「あっ……あのさ……昨日テンパって伝え忘れたんだけど……つき合って……くれるよな?」
確かに、何か足りなかった昨日の告白。
アタシはそんなドジなたかチャンも愛しくて……。
「コチラこそお願いしますっ」
──と、丁寧に返答した。
赤い糸 恋人になったふたりは、みんなとの待ち合わせ場所に手を繋いで登場した。
「え!?」
「マジ?」
「キャーッ?」
驚きと歓声がまざったみんなの様子。
そして、たかチャンは宣言した。
「俺、芽衣の彼氏になりましたぁ! 絶対に幸せにしますっ! !」
「やっ……やだっ。恥ずかしいよぅ……」
そう言って、たかチャンを止める。
だけど……、ホントは嬉しくて仕方なかった。
ギュッ?
繋いでいるたかチャンの手を、強く握った。
たかチャンもギュッ?と握りかえしてくれて、まるで、〈好き〉の合図みたいに何度も繰り返す──
後々聞くと、たかチャンとアタシの気持ちを知らなかったのは本人たちだけだったらしい。
「やっとかよっ!」
っていうツッコミが、みんなの本音のようだ。
そして遊んでいる間、からかわれまくってしまった。
みんなに祝ってもらえて、認められて……本当に幸せ☆
たかチャンが好きすぎて、幸せで、頭がとろけてしまいそう。
この幸せが一生続くように……。
アタシはそう願った。
赤い糸 ──2学期の始業式の前日。
アタシは数人の人に電話をかけた。
たかチャンとのことを、話すためだ。
始業式になって学校に行けば、たかチャンとアタシがつき合ったことはみんなが知ることになるだろう。
それより先に、自分の口で話さなくてはいけない人たちがいる。
なんて言われるかな……。
つらくなることを言う人もいるだろう。
だけど、言わなくちゃ──
アタシは携帯を開き、ひとり目に電話した。
「はぃ」
「……アッくん? 話せるかな?」
「いいよ。どうした?」
アッくんとは、あのとき以来の会話だ。
アタシの気持ちを後押ししてくれた人──
素直な気持ちに気づかせてくれた人だ。
「アタシたかチャンに気持ち伝えたよ。つき合うことになったよ……」
「……そっか。良かったな。幸せになれよ!」
アッくんは少しの沈黙の後、お祝いの言葉をくれた。
「もぅ、自分の気持ちから逃げんなよ。オレも……いい恋探すわ!」
アッくんはそう言って、笑っていた。
少し声が震えたような気がしたけど、アタシは気づかないフリをした。
アッくん……。
傷つけてばかりでゴメンね。
赤い糸 去年の夏から、アッくんには甘えてばかりだった。
自分勝手で、つらいときにはいつも支えてもらって。
いつも側にいてくれたね──
アッくん……。
ホントにありがとう。
──そして、次の電話の相手は沙良だ。
沙良に伝えるのは酷かもしれない……。
だけど……、沙良は応援してくれた。
無理してたかもしれないけど、優しい言葉で悩んでいたアタシを救ってくれた。
もう退院してるはず……。
アタシは、メモしていた沙良の祖母の自宅番号に電話をかけた。
トゥルルルル──
トゥルルルル──
「はい、中川です」
沙良の声だ……。
「あ、あの……沙良?」
「──もしかして、芽衣チャン!?」
「うん。久しぶり」
「あー☆ 嬉しいっ! ありがとう!」
喜んでいる沙良の声に、言い出しにくくなる。
だけど、思いきって伝えなきゃ──
「アタシ、たかチャンとつき合うことになったんだ」
「ホント!?」
「う……うん。ゴメンねっ……」
「謝るコトないって! アタシに気をつかってつき合わないほうがヤダよ。アタシも新しく思い出つくって、恋もするから☆」
明るく答える沙良。
赤い糸 沙良はスゴイね……。
アタシだったら、絶対こんなに強くなれないよ。
そして、最後に残った人にかけた──
それは、アイちんだ。
何を言われるかわからない。
アタシをイジメてる張本人。
アイちんがアタシをイジメたキッカケは、沙良のことだった。
沙良に対しての友情からきたイジメだ。
理解してもらえなくてもいい。
反対され、余計にイジメられても仕方ないと思ってる。
だけど、アタシはアイちんに筋を通したい。
たかチャンと堂々とつき合っていきたい。
久々に見るアイちんのメモリ。
深呼吸をして、通話ボタンを押した──
数回コールが鳴ったあと……。
「……はい」
気まずそうな、怒ってるような……、アイちんの声。
「芽衣だけど……」
「……何か用?」
「アタシ、たかチャンとつき合うことになったんだ」
ガチャ──
プー…プー…プー…
一方的に切られた電話。
複雑な気持ちを抱え、アタシは携帯を握り締めた。
翌朝──
楽しみと不安が混じった2学期が始まった。
赤い糸 クリーニングのタグを取り、久々の制服に袖を通した。
塾で毎日勉強したし、予習もやってある。
2学期は勉強も頑張るぞ!
