饭饭TXT > 海外名作 > 《ライズ(日文版)》作者:未知【完结】 > ライズ(日文版).txt

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作者:未知 当前章节:15410 字 更新时间:2026-6-23 02:43

「あああっ!!」

 熱い肉茎が蓮見の身体の奥へと徐々にのめり込んでいく。

 楔のように蓮見に付き立てられた肉茎はようやくその一番太い傘の部分が蓮見の中に入った。蓮見は声を立てることもできずにはぁはぁと息を乱して耐えた。尻を高く上げさせられた服従するようなポーズで、シーツにしがみつき、わなわなと震えながら自分のものとは違う熱が体内に侵入してくる感覚を味わわされていた。

「痛いか?」

 海堂が聞く。蓮見はシーツに押し付けた頭を振った。

「……苦しいです……」

「きみのは少し狭いようだ。だがもう頭は入ったぞ。ゆっくり息を吐け」

 蓮見は縋るような思いで深呼吸を繰り返した。息を吐く毎に、海堂の肉茎はゆっくり奥へと入ってきた。最初のような入口を強く圧迫され拡げられる感じは少し和らぎ、排泄の時と似たような内側から押されるような、力みたい感覚が続いた。ただし排泄とは違って逆行してくるその感じは蓮見にとっては不快なものでしかなかった。

 ……嫌だ……こんなこと……お金に釣られて身体を開いた自分が馬鹿だった……。後悔の念が蓮見に纏わりつき、ぎゅっと瞑った眦から涙が溢れた。……だがもう遅い……俺は海堂に犯されて……これから先も彼の玩具になるしかないんだ……。

 蓮見の腰を掴んでいた海堂の手にさらに力がこもると、いきなり勢いよく残りの部分が蓮見の中に押し込まれた。

「はうんっ!!」

 蓮見は頭を振り上げた。両腕を突っ張らせ、シーツを指が白くなるほど握り締め、身体はがくがくと瘧のように震えた。蓮見の奥の『変な感じ』を与えたところに、海堂の雄芯が当っていた。太く硬い、そして熱い塊がそこに押しあてられ、擦り上げている。

 さっきまでの不快感も圧迫される苦痛も、奥まったところを擦られ突かれている感覚の前では呆気なく霞んでしまった。

 海堂は蓮見の腰をがっちり掴んだまま、被さるようにその身を曲げた。蓮見の震える背中にゆっくりと舌を這わせる。激しい抽挿とは裏腹なくすぐるような熱い舌の感触に、ぞくりと蓮見は背筋を震わせた。

 ……駄目だ……堕ちる!

 涙を滴らせながら蓮見は頭を振った。……怖い……。

 鋭い快感が矢のように蓮見の体内を突き刺して、そのまま自分を突き抜けてしまうような気がした。

「あっ!……ああっ……」

 蓮見の開いた唇から苦痛の呻きではない声が零れた。内側から押されてそれは自然に溢れてきた。海堂の灼熱の肉茎は的確に蓮見の奥に潜む快楽を暴き出し、曝け出していく。それはまるで蓮見の後悔も、怖れも、木っ端微塵に打ち砕くかのようだった。

「……食いちぎられそうだ」

 蓮見の肩口に唇を付けながら海堂が言う。海堂の呼吸も、荒く熱かった。蓮見はその息を感じてぞくりと身を震わせる。蓮見の性器は既に勃ち上がって、透明な液を滴らせシーツに沁みを作っていた。粘膜の擦れる濡れた音と腰を打ち付ける肉の音が寝室に響きわたり、その淫らな音は蓮見の耳をも犯してさらに昂ぶらせる。

「悦いか?……もう苦しくないだろう?」

 蓮見の前へ手を伸ばしてその雄芯に指を絡めながら、海堂は聞いた。

「いっ……いい……!ああっ……」

 そこを軽く扱かれ、蓮見は身悶えた。……それ以上されたら……本当におかしくなる……!

 痺れるような深奥からの快楽は蓮見の思考をどろどろに溶かし、最早肉体が精神を凌駕しつつあった。海堂の力強い律動に身の内から溢れる声を抑えきれず、揺さぶられ抉られるまま、ただその激しく狂おしいまでに圧倒的な快楽に呑み込まれていった。

