饭饭TXT > 海外名作 > 《きまぐれロボット/淘气的机器人(日文版)》作者:[日]星新一【完结】 > 【书香门第】《きまぐれロボット淘气的机器人(日语原版)》作者:[日]未知.txt

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作者:日-星新一 当前章节:15342 字 更新时间:2026-6-16 00:33

 きょうも縁日に出かけ、一日じゅう立ちつづけて、暗くなるまでその手品をくり

かえした。だけど、それを面白がってお金を出してくれる人は少なかった。帰りに

食べ物とお酒とを少し買ったら、あとにあまり残らなかった。

 老人は食事をし、お酒を飲み、ひとりごとを言った。

「むかしはわたしの手品を、人びとはずいぶん喜んでくれたものだ。しかし、この

ごろの人はちっとも感心してくれない。もっと新しい手品を考え出せばいいのだろ

うが、こう年をとってしまっては、それも無理なのだ……」

 老人は悲しそうな顔で、つぶやきをつづけた。

「あしたはまた、遠くの縁日に出かけなくてはならない。さて、ひと通り練習して

から眠るとしようか」

 老人はボウシのなかから、いろいろなものを取り出した。ほかにはなにもできな

いが、この手品だけはうまいのだった。

 そのようすを、窓の外から熱心に見つめている二人の人影があった。彼らは、こ

んな意味のことを話し合った。

「すごいものだな」

「ああ、驚くべきことだ」

 普通の人なら、こんなに目を丸くするはずはない。彼らは、ミーラ星からやって

きた宇宙人だった。そっと地球に立ち寄ってみたものの、学ぶべき文明もなさそう

なので帰ろうとした。そして、通りがかりになにげなくのぞいた家のなかに、この

光景を見つけたのだ。彼らはさらに話しあった。

「あれは、なんでも出てくる装置だ」

「ぜひ、ミーラ星に持ち帰りたいものだ」

 そのあげく、彼らは家のなかに入った。老人はびっくりした。ぴっちりした銀色

の服の、見なれない二人が、とつぜんあらわれたのだから。酒に酔ったせいかと思

ったが、そうでもないらしい。

 ミーラ星人たちは老人に「それをゆずってくれ」と、手まねでたのんだ。だが、

老人は首と手を振った。これは渡せない。これがなくなったら、生活してゆけない

のだ。

 しかし、ミーラ星人たちは欲しくてたまらなかった。あきらめられない。そこで

二人はうなずきあい、老人に飛びかかり、腕ずくで取りあげてしまった。

 老人は泣き声をあげた。ボウシを取られたら、あしたからどうしたらいいのだろ

う。それを見て、ミーラ星人たちは少し気の毒になり、相談しあった。

「悲しんでいるぞ。むりもないな。こんな便利な装置なのだから。よし、かわりに

、なにか置いていってやるとするか。だが、なにがいいだろう」

「そうだな。こんなものしかないが」

 と、ひとりがポケットから、ボールぐらいの大きさのエメラルドを出した。美し

い緑色の宝石だ。しかし、べつのひとりは言った。

「なんだ。このあいだ寄った星に、たくさんころがっていた石ころじゃないか。そ

んなものでは悪いだろう」

「しかし、ほかにしようがない。同情はいいかげんにして、さあ、早く引きあげよ

う」

 ミーラ星人たちは、その宝石を置き、老人の家からかけ出した。そして、林の奥

の宇宙船にもどり、大急ぎで夜の空へ飛び立っていった。

  金色の海草

 エヌ博士の研究所は、岩の多い海岸のそばにあった。窓からは、白くくだける波

を見ることができる。また、遠い水平線をゆく船をながめることもできる。空気が

よく、静かで、夏は涼しくていい。

 ある日、お金持ちのアール氏がたずねてきて、あいさつした。

「近くまでドライブに来たついでに、ちょっとお寄りしました」

「どうぞ、どうぞ。ごゆっくりと」