自然と気合いが入り、背中がピッと伸びる感じがした。
こんな休み明けは初めてだった。
……きっと、たかチャンのおかげ。
学校に行けば、毎日たかチャンに会える。
それだから、勉強に熱が入ったり、頑張れる力が湧いてくるんだと思う。
イジメは今は怖くない。
守ってくれるたかチャンや、友達がいるもん。
……アタシ、強くなったな。
コレもたかチャンのおかげ。
愛のパワーって、スゴいんだね。
こんなにもアタシを変えてくれた。
「早く会いたいな……」
思わず顔がほころんでしまう。
よし!
行こうかな! !
「行って来ます!」
「頑張ってね! !」
キレイに磨かれた革靴を履く。
笑顔のお母さんに手を振り、アタシは学校に向けて歩き出した。
赤い糸 学校に着くと、案の定イジメはスタートしていた。
……靴、ナイし。
来賓用のスリッパを履き、教室に向かう。
こんなことに負けたくない。
アタシにはみんながいるんだから……。
──そう自分に言い聞かせながら歩いた。
少しずつなくなっていたイジメの復活に、胸が痛まないと言えば嘘になる。
悲しくて、ホントは泣きたいくらいにつらいんだ。
だけどね、それを認めたくない。
イジメになんか……、もう負けたくない。
「おはよ!」
教室に入ると、大好きな彼氏が迎えてくれた。
「……おはょ☆」
笑顔で答える。
履いているスリッパも、アイちんからのキツい視線も、全部アタシの視界には入らない。
胸の中の悲しみだって、たかチャンの笑顔にかき消されていくよ。
そして、代わりにあたたかいモノと愛しさが、アタシの胸に溢れていった──
赤い糸 それから4ヶ月後──
季節は変わり、冬を迎えていた。
アタシとたかチャンの恋は、順調に続いている。
席替えでズルをして、ずっと隣同士。
学校だけじゃ物足りないから、放課後も週3日は一緒に過ごしていた。
周りからバカップルと言われるほど、仲良しなアタシたち。
カップルは3ヶ月周期で倦怠期がくるっていうけど、アタシとたかチャンにはそんなジンクス関係ない☆
日に日に絆が深まっていった──
つき合って1ヶ月目には、初めてのキスを交した。
緊張して、鼻がぶつかって……、ふたりで笑った。
そして、クリスマスには……、体を重ねて、愛を確かめあった──
新年の初詣。
アタシは神様に祈った。
このままずっと、たかチャンと過ごしていきたい。
神様。
アタシの願い、叶えてくれるよね?