「いいっ!……ああ!……すごい……気持ちいいっ!……」

「俺の名前を呼べ」

 海堂の声がした。どこか熱を帯びたその声は蓮見の痺れきった頭に甘く響いた。蓮見の雄芯を擦る指には力がこもり、奥を穿つ熱もまた一段と激しさを増す。

「ああっ!……海……堂……さんっ……」

「そっちじゃない、下の名前だ」

 首筋をきつく吸われ、やんわりと噛まれて蓮見は派手に喘いだ。びくびくと身体が勝手に震え海堂を締め付ける。

「……怜司……さん……はぁっ!ああ……」

「そうだ。……潤、俺といる時は名前で呼べ。いいな?」

「は……い……」

 蓮見はがくがくと頭を振った。もう思考はとうに飛んでいて、それは単なる条件反射のようなものだったが、海堂は満足げにさらに腰を強く打ち付けて言った。

「達きたいか?」

「……い……ああっ!……達きたい……怜司さんっ!」

「……達かせてやる」

 ぐいっと腰を引かれ、蓮見は悲鳴にも似た声を上げた。引き摺られ、そしてまた突き上げられる。海堂の手の中の張り詰めた蓮見の雄芯は瞬く間に弾けた。

 腕の力ががくんと抜け、蓮見はベッドに突っ伏した。身体はびくびくと無意識の痙攣を繰り返す。しかしまだ蓮見の体内の海堂は熱い脈動を伝えてきた。蓮見の狭い器官をみっしりと充溢したまま、蓮見の痙攣を味わい吸い尽くすように奥まったところにじっと留まっている。再び噛みつくようなキスが首筋に落とされた。

「……俺が満足するまでだと言っただろう」

 その声には命令や揶揄するような響きはなく、蓮見にはそれが甘い睦言のように聞こえた。達ったばかりの蓮見の身体はその声と熱い吐息に一層敏感に反応して震えた。蓮見は頭をシーツに擦り付けてがくがくと頷いた。

「……は……い……」

 絞り出した蓮見の声はすぐに喘ぎに取って変わった。奥を穿ったままの海堂の雄芯が律動を開始し、蓮見の内壁を擦り立てる。皮膚の下から粟立つような快感が蓮見の内側から全身へと広がっていく。しかし蓮見にはその快楽を受け止める気力も体力ももう残ってはいなかった。

 硬く熱い肉塊にその一番感じる場所をぐいと抉られて、一際鋭い快感が蓮見を突き抜けた。蓮見は焼けつくような、真夏の太陽の光にも似た真っ白い闇の中に自分が呑み込まれ、堕ちていくのを感じた。

「……潤……」

 遠くで自分を呼ぶ海堂の声がした。微かに甘く熱っぽく聞こえたその声は蓮見の耳を心地よくくすぐり、柔らかくうねる蜂の羽音のようにも思えた。そうして蓮見は……意識を手放した。その直前、自分の深奥に注ぎこまれる熱い飛沫を感じながら。

 蓮見が眼を開けると、そこは海堂の寝室だった。部屋の中は相変わらず薄暗く、時間は分からなかった。裸のまま、けれど先程のあれは夢だったのかと思えるほどにベッドの上は綺麗で、自分の零した精液の欠片もそこにはなかった。勿論自分自身もべたつくような感覚は無く、肌はさらりと乾いていた。

 ……海堂さんが洗ってくれたんだろうか……蓮見はベッドに起き上がった。頭の芯がまだぼうっとしていた。起き上がる腰も重く、体重のかかった尻の辺りには違和感がある。痛むという程ではないが、何かがまだ挟まっているようなそんな感覚だった。

