饭饭TXT > 海外名作 > 《計画された落とし穴(日文版)》作者:[日]海里【完结】 > 計画された落とし穴(日文版)@txtnovel.com.txt

第 3 页

作者:日-海里 当前章节:14245 字 更新时间:2026-6-23 02:41

「有名ですよ。うちのクラスのやつでも見た奴がいるって」

「先輩。マジですか、それ」

「えー、冗談だろ? でもでもどうなんです。本当のところ」

「御手洗って奴と相思相愛だって噂聞いたんですけど」

 ……。

 菊池は立ち上がると、一年がそろって見上げてくる。それを見下ろして

「あー、なんつーか」

 空を見上げてなんとなく肩をまわす。笑みを作ってみた。

「お前ら。次同じこと聞いたら外周な?」

「えーーーーーっ」

 自分でも目が笑ってないだろうことはわかる。

「わかったか?」

「……はーい」

 お揃いの不満げな返事が返ってくる。

「でも先輩。今日は部活来れるんですよね?」

 ちょっと拗ねたような声に、言葉が濁る。

「あー……ちょっと野暮用で無理」

 一年は顔を見合わせる。その中の一人が代表して聞いてくる。

「また御手洗ですか?」

 う。

「……そんなとこ」

 顔をそらす。また一年同士が顔を見合わせているのが視界の端に移った。

(こうやってどんどん誤解されていくんだろうな、きっと)

 そんなことを思った。

 放課後、教室で待っていると案の定御手洗は現れた。――教卓の下から。

「君も本当に懲りないよね。僕の予想したとおりだ」

 ……いつからあそこにいたんだか。

 そんな素朴な疑問が頭をよぎる。つくづく計り知れない。

「で。解決方法はわかったのかよ?」

 御手洗は頷く。

「ああ。いくつか見つかった。とりあえず準備室に向おう」

 そういって、いつもの白衣を翻した。

 まえと同じ。ソファーのある部屋に着く。でも今度はあの奇妙な音はしない。

「で? また変なのかけたらマジで怒るぞ」

 御手洗が手を差し出して来たので、一瞬迷ってからコートとカバンを手渡した。

「大丈夫。催眠術は二度とかけないと約束する」

 それを部屋の隅に置いてから、戸棚の中からなにやら出し始める。

「本当だろうーな」

「僕は君に嘘はつかない」

「うそつけ」

「本当だとも。僕はこれまで君に嘘をついたことなどない」

「わかったわかった」

 手を振って御手洗をあしらった。まともに取り合っても意味などない。

 近くの机に腰掛けていると、いつのまにか御手洗がコーヒーカップを手に持っている。

 コーヒーの香りとあたたかそうな煙がただよってくる。それをじとっと見てから

「……俺には出さないわけ? あんた」

 そう聞くと、チラッと目線を寄越してから戸棚を指差す。

「そこにあるから勝手に飲んでくれ。僕は用意するものがある」

 コーヒーをすすりながら、そのままパソコンへと向う。

 菊池は仕方なく自分でコーヒーを注いだ。

 口をつけながら御手洗の背後にまわってパソコンの画面を覗く。

 なにやら色とりどりの棒線グラフが表示されていた。

「なんだこれ?」

「ちょっと必要なんだ」

 見ていてもつまらなかったのでコーヒーを飲みながら近くの机に腰掛ける。

 御手洗は薄汚い白衣で黒いふちのメガネ越しにパソコンを睨んでいる。

「……あんた、目が悪いのか?」

「メガネをかけている人にそれを聞くことに何の意味が?」

 言葉に詰まる。確かにそうだ。

「でも、お前顔はいいじゃん。そんなの付けてたらわかんないだろ」

「つまりそーゆーことだね」

「何が?」

「僕は顔がいいから。大抵誰でも引っかかってしまうんだよ。――それじゃつまらないだろう?」

 最後の言葉は笑いを含んでいた。

(そりゃ、顔がいい奴の贅沢な悩みだな)

