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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15363 字 更新时间:2026-6-23 05:27

「高橋クンに今日、コクったんだよ! 昨日芽衣にコクってフラれたらしぃじゃん! ! どーゆぅこと!?」

沙良はアタシにつかみかかった。

周りのクラスメイトは呆然としている。

「キャッ! ! 沙良! ! や……やめてぇっ! !」

「ふざけんなよっ! !」

アタシの髪を片手でつかみ、空いた手で何回も叩く沙良。

沙良の腕を握り、抵抗する。

しかし、沙良はびくともしなかった。

こんな力があるとは思えないほど強い力で、アタシを押さえつける。

──そして、沙良の両手がアタシの首にかかった。

首に指がグッと食い込んでいく。

息が……、息が、できない──

赤い糸 「芽衣さぁ、今日何してたのぉ~!?」

「!?……ウッ……グッ……」

沙良の指にギューッと力が入る。

「はぁ? 聞こえないんだけど! 高橋クンといたって、ほかのクラスの子から聞いたんだよねっ! ! 腹痛いんじゃなかったの! !」

「……さ……アッ……ッ……ウッ」

「言い訳してみなよ!」

苦しくて、息ができない。

気が遠くなって……沙良の声も小さくなっていく──

「やめなっ!」

「死ぬよ! !」

「ハァ!? 死ねばいいのにっ! !」

アタシ……、死ぬのかな?

赤い糸 「……い! ……、……てょ! !」

頬に何かが当たる感覚と、誰かの叫び声。

意識が朦朧として……、何が起きてるのか、わからない。

「……い! 芽衣! ! 起きて! ! 起きてよぉっ! !」

「芽衣! !」

優梨? 美亜?

パチ……パチッ……。

頬が痛い。

「芽衣! ! 起きてっ! !」

ゆっくりとアタシは瞼を開いた。

目の前には、泣きじゃくる優梨と真っ青な顔で頬を叩く美亜。

周りを見回すと、担任教師と学年主任とクラスメイトたちの姿も見える。

「ほっぺ、痛い……」

「芽衣!?」

「芽衣が起きたぁ!」

優梨と美亜は横になっているアタシに抱きついた──

体のあちこちが痛くて、ふたりの重みで骨が軋む。

「い、痛っ……」

「ごめんっ!」

「思わず」

パッと離れ、代わりにアタシの手を握る美亜。

優梨は「知らせてくる!」といい、部屋を駆け出して行った。

赤い糸 何が起きたのかな?

頭の中がグチャグチャで、訳がわからない。

夜中に起きたら沙良が泣いていて……、叩かれたり殴られて、首締められて……。

「……そうだ! ! 沙良は!? ──ウッ! 痛……痛い」

慌てて起き上がろうとしたアタシの体を激痛が襲った。

耐えきれず、そのまま横になる。

「しばらく横になっていなさい。今ホテルに医者が向かっているから」

担任教師がアタシに声をかけた。

「沙良は!? 沙良に謝らなきゃ……」

「……」

黙って下を向く担任。

「ねぇ……沙良は!?」

「今、病院にいる……」

「……?」

意味がわからない。

怪我したり気を失ったアタシが病院にいるならわかるけど……。

なんで沙良が?

「ウッ……ッ」

「起きたらダメだ!」

「寝てなっ!」

担任や美亜の声を無視して、アタシは痛む体を起こした。

「……ッ。寝てられない。どうゆうことなの!?」

「芽衣! 落ち着い──」

「落ち着けないよ! !」

「芽衣……」

アタシの剣幕に、美亜は黙る。

赤い糸 「ねぇ!? 何があったの!? みんな知ってるんでしょ!?」

「芽衣! お願いだから落ち着いて! ! 話すから、落ち着いて! !」

「……わかっ……ッ。イタッ……」

動くとアバラが痛い。

興奮して息が上がり、アバラがズキズキと痛んだ。

車にひかれたときと同じ痛み──

「中川沙良は、ホテルの非常階段から飛び降りた。意識不明の重体だ」

「は!?」

「近くの病院にいる」

「……嘘。嘘でしょ? ……ねぇ?」

部屋にいた全員が黙る。

アタシと目が合うと、みんな目をそらして下を向いた。

その態度が、真実だということを表している……。

「な、なんで!?」

「中川は首を絞めた直後、廊下に走り出したらしい。そして非常階段の扉を開いて飛び降りたようだ」

「……沙良は、沙良は、助かるの?」

「まだわからない」

目の前が、真っ暗になった。

沙良……。

なんでなの?