 自分の服が床に落ちたままになっていた。蓮見は重い身体でベッドを降り、その服を身に付けた。

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ライズ 8

 海堂の部屋へ続くドアをノックした。

「入れ」

 海堂の返事が聞こえた。蓮見は「失礼します」と言ってドアを開けた。

 海堂は自分の机でパソコンに向かっていた。顔を上げずに海堂は言った。

「まだ休んでいて構わないぞ」

 なんとなくどぎまぎしながら蓮見は部屋にある時計を見た。午前11時だった。

「いえ……そういう訳には……」

 蓮見が言うとようやく海堂は顔を上げ、蓮見に視線を移した。

「……あまり顔色が良くないな。……少し無理をさせたか?」

「い、いいえ……これは……元々です」

「ふん……そうだったな。きみは栄養状態が悪すぎだ」

 海堂は笑った。

「……きちんと食べてもう少し肉を付けろ。痩せすぎは抱き心地が良くないからな」

 抱き心地という言葉と、海堂のじっと見つめる視線に、先程までの痴態が否が応にも思い出されて蓮見は赤くなった。

「今のところはきみにしてもらう仕事はない。書庫から自分の読みたい本でも持ってきて読んでいろ。それにもうすぐ昼飯だ」

 海堂は言い、再びパソコンに視線を落とした。

「あ、あの……海堂さん……」

 蓮見は赤い顔のまま海堂に声をかけた。

「なんだ?」

「……満足……したんでしょうか……俺に……」

 海堂はキーを打つ手を止めて蓮見を見上げた。まじまじと見つめるその眼が柔らかく細められ、海堂は言った。

「いちいち言わないと分からないか?……100万はきみのものだ。給料日に明細をやる。それにもう忘れたのか?……二人の時は下の名前だ」

「は、はい!」

 蓮見は安堵すると同時に、やたらと嬉しくなった。それは100万もの借金が消えたことに対する喜びや、達成感に近いようなものだと蓮見は思った。けれども、なぜかそれ以上に、海堂が下の名前を呼べと言ったことで……あの激しい交歓の最中に聞いた海堂の熱っぽい囁きが、夢の中の出来事ではなく本当のことで、そして自分の身体やその反応が海堂を満足させたということに、言い知れぬもっと大きな喜びが湧き起こってくるのを禁じ得なかった。そんな自分の気持ちに気が付いて、蓮見は戸惑った。

 義務だと思い、仕事の続きとして身体を開いた。行為の間は、不快で嫌だと思ったこともあった。しかしそれを凌駕する快楽が、蓮見の気持ちを封じ込め、ただひたすら蓮見を圧倒した。そこには海堂に対する特別な感情などないと思っていた。海堂自身からもそういう言葉は一つもなかった。それなのに……今自分の胸中を占めているこの喜びは……一体……何?

 その後昼食を挟み、蓮見はずっと海堂の部屋にいた。昼食の時も門脇は現れなかった。別の時間に摂っているのか、それとも部屋で摂っているのかは分からなかったが、海堂が言うように門脇と1日じゅう顔を合わせないことはよくあることらしかった。

 午後になってからも、蓮見には仕事がなかった。大体、大の大人が人からお世話されるようなことは普通に考えてもあまりない。それに人に命令してやらせるよりは自分でやった方が早いに決まっている。海堂の書庫から適当な本を何冊か選んできて、ただしそこには小説の類は全くと言っていい程なかったので仕方なく絵画全集のようなものにしたのだが、それを読むと言うよりは眺めながら蓮見は海堂の邪魔にならないようにそこにいるのが仕事のようなものだった。だんだんそれにも飽きてきて、蓮見は海堂の仕事に興味を持った。海堂はずっとパソコンに向かって何か打ち込んでいた。時折、蓮見に書庫に取りに行かせたあの長ったらしい題名のぶ厚い本をめくっている。そういう様子からすれば、何かの論文を書いているようにも思えるが、今一つどんな仕事なのか蓮見には見当も付かなかった。

 蓮見の視線に気付いた海堂がふと顔を上げ、蓮見と眼が合った。蓮見が慌てて本に視線を戻すと、海堂はふっと笑った。

「俺が何をしているのか気になるか?」

 海堂は言い、椅子から立ち上がると大きく伸びをした。

「今はちょっとした論文を書いているが、本職は美術品の売買だ。門脇には株の取引をさせている。まああいつに任せておけばそれだけで何も仕事をしなくても喰っていけるんだが……そういう訳にもいかないからな」

 ヤクザまがいの仕事ではなかったんだ、と蓮見は少しほっとしながらも、美術品の売買や株の取引だけでこの贅沢な生活ができるとは思えなかった。それに海堂はいろいろな事業をやっていると言っていた。あのホームレスのような格好も事業の一つなのだろうか?それに海堂の仕事も気になるが屋敷にいる他の人達のことも気になっていた。