 菊池はため息をつく。

「僕は自分の力で相手を落とすのが好きなんだよ」

 ……あっそ。

 でもこいつに気に入られて、落とされるなんて

「その相手は不憫だな」

 顔は良くてもこの性格じゃなー。

「君の言うことじゃないけどね」

「まぁな。とりあえずその相手には同情するよ」

「そうかい?」

 笑ったような返事が返ってくる。

 こいつに嫌味なんかいっても無駄か。

「そーいや、あんたのその力っていつごろから使えたんだ?」

 何の力なんだかいまいちわからないが、小さい頃から使えたりしたんだろうか。

 ……小さい頃から使えて今の様な性格になったのなら、少し同情するかもしれない。

 そう思って聞いてみるものの

「僕のことに興味あるのかい?」

 と頬に手を当てて恥ずかしがって見せた。

「ねーよ」

 その背中に向って冷たく言い捨てる。

 こいつって結局何がやりたいんだか。

 そんなことを思って室内を見回す。最初は写真がきっかけだったのに……と、頭がくらっとした。

(……?)

 コーヒーカップを机に置く。手をつくと細かく震えている。

「なん……だ?」

 手を動かそうとしてもうまく動かない。

 足もいつの間にか硬く固まってしまっている。

 まるで全身が尾金縛りに合っているようだった。

 力がうまく入らなくてガタンとそのままひざまづく。御手洗が振り返った。

「あ、効き始めたようだね」

 コーヒーカップを片手に近寄ってきた。動かない体で御手洗を見上げる。

「大丈夫?」

 菊池のカップの隣にコーヒーカップを置き、わきに肩を入れ、菊池を立ち上がらせて例のソファーの上に横たわらせる。

「て……め、なに、した……」

「ちょっとしたしびれ薬をね」

 戸棚まで歩いて行き、引き出しからなにやら注射器を取り出してくる。

 ……は?

 血の気が引く。

「おい……なんだよ、それ」

「興奮剤」

 御手洗はなんでもないように言う。

「ちげーよ!! それで何するんだって聞いてんだよっ」

 まさか。まさか。それをオレに打つなんていうんじゃないだろうな。

「君にプレゼント」

「ばっ……気ぃ狂ってるぞお前っ!」

 体を動かそうと思っても体は重くしびれて動かない。

 なんでこの体は動かねぇんだよっ!

「安全は保障するよ。一度試したことがあるんだけど、ピンピンしてる」

 だから、お前の頭は狂ってんだろっ?!

 そんな保障を素直に聞けるわけない。

「やだ、やめろって」

「でもこれが催眠術を解く方法なんだが」

「……は?」

「興奮剤によって体の悪い物を外に出してしまおうと言う」

 アホかっ。精神的な催眠術を汗や熱なんかで出せるわけがないだろ。

「そんな確証どこにあるんだよっ?!」

「勘」

「やめろーーーーっっ!!!!!」

 力の限り叫ぶ。

 こんなところで死にたくない。それならまだ催眠術にかかっていた方がマシだ。

「大丈夫だって。じゃ、大人しくして」

 腕を押さえつけられてチクリとした痛みが走る。

「やめっ……ろ」

 横目に注射器の中の液体が体に入り込んでいくのを見る。

 汗が噴き出した。

「……オレ、死なないよな」

 弱気な声を出すと御手洗はきっぱりと否定する。

「そんなことがあったら僕の方が大変だよ。時間も二時間程度だし」

「二時間?!」

 程度って。今から二時間だなんていったら夜7時ごろまでかかる計算になる。

「そ。君の家には電話しておく」

 御手洗は携帯を取り出して、番号を押す。

 ……こいつオレの家の電話番号覚えてるのか?

 冷や汗が流れた。

 コール音がかすかに聞こえてくる。御手洗は携帯をもちながらパソコンの操作をはじめた。

 少しして母さんらしい声で「菊池ですが」と聞こえた。

 御手洗はパソコンのスピーカーに携帯をあてる。マウスで画面をクリックした。

『あ、オレ。今日の連中と遊んで帰るから遅くなる。飯いらないから』

(……?!)