赤い糸 人殺し

しばらくすると、部屋に医者と優梨が入って来た。

「案内して来たよ!」

「患者はどちらですか!?」

白衣の医者はアタシを手早く触診し、すぐに病院に行くことを進めてきた。

先生たちに付き添われ、アタシはタクシーで病院へ向かった。

沙良のいる救急病院だ。

診察の結果、肋骨にヒビが入っていて腕と足が打撲していることがわかった。

先生は驚いて家に電話していたけど、アタシ自身はなんとも思わなかった。

自分のことより沙良のことが気になって仕方なかった。

「同じ病院だし、沙良の様子を見てから帰る」

「えっ!?」

「それは……」

アタシの言葉に戸惑う先生たち。

結局会わせてもらえないまま、ホテルに返された。

ホテルに着く頃には、朝6時の起床時間を過ぎていた。

廊下には何も知らない眠そうな生徒たちの姿……。

「あの部屋に戻りづらいよ。先生の部屋に行ったらダメ?」

「ん……まぁ仕方ないな。女の先生の部屋に行きなさい」

先生たちの部屋に向かった。

アタシのせいで沙良が死んでしまったらどうしよう。

そう思うと、体の震えが止まらなかった。

赤い糸 トン、トン

「はいっ」

ノックすると、部屋の中から女の人の声がした。

ガチャ

担任がドアを開けると、保健の先生の姿が見えた。

「この部屋だよ。保健の長谷川先生が一緒にいてくれるから、横になって休みなさい。あと、お母さんが始発の新幹線で迎えに来てくれるそうだから……長谷川先生、よろしくお願いします」

「はい、わかりました。芽衣ちゃん、どうぞ入ってちょうだい」

アタシはおとなしく部屋に入った。

その姿を見て、担当教師は足早に立ち去って行った。

「体、痛いわよね……大丈夫? 今から布団敷いてあげるわね」

「あ、すいません……」

「お腹も空いてるかしら? 朝食を持って来てもらえるようにするから、もう少し待ってね」

アタシは敷いてもらった布団に横になった。

目をつぶってもまったく眠気はなく、バクバクと鳴り続ける心臓と震え続ける体……。

「先生……沙良は助かるの? なんでお見舞いに行けないの?」

助かるよって言ってほしい。

大丈夫だよって言って……。

赤い糸 「……中川さんは、まだ意識が戻らないのよ。体もそうだけど、頭も強く打ったらしいの。落ちてしまった場所が芝生だったことが、不幸中の幸いだったわ……。コンクリート──」

長谷川先生は、そこで言葉を止めてしまった。

コンクリートなら死んでいたかもしれない──

きっと、そう言いかけたんだよね。

神様……。

沙良を助けて──

布団の中で手を合わせ、アタシは祈り続けた。

「少し眠ったほうがいいわよ。中川さんの意識が戻ったらすぐ起こしてあげるから休みなさい」

「眠れないです……アタシのせいなんですっ」

長谷川先生はアタシの枕元に来て座った。

そして、頭をなでながら優しく話しかけた。

「そんなに自分を責めないで……。あなたのせいじゃないわ」

「だって……アタシがたかチャンと遊んだからっ。告白されたことも言えなくて、沙良を傷つけたっ! だから……ッ! 痛っ……だから──」

「無理しないで! 少し落ち着いて! !」

興奮するアタシの体を押さえる長谷川先生。

赤い糸 でも感情はどんどん溢れ出して、止まらなかった──

「アタシのせいで! アタシの……アタシが──沙良が死んだらどうしよう!? アタシ……アタシッ……ウウッ……あぁーっ! !」

涙がポロポロ流れ出し、たえきれず号泣してしまった。

今まで押さえていた気持ちが、叫びや涙になって体から出ていく──

しばらく経って気持ちも落ち着いた頃、部屋に担任教師が来た。

長谷川先生がドアのところで話している。

「朝食を持って来ました。ふたり分です」

「ありがとうございます」

「あと……長谷川先生、ちょっといいですか?」

長谷川先生はこっちを振り向いてから、担任と部屋の外に出て行った。

聞かれたらまずい話なの?

