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■■ 鈴が鳴る! ~第三回~ ■■

作者:日-紅子 当前章节:2478 字 更新时间:2026-6-23 04:52

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階段を駆け上がる。

 五階建てのクラブ棟は一から三階が運動部。

 四?五階が文化部に割り振られている。

 鳴海が目指すのは、五階の一番奥だ。

 上がりきった所で大きく息を吐き、呼吸を整えた。

 静まり返る廊下を抜けて、金属製の分厚いドアの前に立つ。

 ドアの中央に掛かったプラスチックプレートには、丸みのある独特の文字で

『フシギ売ります 蛇ノ目屋』とある。

 蛇ノ目屋について聞けば、誰もが同じ答えを返すだろう。

 曰く、活動内容の良くわからないクラブ。

 そんな物がどうやって学校に認められたのか。顧問は誰なのか。疑問は次々に湧いてくる。

 それらに対する答えは、これまた曖昧で、いつの間にかできた、顧問は非常勤の先生らしい

という物になる。

 だが、結論として蛇ノ目屋はここにあるし、その存在に違和感を持つ人間は居ない。

 すっかり遅れてしまった。

 いい加減なクセに約束には一方的に厳しい部分がある。

 そう思うと鳴海の気分は更に陰鬱になってくる。

 とは言え、いつまでもぼけっとしてる訳にもいかない。

 軽く拳を握り、ドアを叩く。分厚い金属の鈍い音が響く。

 数秒待ってみた。返事はない。

 ノブに手を伸ばす。回った。

「あ、開いてる」

 リンにしては珍しく無用心だと思いつつ、扉をゆっくり開く。

「リン、入るよ」

 相変わらず薄暗く混沌とした空間だ。

 部屋の中央にある会議用テーブルの上には、スナック菓子の袋が口を開けたまま転がり、

お茶の入ったペットボトルのキャップも開けっ放し。

ページを開いたまま放置された本や、ペン立ての周囲で寝そべっている鉛筆やボールペン。

 このテーブルの上座、小型のノートパソコンが置かれている、に普段座っているはずの少女

の性格を存分に表していた。

 床に転がったダンボール箱を避けながら、唯一の光源となっている正面の大きな窓に向かう。

 錆びた鍵を外し、窓を開けた。

 風が吹き込んでくる。真夏の暑さが抜けた秋の空気が心地よい。

「まったく、少しは片付ければいいのに」

 愚痴りながら、お菓子の袋を輪ゴムで止め、ペットボトルのキャップを閉める。

 転がった鉛筆を掻き集めペン立てに挿し、本をたたんで窓の脇に立つ本棚に並べる。

 と、本棚の最上段に見慣れない小箱を見つけた。大きさは十センチ四方。木製。

 手に取って、開けてみた。

「ライター」

 目にしたままを、馬鹿みたいに呟く。

 ジッポライターが、クッションに護られ丁寧に収められていた。

 金属製でずっしりとした重さがあり、表面には細かい紋様が丁寧に刻まれている。

 値打ちのありそうな品物ではある。

 なんとなく火を点けようとしたところで、

「勝手にいじくるのはいいけどさ。何かあっても知らないわよ」

「うわぁ!」

 いきなり後ろ、しかも至近距離からの声に驚いた。

 思わず取り落としたライターを、鳴海の後ろから延びた手が空中で掴む。

 ほっそりとした白い腕に不覚にもどきっとする。

 慌てて振り返る鳴海の視線のやや下で、 左右に留めた長く赤みのある髪が揺れていた。

「この小型点火器は大切に扱って欲しいんだけどね」

 大袈裟に溜息を溢す。

 小柄な少女だった。

身長がそれほど高くない鳴海より、更に頭一つ以上低い。小学生と言っても通るだろう。

 微かに上がったアーモンド型の目。小さく形の良い鼻と上品に作られた薄い唇。

 愛くるしい顔立ちだ。

 白い清潔感のあるシャツに大きなリボンタイ。

 ネームプレートは鳴海と同じ青色で、鈴鳴(すずなり)と書かれている。

「リン、いつからそこに?」

「ん? んな事どうでもいいでしょ」

 殊更面倒そうに答える。

 僅か一言に凝縮された性格の悪さが滲み出ていた。

 それは折角の外見をぶち壊し、更に釣りがある程だ。

 だが、そんなリンの性格に、悲しいかな鳴海はここ一ヶ月で十分に慣らされていた。

「それにしても、びっくりしたよ。心臓が飛び出すかと思った」

「はぁ? おバカ言わないの。アンタ、心臓ないでしょ」

「あ、そうだった」

「まったく、おめでたいヤツね」

「あははは」

 笑ってはみるが、どうしても暗い気分になってしまう。

「そんな顔しないの」

 リンが手を伸ばし、鳴海の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「大丈夫だから、約束したでしょ。アタシが、蛇ノ目屋のリンが、アンタを助けてあげるって」

 同じ言葉。

 あの時、あの洞窟で鳴海は死ぬはずだった。

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