 とエヌ博士は迎え、アール氏は聞いた。

「このごろは、どんな研究をなさっておいでなのですか」

「お目にかけましょう。これです。やっとできあがりました」

 エヌ博士は、ガラス製の容器を指さした。海水がみたされてあり、そのなかで海

草が育っていた。輝くような金色をした海草だ。それがゆらゆらとゆれている光景

は、じつに美しかった。アール氏は感心した。

「きれいなものですね。まるで、おとぎの国にでもいるようだ。どうやって、色を

ぬったのですか」

「いや、色をぬったのでも、メッキをしたのでもありません。これは、金でできて

いる海草なのですよ」

「まさか。そんなもの、あるわけがないでしょう」

 と、ふしぎがるアール氏に、エヌ博士は説明した。

「草や木は地面のなかから養分をとり入れ、クキや葉など、自分のからだを作りま

す。それと同じことですよ。この海草は海水中に含まれている金をとり入れ、から

だを作るのです。長いあいだかかって品種を改良し、なんとか完成しました」

「海水のなかに金が含まれているということは、わたしも聞いたことがある。しか

し、それを取り出すのは、大変な手間だという話だったが……」

「機械でやったのでは、費用がかかって、ひきあいません。しかし、この海草はこ

の通りやってくれるのです」

「では、これを使えば、簡単に金がとれるわけですね」

「ええ。焼いて、よぶんな灰を除けば、金が残ります」

 アール氏は目を丸くして見つめていたが、がまんできなくなって言った。

「すごい発明だ。どうでしょう。ぜひ、これをわたしにゆずって下さい」

「しかし……」

「お願いしますよ。お金なら、いくらでも払いますから」

 アール氏の熱心さに負けて、ついにエヌ博士は承知した。

「いいでしょう。お売りしましょう」

「それは、ありがたい。さっそく、これをふやして、海の底で育てることにしよう

。金のとれる畑ができるわけだ」

「そうです。大いにふやして下さい」

 と、エヌ博士は育て方を書いた説明書を渡した。アール氏は、それを受取って言

った。

「もちろん、そうするとも。しかし、あなたは欲のない人ですね」

「わたしは早く、つぎの研究をしたいのです」

「わたしは、お金をもうけるほうが好きだ。これで、さらにお金持ちになれる」

 アール氏は大喜びだった。お金を払い、金色の海草を持って帰っていった。それ

を見送りながら、エヌ博士のほうも喜んでいた。

「金色の海草が売れ、おかげで、つぎの研究をする費用ができた。さっそく、それ

にとりかかろう。こんどは、金のウロコを持つ魚を作りあげよう。海底でふえた金

の海草を食べて育つ魚。そして、すばしこく泳ぎ、大きくなったら戻ってくるよう

な性質の魚だ。海のミツバチとでも呼ぶべきものだ。このほうが、もっとすばらし

いではないか」

  盗んだ書類

 静かな夜ふけ。エフ博士の研究所のそばに、ひとりの男がひそんでいた。その男

は、泥棒だった。

 エフ博士はこれまでに、すばらしい薬をつぎつぎと発明してきた。まもなく、ま

た新しい薬を完成するらしいとのうわさだった。男はその秘密を早いところ盗み出

し、よそに売りとばそうという計画をたてたのだ。

 男は窓から、そっとのぞきこんだ。なかではエフ博士がひとり、むちゅうになっ

て薬をまぜあわせている。熱中しすぎて、のぞかれていることに気がつかない。

 やがて、少量の薬ができあがった。みどり色をした液体だった。博士はそれを飲

み、大きくうなずいた。

「うむ、味は悪くない。においも、これでいいだろう……」

 そして、のびをしながらつぶやいた。

「やれやれ、やっとできた。いままでにわたしは、いろいろな薬を作った。しかし

、この薬にまさる薬はあるまい。世界的な大発明だ。さて、忘れないうちに、製造

法を書きとめておくとしよう」