まさか──

嫌な予感だけが頭をめぐり、不安に押し潰されそうになる。

「……じゃあ、また後で」

「はい。わかりました」

長谷川先生が戻ってきた。

顔には笑顔があり、悪い話ではなかったようだ。

アタシはホッと胸をなで下ろした。

赤い糸 朝のニュースが終わった頃、ほかの女教師たちが部屋に戻って来た。

アタシに優しく声をかけながら、荷物をまとめ始めた。

「お母さんはもう大阪に着いたそうだから……あと少し待ってね。先に帰ることになって残念だと思うけど、お家でゆっくりしなさいね」

「はい……」

「9時に長谷川先生とあなた以外の人たちはバスで出発するの。お母さん来るまでは部屋でゆっくりして、気をつけて帰るのよ」

「……はい」

楽しみにしていた修学旅行だったのに──

最悪の旅行になってしまった。

しばらく経つと廊下が騒がしくなり、起き出したほかの生徒たちの明るい笑い声や弾む足音が聞こえ始めた。

沙良は意識不明なのに、どうして笑えるの?

なんで!?

バンッ

「うるさいよ!」

アタシは床を叩いた。

やつ当たりだって、わかってる……。

沙良を自殺まで追い込んでしまった自分に腹がたっていた。

そして、抱えきれないほどの不安──

どこにこの気持ちを持っていけばいいんだろう。

頭が狂いそうだった。

赤い糸 しばらくするとお母さんが迎えに来て、アタシはホテルを出た。

新幹線に乗りながらも、頭の中は沙良のことでパンクしそうになった。

携帯には次々とメールが入ってきた。

〈怪我したの!?〉

〈帰ったって聞いたけど何で!?〉

事情を何も知らない友達から、こんなメールもきた。

〈中川が意識不明で入院したらしいよ〉

ズキッ──ズキッ──

頭の中がキューッと締めつけられ、鼓動と同じようなリズムで痛む。

お母さんは怪我を気遣いながらも、事情は何も聞かなかった。

先生から聞いて、わざと聞かないでいてくれたんだと思う。

そんなお母さんの優しさが、胸に染みた──

ほとんど会話のないまま、ふたりは家に着いた。

リビングには、脱ぎっぱなしのお母さんのパジャマが投げ出されている。

引き出しも、開いたまま……。

赤い糸 お母さんは綺麗好きだから、こんなに汚い部屋は初めて見た。

「お母さん、心配かけてごめんね。急いで来てくれたんだよね……」

グチャグチャでも気にならない程に焦って、急いで駆けつけてくれたお母さん──

「そう思ってくれるなら、お母さんのためにもゆっくり休んでちょうだい」

「うん……」

アタシは自分の部屋に入り、ベッドに潜り込んだ。

ギュッと目をつむり、頭から布団をかぶった。

──それから1週間後。

アタシは家にいた。

体のことや沙良のことがあって、ずっと学校を休んでいた。

先生が言うには、沙良は集中治療室を出て普通病室に移れたらしい。

だけど……意識が戻らないまま。

1週間も意識が戻らないから、周りは皆心配していた。

「植物人間になっちゃうんじゃないの?」

そう噂する人も出てきたらしい。

アタシはそういった沙良の噂を聞きたくなかった。

恐くて、聞けない。

植物人間は生と死の境──

生きてるのではなく、機械に生かされてるようなもの。

沙良がそんなことになったら……。

アタシは人殺しと同じだ。

赤い糸 仲の良い友達は、アタシを心配して毎日連絡をくれた。

しかし、クラスメイトたちからの中傷のメールも毎日のように届いた。

〈沙良が死んだら許さない〉

〈学校に来ないで〉

首謀者はアイちん。

そして、修学旅行で同じ部屋だったクラスメイトたちが送っていると噂で聞いた。

アタシは中傷のメールに言い返す言葉もなくて……。