大好きなたかチャン……。
ずっと仲良しでいようね。
明日は1月3日。
たかチャンの誕生日だ。
一緒に過ごす、最初の誕生日。
贈り物は……もう決めてある。
アタシとアナタの絆の証だよ──
赤い糸 「ココは蝶のデザインでいくのかな?」
「はい! コレで☆」
「まだ若いのに、いーの?」
「うん! !」
アタシは、ある場所に来ていた。
サンプルを見て、デザインを書いてもらっている。
──タトゥーのデザインだ。
アタシは明日、タトゥーを入れる。
たかチャンの名前【陸】と、一目惚れした蝶の絵。
下絵をジッと見るアタシに、彫師は聞いた。
「なんでタトゥーを入れよーと思ったの? 痛いのに」
──理由は、たかチャンだ。
つき合ってからわかったんだけど……、たかチャンはスゴくヤキモチやきな人だった。
──芽衣は俺の女だ! っていう証が欲しい。
離れても一緒ってコトで、お互いの名前を彫ろう。
……そんなたかチャンからの言葉。
アタシは悩んだが、結局「いいよ」と快諾した。
アタシの体に、大好きなたかチャンの名前を刻みたいと素直に思った。
「明日は彼氏の誕生日だから入れたいの?」
「……そっかぁ。ラブラブだねぇ?」
彫師はそう言って、アタシの肩をポンポンとたたいた。
赤い糸 タトゥーって、ホントは18歳未満は法律で禁止されているらしい。
どうしようかと悩んでいたアタシに、「兄貴の先輩で彫師がいる」と、ミツが教えてくれた。
……それで紹介してもらったのがこの彫師の人。
体中に何ヶ所も刺青が入っていて、職人っぽい雰囲気がする人だ。
「蝶みたいに彼氏も飛んでっちゃわないよーになっ! ! 気をつけてねっ?」
「あははっ。アタシたちは大丈夫☆」
──そして翌日
アタシのお尻の上に、小さな蝶とたかチャンの名前が刻まれた。
痛かったけど……、早くたかチャンに見せてあげたい。
喜んでくれるよね?
──たかチャンとは、たかチャン家の目の前の公園で待ち合わせをした。
意外とタトゥーに時間がかかり、待ち合わせには間に合いそうもない。
小走りで走り続けたが、公園に着いたのは待ち合わせの時間から30分過ぎだった。
誕生日なのに、ちょー遅刻しちゃった……。
たかチャンごめんね──
赤い糸 公園に着くとベンチに座って携帯をいじるたかチャンの姿が見えた。
寒さでかじかむ両手を擦り合わせ、走ってベンチに向かう。
「待たせてゴメン!」
「遅い!」
「……ゴメンね」
「実は……俺も遅刻なんだよねー。今来たばっかり」
たかチャンはニコッと笑った。
良かった。寒い中で待たせてなくて……。
アタシは胸をなで下ろす。
ギュッ
どちらからともなく、ふたりは手を繋いだ。
……あれ?
繋いだたかチャンの手は、雪のように冷たかった。
──ホントはずっと待っててくれたんだ……。
気をつかわせないように遅刻したなんて嘘ついたんだね。
たかチャンの可愛い嘘が嬉しくて……、アタシの中の愛が溢れてしまった──
たかチャンに思いっきり抱きつく。
「えっ!?」
「だぁい好き! !」
チュッ
「わかっちゃったもんねっ?」
チュッ ?
キスを何度もたかチャンに贈る。
事情がわからないたかチャンは、不思議そうな顔をしてそのキスを受け止めていた。
赤い糸 そして、その日の夜……。
アタシはたかチャンにプレゼントを披露したんだ──
いつものように、たかチャンの部屋でイチャイチャしていたふたり。
たくさんのキスをして、愛を確かめ合う?