 博士は紙に書き、それをへやのすみの金庫のなかに、大事そうにしまいこんだ。

それから、自分の家へと帰っていった。

 待ちかまえていた男は、仕事にとりかかった。注意して窓をこじあけ、なかにし

のびこむ。さっき博士がやった通りに金庫のダイヤルの番号を合わせると、簡単に

あけることができた。男は書類をポケットに入れ、うれしそうな足どりで逃げ出し

た。

「しめしめ、これでひともうけできるぞ。博士が飲んだところをみると、人体に害

のないことはたしかだ。それに、すごい薬とか言っていた。だが、どんなききめが

あるのだろうか……」

 その点が、なぞだった。飲んだあと博士がどうなったのか、調べるひまはなかっ

た。電話をかけて聞くわけにもいかない。しかし、エフ博士の発明だから、いまま

での例からみて、役に立つ薬であることはあきらかだ。

 かくれ家に引きあげた男は、紙に書いてある製法に従って、薬を作ってみること

にした。どんな作用があるのか知っていないと、ひとに売りつける時に困るのだ。

 原料を集め、フラスコやビーカーも買いととのえた。そして、何日かかかって、

問題の薬ができあがった。スズランのような、いいにおいがする。

 男はそれを自分で飲んでみた。すがすがしい味がした。男はイスに腰をかけ、き

きめがあらわれるのを待った。

 そのうち、男は立ちあがり、そとへ出た。急ぎ足で歩きつづけ、ついたところは

エフ博士の研究所だった。

「先生。申しわけないことをしました。このあいだ、ここの金庫から書類を盗んで

いったのは、わたしです。わたしをつかまえ、警察へつき出して下さい」

 と男は言った。それを迎えた博士は念を押した。

「本当にあなたなのですか」

「そうです。書いてある通りにやって薬を作り、それを飲んでみました。そうする

と、自分のしたことが悪かったのに気づき、ここへやってきたのです。お許し下さ

い。盗んだ書類は、おかえしします」

 男は涙を流してあやまった。だが、エフ博士は怒ろうともせず、にっこり笑いな

がら言った。「それはそれは。やはり、わたしの発明はききめがあった。この薬は

、良心をめざめさせる作用を持ったものです。ところが、作ってはみたものの、あ

とで困ったことに気がついた。実験のために、進んで飲んでみようという悪人がい

ないのです。しかし、あなたのおかげで、作用のたしかさが証明できたというわけ

です。どうも、ごくろうさまでした」

  薬と夢

 アール氏はある日、友人のエフ博士の研究室をおとずれた。さまざまな器具が並

び、薬品のにおいがただよっている。アール氏は言った。

「こんどは、どんな薬を作ろうとなさっているのですか」

「夢を見ることのできる薬です。ずいぶん苦心しましたが、やっと試作品が完成し

ました。これがそうですよ」

 と、エフ博士は、そばの机の上にあるビンを指さした。なかには、白い粒がいっ

ぱい入っている。アール氏は、目を丸くして感心した。

「それはすばらしい。そんな薬ができてくれれば、わたしたちの生活は、いっそう

楽しいものとなります。好きな夢が、自由に見られるというわけですね」

 しかし、エフ博士は手を振って答えた。

「いや、まだそこまでは、むりです。いまのところは動物だけです。これを飲むと

、夢に動物があらわれてくれます」

「なるほど、そうでしたか」

「つぎには、植物の夢を見られる薬の研究です。いずれは、山や海などの景色のあ

らわれるのも作ります。ひととおりそろったら、それぞれ組合わせる研究ですよ。

たとえば、うまく組合わせれば、海岸の松の上をツルが舞っている、というのにな

るわけです」

「すてきな夢を完成するのも、容易なことではありませんね。で、この粒を飲むと

、どんな動物があらわれてくるのですか」

 と、アール氏はビンを見つめながら質問した。

