えてくれ、市川さん…。あんたは何者だ…。」

飯田と同じように、上野の声も今までとは異なっていた。

「言えない」

俺はそう言った。

「ふざけるな!!ここまで来て言えない等、通用しないぞ!!」

「言えないものは言えないと言え、そう言ったのは…上野さん。あなたですよ。」

「屁理屈だ!!」

上野はそう言い放った。

「ね ?ねぇ。さっき、ヨウコさん、先輩の顔を見て『あなた、まさか』って言ったよね…」

秋葉が飯田に言った。

「そうだったっけか…?」

それに動揺する飯田。

「とぼけないで先輩。もしかして先輩、ヨウコさんのこと…知っていたんじゃない?」

「お ?おいユリちゃん。何を言ってるんだよ…俺はこの女なんて ?」

すっと、上野が虚ろな表情で飯田を見た。

「ヨウコを知っていたのか…?」

「ちょ ?ちょっと待てよ!何だよ、しらねぇよ。こんな女…」

すると秋葉は上野に尋ねた。

「上野さん、ヨウコさんは記憶障害だとしてさっきので記憶を取り戻した…そういう事じゃないのかな…。」

飯田がそれに反応する。

「おいおい、何も確証なんかねーじゃねーか」

「でも先輩、先輩が真っ先に記憶の事を言ったのよ。なんで言ったの?」

「そ、それは…」

「飯田さん…」

上野の冷たい声が飯田に向けられた。

「解ったよ、話すよ…」

飯田が話を始めた。

ーーー9月27日ーーー

16:00 飯田ヨシオ

5年前、俺はこいつ…田沼ヨウコと交際していた。

だが、半年あまりで別れたがな。

俺はあいつを振った。

なぜかって?

こいつは極度の淋しがりやなんだ。

わかるだろ?上野…?

それが災いして、バイト先とかでナンパされて尻尾ふって付いていっちまう。

最初から知っていたけど、いざ自分がこいつと付き合うことになって…

そんな女めんどいし、だりいから振った。

ーーー9月27日ーーー

16:30 上野ケンイチ

「そうだったのか…」

上野は察知した。

「でもこのゲームが始まってこいつにまた会ったとき、まさか記憶障害になっていたなんて…知らなかった」

上野がそれを聞いて思わず漏らす。

「僕なんだ。ヨウコの記憶を封印したのは…。」

秋葉と飯田に衝撃が走る。

「学生の頃、彼女に一目ぼれをして。でも彼女は何かに怯えるような感じだった。

僕の友人が心理学科を専攻していて…友人は彼女にカウンセリングをしたんだ。

そして、記憶を一部分断絶するような催眠も仕掛けた。」

「催眠…?」

秋葉が信じられないという顔で聞いた。

「彼女は『あなたも男だから、暴力を振るうのよ』とそればかり。何かに怯えているようで、だから…

だって僕は彼女と付き合いたかったから…」

飯田が言った。

「それについては俺のせいだ。あいつを従わせるために、俺は…暴力を振るったよ…。」

秋葉が頭を抑えながら言った。

「整理させて…。つまり、飯田先輩とヨウコさんは5年前に付き合っていた。

でも半年で別れた。

その後、ヨウコさんは上野さんと知り合って、昔のトラウマを消し去るために

催眠術をかけて交際した…ってこと?」

「ああ…」

上野は力なく答えた。しかし秋葉はつづける。

「でもついさっき、その『封印』が解けた。そして、ヨウコさんはトラウマを思い出して

壊れてしまった…。」

「ああ…」

上野は力なく答えた。

「上野さん。」

秋葉が言う。

「どうして封印が解けたのかな?」

「それは…たぶん…解除スイッチが入ったんだ。封印していた記憶に直結していた記憶…

待てよ!?」

上野は閃く。

「あの時何があった?さっき、ヨウコが記憶を取り戻したあの瞬間…

もしかしたら…重要なカギかも知れないぞ!?」

あの時…考えるんだ…。

あの直前、小岩カズユキという人物が出てきた。

そして飯田と小岩に接点があった。

ということはヨウコにも接点が…!?

いや、まだ直前じゃない。

あの時、

市川がスーツを脱いだ。

そこだ!!

市川だ!!

