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■■ 鈴が鳴る! ~第十三回~ ■■

作者:日-紅子 当前章节:2408 字 更新时间:2026-6-23 04:52

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 髪留めを外すと、するりと髪が流れた。首を振り、左手で軽くすいて形を整える。

 猟犬の身体に力がこもった。

 不測の事態には違いないが、この隙を見逃す手はない。

 ダメージは大きい。今更少しくらいリーチが伸びた所で問題はない。

 跳び掛ろうとする猟犬の動きが止まる。

 弾けたように間合いを開けた。

 何があったわけでもない。

 リンが顔を上げた。視線を向けた。それだけだった。

 今までと比較にならない威圧感。

 得体の知れない恐怖が纏わりついてくる。

 鳴海を最初に見た時から疑問はあった。

 こんな少年に自分の封印が破られるハズはない。

 しかも、彼は魔導師でもなければ秘術師でもない。ただの子供。

 それが魔女である、世界最高の魔女である自分の封印を解いた。

 有り得ない。

 だが、そのタネは直ぐに解った。

 鳴海はリンの捕縛術を目の前で破って見せた。

 つまり鳴海は消魔体質者だ。

 魔法は突き詰めれば一種の催眠術である。

 世界に対し強力な暗示を掛け、リアリティを強引に捻じ曲げる。

 もちろん事象はその暗示に対し、強力な抵抗を示す。それを消魔力という。

 魔法とはその消魔力の隙間を掻い潜り、ささやかな奇跡を現実にもたらす技術だ。

 もちろん、消魔力の方が大きいと魔法は効果を生まない。

 相手が生物であれば、この抵抗力の固体差は大きい。

 極端に魔法に対する抵抗力が強い存在を消魔体質者と呼ぶ。

 リンが見る限り、鳴海は万人に一人の強力な消魔力を体内に持っている。

 鳴海が特殊な訓練を受けていれば、一流の消魔師。魔法や魔物を打ち消す

特別な術者になっていただろう。

 だが、今の時代、何の役にも立たない。無駄な才能。

 どんな人間でも三つの才能を持っているというが、その一つがこれだとすると、

ある意味で不幸な子だなと思う。

 無尽蔵に魔力が湧いてくる。

 これほどの魔力があれば、ダメージを即座に回復させる事ができるし、猟犬ごときは

一瞬で消し去れるだろう。

 しかし。

 大きな溜息を漏らした。

 この姿。自分本来の姿は嫌いだった。

 溢れる魔力と永遠の若さ、そして美しい容姿。誰もが羨むに違いない。

 自分自身もそうだった。誰よりも優れていると思った。

 しかしリンは魔女。浮世の事に興味はない。

 森の奥でひっそり暮らし、魔法の研究を進めるだけの日々だった。

 たまに里に下りて、戦争で親を亡くした子供達を集めて、ホンの少し自己満足に浸る。

 他人と接するのはその程度で良かった。

 あの暗黒時代もリンにとっては関係のない話だった。

 教会の連中など物の数ではないし、彼らにしても自分を敵に回す程愚かではないだろう。

 それはリンの傲慢だったのかもしれない。

 魔女と関わりを持つだけで、死に値する時代だった。

 あの日、血の海で横たわる子供達を前に、リンは自分がどれほど愚かだったのか悟った。

 魔法は万能であれど、全能ではない。

 二つだけ不可能がある。

 一つは過ぎた時間を戻す。もう一つは失われた命を再生させる事だ。

 殺戮をもたらした騎士団の連中を捕らえて、文字通り時間を掛けて挽肉にした。

 情けなどカケラもなかった。彼らは死んで当然だから。

 復讐を終えて、リンは自分自身の魔力を封じた。

 大きな力が過信を招き、悲劇を呼んだ。

 だから、力の大半を時間掛けて封じ込めた。

 魔力のほとんどを失った自分が再び封印を解く事はできない。

 それが自分に対する罰。いや、体の良い逃避だった。

 鳴海の力、消魔の力で封印は一時的に消えた。

 それは数分ではあるが、この世界で、この宇宙で自分に匹敵する存在が居なくなった事

を意味する。

 傷を治療するのは止めた。自分が捨てたはずの力を使うのは、最低限にしたい。

 ちらりと猟犬に目を向けた。慌てて距離を開けるのが見えた。

 確かに力の差が有りすぎる。このまま、消し去るのも可愛そうな気がした。

「犬コロ、良く聞け。私の右手はもう使えない」

 手首の骨は砕けているし、指も動かない。

「足もダメ。歩くのがやっと」

 右足は靭帯が損傷している。左もほとんど感覚がない。神経が損傷してるのだろう。

「でも、左手が残っている」

 無傷の左手で拳を作り、ぐっと突き出した。

 猟犬が牙を剥く。

「つまり、お前に勝ち目はない」

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