「いろいろ作りましたが、みなまぜてしまいました。馬のもあり、ウサギのもあり

ます。もちろん、ヘビとかハゲタカといった、あまり人気のない種類のはやめまし

たが」

 エフ博士の話を聞いているうちに、アール氏はためしてみたくなってきた。

「一粒でいいから、飲ませて下さい」

「いいですとも。家へ帰ってから、ベッドに入るまえに飲んでごらんなさい。少し

わけてあげますから」

 エフ博士は十粒ばかり小さなビンに移し、さし出した。アール氏は聞いた。

「人体に影響はないのでしょうね」

「その点はご心配なく。何回もたしかめてみました。また、夢のなかで、動物にひ

っかかれたり、かみつかれたりすることもありませんよ」

「どうもありがとう」

 アール氏はお礼を言い、わけてもらった薬を持って、大喜びで帰宅した。そして

、寝るまえに一粒を飲んでみた。すると、その夜の夢にクマがあらわれた。おとな

しいクマで、いっしょに遊んでくれた。背中にのせてくれたり、スモウの相手にな

ってくれたのだ。ちょうど、金太郎になったような気分だった。目がさめてから、

アール氏はつぶやいた。

「ききめはたしかだ。ただながめるだけのテレビとは、またちがった面白さがある

。よし。今夜は少し多く飲んで、たくさんの動物があらわれる、にぎやかな夢を見

ることにしよう」

 その晩には三粒を飲んでみた。眠りにつくと、まず夢にネコがあらわれた。毛な

みのいい、かわいいネコだ。しかし、それと遊ぼうとしたとたん、つぎに犬があら

われた。ネコはアール氏をそっちのけにして、あわてて逃げはじめた。

 犬はほえながら追いかける。そればかりではない。三番目にあらわれたライオン

が、その犬を追いかけはじめたのだ。

 そして三匹とも、どこか遠くのほうにいってしまった。それっきり朝まで、夢で

はなにもおこらなかった。

 アール氏は、目がさめてから残念がった。

「やれやれ、せっかくの薬を、むだにしてしまった。たくさん飲んだから、それだ

け面白いというものでもないようだな」

  なぞのロボット

 エヌ博士は、ひとつのロボットを作りあげた。それからは、家にいる時も研究所

にいる時も、いつもそばに置いておく。通勤の途中はもちろん、休日にどこかへ遊

びにゆく時も、必ずいっしょだった。

 博士のあとを、ロボットがひとりでに、ついてゆくのだ。ちょうど、影ぼうしの

ようだった。あまり大きくはなく、やせた形のロボットなので、乗物のなかでも、

そうじゃまにならない。しかし、これがどんな働きをするのかは、博士のほかには

だれも知らなかった。

 ある日、エヌ博士の家にやってきた友人が聞いた。

「いつも、ロボットといっしょなのですね」

「そうです。わたしには、なくてはならないものですから」

「しかし、いつうかがっても、このロボットの働いているのを見たことがありませ

ん。お茶を運んでもこなければ、へやや庭のそうじもしないようですね」

「そんなことのために作ったのではありません」

「いったい、なんの役に立つのですか」

「たいしたことでは、ありませんよ。それに、ほかの人には関係のないことです」

 エヌ博士は教えようとしない。そこで、友人はロボットのほうに聞いてみること

にした。

「おまえは、どんなことをするロボットなんだい」

 ロボットなら、うそをつかないだろうと考えたからだ。だが、なんど聞いても答

えない。友人は、またエヌ博士に質問した。

「このロボットは、耳が聞えないのですか」

「そんなことはありません」

「では、口がきけないのですか」

「そうです。その必要がないからですよ」

 しかし、これだけの説明では、なぞは少しもとけない。

 友人は、ますます気になってならなかった。つぎの日、エヌ博士が外出するのを

待ちかまえ、そっとあとをつけてみた。

 だが、ロボットは博士のあとに従って歩くだけで、なんにもしない。カバンを持