「あの……このお屋敷にいる人達は皆さん、怜司さんに助けられたと門脇さんから聞いたんですが……」

 蓮見が聞くと、海堂は蓮見の向かいのソファに腰を下ろした。

「ああ、そうだ」

「じゃあ皆さん怜司さんに借金を肩代わりしてもらったんですか?」

「まあきみと似たような状況の者もいたが、借金だけじゃない。自殺しようとしたのを助けたこともあったな」

「……そ、そうなんですか……それで、皆さん今も借金を返す為にお屋敷で働いているんですか?」

「いや……もう皆借金は返し終わった。ここにいるのは好きで残っている連中だけだ」

「それって……やっぱり身体を使って……」

 一番聞きたかったことを蓮見が口にすると、海堂はさも可笑しそうに笑い出した。

「きみは俺が全員と寝たのか気になるのか?……そんなに俺は絶倫に見えるか?」

「そ、そういう訳じゃ……」

 蓮見が赤くなってしどろもどろになるのを見て海堂はまた笑った。

「俺が身体を使ったボーナスを提案したのはきみにだけだ。中にはそうしたいと自分から言い出す者もいたがな。だが、金を出す限りは選ぶ権利もある」

 それは俺が海堂の好みだったということなのだろうか……蓮見は風呂場での門脇の言葉を思い出していた。

「……今日は初回だったから試したようなものだが、今後は俺からは強制しない。きみが身体を使いたくなったらそう言え」

「えっ……」

 蓮見は漠然と海堂から言われたら『そういう仕事』をすればいいと考えていた。……そんな、自分から抱いてくれだなんて言うのか?ますます顔が赤らむのが自分でも分かった。

「……男の味は良かったか?」

 海堂は蓮見のそんな反応を愉しむかのように聞いた。切れ長の眼はすっと細められて、蓮見の戸惑った赤い顔に向けられる。

「……そ、そんなこと……」

 何と答えればいいのだろう……蓮見は海堂の視線から眼を反らした。今朝の交わりが思い出され、顔だけでなく身体じゅうが火照ってきた。

「……聞くまでもないか。気を失うくらいだから相当良かったようだな」

 海堂の視線をちりちりと熱いくらいに感じて、蓮見は顔を隠してその場から逃げ出したいほどだった。

「……もっといろんなことを教えてやる。……楽しみにしていろ」

 海堂は薄く笑ってソファから立ち上がり、また自分の机に戻って先程の続きをし始めた。

 蓮見は手元の本に眼を落としながら、自分の鼓動が速く激しく鳴っているのを感じていた。それは……期待なのか、それとも……不安なのか、蓮見自身にも分からなかった。ただなんとなく、自分は海堂に抱かれることが嫌ではないということにようやく思い当り、その気持ちに愕然とした。仕事として……という気持ちは勿論強かったが、我慢して、とか、渋々と、といった感情ではなかった。そのことに気付いて、蓮見は自分自身に対して驚いていた。

 海堂から与えられた快楽は蓮見にとって初めてのごく強烈なもので、海堂が「教えてやる」と言うからにはさらにその先があるのかもしれなかった。しかもそれは今後自らが率先して乞わねばならず、そんなの恥ずかしいとか、浅ましいとかいろんな気持ちが蓮見の胸中に溢れ出した。しかし同時に、その先の快楽というものどんなものなのか知りたくもあった。海堂に抱かれるのが嫌ではないと気付いたことと、自分自身がそれを求めさえすれば100万単位で借金が消えていくという事実に、何か一種の大義名分を与えられたような気がしていた。つまり有体に言えば、借金返済を隠れ蓑にしながら未知なる性の渉猟、探究をするような気分だと言える。早鐘を打つ心臓の響きは、期待でもあり不安でもあったのだ。それが分かって蓮見は少しだけ安堵した。自分の気持ちが自分で分からないことほど、いたたまれず頼りないものはない。とにかく早く借金を返してここから出ていこう、そう蓮見は決意を新たにした。

 午後5時を回って、ようやく海堂は蓮見に部屋に戻って構わないと告げた。部屋に戻っても何もすることがない蓮見は、正直暇を持て余していた。

「あの……部屋に帰っても暇なんで、何かすることないですか?」

 海堂はパソコンを終了させると立ち上がった。

「そうだな。じゃあ夕食までの間一緒に地下に行くか?」

「地下?」

 この屋敷には地下室まであるのか……蓮見は驚いて聞き返した。

「ああ。こっちだ。ついてこい」

 海堂は言い、大股に部屋を出て行く。蓮見も慌ててついていった。

 廊下に出て、いつもの大階段を降り、食堂の前を通り過ぎた。その先の廊下の突き当たりにドアがあり、そこを開けると下へ続く階段があった。海堂は無言のまま前を歩き、その階段を降りていく。蓮見もきょろきょろしながら後ろに続いた。

 地下にはドアが二つあり、海堂は手前にあるドアを開けた。電気を点けたそこはかなり広いトレーニングルームだった。いろんな本格的な器具が置いてあり、部屋の壁は鏡貼りになっている。

「ここは勝手に使っていいからな。それ以上痩せないようせいぜい鍛えて筋肉を付けておくんだな」

 嫌味には聞こえなかったが、顔を見ると海堂はにやりと笑った。

「筋肉を付けすぎても硬くなって俺の好みじゃないがな」

 ……また抱き心地の話かよ、と蓮見は心の中で毒づいた。

「隣の部屋は倉庫だ。取引用の絵画なんかを置いている。入って見ても構わないが、警報装置が付いている。扱い方は一応教えておくがこれは門脇以外には言うなよ」

 一旦トレーニング室を出て、倉庫の前で海堂は警報装置の解除やセットの仕方を蓮見に教えた。

ライズ 9

 それから再びトレーニング室に戻ると、海堂は部屋の隅にあるロッカーを開けてスーツを脱ぎ出した。

「きみもスーツじゃ運動しづらいだろう?俺のを貸してやるから着替えろ」

「はぁ……」

 ジャージとTシャツを渡される。海堂はさっさと着替えると床に敷かれた二畳ほどのマットの上でストレッチを始めた。蓮見はそれを見ながら自分も着替え、自分には少し長いジャージの裾を捲りながら海堂の隣に並んで身体を伸ばした。