それに気付き市川を見る。

市川はビールケースに座りもたれ掛かっていた。

顔中に汗が吹き出ている。

「市川さん…?」

上野が尋ねた。

「ああ、申し訳ない…。つい眩暈がしてね…どうしましたか…?」

まだ左肩の銃創から血が出ている。

しかし、上野は市川に尋ねた。

「市川さん。あの時なぜスーツを脱ぎましたか?」

「はぁ…はぁ…ノーコメントです…」

心なしか、市川の顔が蒼白している。

「やっぱり、小岩かよ…!」

飯田が言う。

「俺が小岩にしたことを、あの女に見せたんだな!!」

その言葉に秋葉が反応する。

「え…?一体何を…」

ーーー9月27日ーーー

17:00 田沼ヨウコ

ヨウコはまだ目覚めない。

深い深い闇の中を…いつ目覚めるか解らないまま。

ーーー9月27日ーーー

17:00 市川コウジ

さすがに、慣れているとはいえ…

今回こそはまずいかも知れないな…。

「皆さん、あと一時間です…。全ての…ヒントはもう出ました。そろそろ…私からの最後のルールについて

話しましょう」

「ルール…!?まだあるのか!?」

上野が言った。

俺の『ルール』という言葉に上野、秋葉、飯田が顔を向ける。

正直、話すのも辛くなってきた。

「この現場の周りにプラスチック爆弾が数個設置されています…。その破壊力はこの建物を一瞬で

木っ端微塵にするでしょう…この爆弾が起動するのは18:03分…。

それはぎりぎりでクリアした人のための処置です…。」

「爆弾…どうしてそんな大事なことを…!」

飯田が声を震わせた。

「はやく…クリアしないと…死にますよ…」

「へっ、俺達が死んでもどうせ市川だけは真っ先に逃げるだろうよ!」

飯田が言う。

「飯田さん…申し訳ないが…私は助からない…」

「えっ…!?」

秋葉が言葉を漏らす。

「仮にも私はこのゲームに参加している。プレイヤーを放棄して立ち去ることなど…出来るわけが無い…」

俺の左肩の銃創をみて上野が反応する。

「止血だ…止血をするんだ、市川さん!それとアルコール消毒だ!市川さんさっきのバーボンは!!市川さん!!」

上野の指示に飯田が反論する。

「は…?肩撃っただけじゃねぇかよ…大袈裟な」

「何を言っているんだ飯田さん!肩を撃っても人は死ぬんだ。数多くの神経と太い動脈が通っていて心臓にも近い、患部に細菌でも感染したら…」

上野の言葉に秋葉が話す。

「でも上野さん、足を撃たれたじゃない。あれは…?」

「たしかにあのままだったら僕も危なかった。でもあの後市川さんは止血と消毒を施した。

まだ痛みは残っているが、大丈夫だ。

問題は肩だ。足よりも危険なんだ。」

…するどいな…上野…ケンイチ…。

「お…おい!!このゲーム中止にして、早くここから脱出しようぜ!でないと…あんた死ぬんだぞ!!」

飯田はある種の弱音を吐いた。先ほどの威勢の良さはどこに言ったのか。

「私は中止には出来ない…だが…まだ一時間くらい持つだろう。私の命は」

俺は…命など惜しくもないのだから…。

「市川さん!お願い!止血だけでもしてぇッ!!」

秋葉が叫ぶ。

「発汗がひどい…高熱をだしているな…感染している…消毒だ…さっきのバーボンは!?」

「上野さん…あなたの足に使った後、習志野が飲んでしまいました…残りは先ほど撒いたのでもう無いです」

「なぁ…また後日…やりゃいいじゃねーか…ゲームなんだろ…?」

飯田…呑気なことを…

「後日になど出来ない。少なくともこのゲームは…」

だめだ…埒があかない。

俺は拳銃を手にする。

「では答え合わせしましょうか…逃げようとしたって無駄ですよ…

その場合は…即、撃ちます。」

「ううぅ…市川さん…」

「答えが解った方は挙手をしてください…。そして私の耳に囁いて下さい。

このゲームの答えを…。

ただしここからは真剣性を増すためにも、不正解した場合も…

撃ちます。」

あと30分。

飯田が挙手をする。

(俺が悪かったよ、小岩の復讐なんだろ…?な?市川さん、正解だろ?)