 スピーカーから菊池の声が流れてくる。

「そうなの? 気を付けるのよ?」

『うん。じゃ』

 御手洗が携帯を切る。菊池は言葉が出なかった。

 なんだよ、今の?!

「ま、こんな感じだよ」

 携帯を机の上に放り投げて、また戸棚へ向う。

「今、なにやったんだ?!」

 なんでオレの声がパソコンから流れてくるわけ??

「パソコンで編集してしゃべらせたんだよ。なかなかの出来だろう? 多少質は悪いが、携帯なら相手が良いように解釈してくれる」

「どうやて声なんか……」

「それぐらい大したことない」

 そうして振り返る御手洗の手には細い手ぬぐいが握られていた。

十話**

「おい……?」

 菊池は首だけなんとか動かして見上げる。

「まぁ、これで帰りが遅くなっても平気だということ」

 そう言いながら、持ってきた手ぬぐいでを両手を縛る。そうしてソファーの奥に置いてあった机へくくりつけた。

「な、なにしてんだよ?」

 なんで固定するわけ?

「念のため」

 今度は足の方にまわる。左足首の片方をソファーの足へ結びつけた。右足はソファーの背が邪魔で結びつけるところがない。

 御手洗は少し悩む仕草をしてから菊池の足を大きく広げる。右足をソファーの背に引っ掛けるようにして、同じようにソファーの足へ結びつけた。

「おい……」

 両手を縛られ足を大きく広げてる姿に心もとないになる。 

「暴れないように、だよ。そろそろしびれは切れてくるんじゃないかな」

 菊池は腕を動かそうとする。手首は縛られているがそれとは別に微妙に動く。感覚も幾分か戻ってきていた。

「あ、ホントだ」

「そのうち興奮剤の方が効いてくるから。前のはひどく暴れた」

「……おい」

 てめーは自分に試したんじゃなかったのか?

「ちょっと試しただけだったのに、もうものすごく暴れちゃって殴るわ蹴るわひどいと言ったら」

 こいつ、絶対いつか刺される。刺されるつーか、そのうちオレが刺す。菊池は心の中で確信する。

「でもこの紐は……ぅあっ?」

 いきなり体が熱くなった。

「あ……?」

 心臓の音がうるさくなる。息……苦しい。

 なんだ、これ。なんでこんなに……っ。

「ん……っ、あつ……い……」

 体が熱い。額に汗が噴出した。

 あつい、あつい、くるしい……。

「僕の特製”即効性興奮剤”」

 んなもん……つくるんじゃねぇっ……っ!