メールがくるたびに自分を責め続けた。

アタシが沙良を裏切ったから……。

ピンポーン──

家中に響く音。

アタシは無視して自分の部屋で横になっていた。

リビングまで行くのがダルい……。

ピンポーン──

ピンポーン──

しつこく鳴り続けるインターホン。

少し苛立った気持ちでリビングにあるインターホンの所に行った。

「はい。母は今いません」

ガチャ

言うだけ言って、インターホンを切った。

カメラがないし、相手が話す前に切ったから誰かはわからないけど、どうせ集金か勧誘だろう……。

ピンポーン──

部屋に戻りかけたが、しつこくインターホンが鳴る。

──いいかげんにしてよ……。

赤い糸 ガチャ

「はい、どちらさまですか!?」

「……あ、あの……」

「酒井ですけど、芽衣さんいますか?」

「えっ? 酒井?」

「芽衣? 俺とミツだよ。オートロック開けてよー」

なんで酒井とミツが!?

よくわからないまま、オートロックを解除して玄関でふたりを待った。

家に来た酒井とミツをリビングに通した。

「今日、親いないの?」

「うん」

「そっかぁ……」

会話が続かない。

酒井たちも、アタシを人殺しと思っているのかな……。

今からアタシに悪口言うのかな……。

そう思うと恐くなる。

体が震え始めた……。

「芽衣?」

ミツがすぐ気づいた。

アタシの顔色はどんどん悪くなっていく。

「アタシのこと……恨んでるよね……」

「は!? 恨むって……」

「アタシのせいで沙良が……」

「違うだろ! 芽衣のせいじゃない。酒井も俺も…俺らは芽衣のことをそんなふうに思ってねーから! だから今日も来たんだろ!? 心配だったんだよ」

声を荒げるミツ。ミツとはクラスも違うし、そこまで仲良くないのに……。

赤い糸 いつも冷静なミツ。

大きな声を出す所なんて初めて見た。

酒井もアタシに言う。

「ミツのゆー通り! アイちんたちがいろいろ言ってるのは知ってるけど、俺らは芽衣の味方だからな。沙良は心配だけど、それと芽衣のことは関係ねーよ」

「でも……」

「俺ら以外にも、美亜や優梨ちゃんや仲間いるじゃん。だからさ、体がよくなったら学校来いよ」

ミツと酒井の優しさが嬉しかった。

涙がこぼれそうになる──

「みんなアタシを恨んでて、嫌ってるんだと思ってた……」

「バカじゃねーのっ」

「悩みすぎ!」

ふたりは笑った。

つられてアタシも笑った。

だけど……。

笑い声よりも先にこぼれたのは、涙だった。

ふたりの優しさが嬉しくて……。

「泣くなよー」

「おい~」

「あ……ありがとっ……ウゥ~」

アタシは泣きながら笑ってしまった。

ピンポーン──

また?

涙を拭いて、深呼吸して自分を落ち着かせて……。

ガチャ

「はい」

「芽衣!? 美亜だよ! みんな来てる!?」

「え? ミツと酒井はいるよ」

「じゃあ、まだか~。とりあえずオートロック開けてー!」

どういうこと?

赤い糸 負けない

美亜は笑顔で家に入って来た。

「久々! お菓子買って来たぁ! 芽衣の好きなチョコもあるよん☆」

「あ、ありがと!」

「これからみんな来るからねっ! 芽衣のママには許可もらってるから 」

「えっ!?」

アタシ以外の3人は顔を見合わせて笑う。

どーいうことかわからないアタシに、美亜が説明してくれた。

「芽衣は何も言わなかったけど、アイちんたちのこと知ってたの。もぅ学校に行けるけど芽衣が行きたがらないって芽衣のママに聞いて……アイちんたちのことで不安なんだなって思って、今日の計画たてたんだ! 味方がいるのをわかってほしかったの☆」