…不正解だ。

ズガアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

俺は飯田の足元に向けて発砲した。

「不正解です…」

弾は飯田に当たることなく、冷たい地面に穴が開いた。

「畜生!!ヒントをくれーーーーーーッ!!わかんねぇーーーーーッ!」

飯田が怯えながら叫ぶ。

「静かにしてくれ、飯田さん。僕だって考えているんだ。」

「うるせーっ!こんな状況でよく冷静でいられるよな!?てめぇの彼女、まだ気絶しているんだぞ!!」

「僕だって、ヨウコを全く気にしていないわけじゃない!!飯田さんこそ、少しは冷静になるんだ!」

「なんだとォッ!このクソヤローッ!」

「やめてぇッ!!もういい加減にしてーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

飯田が上野に掛かろうとするが、手足の錠により、芋虫みたいで間抜けだ。

俺は…彼らの茶番を見ていた。

あと20分。

「ん…?」

田沼が目を覚ます。

「ヨウコ!!大丈夫か?」

朦朧とした意識の中で田沼が言う

「…もう…たくさんよ…」

顔は涙と血で真っ赤に染めたヨウコが目を覚ます。上野はすかさず声をかける。

「ヨウコ…?」

「なんで私がこんな…何も悪いことしていないのに…」

「ヨウコさん、しっかりして。今は答えを導き出さなきゃ…!」

「答えなんかあるわけないでしょぉぉぉぉッ!!!」

田沼が叫ぶ。

「私は何もしていない!この男がやったんじゃない!」

「お、おいてめぇ…」

田沼は飯田に啖呵を切った。

「ヨウコ、落ち着け!」

「何よケンイチ!あんた、早く私を助けてよ!ここから逃がしてよ!」

「僕だってもちろんそうしてあげたいんだ…!僕を信用してくれ…!」

「じゃあ早くしてよ!!いつもあなたはトロイのよ。いつまでも自分が天才ぶってんじゃないわよ!」

「ヨウコさん…上野さんは必死に答えを探しているのよ…。あなたのためにも。

そんな言い方、ひどい…」

「黙っててよ!何なのよあんた。さっきからガタガタうるさい!小娘のくせしてさ、泣けば世の中回ると思ったら大きな間違いだからね!

その年頃は脚でも開いていれば、勝手に男が寄ってくるもんねぇ!!」

「ひ、ひどい…!」

「ヨウコ…!!」

「いい!?ケンイチ!私だって、その小娘みたいなころには…」

ここに来て、俺はまたこれを見るとは思わなかった。

確実に4人が崩壊してきている…。

あと10分。

怪訝。

お互いがお互いに崩壊している。

上野も田沼に対し、残念に思っているだろう。

仕方ない。

「このままでは…全員ゲームオーバーになってしまいます…。

特別です…。最後のヒントです…。」

4人は俺のほうを見る。

「このゲームがスタートして、今まで。全ての事象を思い出してください。

これが…最後のヒントです…」

俺からはもう言えない。

後は彼ら次第。

さてどう出るか…。

上野は、ふと俺の左腕の傷を見つめていた…。

ーーー9月27日ーーー

17:50 ????

「解った!」

「どうぞ…私の耳に答えを…」

(あなた……?あのとき……。もう……)

市川は懐から何かを取り出す。

拳銃か?

それはカギだった。

がちゃ。

がちゃ。

「おめでとう、上野ケンイチ」

上野の手と足の錠が外された。

安堵と現状を飲み込めない上野がいる。

「手を…貸しましょう…」

市川は上野に右手を貸す。

上野は左手で掴んだ。

上野は立ち上がる。

「こんなものしかありませんが…出口までなら充分でしょう。

ここからまっすぐ行ったところに扉がある。

…行きなさい…上野ケンイチ…」

錆びれた鉄パイプを杖代わりに、上野は進みだす。

「待って!」

ヨウコだった。

「ケンイチ…答えは…?何なの?」

「……」

上野は何も答えない。

「ケンイチ…?…さっきはごめん、私どうかしていた…。」

「……」

上野は何も答えない。

「ケンイチ…?」

コツ…コツ…

上野は進みだす。

「待って!ケンイチ!私達、将来を約束していたじゃない!ねぇ!ケンイチ!」

上野が立ち止まる。

「君を…もう愛せない…。」

「そんな…」

コツ…コツ…

上野は進みだす。

「私は何もしていない!!」

コツ…コツ…

上野は進みだす。

「私は…何もしていないのにーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!なにもしていないのにーーーーーーーーーーーーッ!!!」

「…」

「わたしはあぁッ!なにもしていないのにーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!ケンイチぃッ!!」

「…」

上野が立ち止まる。

そして…

「そうだね…君は何もしていないよね…今も昔も…」

コツ…コツ…

上野は進みだす。

上野の姿が見えなくなる。

「いやああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!ケンイチ!!ケンイチーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

もう足音が聞こえなくなっていた。

9月27日 17:50 上野ケンイチ  ゲームクリア

ーーー9月27日ーーー

17:58 ????