 得意そうに言ってのける御手洗に悪態をつく。

「あ……っちぃ……」

 ギリと手首に手ぬぐいが食い込む。

 ちょ……待て、本気で熱いぞ? これ……

「はっ……っぁ」

 浅い呼吸を繰り返す。まるで熱湯の中に放り込まれた気分だ。

 あつい……

 御手洗の手がブレザーにかかってボタンを外した。

「なん……」

 ブレザーを開いて、中のYシャツに手をかけ開いた。

 菊池は困惑した表情で御手洗を見上げる。

 御手洗の指がへそ当たりから首下までつぅーっと肌を伝った。

「くっ……っ」

 ビクンッと体が震える。

 御手洗の冷たい手の平が菊池の肌をやんわりとなでる。

「……はっ……は」

 息がさらに熱くなった。

 あつい……、体の中も外も熱い……

「ん……みたらっ……ぃ」

 ……あつい。

「なに?」

 御手洗はすました顔をしながら菊池の肌に指を滑らせる。

「さわ……んなっ……」

 体が熱い……外も――中も。

 肌に触れられるだけで、緩い快感が体に走る。

「でも気持ちいでしょ? 僕の手、冷たいしさ」

 菊池は首を振る。

 冷たいから余計に性質が悪い。熱い体にそれだけがやけに鮮明に伝わってくる。

 それだけなのに熱が中心に集まっていくのがわかる。

「はぁ……っ、やっ」

 御手洗は菊池の立ち上がりかけているものをやんわりとなでる。

「みる、なっ」

 ……なんで、こんなこと、でっ。

 男の体は気持ちいいと反応するもんだけど、でもなんで今……っ

「恥ずかしがることじゃない。君のには少しだけ媚薬が入っていたから」

 なっ! ……っんで、この野郎はそんなもん……っ。

 御手洗を睨み上げる。

「苦しいより気持ち良い方が良いんじゃないかと思って」

 御手洗の手に、中心を服の上か握り締められて体が強張る。

「ぁぅ……っ」

 その手から逃れようと腰を引こうとするが縛られた両足がそれを拒んだ。

「さわるなっ……よっ」

 その間もやんわりと形どるようになであげる。

「別に変なことはしないよ。君がこうなってるのも仕方のないことだから」

 ベルトを外して下着ごと下ろすと、菊池の中心があわらになった。

 反射的に顔をそらす。完全に立ち上がっていた。

「少し出したほうがいいね」

 少し首を傾げてから御手洗の手が直にからみつく。やりとした手の感触に体がはねた。

「や、めろっ」

「でも熱いだろう? 少し出すとラクになるから」

 淡々とした口調で告げてくる。妙に義務的に言われて言葉が詰まった。

「男同士なんだし、そう恥ずかしがることもないだろ」

 からっみついた手がゆっくりと緩急をつけるように動き始める。

「ぁっ……はっ……ふっぁ」

 菊池は唇をかみ締めて与えられる快感に絶える。

 だんだんと鋭くなってきて、そのまま御手洗の手の中で達する。

「く、ぁあ……っ!」

「……いい声」

 御手洗は楽しそうに呟いて指についた精液をなめる。

(きたな……いっつーの……こいつやっぱ……)