そして、その流れでたかチャンが服の上からアタシの胸を触ったとき──
「チョット待って! !」
「──え?」
アタシはたかチャンの腕をつかんで手を止めた。
「今から……プレゼントあげる☆」
「? 芽衣の体?」
……バカ。
でも、ある意味当たってる。
「エッチするとか、そんなんじゃないよ!」
そう断り、アタシは着ていたニットのワンピを脱いだ。
そして、傷口に貼られたガーゼを剥がす──
「……嘘……マジで!?」
「やっちゃった?」
明るい電気の下……。
下着だけのアタシのお尻の上には──
たかチャンの名前と、可愛い蝶の姿……。
「……触っていい?」
手を伸ばしかけたたかチャンの声に、コクンと頷く。
たかチャンは恐る恐る、愛の証に手を伸ばした。
赤い糸 「痛そうだな……腫れてる」
「……チョットね」
たかチャンはアタシの蝶に、そっと口づけした。
そして──
「ありがとう……すげぇ嬉しい☆」
そう言って、優しく抱き締めてくれた。
「アタシはずっと、側にいるよ……大好きだからね? お誕生日ホントおめでとう☆」
「芽衣……愛してるよ。傷をつけさせてゴメンな。でも、ホントに嬉しい」
アタシとたかチャンの絆は、もっと深まったね……。
切れない絆──
運命の相手……。
それはきっとアタシたちふたりのこと。
愛してる……。
愛してるよ──
「ヤバい……抱いちゃっていい?」
「──うん」
たかチャンの柔らかい唇がアタシの体を這う。
いつもより……愛を感じて体中が敏感になる。
「今日は……ゴムなしでもいい? 芽衣に直接イレたい」
「アタシも……アァ……直接感じ……たい──」
初めての隔たりのないセックス。
今日は0.数ミリのゴムですら、アタシとたかチャンの間に入ってほしくなかった。
「好きだよ……」
「アタシも──」
ふたりは愛を確かめ合うように、求め合った──
赤い糸 高校受験
ふたりで同じ高校に行って、卒業したら結婚しよう──
愛しい行為のあと、アタシたちは約束した。
そして数日後──
たかチャンの腕には、【芽衣】という文字と龍のスミが入れられていた。
二の腕にグルッと巻きつくような龍。
まだ線だけだけど、かっこ良かった。
アタシ以外には強気なたかチャンに、ピッタリ似合ってるね。
──冬休みはあっというまに終わってしまい、ふたりは中学最後の学期を迎えた。
毎日着ているダサい制服も、
ボロい校舎も……。
もうすぐお別れと思うと全部恋しくなる。
そして、アタシたち受験生の慌ただしい日々が始まった。
──卒業はアタシとたかチャンの新しい始まりだ☆
3学期はつらいけど、それを乗り越えたら3年後には?
アタシはそう思い、受験勉強を頑張った。
志望校は地元では平均レベルより少し下の県立高校。
制服が公立のわりに可愛くて、美亜とずっと憧れていた高校だ。
赤い糸 みんなの最終的な志望校も決まっていく。
アタシ、美亜、たかチャン、ミツは同じE高校。
優梨は私立で一番レベルが高いM高校。
拓弥クンと酒井はK工業高校が志望校だ。
ナツはサッカーが強い隣の県の高校へ進学が決まっている。
試合を見た高校の人からスカウトがきたらしい。
アッくんは……。
最近あまり話さないから、よくわからない。
ずっと距離を置かれている。
優梨が前に聞いた話だと……、
「元カレと彼氏が近くにいると、芽衣が困るだろ?
高橋はすげーヤキモチやきって聞いたことあるし」
アッくんはそう言って、笑っていたらしい。
だから、距離をあけたのはアッくんなりの優しさなんだろうけど……。
アタシたちは、毎日ひたすら勉強をした。
「今までサボっていた分、寝る時間を削らないと間に合わないっ!」
みんなはそう言って、必死だった。
アタシはというと……。
少しだけ、余裕☆
夏期講習の時以来、毎日予習復習を続けてきた。
2学期は週1で塾に通い、冬期講習も受けた。
今は週2で塾に通っている。
赤い糸 デートも遊びも我慢して、頑張ってきた受験勉強。
明るかった髪の毛も、今は真っ黒に染まっている。
公立より受験が早い私立受験。
優梨は皆よりも早く受験し、予想通り志望校に合格した。
「みんなも頑張って?」
優梨は、嬉しそうに皆にエールを送る。
ホント幸せそうな優梨……。
──アタシも頑張らなきゃ。
次はアタシたち県立志望の番だ。
そして数日後──
公立の受験日の朝がやってきた。