「美亜……」

「たかチャンも沙良の怪我した理由を知って学校に来なかったけど、昨日から登校してるの! だから、芽衣も行こ!」

ピンポーン──

「あ! 次は誰だろ!?」

「……誰……かな?」

次々と友達が来てくれた。

まだ授業中だっていうのに、嬉しくて、嬉しくて……。

涙が止まらないよ──

赤い糸 「サボって大丈夫なの??」

「平気~」

酒井、ミツ、美亜、拓弥クン、ナツ、優梨……。

ほかにも5人の元クラスメイトと、今のクラスからも3人。

少し遅れて、たかチャンも来てくれた。

アタシが台所にジュースを取りに行くと、たかチャンがスッと顔を出した。

みんなに聞こえないような小さな声でアタシに言う。

「俺のせいだよな。困らせてごめんな」

たかチャンは小さく頭を下げた。

「違うよ……だって、楽しかったもん。嬉しかったよ」

アタシは素直な気持ちを口にした。

沙良の自殺未遂の原因だとしても、何も知らなかったたかチャンに罪はない。

ふたりで過ごした時間は楽しかった。

こんなことになってしまったのに消したくない事実……。

「芽衣を好きにならないよーに頑張るから。友達として、好きになる。ごめんな!」

「……うん」

ズキッ──

胸が痛んだ。

なぜかつらかった。

こんな状況なのにつらいなんて……。

なんでなんだろう?

モヤモヤした気持ちを押さえ込むように、

たかチャンにさとられないように──

アタシは笑顔を作った。

赤い糸 翌朝──

久々に7時に起きた。

ベッドの中でタバコを1本吸い、リビングへ歩く。

「おはよう~」

「おはよ! もうすぐお弁当できるからねっ」

アタシは今日から学校に行く決意をしていた。

アイちんたちに会うのは恐い。

……だけど、アタシには心配してくれるたくさんの友達がいる。

アタシは1週間以上ぶりの制服に袖を通し、用意を始めた。

用意を終えると、元気よくお母さんに「行って来ます」と言って、玄関の扉を開けた。

ガチャ

目が痛い程、眩しい朝日が射し込んでくる。

マンションを出ると、アッくんが立っていた。

「えっ!? どしたの?」

「昨日行けなかったお詫びにチョコ買ってきた!」

そう言いながらコンビニの袋をフラフラと揺らすアッくん。

嬉しくてアッくんに駆け寄る。

「ありがと! !」

アタシはアッくんの手を取って、歩き始めた。

久しぶりの通学路になぜか懐かしい気持ちが込み上げる。

そして、隣のアッくんの笑顔にも……。

赤い糸 しばらく歩くと、同じ中学の制服を着た人たちの姿が見え始めた。

少しずつ重くなる足取り……。

不安になってきた。

みんなの視線がアタシを恨んでいるように見えて──

気のせいかもしれないけど、視線が恐くて顔も上げれない。

「大丈夫だから。大丈夫。オレが一緒にいるだろ」

「う、うん」

アッくんの声に少し安心した。

体が震えそうになるのを押さえて、足を前に前にと出す。

校門をくぐって玄関まで行くと、重い足はさらに重くなってしまった。

「恐い……」

アタシの足は、ついに止まった。

地面についてしまったように動かない。

行かなきゃいけない。

ここまで来れたんだ。

「大丈夫だから……」

アッくんの声も今じゃ何も効力がなかった。

どうしよう……。

「芽衣! 来れたんだ!」

誰かがアタシに声をかけた。

ふと振り返ると、たかチャンが笑顔で立っていた。

たかチャンの笑顔につられ、アタシの顔からも笑顔がこぼれた──

「たかチャンおはよ!」

「おう! アツシも今日は早いじゃん!」

「うるせーよ。オレ用事あるから、芽衣のことクラスまでよろしくな!」

「えっ?」

アッくんは手を振りながら玄関をまた出て行った。

赤い糸 急にいなくなったアッくん。

アタシは取り残されてしまった。

「アツシ、どうしたんだろーな」

「ねっ。いきなり……」

「まぁいっか。教室行くぞ!」

ふたりで並んで教室に向かう。

あ……あれ?

なんで?