「きみは学生時代何か運動をやっていたのか?」

 海堂が身体を動かしながら聞く。

「いいえ……何も」

 学生時代は新聞部だった。だから本当はマスコミ関係の仕事に就きたかったのだが内定は取れず、こんな有様だ。

「怜司さんは?」

「俺は水泳だ。この家の中庭にもプールがあるぞ。今の時期は使えないが、夏はいい。熱帯夜には最高だ」

「プ、プールまで!?」

 蓮見はまた驚いた。どんだけ贅沢なんだよ、と内心思いながらやはり気になったのは海堂の仕事のことだった。

「さっき、本職は美術品の売買だと聞きましたが、株とそれだけでこんなに贅沢な生活ができるものなんですか?」

 海堂はストレッチから腕立てに移行しながら答えた。

「表向きはそうだが、カジノの経営も大きな収入源の一つだ。さっき書いていた美術に関する論文や講演なんかがたまにあるかな。あとは……そうだな、きみが見たホームレスの恰好も俺の仕事のうちだ。まああれは金には全く関係ないがな」

 お金にならないのに仕事?……蓮見の頭の中は疑問符だらけになった。

「きみも俺の傍にいたらそのうち分かるだろう」

 海堂はべンチに寝そべり、今度は腹筋を始めた。

「そうだ、今夜俺の店に連れてってやる。たまには店にも顔出さないとな」

「店って……カジノですか?」

「ああ。きみはカジノに行ったことはあるか?」

「そんなの貧乏人の俺がある訳ないじゃないですか……」

「そうか……」

 海堂は蓮見を見てにやりと笑った。

「また初体験が増えるな」

 何もそんなに意味深に言わなくても、と蓮見は顔を赤らめた。

 その後蓮見は海堂に器具の操作を教わりながら一通り運動をした。空調が効いているとは言え、さすがに終えた後は二人ともじっとりと汗をかいていた。ロッカーの先にはトイレとシャワー室があり、小さく仕切られ3人までなら使えるようになっていた。

 海堂は蓮見の眼も気にせずにロッカーの前で全裸になるとシャワー室に入っていった。蓮見もやや躊躇った後裸になり、海堂の隣のブースに入った。

 頭から少し温めのシャワーを浴びた。それほどハードに運動した訳ではなかったが、普段使わないなけなしの筋肉を使ったせいか、全身が何か腫れぼったいような、熱っぽいような感じがした。……海堂はいつもこんな風に身体を鍛えてるんだろうな、そうじゃなきゃあんな立派な身体…… 蓮見は隣のブースの海堂の彫刻のような肉体を思い浮かべ、ほっと溜息を吐いた。俺があんな身体になるには何年くらいかかるんだろう。もしかしたら一生続けても駄目かも……。壁に付いた鏡に映った自分の貧弱な身体を眺めて情けなくなる。元々痩せていた上にこの何カ月かの極貧生活のせいでさらに痩せ細り、顔までやつれて尖った感じになっていた。ただ昨日からの食事のお陰か、それとも運動とこのシャワーのせいか、今鏡に映る蓮見の顔には赤味が増し、生気が戻ってきたような感があった。

 鏡をまじまじと見ていた蓮見はふと首筋の辺りが斑点のように赤くなっているのに気付いた。なんだろうとそれにそっと片手で触れるが腫れている訳ではない。虫刺され?……と考えて突然思い当り、かーっと顔が赤くなった。こ、これは……もしかしなくてもキスマーク!?