 脱力した体のまま、荒い息を繰り返す。なぜか泣きたくなった。

「頭、おかしい、お前っ」

 御手洗はそれに微笑みで答える。

「……少し開発しておこうかな」

 そうポツリと言って、御手洗は近くにあったクッションを菊池の背中の下に潜り込ませる。

 指に液をからませたまま、菊池の後ろをさぐり指をそこに押し込んだ。

 突然のことに息が詰まって体が固まる。

「調べるだけだから」

 何か言うよりも早く、御手洗に言い聞かせられてしまう。

「な、……なにを?」

 とりあえず聞いてみるものの。

「そのうちわかる」

 それだけだった。指がぐっと奥まで入り込んでくる。

「痛みはないだろう? 痛覚はにぶくなってるから」

 確かに痛みはなかった。ちょっとした異物感はあるが、それすらも痛いという感覚ではない。

 ただ神経がするどくなっているのか、中の指の動きが鮮明に伝わってくる。

 まるで押し広げるように蠢く。そうして大した時間もかからないうちに指は二つに増えた。

「ぁ……う……」

 体の熱は煽られように高くなっていく。

「ちょっと冷たいよ?」

 一度指が抜かれ、少しして冷たい感触が伝わってくる。丸いボール様ななものが入ってくるのがわかる。

 そうしてそれは指で奥まで押し込まれた。奥のほうに異物感があった。

 御手洗に目で問い掛けると、ちょっとだけ笑う。

「ちょっと力入れてくれる?」

 困惑しながらも頷く。そこを閉めるように力を入れると中の物が更に鮮明になる。

「そ。いい感じだよ。じゃあ行くよ」

 ピッと機械音がしたかと思うと、中の物が震え出した。

「あぁ……っ!!」」

 ギシッと手足に紐が食い込んだ。

「やっ……やめっ……」

 しびれるような快感が身体に走る。

 逃げるように腰が揺れるが、奥に押し込まれたそれがなくなる筈もない。

「あ、あ……やっ……」

 襲ってくる快感に堪え切れず高い声が漏れる。

 さっき出したばかりの筈なのに菊池のそれは立ち上がり先端から蜜を零した。

「や……めっ……」

 涙が頬を流れる。そして小さな機会音がして振動が止まった。

 荒い呼吸をしながら御手洗を見上げる。

「……なん……今のっ」

 涙を流しながら菊池は荒い息をつく。

「気持ちいい以外感じないだろう?」

 確かに痛いとか不快感があるわけじゃない。でも

「苦しくない様にしてるだけなんだから、それにしたがっていいんだ」

「いい……やめて、くれ」

 これ以上与えられたら理性が効かなくなる。

 さっきのだけで体の中から突き上げてくるような快感が走った。

 こんなのには耐えられない。菊池は首を振る。

「怖がらなくていいんだ。これは今だけだから。薬が切れればそれで終わり」

 それでも首を振る。

 御手洗は困ったように笑って、初めて眼鏡を外したみせた。

 息を呑む。

 こいつ……

(やっぱ顔はすっげーいい……)

 女がすぐに引っかかるのも、ものすっごく頷ける。目がそらせない。

「大丈夫だから」

 やわらかい笑みでそう言われて、菊池は頷いた。

十一話

「……つかれた」

 菊池は椅子に腰掛けながらぼやく。手首と足首がヒリヒリする。ついでに喉も。

 なんだかんだで……。

 そこまで考えて顔を赤く染めた。

(もしかしてオレ、すっげー恥ずかしいことやってたんじゃねーのか?)

 ケツの穴にバイブ突っ込まれて、それで……何度もイってしまうなんて。

 しかも、しかも、しかもっ。あの御手洗の前で。

(オレ、もしかして馬鹿か?)

 ものすごい自己嫌悪に襲われる。

 薬が切れると御手洗はあっさりと解放した。

 そしてその後の作業も特に何を意識させることもなく。テキパキと済ませていった。

 何を言うでもない。「終わったね」と一言で済ませてしまったのだ。

 だるい体とぼーっとした頭のまま、着替えをさせられて今は椅子に座って待っている。

 体はタオルで拭いて、汚れた制服は脱いで今は御手洗のジャージを借りている。

 ゆっくりと深呼吸する。

(奴が全然気にしてないのに、オレが変に意識しても仕方ないだろ)

 自分に言い聞かせて、思い出されたものを頭の隅追いやる。――考えてると顔が赤くなるのを止められない。

 御手洗は菊地の制服のネクタイをしめ、目の前にやってくる。

「いくよ」

「おう」

 シュルッと御手洗がネクタイを外す。

「……」

「……」

 菊池の体には何も起こらない。

「……ぃやったーーーっ」

「どうやら正しかったみたいだね?」

「っしゃぁっ!」

 思わず立ってガッツポーズをとる。

 もう、こいつにキスすることもないし、後輩に変な目で見られることもない!

 菊地が思い切り喜ぶと、御手洗は寂しげに笑う。それに気付いて

「……なんだよ」

 なぜだか気まずくなり椅子に座りなおした。御手洗は首を振る。

「君はいいなぁ、と思って」

 いきなりしんみりした調子で言った。

「なにが」

「そーゆー風に素直に喜ぶところがさ。笑って喜んで……見てて楽しい」

 それがバカにした調子じゃなくて、本当に羨ましそうに言うのでなんていったらいいかわからない。

(オレに会って、脅して、写真を見せて、教室に乗り込んできて、催眠術をかけて)

「お前、結局なにがしたかったんだよ」

「からかいたかったんだ」

「あっそ」

 人がせっかく譲歩してやってんのに。

 ため息をつく。黙っていると御手洗が言葉を続けた。

「楽しそうで話してみたくて」

 少し微笑んでいた。菊地から離れる。少し歩いて真向かいの椅子にもたれた。

「部活中の君の姿を見たんだ。楽しそうだった。試合中は一学年に指示出してるのに、終わるとまるで同学年みたいに仲良くてさ。からかわれることに本気になって……一緒にいたら楽しくなれるかなって思った。一生傍にいてくれるかなって夢見た」

「……御手洗」

「でもよく考えたら無理なんだよね……」

 そういって痛々しげに微笑む。菊池は立ち上がった。

「そんなこと……」

「性転換はイヤだろう?」

 ……。

 歩もうとしていた足が止まる。一歩退いて椅子に座りなおした。

 御手洗は残念そうに続ける。

「僕も性転換するのは流石にちょっと……君がその気に」

「ならねぇっ!!」

 思い切り叫んでから咳き込む。喉が痛んでヒリヒリした。

「やっぱり……」

 御手洗はため息をついて肩を落とした。いつもの自信はどこへ行ってしまったのか。

 その姿を見て困惑する。

「あのさぁ、別に”性転換”しなくてもいいだろ」

「……どうしてだい? 結婚できなじゃないか」

 いや、性転換しても結婚はできないんじゃないか?

