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作者:日-カトラス 当前章节:6807 字 更新时间:2026-6-23 05:07

 ここまで撮影は順調に進んでいて、最初のロケ地インドでは、貧困の上から悪徳医師に騙されて自身の内臓のほとんどを欧米の金持ち達に提供して死んでしまった少年達を撮影することが出来たし、次に訪れた中国では、些細な事で裁判にかけられ有罪となった小数民族の銃殺刑をカメラにおさめることが出来た。タイでは生活の為に売春を繰り返し行い、免疫不全におちいってしまった女を三週間にわたって追い続け彼女の死に立ち会った。彼女の全身カポジ肉腫に侵された体に益男は興奮を覚えていたのが印象的だった。北朝鮮では、脱北に失敗した家族の壮絶な兵士達によるリンチも撮った。脱北家族の「子供だけは許してやってくれ」と言った、母親の願いが叶わなかったのも撮れた。中東のイラクでは劣化ウラン弾によって体を放射能に侵された母親から産まれた死を待つしかない奇形の子供。また、アフリカのソマリアでは未知の病に襲われた村を、軍部が生きたまま村人を焼き払っていたし、コンガでは残酷な公開処刑、両腕をジープにくくられて……

 正に、不動が依頼した死を確実にトッティーはフィルムに収めることに成功していたのだった。

 ここまで、撮影が順調に進行してきたのは、不動のロケ地場所での根回しと金の力だとトッティーは思っている。特に金の力は絶大であった。絶対に撮影許可など下りないであろうと思われるところでも、多額の金銭を権力者に渡すと簡単に協力してくれるのである。このような現状を目にして、トッティーは人間の欲といったものに絶望と狂気を感じずにはいられなかった。

 現在トッティー達は映画のクライマックスを飾るべき、タンザニア国境近くの砂漠地帯を軍用ジープに乗っていた。ルワンダに来たのは、不動からある情報を得てのことである。

「知り合いの武器商人が面白いイベントを開催するみたいなんですよ。是非イベントに参加することをお勧めします」

 不動の言った、面白いイベントとは……人間狩りであった。

 現在ルワンダでは、内戦が勃発していた。内戦の原因は民族紛争に単を発している。ルワンダではフツ族とツチ族の二種類の部族がいるのだが、お互いに相容れないでいる。そして、武力に勝るフツ族がツチ族の住人を虐殺してる現状なのである。一説によると100万人の罪なき人々が殺されているのだ。国連もこのような事態に躊躇しているのだが、ルワンダ事態、無政府状態にあって国連の言うことなど聞こうとしないのである。ツチ族達は虐殺を恐れて住んでいた場所を逃げ出し、コンガ、タンザニアなどの国境近くに難民キャンプをはっているのであった。

 軍用ジープは三台並列に砂漠を走行していた。

 乗っているのはフツ族の兵士と、多額の謝礼を払ってイベントに参加する欧米の金持ち達である。

 彼らの目的はもちろん無差別大量虐殺にあった。

シーン5 ヒューマンハント

 トッティー達を乗せた軍用ジープは道なき道をひた走る。砂漠地帯だけあって外気温は40度を超えていた。軍用ジープにはエアコンが装備されていないので暑い。軍用ジープに乗ってる男達の死の匂いを嗅ぎつけてか蝿がジープ内を飛び回っている。蝿はその中でも一番の死臭のする益男の包帯に時折止っては羽を休めていた。

 益男の包帯は撮影に入ってからほとんど取り替えていないため不衛生そのものであった。ましてや、撮影してきた地域が熱帯気候のところが多かったので包帯内が蒸れてしまい、元々あった益男の傷口を化膿させていた。それは白い包帯を茶色く変色していることから窺い知れた。そこに蝿がとまり卵を産む、すぐに生育環境がいいために、卵は孵化して益男の顔面を蛆虫が這うのであった。

 そんな状況を見て、トッティーは益男に包帯を替えて清潔にしたらどうかと何度も言ったが益男は聞く耳をもたなかった。それどころか、口周りに這いずり回ってる蛆を舌で器用に掴まえるとぺロリと平らげてみせた。トッティーはつくづく益男のことを化け物だと思うのであった。

 ジープ内では一緒に乗ってる米国の男が益男の包帯から漂う異臭に気づき文句を言ったが、益男は全く無視を決め込むと黙々と撮影用カメラの手入れをしていた。

 そんな益男にトッティーは話しかけた。

「今度の撮影は俺がやるよ。益男君は横にいて見ていてくれ」

 いままでの撮影は、ほとんどトッティーが指示をだして益男に撮らせていたのだが、やはりクライマックスになるであろう人間狩りのシーンは映画人としてトッティー自らが撮りたくなったためである。それと、今までのシーンはどちらかというと、動きが遅く、撮り損ねても取り返しのつくものが多かったのだが、今回は違う。動きが早く、また撮りそこないは許されないシビアな撮影なのだ。