さっきまで足が動かなかったのに、自然とアタシは歩いていた。

不安は変わらずあるのに、たかチャンの歩調に合わせて歩けている体──

教室の廊下で、たかチャンはアタシの目を見て言った。

「何かあっても、絶対俺が守るから……心配すんな!」

「たかチャン……」

たかチャンの斜め後ろを歩きながら、1組の教室に向かった。

廊下には修学旅行で同じ部屋だった女たちがいる。

アタシの姿を見て、聞こえるように会話し始めた。

「沙良チャン、大丈夫かなぁ?」

「全部あの女のせいだよねー」

「よく来れたよね」

耳を塞ぎたくなる悪口。

そんなこと、言われなくたってわかっている。

胸が掻きむしられるように痛い……。

「うるせーよ! ブス共、黙れ」

たかチャンの声──

「だって……」

「はぁ!? なんだよ?」

言い訳しようとする女たちにガンつけて、キレそうになっていた。

女たちは怯えて固まっている。

赤い糸 「芽衣、気にすんな」

たかチャンは急に笑顔になり、アタシにほほえんだ。

「……うん」

複雑な気持ちで頷く。

女たちは何か言いたそうにこっちをずっと睨んでいた──

それから毎日、たかチャンは一緒に登校してくれた。

クラスでも側にいてくれる。

アイちんたちには物が隠されたり、嫌な噂も流された。

たかチャンがいつも側にいてくれてるから、たかチャンのいない隙を狙って陰険なイジメを繰り返される。

──だけど、たかチャンは何かあるたびにイジメる女たちに言い返してくれた。

隠された物も一緒に探してくれた。

次第に悪口を言われる回数も減っていった……。

──そんなある日のホームルーム。

「中川さんの意識が戻りました」

教室に入ってきた担任が、開口一番に言った。

沙良は1ヶ月ぶりに目を覚ましたのだ。

赤い糸 教室に歓声がわく。

嬉しくて、涙を流して抱き合うクラスメイトたち。

……良かった!

沙良が生きていた! !