 そんな疑問を胸に抱えながら

「結婚はしねーけど、ダチならなれるだろ」

「だち?」

「友”ダチ”」

「……」

 御手洗は口元に手を当てて考え込む。

「普通にさ。……お前にはいろいろ腹も立ったけど、お前みたいなの友達にいないし」

 お前みたいな……キチガイで犯罪者で超能力持った奴なんか、いないし。

 そこまで考えて、いてもイヤだなとちょっとだけ思う。

 いや、男に二言は………………ない。

「……ダチのことは”お前”って呼ぶのかい?」

「いや」

 菊地は口ごもる。こいつの下の名前って確か

「洋介……かな?」

 御手洗がそれを聞いて口元を緩める。

「悪くないな。それならなってやってもいい」

「なんでてめーはそんなに偉そうなんだよ」

 半眼で呟くと「洋介」だろ?と御手洗が重ねる。

「……なんで洋介はそんなに偉そうなんだ」

 諦めたように呟く。

(こいつの性格って変わらないんだな、結局)

「あ。でももし性転換を……」

「しねーよっっ!!」

 叫ぶと不服そうにしたがすぐに機嫌を直して楽しそうに笑う。

「まぁ、いいか。やることは出来るだろうし。すでに第一段階は突破したんだよ」

「はいはい」

 わけのわからない言葉に適当に答える。

 第一段階って、どこの第一段階だよ。階段か? ゲームか?

「更也、よろしく」

「おう」

 御手洗が笑ったので、菊池も笑い返した。

 その時、冷たい隙間風が入ってきて机に置いてあった紙が舞った。弧を描いて菊池の前に落ちてくる。

「あ」

 真向かいの御手洗が声をあげる。菊池は何気なくそれを拾い上げた。

「なんだこれ?」

 裏返してみると黒い背景にぼや~とした白い顔がたくさん書かれていた。

 近くの紙も拾い上げるとあの”写真”と同じようにたくさんの白い顔が浮き上がっている。

 しかも、いたるところに。

「……おい」

「あーーー、なんていうか」

「てめぇっ、だましたなっ」

 菊池は立ち上がって御手洗を睨みつける。

 つまり最初に出会ったときのあの、出会うきっかけとなった写真は偽者だったのだ。

「そんなこともあったかな」

 開き直ったのか御手洗はまったく動じなかった。

「このうそつきやろーーー!!!!」

「嘘はついてないと言っているだろう」

「ついただろっ、現にコレだって」

 菊池はその紙を御手洗に向って突き出す。

「僕は一言も”心霊写真”だなんていっていない」

「て……めーーーー」

「非科学的なものは信じない主義なんだ」

「なに言ってやがる!! 得体の知れない力が使えるてめー自身が一番非科学的だろ!」

 あんな、人の場所がわかったり心を読んだり……ってじゃあ、もしかして

「超能力だっていうのも嘘か?!」

 御手洗は肩をすくめる。

「そんなものある訳がないだろう」

 菊池はあっけにとられる。

「じゃあ、なんで体育館の時……」

 あの時、すぐにオレを見つけることができなのは何故なんだ?

「更也は体育をする時、校章はどこに置いてた?」

 はぁ?