 トッティーの話を聞いて、最初拗ねていた益男だったが、急にご機嫌になってトッティーに言った。

「撮らせてくれないなら、俺も人間狩りを楽しむことにするよ! 監督、俺の勇姿をしっかり、そのカメラで収めてくれよ」

 トッティーはやめておけと言っても聞きそうにないので「好きにしろ」とだけ言った。

 すぐに益男は座席後部に置いてある、新型の自動小銃を手にとると、銃を構えたり、使い方を一緒に乗ってる武器商人に聞いたりして目的地につくまですごした。

 ジープ内では、これから行われる殺戮ゲームのルールみたいなものが話しあわれていて盛り上がりを見せていた。

「親子連れを狩ったら10ポイント、一撃で頭を撃ち抜いたら……」

 真っ当な人間が聞いたら反吐がでるような話をここでは当たり前にされているのだ。

 そして、殺戮ゲームのルールがおおかた決まった頃にジープは目的地の難民キャンプを視界に捉えた。

 難民キャンプ前の道は舗装道路といかないまでも、ここまで通ってきた道と違い平坦であった。

 ジープはそれをいいことに、先頭車両から順次速度を上げていき、そのまま難民達の生活しているテントに突っ込んで行く。突然ジープによって襲われた住人達は悲鳴をあげてテントから飛び出してきた。

 テントから飛び出してきた途端に、ゲームを楽しむハンター達の的になる住人達。あるものは一撃で頭を吹き飛ばされて肉片が飛び散っている。その様子をトッティーはレンズ越しに、しっかりとフィルムにおさめる。フツ族の兵士や欧米諸国の金持ち達は自らのスコアを上げるべき容赦なく住人達を銃器で惨殺していく、皆、奇声をあげて殺戮を楽しんでいた。まさに悪魔の所業である。そんな中、カメラは益男の姿を捉えた。

 益男も外のゲームを楽しんでいる連中と同じように奇声を上げながら殺戮を楽しんでいた。トッティーは狂気に支配された益男の姿をカメラで追い続ける。益男は自動小銃の弾が切れると、今度は軍用ナイフを使って住人達に襲い掛かっていった。それが、女であろうと子供であろうと容赦なく益男のナイフは振り落とされていた。テント脇で女の首にナイフを横一文字に入れる益男。女の黒い首筋から真っ赤な鮮血が噴出している。

 その時であった。益男の脳天から血しぶきが上がった。トッティーのカメラは益男の脳天に斧が突き刺さっているのを映しだしていた。テントの陰に隠れていた住人の一人が反撃したものだった。益男は脳天からまっすぐに血を噴出しながらその場に倒れた。恐らく即死であろうが、益男の神経はまだ生きているのかヒクヒク体が痙攣していた。

 その後、小一時間ほどで悪魔達の狩りは終わった。ゲームを楽しんだ悪魔達は各々に雄たけびを上げて、残った銃弾を空に向かって発砲していた。500人はいたであろう難民キャンプの住人達は全て悪魔達の餌食となり、そこらじゅうに無惨な屍となって横たわっている。トッティーはそんな住人達を最後までカメラのフィルムに撮り続けた。

 トッティーは撮影が済むと、テント横で絶命している益男の下にいって、死体をジープの乗せて持ち帰るため引きずり始めた。トッティーは益男は死んで当たり前のことをしたと思っているが、それでも死体をこのままここに放置しては益男の父親である不動に申し訳が立たないと考えてのことであった。

 ゲームを楽しんだ悪魔達は、自分の狩った獲物を前に記念撮影をしていたが、しばらくすると帰り支度を始めだした。早くしないと。ここに取り残されてしまうかも知れない不安にかられながらトッティーは益男の死体をゆっくりとジープに引きずっていく。残念なことに誰もトッティーのことを助けてくれる者などここには存在しないのだ。

 そんな中、難民キャンプの西の方から突然、車両が現れた。

 車両に乗っているのは、武装をしたツチ族の兵士達であった。すぐに、兵士達は難民キャンプが襲われて住人達が殺戮されたことを理解した。車両から飛び出してくると、今まで狩りを楽しんだ悪魔達に怒りの銃弾を撃ちこんでいった。フツ族の兵士達は反撃にうってでたが、数が違う為にすぐに制圧された。トッティーや欧米人はすぐに降参して手を大きくあげた。

 フツ族の兵士は、すぐにその場で射殺された。

 トッティーは腕を後ろ手に縛られて、目隠しをされると、彼らの乗ってきたジープに押し込まれた。ほどなくして、トッティー達を乗せた車両は彼らのアジトに向かって走りだしたのであった。

                          クランク?アップ ジャッジメントディ

 難民キャンプ襲撃後に武装勢力によって監禁されることになったトッティーは、人間狩りに参加した欧米人達と一緒に狭い牢屋に入れられていた。牢屋に入れられてからは、視界の自由を奪っていた目隠しと手の自由を奪っていた縄は外されていたが、牢屋の前には四六時中、銃を持った監視の兵士がトッティー達に目を光らせている。

 牢屋内にはトイレがないために排泄物の匂いが充満していて、排泄物に蝿が群がって牢屋内の環境は最悪である。牢屋内にいる男達は一時も早くこの劣悪な場所から出たいと願うばかりであった。