嬉しくて、ホッとして……、ポロポロと涙が流れた。

たかチャンはそんなアタシの涙を手で拭ってくれた。

「芽衣、泣きすぎ。マスカラ落ちてるぞっ」

そう茶化してきたけど、たかチャンの瞳にも涙がうっすらと滲んでいた──

沙良が意識を回復したことで、アタシへのイジメは少なくなった。

日に日に居心地のいい学校生活に戻っていった。

アタシたちは毎日放課後、マックに集まった。

「沙良のために何かしてあげたい!」

「何かないかな?」

沙良が意識を取り戻した日の美亜と酒井の会話。

それがキッカケで、皆は何かできることを探していた。

大阪までは遠いからお見舞いは行けないけど、何かしてあげたい。

──「偽善者だね」と陰口を言うクラスメイトもいる。

「芽衣が自殺未遂させたんだから、そんなことしても迷惑だろうし罪は消えない」と言う人もいる。

アタシだって罪が消せると思ってない。

許してもらえるとも思ってない。

ただ、大好きな沙良に何かしてあげたいだけ……。

赤い糸 アタシも去年、自殺未遂をした。

だから沙良の気持ちがわかる……。

孤独と寂しさを感じているはずだ。

学校にも、戻りづらいと思う。

「手紙は書くでしょ?」

「メールと同じじゃない? 何かモノとかは?」

「なんかないのー?」

今日もなかなか意見がまとまらない。

ポテトとジュースばかりが減っていく。

「ねぇ、千羽鶴は?」

ベタだけど……、早く元気になって戻って来てほしいという気持ちを込めて折れる。

アタシの意見にみんなが口を閉ざした

センスなかったかも……って不安になった。

「いーじゃん!」

「やろうぜ! 鶴折れないから教えて」

「芽衣、いー意見!」

みんなの笑顔に安心した。

「さっそく折り紙を買いに行こ!」

代表で美亜とアタシが近くのデパートに向かった。

千羽鶴が採用されて、ホントに嬉しかった。

今のアタシにできることは、それしか思い浮かばなかったから……。

沙良に謝罪の手紙を書こうとも思ったが、何を書けばいいのかわからない。

逆に神経を逆なでして、沙良を苦しめるかもしれない。

赤い糸 沙良の立場にたって考えると、アタシから手紙が来たら戸惑うと思う。

言葉じゃなくて、誰からか特定できないもので、元気になってほしいという気持ちを贈れるもの。

それが千羽鶴だった。

歩きながら美亜がポツンとつぶやいた。

「芽衣の考えてること、わかった」

「え?」

「いっぱい折ろうね」

いつも美亜には全部お見通しだ。

アタシは小さく頷いて、デパートまでの道を急いだ。

赤い糸 急な転校

折り紙を買ってマックに戻ると、メンバーが増えていた。

みんな、沙良を心配してる。

沙良に気持ちが伝わることを願って、千羽鶴作りをスタートさせた。

沙良が元気になりますように……。

みんな、待ってるよ。

気持ちを込めてひと折りひと折り丁寧に作った。

アタシは言葉で伝えられないから、鶴に想いを託した。

「できたぁ!」

「やったぁ~」

作り始めてから数日後、やっと千羽の鶴ができあがった。

不恰好な鶴、折り目がずれた鶴。

見た目はよくないかもしれないけど、みんなの気持ちがたくさん込もっている千羽の鶴たち──

「沙良に今から送るけど、差出人に芽衣の名前は入れないでいいの?」

再確認する優梨。

アタシは頷いた。

気持ちが伝わればいい。それだけでいい。

沙良の気持ちを考えたら、それが一番いい……。

段ボールに千羽鶴と手紙を入れて封をする。

全員でコンビニに運び、宅急便で沙良の入院する病院に送った。

赤い糸 今日はどこかに寄り道して帰りたい気分。

久々にアッくんの部屋に遊びに行こうかな……。

迎えに来てくれて一緒に登校した日以来、ほとんど話せてない。

いつも側にたかチャンがいてくれたから、挨拶をかわす程度だった。

メールや電話はしてたけど……。

最近はアタシからメールを送ったり電話をかけてばかり。

〈今日、何してる?家に行ってもいい??〉

メールを打った。

?~?~?~

〈友達と出かけるけど、それまでなら平気。〉

携帯を見ると、もう6時過ぎだった。

また夜遊びかぁ~。

そう思いながら足早にアッくんの家に向かった。

家に着くと、アッくんは髪にワックスをつけてセットしていた。

「もう行くの? 時間ないの?」

「あと1時間はあるよ」

「そっかぁ……」

少し寂しい気持ちになりながらソファーに腰を下ろした。

アッくんは鏡に向かいながら、アタシに聞く。

「いきなりどしたの? 千羽鶴はできた?」

「できたよ! さっきコンビニで送った☆ 最近ずっと鶴折ってて話せなかったから話したいなと思って来たの」

「そっかぁ」

鏡越しに目が合う。

赤い糸 「今日、高橋は?」

「え? 知らないけど……」

アッくんの口から出た、たかチャンの名前。

アタシの胸はドキッとして、なぜか動揺してしまった。

「わかりやすっ」

「え? 何が?」

アッくんは少し寂しそうに笑った。

「どうゆーこと? なんで笑うの? わかりやすいって、何?」

「自分でわかるだろ?」

頭の中でたくさんの「?」が浮かぶ。

──だけど、答えはでない。

鏡越しにアッくんの目を見ながらアタシは言った。

「意味がわかんないよー!」

「だからぁ……オレのところに来るんじゃなくて、高橋のところに行ってやれよ」

「え? なんで?」

「好きなんだろ?」

好き──?

アタシがたかチャンを!?

「そんな訳ないじゃん~」

思わず爆笑してしまった。

「たかチャンは友達だよ! ありえないしー」

笑い続けるアタシを、アッくんは黙って見ていた。

アタシは笑いながらベラベラとひとりで話し続けた。

「ほんと意味わかんないー最近暑いから、おかしくなっちゃった!? ほんとウケるんだけど──エッ? 何?」

アッくんが近寄ってきた。

赤い糸 アッくんは片手でアタシの胸を揉み、もう片方の手でソファーに押し倒す。

「チョ……チョット、どしたの?」

「やろぉよ」

「え!? 待って……」

「なんで?」

近づいてくるアッくんの顔。

そして、唇が重なる──

……

なんか違う。

押し寄せる嫌悪感。

キスもセックスも、アッくんとは数えきれないくらいに交わしたのに──

こんな気持ちになる理由がわからなかった。

アッくんの手が、スカートをめくりあげる。

「エッ!?」

頭の中に、たかチャンの笑顔が浮かんだ。

告白してくれたときの真剣な顔も──

アタシは必死にアッくんの手首をつかんだ。

「──イヤッ」

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