 背面は見えないから分からない。けれど後ろから何度もキスされたことから、首筋と同じようなそれが自分の背中一面に付けられているのではないかと蓮見は思い、かなり恥ずかしくなった。

「まだ洗っていないのか?」

 唐突に後ろから声を掛けられた。いつの間にか隣のシャワーの音は止んでいて、背後に海堂が立っていた。当然のように裸のままで髪も濡れたままだ。

「えっ……あ、はい……」

 どぎまぎと蓮見が答えると、海堂はブースに入ってきた。ある程度の余裕があるとは言え、一人用のシャワー以外の用途は何も考慮されていない場所に大人2人が入れば当然狭くなる。蓮見は壁の鏡の方へ押しやられるように後ずさった。

「自分の姿に見惚れてたのか?……全く世話のかかる奴だな」

 海堂は苦笑しながら備え付けてある使い捨てのスポンジとボディーソープを手に取った。

「洗ってやるからじっとしていろ」

「い、いえ、そんな……」

 蓮見は頭を振ったが、海堂は意に介さない様子でスポンジを泡立て、シャワーの栓を止めた。

「痛かったらそう言え」

 そうして蓮見の胸や腕を順に洗っていった。蓮見は勿論人に洗ってもらうことなど初めてで、どんな格好でいればいいのか分からずに赤くなったまま突っ立っていた。海堂の手つきは壊れ物でも扱うように優しく丁寧で、少しも痛くはなかった。

「これじゃまるで俺がきみのお世話係だな」

 そんなことを言って海堂は笑った。

 海堂は膝を付き、蓮見の右足を上げさせると自分の太腿に載せた。蓮見の太腿から脛、足先へとスポンジを滑らせるようにして洗っていく。それが終わると左足も同じようにして洗った。この体勢だと蓮見の性器がどうしても海堂のすぐ眼の前になり、蓮見は恥ずかしくてついそこを手で覆っていると海堂は笑いながらその手を外した。

「隠したら洗えない」

「い、いいです、後は自分で……」

「いや、駄目だ」

 海堂は遮るように言うとスポンジではなく直にそこに触れた。ボディーソープの柔らかな泡で包むように、蓮見の性器や薄い恥毛、双球やその奥へとゆっくり掌を這わせていく。自分で洗う時よりも海堂の手の動きは繊細で逆にそれが何か淫靡な気持ちにさせ、蓮見は一層顔を赤らめた。

 海堂はゆるゆるとそこを擦り、蓮見の性器がほんの少し硬くなったのに気付きふっと笑った。

「なんだ?また感じてるのか?」

 海堂は緩く輪にした指で蓮見の雄芯を扱き始めた。それは洗うという行為とはやや違った動きで、蓮見は慌てて海堂の腕を掴んだ。

「だ、駄目です!……それ以上触られたら……」

「どうなるんだ?」

 悪戯っぽく聞き返した海堂の手の中で蓮見の肉茎はすぐに形を変えてしまった。海堂の太腿に載せた左足が震える。海堂は扱く手はそのままに、もう片方の手を蓮見の開いた脚の間に這わせていった。泡を肌に塗り込めるようにゆっくりと、その手は双球を撫で会陰を辿りさらにその先へと進んだ。つぷりと指先が潜り込む。

「……あっ……」

 蓮見はびくんと身を震わせた。性器で感じることしか知らなかった蓮見が、その先にある快楽を知ってしまった今は、性器を刺激されていても入り込んだ1本の指の動きをつぶさに感じとることができた。背筋がぞくぞくとして、思わず腰が揺らめいた。

 海堂は下からその様子を眺めて呟いた。

「……いい顔をするんだな。……さっきは後ろからだったから見えなかったが……」

 そうしてゆっくりと指を引き抜くと、蓮見の足を下ろして立ち上がり薄く笑った。

「さて、どうする?……きみはもう100万を手にしているから今夜はもう何度やっても同じだ。約束は一晩に付き100万だからな。それにきみから申告しろと言った筈だ。このまま止めるなら俺はそれでも構わないぞ?」

 そう言う海堂の肉茎も既に充分勃ち上がっていた。それなのにあくまでも蓮見の意思に委ねると言う。意地悪なのか、律儀なのか……変なところが生真面目だと蓮見は思った。

 輪にした指は未だに蓮見の性器を柔らかく愛撫し続けて、蓮見の意識を否が応にもそこに集中させていた。……今日はもう何度やっても同じ……現実的な海堂の言葉を頭の隅で反芻しながらも、湧き起こってくる肉欲を鎮めることはなかなかできなかった。蓮見は自分では意識しないまま潤んだ眼で海堂をぼうっと見上げた。

「どうした?やめていいのか?」

 海堂は言いながら、蓮見の脇腹の辺りに自分の雄芯を擦り付けた。蓮見の泡まみれの身体でそれはぬるぬると滑りながら鈍く光った。無意識にそれに触れようとして、片手を動かした蓮見はその手を海堂に阻まれてはっとなる。