ってあげようともせず、博士がハンケチを落しても、注意したり拾ったりもしない

 ついに、友人はある作戦を思いついた。犬をけしかけてみることにしたのだ。い

くらなんでも、ぼんやり立ったままということはないだろう。

 犬は勢いよく、エヌ博士にほえついた。おどろいた博士はあわてて逃げまわった

が、ロボットはそれを助けようとしない。それどころか、いっしょになって逃げる

だけだ。このようすを、友人は物かげから見てつぶやいた。

「なさけないロボットだな。本当に役に立たないらしい。へんなものを作ったもの

だな。わけがわからん」

 さらに、研究室へもしのびこんで、のぞいてもみた。だが、ここでも同じように

、ロボットは博士のそばにじっと立っているだけだ。友人はこれ以上つづけてもむ

だだと、調べるのをあきらめた。

 夕方になると、エヌ博士は自分の家に帰る。そして、夜になり眠る時間になると

、博士は短く命令するのだ。

「さあ、たのむよ」

 それによって、ロボットはやっと、ちょっとのあいだ仕事をする。机にむかって

ノートをひろげ、日記をつけはじめるのだ。たとえば、外出してハンケチをなくし

たことや、犬にほえられたけれど、あやうく逃げたことなどを……。

 エヌ博士はベッドのなかからそれをながめて、笑いながらひとりごとを言った。

「わたしは日記をつけるのが、めんどくさくてならない。そのため、このロボット

を作ったのだ。しかし、こんなことはみっともなくて、とても他人に話すわけには

いかない」

  へんな薬

 ケイ氏の家にやってきた友人が言った。

「あなたは、薬をいじるのが好きですね。いつ来ても、薬をまぜ合わせたり熱した

りしている。なにか、いいことがあるのですか」

「喜んで下さい。やっと、すごい薬ができました。これですよ」

 と、ケイ氏は粉の入ったビンを指さした。友人は、それを見ながら聞いた。

「それは、けっこうでした。で、なんの薬ですか」

「カゼの薬です」

「いままでのにくらべ、どんな点がすぐれているというのですか」

「いま、ききめをごらんに入れましょう」

 こう言いながら、ケイ氏は少し飲んでみせた。友人はふしぎそうだった。

「ききめを見せるといっても、あなたは、カゼをひいていないでしょう」

「いいから、見ていてごらんなさい」

 まもなく、ケイ氏はセキをはじめた。友人は心配そうに、ケイ氏のひたいに手を

当てた。

「熱がある。これは、どうしたことです」

「さわぐことはありません。これはカゼをなおす薬ではなく、カゼひきになる薬な

のです」

「ばかばかしい。あきれました。わたしにカゼをうつさないよう、願いますよ」

「それは大丈夫です。まあ、もう少しお待ち下さい」

 一時間ほどたつと、ケイ氏のセキはおさまり、熱もさがった。友人は、ますます

変な顔になった。

「もうなおったのですか」

「つまりですね。この薬を飲むと、カゼをひいたのと同じ外見になるのです。外見

だけで、本人は苦しくもなく、害もありません。そして、一時間たつと、もとにも

どるのです」

「妙なものを、こしらえましたね。しかし、こんな薬が、なにかの役に立つのです

か」

「もちろんです。ずる休みに使えます。すなわち、いやな仕事をしなくてすむとい

うわけでしょう」

 こう説明され、友人ははじめて感心した。

「なるほど、なるほど。それは便利だ。やりたくない仕事を押しつけられそうにな

った時は、この薬を飲めばいいのですね。すばらしい。ぜひ、わたしにわけて下さ

い」

「そらごらんなさい。ほしくなったでしょう。いいですとも、少しあげましょう」

 小さなビンに入れてもらい、友人は喜んで帰っていった。

 そして、ある日、こんどはケイ氏が友人の家をおとずれた。誕生日のお祝いをし

たいから、ぜひ来てくれと、さそわれたのだ。