「選ばれたとはどういうことか?それはみなさんにゲームをしてもらいます」

「このゲームでは私一人対、あなた達四人の複単混合ゲームです。しかし、お互いの勝利条件が違います。

あなた達はここから脱出する、それがあなた達の勝利条件。それが出来なかったら私の勝利。」

「あなた達には、両手と両足の自由が利かない…その中でどうやって脱出すればいいのか。ということを考えてもらいたい。」

「その気になればあなた達は、簡単にここから脱出出来る。そしてこの状況はむしろ私の不利なんですよ」

「他人の命や心を壊してしまう人間は、絶対に壊れた側の気持ちなど分からない。

そんな人間は私にとって最も憎むべき存在です…!」

「ヨウコ、みんな!…もしかしたら『共通点』ってことかも知れない」

「みーみーをーつーくーようなー…」

「たしか…5年くらい前に流行りましたよね、その曲」

「その通りです。私の目的は単なる復讐や私怨ではない。」

「ルール違反ですよ、飯田さん。他の人に、ならともかく私には通用しません」

「では良いでしょう…じゃあ仮にですよ、飯田さん。

もしも私が秋葉さんを酷く陵辱したと仮定しましょう。その後、あなたはきっと私を殺すでしょう。では

その後、秋葉さんの事を好いてあげられますか?」

「ずっと…昔の話ですよ。愛は恋のように美しい思い出にはならない。

失えば、人を二度と好きにはなれないかもしれないもの…」

「小岩カズユキという人物について」

「その男の子はきっと、感謝していますよ…」

全ての事象が一つに収束した。

すっと、挙手をする。

「どうぞ…」

(……私はあなた…、……さ…)

がちゃ。

がちゃ。

「おめでとう、秋葉ユリ」

私は答えにたどり着いた。

市川さんは私に手を差し伸べた。

私は市川さんの手を借りて立ち上がる。

「うっ…ううっ…」

私には涙が止まらなかった。

嬉し涙などではなく…。

私はどうしてだろうか。

市川さんの胸にうずくまった。

市川さんの心臓の音がする。

とくん…とくん…

でも、もうこの鼓動は聞けないんだね。

市川さんは優しく私の頭を撫で、優しい声で囁いた。

「行きなさい…秋葉ユリ…」

市川さんはゆっくり私を引き離した。

私は悲しくて仕方なかった。

こんな結末にしか出来ないことに。

「ううっ…うっ…ううう…」

考えてみれば私は泣いてばかりだった。

「待ってくれ!ユリちゃん!」

飯田…先輩…。

「俺、前からユリちゃんのこと…好きだったんだよ…!だから…ね…?」

私は先輩の元に行った。

「助けてくれよ…な?」

「…」

「答え…ああっ、ヒントだけでもいい!な…ユリ…」

なにそれ…。

なんなの…。

私はそんな飯田先輩の元に戻り、

パン!!

思い切り平手打ちをした。

「なにそれ…?」

そして私は振り返ることなく、出口に向かい歩いた。

そうか。

18:03って…。

私の為だったのか…?いや、まさか。

出口に向かう際、私にあのメロディーが流れてきた。

…みみをつくようなサイレンと シャボン玉作る女の子…

9月27日 18:00 秋葉ユリ ゲームクリア

ーーー9月27日ーーー

18:00 市川コウジ

タイムアップ。

残されたふたりは各々、助けて欲しいと懇願する。

助けて欲しいと叫ぶ。

「いやだあああああああああああああああああああああ!!!助けてくれェェェェッ!!!死にたくない!!助けてっ…!!!たすけてくれェェェェェェッ!!!」

「出して!!出してよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!いやだぁ…!!いやあああああああああああああ!!!!出してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

…ううっ…

俺は涙が流れた…

畜生…だめだった…俺はこのゲームに勝てなかった…。

期待していたのかもしれない。

心のどこかで…。

また、俺は負けた…。

ゲームオーバー…。

ーーー9月30日ーーー

16:00 習志野トオル

トオルは喫茶店で待ち合わせをしていた。

「お!来たか!こっちだ!おーい!」

静かな店内にチンピラ風の声が響く。

そこには松葉杖を突いた上野ケンイチと秋葉ユリがいた。

「へへ、まずはゲームクリアおめでとう!」

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