朝日がのぼるのを、勉強机から見ていたアタシ。
──眠れなかった。
徹夜で勉強したけど、余計に勉強がわからなくなってきた。自信ないよ……。
ギュッ
不安になるたび、お守りを握り締める。
コレは、姉の春菜が受験で使ったものだ。
昨日春菜が家に来て、お守りを渡しながらアタシに言った。
「コレ今まで3戦3勝のお守りだから☆ 絶対受かるよ! !」
地元では有名な神社の赤いお守り──
「……アリガト!」
「あたしが来年使うんだから、3勝1敗にしないでねっ」
「ええっ!?」
「嘘、嘘☆」
冗談すら、あまり笑えない……。
赤い糸 ピピピピピ
「あっ……もぅ6時半かぁ……」
あと2時間半で受験が始まる。
ヤダ……。
怖い。不安だよ……。
トントン
「芽衣~、入るわよ!」
「あ、ウン……」
ガチャ
お母さんがエプロン姿で部屋に入ってきた。
美味しそうな朝食の匂いも一緒に入ってくる。
「昨日は寝れた?」
「……まったくダメ。勉強してもはかどらないしさぁ」
アタシは頭を抱えた。
頑張ってきたはずなのに……。
自信あったはずなのに……。
不安になってしまう。
「大丈夫! ここまで頑張ってこれたんだもの! ! お姉ちゃんだって、受験の朝は胃薬飲んでいったんだから?受験生はみんな不安で、同じ気持ちなのよ。リビングおいで。ご飯食べて元気出そ☆」
……あの強い春菜が、胃薬?
受験なんて余裕だったって言ってたのに──
「プッ……アハハッ」
「その笑顔よ?」
春菜のそんな姿は想像できなくて、思わず笑ってしまった。
──落ち込んでても、仕方ない。
もうやるしかないんだ!
お守りを握り締め、気合いを入れた。
赤い糸 受験の定番の朝食、カツ丼も残さずに食べた!
受験票もお守りも、しっかり持ったし。
忘れ物、ナシ!
「行ってくるね!」
「はぁい! 頑張ってね! !」
アタシは元気に家を出た。
中学の近くの駅で、みんなと待ち合わせをした。
──絶対に大丈夫!
何度も何度も自分に言い聞かせながら、駅までの道を歩いた。
駅で合流した4人は、口数も少ないまま電車に乗った。
車内の所々に、同い年らしき人たちの姿がある。
「E高を受験しに向かってる人もいるんだよね……」
美亜がポツリと言った。
E高校の最終的な受験倍率は、2.3倍。
ふたりにひとり以下しか受からない。
車内の中学生たちがみんなライバルに見えて、怖かった。
E高校に着き、受験会場の教室に向かう4人。
不安で体がガタガタと震えてくる。
落ちたら……どうしよう。
スベり止めの私立なんて、受けてない。
アタシにはE高校しかないの──
「たかチャン……」
アタシはたかチャンの手を強く握った。
赤い糸 ──そして、アタシたちの受験が始まった。
配られたテスト用紙に目をやると……。
……あ!
コレ、塾でやったじゃん!
ココはヤマをはったところ! !
鉛筆はスラスラと動いていく──
運にも恵まれて、すべてに近い解答欄を埋めることができた。
……良かった。
春菜のお守りのおかげかな?
昼過ぎに、すべての受験が終わった。
自然と笑みがもれる。
……自信ある!
絶対、大丈夫! !
嬉しくて、近くの席の美亜に声をかけた。
「どうだった!?」
「塾でやったトコが出たよね? たぶんイケる!」
ミツも笑顔でふたりの近くに来た。
「俺、首席入学の自信あるよ! ! マジ完璧! !」
「やったね! !」
ひとりだけ隣の試験会場になってしまったたかチャンも、すぐに来た。
「けっこー書けた☆ 今日はどっかに遊びに行こーぜ!」
「──それより、この黒髪ヤダァ! !」
「……とにかく、みんな良かった☆ 放課後に頑張った甲斐があったねっ?」
4人は手を取り合って喜んだ。
まだ結果は出てないけど、きっと4人でE高校に行けるよね☆
赤い糸 そして4人は、今までの受験勉強のストレスを発散した。
カラオケに行き、喉が枯れても歌って騒ぐ。
途中から酒井と拓弥クンや優梨も集まって……、カラオケのフリータイムが終わったあとも、コンビニ前でたまって遊び続けた。
アタシはたかチャンに甘えながら、高校生活を想像した。
「高校入ったら、一緒にバイトしよ☆」
「おぅ! クラスが同じだったらいぃな!」
たかチャンは笑顔でアタシの頭をなでてくれる。
「3年後まで、ずっと仲良しでいようね!」
「当たり前だろ! !」
チュッ?