 その食事のとちゅう、ケイ氏はふいに顔をしかめて言った。

「きゅうに腹が痛みだした。悪いけれど、これで失礼します」

 友人はあわてたが、気がついたように言った。

「からかわないで下さい。わたしの家にいるのが面白くないので、早く帰りたいと

いうのでしょう。ゆっくりしていって下さいよ」

「いや、本当に痛むのだ」

 ケイ氏の顔は青ざめ、汗を流し、ぐったりとした。しかし、友人は信用せず、笑

いながらひきとめた。

「このあいだのカゼ薬以上に、よくできています。いつもカゼでは怪しまれますか

ら、たまには腹痛にもならないといけませんね」

 しかし、一時間たってもケイ氏は元気にならず、苦しみかたは、ひどくなるばか

りだ。友人はやっと、これは本物の病気かもしれないと考えて、医者を呼んだ。か

けつけてきた医者は、ケイ氏の手当てをしてから言った。

「まにあってよかった。もう少しおくれたら、手おくれになるところでしたよ。し

かし、なぜもっと早く連絡してくれなかったのですか」

 このことがあってから、ケイ氏はへんな薬を作るのをやめてしまった。

  サーカスの秘密

 そのサーカスは、大変な人気だった。動物たちが、とても珍しい芸をする。それ

を見物しに、毎日たくさんのお客がやってくる。

 満員だったお客が帰り、静かな夜になった。サーカスの団長は自分のへやにひき

あげ、ゆっくり休もうとした。

 その時、ひとりの男がたずねてきた。知らない人なので、団長は聞いた。

「どなたですか」

「サーカスを見物していた者です。じつに、すばらしかった。木のぼりをするウサ

ギなど、はじめて見ました。本当にすばらしい」

 こう言われると、団長も悪い気はしない。疲れているから早く帰って下さいとも

言えない。

「そうですか。みなさんに面白がっていただければ、こんなうれしいことはありま

せん」

「だれでも喜びますよ。強そうなトラも、ネコのようにおとなしかった。どんな方

法を使うのか知りませんが、これほどまでに訓練なさったあなたは、偉大な天才と

呼ぶべきでしょう」

 あまりほめられたため、団長はいい気になって、その方法をしゃべってしまった

「動物を訓練するのは、たいしたことではありません。しかし、この装置を作りあ

げるのには、ずいぶん苦心しましたよ。長い年月をかけ、何度も失敗をくりかえし

ました」

 と、団長は懐中電灯のようなものを出してきた。ダイヤルだの、複雑の形のコイ

ルだのがくっついている。男は、それに目をやりながら聞いた。

「なんですか、それは」

「早くいえば、電波を利用し、動物に簡単に催眠術をかける装置です。このダイヤ

ルには、いろいろな動物の絵がかいてあるでしょう」

「ネコの絵もついていますね」

「このネコのところに目盛りをあわせ、トラにむけてボタンを押すとします。する

とトラは催眠術にかかり、自分はネコだと思いこむわけです」

「なるほど。おとなしかったのは、そのためだったのですね。サーカスには、せん

たくをするライオンも出ていましたね」

「あれは装置の目盛りをアライグマにあわせ、ライオンに催眠術をかけたのです。

チンチンをするウシや、台を飛び越えるブタもごらんになったでしょう。いずれも

、この装置のおかげです。また、もとに戻したい時は、このゼロの目盛りにあわせ

てボタンを押せばいいのです」

 団長はとくいそうに説明した。聞いているうちに男は身を乗り出し、男の目は輝

いてきた。

「それさえあれば、だれでもすぐサーカスが持てるというわけだ。ぜひ、その装置

をわたしにゆずって下さい」

「だめです。わたしが苦心して作ったものだ。これだけは、いくらお金をもらって

も、他人には渡せません」

 団長はことわったが、男はあきらめなかった。

「欲しくて欲しくて、たまらなくなった。どうしても渡さないのなら……」