「校章? 教室に決まって……」

 バッと机の上に放り出されている制服を取り、襟に付けられている校章を調べる。

「……コレ」

 よく見ると学校のマークが変な形をしている。

「そう、実は盗聴器と発信器になってる」

 ついで御手洗は右腕をかかげてみせた。

「そしてコレで信号を拾う」

 袖をめくって見せる。手首にはめた一見ただの腕時計。

「微妙な角度から見ると発信場所がわかる」

 そして胸ポケットからイヤホンをとりだす。

「イヤホンをとりつければ音も聞こえるって寸法」

「こぉの、キチガイやろうっ」

「でもせいぜい20Mが限度なんだ」

「じゃあ、教室にあまり来なかったのは」

「僕の教室は君の真下だからね。わざわざいかなくても君がどこにいるか、何を話しているかなんて大したことない」

 菊池は拳を握り締める。

「ついでに言わせてもらうと、君の友達の若菜くんが騒いでいただろう? 学年全部の名前を覚えてるだのなんだの。そんなの覚えられるわけがない。君のクラスの男の名前を知ってのはたまたま、あの川越って頭が結構良いだろう? 僕と順位が重なること多いんだ。苦手なものはその日の授業前にクラスの連中と話していたのを聞いていただけ」

「で、でも100万あげたんだろっ? あれはどう説明するんだよ」

 自分があれだけ驚いたことがまったく嘘だというのは信じがたかった。

 こいつにそんな能力がないのはある意味嬉しいが、すっかり騙されていたかと思うとそれはそれで悔しい。

「100万? ああ、あれは偶然先生が話してるのを聞いちゃったんだよ。先生たちは彼女の誕生日まで報告を待つとか言ってたけど」

「……彼女を作ってやったていうのは」

「ひげくんのこと? あれは二人で道を歩いていたら前から走ってきた女の子が僕の前でつまづいてね。面倒だからよけたらひげくんが支えることになっただけ。僕は何もしてないよ。……ああ、一言いったかな”彼女が欲しかったんだろう?”って」

 てめーはそーゆー誤解を招く言葉を使って人を騙してたんだなっ!!

「じゃあ、本当にお前は何もしてないじゃねーかっ」

「……さっきからお前お前って僕は洋介だよ」

「うるせぇっ! てめーなんかお前で十分なんだよ」

 今までさんざん騙しやがって。なにが友達だ。

 御手洗は面白くなさそうにそっぽを向く。

「……ふーん。そう。せっかく最後の謎解きも教えようと思ったのに」

「……なんだよ」

「名前で呼んでくれたら考える」

「っ! ……おしえろよ、よ?う?す?け!」

 菊池がイライラしながら聞くと御手洗はにこりと笑う。

「最後の催眠術をとくやつ。あれ必要なかったんだ」

「は?」

 御手洗はパンを両手の平を合わせる。

「これだけで解けるらしいんだ、術」

「~~~~っ!!!」

 それと、と御手洗は続ける。椅子から立ち上がって目の前まで歩いてくる。

「僕は嘘はついていない。……騙してはいるけどね」

「それをウソっていうんだよ」

「違うよ。ウソはついていない。――だから君をからかいたいのも」

 御手洗が菊池の顔を両手で包み込む。

「君を愛してるといったのも本気だから」

 じっと瞳を覗き込まれて菊池は視線をそらす。

「ざけんな、オレは男なんかに興味はない」

 御手洗はクスッと笑う。なんだよ、と睨みつけると強引に唇を塞がれた。

「んんっ」

 突っ張った腕を押さえ込まれて椅子の背に押し付けられる。

「……ん……っ」

 唇の端から唾液が漏れる。

 長いような短いような時が過ぎてゆっくり解放された。にじんだ視界で見上げる。

 御手洗は菊池を見下ろして笑う。

「そーゆー言葉はもっとキスに慣れて、僕を押し返せるようになってから言うんだよ」

end

小说下载尽在http://bbs.txtnovel.com---书香门第【duansh1204】整理

附:【本作品来自互联网,本人不做任何负责】内容版权归作者所有!

目录
设置
设置
阅读主题
字体风格
雅黑 宋体 楷书 卡通
字体大小
适中 偏大 超大
保存设置
恢复默认
手机
手机阅读
扫码获取链接,使用浏览器打开
书架同步,随时随地,手机阅读
首 页 < 上一章 章节列表 下一章 > 尾 页