「ちゃんと言ってみろ」

 海堂の声が頭の中に響いてきた。擦りつけられた肉塊に意識が向く。この熱い滾りに触れたい……自分をおかしくさせるあの怖いけれど不思議な感覚をもう一度感じたい……。

「……欲しい……です……」

 蓮見は小さく呟いた。途端に、自分の耳に入ってきた自分の台詞が恥ずかしくなって海堂の視線を逃れるように身を捩らせた。そんなことをしてもこの狭い場所で、急所を弄られている状況では何の意味もない。

「何が欲しい?」

 海堂は切れ長の眼でじっと蓮見を見つめたまま聞く。同時に、きゅうっと指の輪が狭められ、少し強く扱かれた。蓮見は顔を背けて喘いだ。恥ずかしくてまともに海堂の顔が見られない。

「……れ、怜司さんの……を……く、下さい……」

 眼を伏せ、やっとのことでそう言った蓮見の手を離し、海堂は蓮見の顎に泡の付いた手をかけた。ぐいと上げて、蓮見の眼を覗き込む。

「ちゃんと俺を見て言え」

 視線が絡み合った。海堂の瞳は先刻と同じように澄んだままで、蓮見は逆に自分の眼は欲望で濁っているのではないかと恐れさらに恥ずかしく思った。それでも、蓮見の身体の疼きは止まらなかった。扱かれた先端から滑る液体がぷくりと溢れ、泡と混じり合って零れ落ちる。

「……怜司さんが……欲しい……」

 そう言った蓮見の唇を海堂の唇が塞いだ。むしゃぶりつくように激しく吸われてめまいがする。心臓まで吸われるかと思うほど蓮見の喉元で鼓動は激しく鳴っていた。

ライズ 10

 噛みつくようなキスはさらに首筋に落とされた。泡が付いているにも関わらず、海堂は痛いほどそこを吸い上げまた新たな赤い痕を刻んでいった。蓮見はじんじんと痺れるような感覚を味わいながら、無意識に腰を揺らめかせた。海堂の片手が蓮見の尖った乳首に触れ、ぬるぬるとそこを撫でながら時折きつく摘まんでは蓮見の奥へズキンと響くような強い刺激を与えてくる。もう片方の輪にした指は一瞬蓮見を離れ、またすぐに今度は海堂に押し付けられている熱い滾りと一緒に握り込んでくる。

「はあっ……あっ……んっ……」

 背中を鏡に押し当ててはいるが、がくがくと身体は震え、蓮見は立っているのが精一杯だった。海堂の雄芯と共に擦られる度に腰は揺れ、膝が笑う。首筋を這う舌の熱さが妙に心地よく、我知らず強請るように首を前に差し出した。その首を甘噛みされて蓮見の呼吸はますます激しくなっていく。海堂は胸を弄っていた手を離すと、蓮見の後ろへと回した。蓮見の薄い尻の狭間へと指が捩じ込まれる。そこはひくひくと蠢きながら海堂の指を難なく呑み込んだ。濡れたそこは熱を帯び海堂の指をもっと奥へ誘うかのように収縮した。

 蓮見の耳元で海堂が囁いた。

「……ここに欲しいか?」

 蓮見は夢中で何度も頷いた。海堂の熱をもう一度自分の奥で感じたい、そう思うと全身が火照り、恥ずかしい気持ちはまだ少し残ってはいたものの、それ以上に欲する気持ちが強かった。

 海堂は蓮見の右足を抱え上げると、少し腰を屈めて蓮見の奥まった窄まりへ硬く熱い屹立を押し当てた。焦らすように先端でぬるぬると襞を擦られて蓮見の腰がふらつく。ぞくぞくと背筋がざわめいて、居ても立ってもいられないような何かにせかされるような感覚が蓮見の中に溢れだした。

「ああっ!……」

 先端が少しずつ、蓮見の襞を分け入ってきた。拡げられ、押し上げられる感覚に息を呑む。

 海堂は左腕でがっちりと蓮見の右足を捉えたまま、さらに奥へと熱い塊を埋め込むために右手を蓮見の細い腰へと回した。泡の助けを借りながら、肉茎はゆっくりと蓮見を穿ち開いていく。

「あああっ……」

 入ってくる……海堂の灼熱が俺の中へ……。蓮見はともすれば立っていられなくなりそうな浮遊感を感じながら、その侵入してくる熱と、繋がった部分の張り切って充溢していく感覚に我を忘れそうなほどの快感と興奮とを覚えていた。

 海堂の肉茎は蓮見の窄まりをゆっくりと割り裂くように押し拡げながら根元まで埋め込まれた。自分のとは違う熱と脈動とがはっきりと蓮見に伝わってくる。蓮見の胸中には、明らかに苦痛ではないむしろ歓喜のような高揚感があった。肉体を征服され、蹂躙されているのは確かなのに、一度目とは違い、そこに嫌悪はなくて、それどころか気が遠くなりそうなほどの悦びがある。それは単に身体が気持ち良いということからだけではなかった。