 男はポケットからナイフを出し、振りまわそうとした。しかし、団長が装置のボ

タンを押すほうが早かった。それから、団長は装置をしまいながらつぶやいた。

「やれやれ、乱暴な人もいるものだ。罰としては、しばらくそのままでいて、ここ

で働いてもらうことにするよ」

 つぎの日からサーカスに新しい人気者が加わった。動物ではなく、チンパンジー

のまねのうまいピエロだ。本当にうまく、本物のチンパンジーそっくりだった。

 お客たちは「どうやったら、あんなにうまくできるようになるのだろう」と話し

あい、ふしぎがりながらも、大喜びして手をたたくのだった。

  鳥の歌

 アール氏は友人のエイ博士の研究所をおとずれ、話しかけた。

「このごろは、どんな研究をやっているのですか」

「鳥ですよ。いま、ごらんにいれましょう。いや、お聞かせするといったほうがい

いのかな」

 こう言いながら、博士は一羽のハトをカゴから出した。豆をやり頭をなでてやる

と、そのハトが鳴きだした。しかし、普通の鳴き方ではなく、童謡のハトポッポの

歌のメロディーで鳴いたのだ。アール氏は目を丸くした。

「これは、おどろいた。どうして、こんなことになったのですか。ぜひ説明して下

さい」

 アール氏は知りたがった。博士は承知し、研究室のなかを案内し、ある物を指さ

した。

「ここにあるのが、わたしの作ったロボットのハトです。ハトポッポのメロディー

で鳴く、オルゴールのようなものです」

「見たところは、本物そっくりですね」

「うまれたばかりのハトを、このロボットのハトといっしょに育てたのです。する

と、ハトはそれにつられ、だんだん歌うようになったのです」

「なるほど。外国人のあいだで育つと、しぜんに、その国の言葉を覚えてしまうよ

うなものですね。ほんとに面白い」

 アール氏があまり感心するので、博士はこんどはカナリヤを出してきた。

「これもおなじ方法で育てたのですが、もっとよく歌いますよ。お聞かせしましょ

う」

 そのカナリヤは、美しい声でシューベルトの曲を歌った。アール氏はため息をつ

いた。

「すばらしい。コマーシャル·ソングを歌えるようにして、どこかの会社に持ち込

めば、さぞ、もうかることでしょう」

「いや、わたしは、商売にするつもりなどありません。鳥の声を、学問的に研究し

ているだけなのです」

 アール氏は鳥の声を聞いていたが、やがて博士に言った。

「これを一羽ゆずって下さい。代金は、いくらでも払いますよ。じつは、きょうは

わたしの結婚記念日なのです。妻へのおくり物にしたいのですよ。お願いします」

「そうでしたか。これまでに育てるのは大変でしたが、ほかならぬあなたです。お

ゆずりしましょう」

 アール氏は大喜びし、大金を払い、そのカナリヤをもらうことができた。

 家に帰ると、アール氏は夫人に言った。

「おまえを、びっくりさせる物があるよ」

 だが、夫人のほうもこう言った。

「あら、あたしもよ。あなたをびっくりさせるような、すてきな物を買ってきたの

。なんだと思う」

「さあ、なんだろうな」

「カナリヤよ。ほら」

 アール氏は本当にびっくりした。しかも、そのカナリヤはエサをやると、いろい

ろな曲をつぎつぎと上手に歌うのだった。アール氏は聞いた。

「これを、どこで買ってきたのだい。とても高かったのだろう」

「いいえ、安かったわ。あたしの友だちが持っていたのを、ゆずってもらったのよ

「しかし、これだけにするには、とても手間がかかるはずだ」

「たいしたことはないそうよ。その人は、鳴かないカナリヤがかわいそうだからと

、小さな装置を作ったの。それを手術で首に埋めこんだのよ。エサをやるとその装

置が動き、カナリヤの声帯に作用して、こんなふうに歌ってくれるのよ」

「なんだ、そんなしかけができたのか」

「さあ、あなたの買ってきたものを、見せてちょうだい」