みんなの前だったけど、アタシとたかチャンはキスを交す。
「やらしいっ!」
「ふたりの世界に入らないでくださいねー?」
はやしたてるみんな。
アタシたちは、照れ笑いをした。
早く高校生になりたいな……。
楽しみ
アタシは心からそう思ったよ──
だけど……。
そんなに運命は甘くなかったね。
こんな運命って……、ヒドすぎるよ──
赤い糸 崩れた関係
合格発表の日──
4人は揃って合格番号を見に来ていた。
高校の壁に張り出された白い紙。
緊張しすぎて、具合が悪くなってきた。
受かってるよね……?
受かってますように──
そう願い、アタシはお守りを握り締めた。
「心の準備できた? ──見ようっ!」
美亜の声で、4人は自分の番号を探し始めた。
アタシは4654。
──ありますように!
プリントされた数字の中から、自分の数字を探す4人。
数字は、1番とばしや2番とばしで書かれている。
さすが2倍以上の倍率だ……。
自信はあるけど、不安になってくる。
自分の番号の近くを探し、目を凝らす。
4649……
4651……
4652……
4654……
──ん!?
4654!?
受験票を見る。
そこには、4654って書いてあった。
アタシの番号……。
あったよ──
受かったぁ……。
赤い糸 「受かったぁ! !」
隣の美亜が叫んだ。
その直後……、
「俺も! あったぁ! !」
ミツも叫ぶ。
「──アタシも! !」
嬉しくて、涙が出そうだった。
3人はハイタッチをして、喜び合う☆
……だけど。
たかチャンは白い紙と受験票を交互に見て、呆然としていた……。
「──俺……番号ナイわ……」
たかチャンの声に、固まる3人。
頭から、血の気が引いていく──
……嘘?
嘘でしょ!?
「何番なの!?」
「4763……」
4758……
4759……
そして──
4764……
何度みても、4763はない。
アタシは地面にペタンと座り込んだ。
目頭にたまっていた涙もスーッと引き、頭が真っ白になっていく──
「俺だけ……か。落ちたの──ゴメン。先帰るわ……」
「──ッ! たかチャン! !」
たかチャンはアタシの声を無視して、走り去って行った。
アタシは座り込んだまま、動けなかった。
美亜とミツは黙っている。
3人は、小さくなっていくたかチャンの背中を見つめ続けた──
赤い糸 残された3人は、とりあえず近くのファミレスに入った。
たかチャンの携帯は、繋がらない。
家にもいなかった。
「俺ら……アイツに悪いことしちゃったな……」
ミツが肩を落として言った。
ミツとたかチャンは小学時代からの親友。
アタシもつらいけど、親友と離れてしまうミツもつらいよね……。
美亜もジュースのストローをいじりながら言う。
「アタシが最初に叫んだんだ……。たかチャン、どこに行ったんだろ……」
合格して嬉しいはずなのに、まったく喜べなかった。
たかチャンのことを考えると、みんなつらかった。
ガタッ
「……ゴメン! やっぱ、たかチャン探してくる!」
アタシは席から立ち上がった。
……なんでさっき、追いかけてあげれなかったんだろう。
アタシが今いなきゃいけない場所は!?
──ここじゃない。
ガタガタッ
「──美亜も!」
「俺も行く! !」
ふたりも立ち上がる。
急いで会計を済ませ、みんなでファミレスを出た。
見つかるかなんて、わからない。
だけど、3人は自然と走り出していた──
赤い糸 どこを探しても、たかチャンはいなかった。
「もう、帰ろう……」
ミツの声に頷くアタシと美亜。
探し疲れて、声も出ない。
これだけ探しても見つからないなんて……。
……どこにいるの?