 最初、牢屋内にはトッティーを含めて六人詰め込まれていたが、一日置きに一人ずつ牢屋からどこかに連れ出されていった。現在、牢屋内には三人いて、それぞれがこれから一体どうなるのかと不安に思っている。

「殺しはしないだろう。きっと俺達を人質にして身代金を奪うつもりなんだ」

 米国人の男が牢屋内にいる皆が不安に思ってることを安心させるかのようにそう呟いた。

「そうだ、俺も同じ意見だ。殺すつもりならとっくに殺しているさ。それに食事もだしてくれてるしな」

 もう一人の男が米国人に同調するかのように言った。

 しかし、トッティーは二人の男が楽観視してる意見には同調できないでいた。なぜなら、この牢屋を含めて武装勢力のアジトから死の匂いがプンプンと鼻につくからだ。その匂いは“死の女王”を撮影していたマリアのいた部屋の匂いと似ていた。そう、あの腐乱していくマリアの居た部屋と同じ匂いなのだ……

 そんな、トッティーが不安を抱いてる中、牢屋の外の兵士に動きがあった。

 兵士の一人が、トッティーを指差して、何か喚いている。言葉がわからないトッティーであったが、兵士のジェスチャーから、どうやら自分が牢屋から出されるようであった。

 トッティーは自分を指差してる兵士に近寄っていくと、銃を向けられた状態で牢屋から出された。

 そして、兵士は縄のついた手錠をトッティーの手首に前向きになるようにつけると、そのまま強引に手を引っ張って歩かせた。トッティーは兵士に引っ張れるままに暗い通路を歩かされた。しばらく歩くと前方に光が見えた。どうやら、その光の下に連れていかれるようだ。

 光の源に連れていかれたトッティー。

 そこは、大きな部屋になっていて、死の匂いが物凄く鼻につく場所であった。

 部屋の中は殺風景なコンクリートの白い壁が目立つところで、武装勢力の主導者らしい写真が壁に掛けられている。部屋の中央に椅子が一つ置いてあって、その椅子の前には三脚式のカメラがセットされていた。カメラの奥には、ここに一緒に連れてこられた欧米人が生首となって飾られていた。

 トッティーを連れてきた兵士は椅子に座るように銃口を背中に押し付けてきた。

 椅子に仕方なくトッティーは座る。兵士はトッティーが座ると、部屋の扉に向かって、何か言った。

 扉が開き、中から三人の男が現れる。二人は武装勢力の兵士だが、もう一人はトッティーにとって見覚えのある男だった。

 その男は益男である。そう難民キャンプで脳天に斧が突き刺さって死んだはずの益男がそこにいた。

「お……お前、なんでここにいるんだ。生きていたのか!」

 トッティーは益男に向かって叫んでいた。

「クククッ、俺は絶対に死なない。なぜなら、俺はデス。つまるところ死神だからさ、ケケケェ」

「一体どういう事だ、益男!?」

 益男はトッティーに自身が死神であることを鼓舞するかのように顔面に巻いた包帯を外し始めた。包帯を外した益男の顔は肉が腐り蛆が這いずりまわっている。しかも、腐った肉片の合間から頭蓋骨がむき出しになっていて、まさに死神そのものであった。

「最初からお前は死ぬ運命だったのさ。お前は死を冒涜していた、だから天罰なんだよ! お前はここで処刑されるんだ! そして、あっちの世界でマリアと一緒に楽しめ。もちろん、あっちとは地獄の世界だから楽しめないけどな、クククッ」

 益男の言ったことの、あまりの衝撃の為にトッティーは声がでなかった。

「さぁ、お前の創りたかった映画を完成させようじゃないか! お前の死をもってしてな……」

 死神は、そう言ってトッティーの後ろの兵士に目で合図した。

 兵士は何か目に見えない力によって操られてるようで、腰にある軍用ナイフをトッティーの首元にあてた。

 死神は三脚カメラのレンズ越しにトッティーを捉える。

「クランクアップ!」

 死神は叫んだ。

 兵士のナイフがトッティーの首元をゆっくり裂いていく。

 トッティーの首筋からは真っ赤な鮮血が傷口からとめどもなく溢れだしている。少しずつ意識が遠のいていく中で、トッティーは消えゆく視界にマリアの幻影をみた。マリアは美しい顔をしていて笑顔で両手を広げている。

「ありがとう――マリア迎えにきてくれたんだね」

 トッティーは心の中でマリアにつぶやいた。そうしてもう一度、瞬きをしてからマリアをトッティーは見た。そこには、もう美しいマリアの姿はなく、死神と同じように腐乱したマリアがトッティーを怖ろしい形相で睨みつけていた。

「いやだぁ……死にたくない……」

「いいぞ、トッティー、お前の苦悶の表情はまさに芸術そのものだ!」

 死神は苦悶の表情をして絶命していくトッティーを撮り続けた。

 こうして、死の映画は完成を迎えたのだった。

                     了

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