 アール氏は困ってしまった。高いお金を払って、むりに手に入れて損をしたなと

残念がった。

  火の用心

 学者のエヌ博士は、助手の青年を呼んで、こう話しかけた。

「きみもそろそろ、なにか珍しい物を発明していいころだと思うがね」

「はい。じつは、いま、ご報告しようと思っていたところです」

「なにか作ったというわけだね」

「ええ、これです。ロボットの鳥ですよ」

 と青年は手にしていた鳥を見せた。カラスぐらいの大きさだった。博士は、それ

をながめながら聞いた。

「うまく飛ぶのかね」

「もちろんです。しかも、ただ飛ぶだけではありません。よくごらんになって下さ

い」

 青年は鳥の頭についているボタンを押した。ロボットの鳥は羽ばたきをし、へや

のなかを飛びまわりはじめた。そして「火の用心、火の用心」とさえずる。また、

口をぱくぱくやると、カチカチというヒョウシ木の音をたてた。それを見て、博士

は腕ぐみをした。

「妙なものを作ったな。しかし、まあ少しは役に立つかもしれないな」

「いえ、少しではありません。とても大きな働きをします。この鳥は火事を発見す

ると、大声で叫びます。また、その場所を、電波で知らせてくれます」

「そうか。そうなると大発明だ。たくさん作って飛ばせば、火事による災害を、ぐ

んとへらすことができるわけだ。よくやった」

 博士は青年をほめ、感心しながらタバコに火をつけた。そのとたん、ロボット鳥

はそばへ飛んできて「火事だ、火事だ」と叫んだ。

 同時に、青年の持っていた装置は、ガーガーと音をたてはじめた。博士はあわて

てタバコを投げ捨てた。

「性能のたしかなことは、よくわかった。だが、これでは困る。もっと改良しなさ

い」

「そういたします」

 青年はひきさがった。

 何日かたって、青年はまた持ってきた。

「こんどは大丈夫です。小さな火には反応しないように、改良しましたから」

「では、みせてもらおう」

「はい」

 青年はへやの窓を開け、鳥のボタンを押した。しかし、鳥は窓から出てゆこうと

せず、へやのすみへ飛んでいって「火事だ」と叫んだ。

 そこには、きょうからつけはじめた煖房装置があった。博士は笑って言った。

「まだ、実用にはむりなようだな」

 さらに何日かたった。ある夜、博士は眠っているところを起された。目をこすっ

て相手を見ると助手であり、時計をのぞくと午前四時だった。

「どうしたんだ、こんな時間に」

「一刻も早くお知らせしようと思ったからです。こんどこそ、本当に完成しました

。よく教えこんだのです。火事とは、しだいに熱さをましてゆくものだと。これな

ら、煖房があってもさわぎません」

 こんどは鳥も、開けた窓から飛び出していった。「火の用心、カチカチ」という

音が遠ざかっていった。

 しばらくすると、青年の手にある受信装置がガーガーと鳴りはじめた。

「ほら、どこかで火事をみつけました」

 しかし、装置を調べると、鳥はどんどん飛びつづけていることがわかった。遠く

に火事を発見して、それにむかっているのかもしれない。

 その方角に当る消防署に電話をかけ、聞いてみた。しかし、どこにも火事はない

という返事だった。青年はふしぎがった。

「どういうことなのだろう。こんどこそ成功だと思ったのに」

 そのうち、博士はひざをたたいて言った。

「わかったぞ。この飛び方を見ると、のぼってきた太陽をめざしているらしい。の

ぼるにつれて、あたたかくなるからな。この調子だと、戻ってこないかもしれない

ぞ」

  スピード時代

 天気のいい休日。お金持ちのアール氏は、庭で草花の手入れをしていた。すると

、かきね越しに声をかけてきた男があった。

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