3人は、重い足取りで家に帰って行った。
家に帰るとお母さんが心配そうな顔でアタシを迎えた。
「おかえり。遅かったのね」
「……ごめんね」
「──あ、あのさ……どうだった?」
お母さんは気まずそうに聞いてきた。
確かに、今のアタシの顔は暗い。
何も知らなければ、落ちてしまった人のようだ。
「あっ……それは大丈夫! 受かった! !」
「──やったじゃないっ?」
お母さんはパッと笑顔になり、抱きついてきた。
頭をグシャグシャになでられる──
「良かった……グスッ……ほんと、良かったわ……」
しまいには号泣してしまった。
「お母さん、泣かないでよぉーっ」
「だって……ウウッ……頑張ったね……」
受験勉強の日々が頭によぎる。
そしてアタシの胸はいっぱいになって、お母さんの涙につられて、頬に涙が流れた──
赤い糸 泣き続けること、10分──
「……もう8時だわ。お腹空いてない?」
グゥーッ
お母さんの言葉に、お腹がタイミング良く鳴った。
「あらっ? ──今日はお祝いでご馳走を作ったのよ。ご飯にしましょ!」
お母さんは真っ赤な目を擦り、嬉しそうに小走りでキッチンに入って行った。
ホントに嬉しそうだった。
良かった……。
──そう思ったときだった。
?~?~?~
携帯から流れ始めた着メロ。
──! !
この曲、たかチャンだ! !
焦りながら携帯を出し、通話ボタンを押す。
「たかチャン!? どこにいるのっ!?」
「……あぁ。今はほかの中学の友達んちにいる」
「探したんだよ──」
「……ゴメンな」
良かった……。
何かあったら、どうしようかと思った。
「今、話せる?」
「ウン! ! 話せるよ! !」
「俺さ……私立行かないで通信高校行くことにした」
えっ?
「俺んちは金ねーから、公立以外は無理なんだよね……。働いて通う」
「……」
返す言葉がなかった。
アタシは黙ってしまう。
赤い糸 そしてその直後──
たかチャンの口から、信じられないような言葉が出た。
「だからさ……芽衣もE高、やめない?」
「えっ!?」
やめないって?
まさか──
「一緒に通信通おうぜ。俺、芽衣と離れんのヤだし……ダメかな?」
「──あ、あの……それは……」
言葉に詰まる。
アタシもたかチャンと一緒の高校に行きたい。
だけど……、あれだけ頑張って合格したE高校を諦めろっていうの?
「もし通信が無理なら、夜間高校でもいいよ! 俺、ホント嫌なんだ……」
「……」
「ずっと一緒って約束しただろ? 結婚したら学歴なんて関係ねぇし、一緒に行こうぜ?」
……なんかおかしくない?
そんな話、間違ってるよね?
「お母さんが喜んでて、アタシ裏切れない……」
「──じゃあ、俺は裏切れるのかよ」
「そうじゃなくて……」
「──だったら、落ちた俺が悪いってゆうことか!?」
声を荒げて、明らかに不機嫌なたかチャン。
返す言葉が見つからないよ……。
たかチャン──おかしいよ?
赤い糸 戸惑いながら、アタシは話しかけた。
「ねぇ……怒鳴らないで……」
「──ッ! ご、ごめん……思わず……」
アタシの声に、たかチャンの声のトーンは元に戻る。
そして、たかチャンは黙ってしまった……。
「アタシだって、同じ高校に行きたい……だけど、やっぱり無理だよ。アタシだけの問題じゃないもん……ゴメンね」
アタシは素直な気持ちを伝えた。
アタシだって、離れるのは嫌だ。
今までみたいに毎日ずっと教室で顔を合わせていたい。
だけど──
E高校に行けないたかチャンには悪いけど……。
アタシはE高校に行きたいんだ。
「……そっかぁ。そうだよな……」
独り言のように呟くたかチャン。
「ゴメンね……離れちゃうのは嫌だけど、毎日会おうね」
たかチャン……。
わかってほしい。