 蓮見も男として、今までに肉欲を感じたことはある。それほど強いものではないにせよ、欲情に駆られ夢想して自慰を行ったこともある。そして感情を伴わなければ、男はそうそう無暗に肉体に変化を生じるものではないということも知っている。自分の中で猛々しく力強く脈打つ海堂の雄芯は、つまりは自分に欲情していることの具体的な顕れなのだ……。蓮見はそう思うことがますます自己の興奮や歓喜を高めていることに気が付いた。海堂が俺を欲している……自分から言えと言われ、そうして始まった行為にも関わらず、海堂自身もまた昂ぶり、熱い抱擁とそれ以上に熱い塊を俺の中に送り込んでくる……。それは恰も、この瞬間に於いては自分が海堂を征服しているのと同じなのではないだろうか……。

 海堂が緩やかな律動を始めた。それはすぐに激しさを増し、蓮見は鏡に押し付けられいやいやをするように頭を振った。無意識に蓮見の手が海堂の肩に回される。

「あっ……くっ……」

 内壁を思うさま抉られ擦られ、蓮見は快感に打ち震えて喘いだ。右足をさらに広げ開かされ、押し付けられた海堂の腹筋が勃ち上がって震える蓮見の雄を擦っていく。海堂の唇が蓮見の首筋に触れ、熱い舌がそこを舐った。

 拡げられた後孔はぎりぎりと海堂を締め付け、奥まった部分は柔らかく蠕動して海堂を誘った。海堂の肉茎がさらに深く蓮見を穿つ。

「はぁっ!……ああっ……」

 蓮見は我知らず大きな声を上げていた。そしてそれは壁に反響してやたらと艶めかしく響いた。ここは寝室ではないから誰かが入ってくるかもしれない……そんな思いは最初だけで、もう蓮見の頭からはすっかり消え去っていた。

「……後ろからと前から……どっちがいい?」

 揺すられながらぼうっと見上げた先で海堂は蓮見をじっと見つめていた。精悍な引き締まった顔で蓮見を見下ろし、愉しんでいるような、それでいて少し苦しそうな、不思議な表情をしていた。

 こんな風に、あられもない声を上げる自分の顔を真正面から見られるのはすごく恥ずかしい。けれど……そんな不思議な顔をする海堂も、もっと見てみたいと蓮見は思った。

「……前……」

 蓮見の答えに海堂はふっと笑った。

「俺もだ」

 ぬるぬると滑り落ちそうになる身体を何度も揺すり上げられ、その度にいやらしい音がシャワーブースに響いた。緩急を付けて穿たれるままに、海堂の肩にしがみついた蓮見の腕に力が籠る。蓮見は自分から海堂の唇に唇を押し当てた。一瞬眼を見開いた海堂は、すぐに眼を細めて舌を絡めてきた。蓮見はそれに激しく吸い付き、無我夢中でしゃぶり、喉の奥で喘いだ。上と下の粘膜に与えられるあまりの快感にぼうっとして、海堂に掴まれた腰を自ら淫らに蠢かせる。それに呼応するように、海堂の熱い肉茎は雄々しく脈打って蓮見の深奥を侵し、さらに深い酩酊のような快楽を与え続けた。硬い腹筋で擦られている蓮見の雄はたらたらと粘液を垂らし、少し離れる度に二人の間に薄い透明な糸を張った。

 ゆっくりと海堂が腰を引いた。極限までゆるゆると抜かれ、蓮見の中はぽっかりと空虚になったような気がしてついそれを追うような腰つきになる。唇を離し、蓮見は頭を振った。

「……やっ……駄目……」

 海堂は薄く笑った。

「何が嫌なんだ?」

「……抜かないで……まだ……」

 小さく呟く蓮見を見下ろして、海堂は突如深く腰を突き入れた。あまりの衝撃に蓮見の身体が跳ねる。その一瞬に蓮見の雄から白い粘液が迸った。海堂の腹と蓮見の腹を汚していく。眦に涙が溢れ、目眩がして、脚に力が入らない。がくがくと震える身体をがっちりと支えられ、捩じ込まれた灼熱を一層強く感じさせられる。

「もっと欲しいか?」

 熱い雄芯が奥を満たし、脈動している。……もっと……欲しい……。

 再び腰が引かれる。ゆっくりと、引き摺られるように、蓮見の腰がそれを追う。粘る液体が腹から床へと滴り落ちた。

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