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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15393 字 更新时间:2026-6-23 05:27

──携帯から、悲しいくらい弱い声が聞こえてきた。

「……俺……不安なんだよ。E高校に行けないことより、芽衣と離れることがつらいんだ──」

痛い程にわかる気持ち……。

でも、これはどうにもできない現実なんだ。

赤い糸 電話を切ると、なんとも言えない悲しさが襲ってきた。

「はぁ……」

溜め息をつき、携帯をポケットにしまう。

たかチャンの気持ちは、すごくわかった。

でも……少しだけ、重かった。

E高校の受験のために、必死に勉強した姿……。

たかチャン知ってるのに──

それとも彼女なら、彼氏のために合わせるものなの?

アタシの選択……、間違ってたのかな?

「芽衣ー! できたわよっ☆」

「あっ──はぁい! ! 今行く! !」

リビングから、お母さんの声がする。

──今日のご馳走は、すごかった。

お刺身、ステーキ、エビチリ……。

そして、ホカホカのお赤飯とオードブル。

アタシの好きな物ばかり……。

食べきれない程に食卓に並んでいた。

「たくさん食べてね!」

「──うんっ☆」

これだけ作るのに、何時間かかったんだろ……。

お母さん、ありがとう☆

お母さんの優しさと嬉しそうな顔を見て、アタシの気持ちは固まっていった。

アタシの選択は間違ってない。

お母さんの笑顔を、泣き顔にはできないもん──

赤い糸 翌日から、たかチャンとの学校生活は終わりに近づいていった。

合格発表の日以来、たかチャンの前で高校の話はタブーになっている。

誰かが決めた訳じゃないけど……、なんとなく、話しづらかった。

休み時間、みんなはいつも1組に集まっていた。

自然と溜り場になっているウチのクラス。

こんな風に集まれるのも、あと少しかぁ。

──そう思うと悲しい。

涙が出そうになって、必死に押さえ続けた。

「芽衣のこと、見ててくれよっ!」

「おぅ」

「美亜に任せて☆」

たかチャンは、最近よくミツと美亜にこんなことを言う。

アタシにも「浮気するな」とか「毎日会おう」とか、

心配したり、束縛することが増えた。

離れることが、不安なんだろうな……。

「大丈夫☆ 大好きだから!」

そう言うと、たかチャンは子供のようにニコッと笑う。

そんなたかチャンが可愛くて……、アタシはヤキモチを焼かれることが嬉しかった。

愛されてるなぁ……。

──そう思い、浮かれていたんだ。

──そう、

高校に入学するまでは。

赤い糸 監視

3月17日──―

アタシは中学を卒業した。

ボロい校舎

だっさい制服──

嫌だったはずなのに……。

離れるとなると、すべてが愛しくなる。

そして、3年間の思い出たちが頭をよぎって──

「そ、卒業……グスッ……したくないよぉ……」

アタシは卒業式の後、教室で号泣してしまった。

クラスの所々からも、泣き声が聞こえてくる。

配られたばかりの卒業アルバムに、ポタポタと涙がこぼれ落ちて……。

染みを作っていった──

「はいっ」

そんなアタシに、そっとハンカチを手渡してくれたたかチャン。

──たかチャンとの学校生活も、今日でもうおしまいだ。

高校でつらくて泣いたって、側でなぐさめてくれるアナタはいない……。

アタシはハンカチをギュッと握り締め、止まらない涙を拭い続けた──

先生からの最後の話も終わり、もう帰宅できる時間になった。

名残りを惜しむように、生徒たちは教室に残り続ける。

写真を撮る男の子、

卒アルに寄せ書きを書き合う女の子、

そして……。

赤い糸 ポンポンッ

下を向いて泣き続けるアタシの肩を、誰かが弱くたたいた。

……誰?

たかチャン?

涙でグチャグチャの顔をあげると──

そこには、気まずそうな顔をした樋口サンがいた。

アイちんと一緒に、アタシをイジメてたクラスメイトだ。

──なんで?

「……あ、あの」

「あたし……イジメてごめんねっ!」

樋口サンは、バッと頭を下げる。

「……ほんと後悔してる。ごめんね──」

頭を下げたまま謝る姿に、アタシの胸にはポォーッとあたたかいモノが流れていった……。

「頭、上げてっ……もういいから──」

樋口サンは、恐る恐る顔を上げる。

アタシは卒業アルバムの最後のページを開いた。

「ここに寄せ書きしてほしいな」

「──え!? いいの?」

「うん……」

〈ありがとう。頑張ってね。樋口絵里〉

白紙だったページに書かれた言葉。

「あの……アタシも──」

「芽衣チャン……」

アタシと樋口サンの様子を見ていたのか、次々とアタシの席にクラスメイトが集まって来た。

このとき──

アタシは苦しかったイジメから解放された。

赤い糸 アタシの中学3年間は、ほんとにいろいろあった。

恋をして、友情を育んで……。

苦しいこともあったけど、友達に支えられて乗り越えてきた。

この校舎で、たくさん笑い合ったね。

そして──

たかチャンとも、この校舎で出会った。

いっぱい思い出が詰まった、中学時代とこの校舎。

楽しかったこと。

つらかったこと。

今となれば、すべてが宝物だよ。

──いつものように、1組には美亜とミツと拓弥クンと酒井が集まって来た。

「じゃあ、行こうか」

「俺んちに集まろうぜっ! !」

みんなはゆっくり廊下を歩いて、それぞれの想いを胸に、校舎を出た。

これから酒井の家で卒業パーティだ。

高校に入ったら、こんな風に集まることも減るだろう。

今日が中学生でいられる最後の日。

たくさん、最後の思い出を作りたい──

赤い糸 酒井の家に着くと、大量のお酒が待っていた。

「準備いいじゃん! 飲もうぜぇー!」

「おぅ! !」

受験があったから、アタシたちにとって久々のお酒。

今日はお祝い!

たくさん飲んじゃおう! !

1時間もすると、みんなはすでにできあがってしまった。

たかチャンとミツはふたりで語り合い、美亜は酒井に絡んでいる。

拓弥クンは、「優梨を呼べーっ」って大騒ぎ。

……まだ好きだったらしい。

アタシもお酒がまわり、楽しくなってきた。

「拓弥ぁー! めめしいっ! ! 会いたいならコクればぁ!?」

酔っぱらった美亜は、酒井から拓弥クンに矛先を変えた。

酒井も一緒になって、コクれって騒ぐ。

拓弥クンには悪いけど、今、優梨はナツの部屋にいる。

4月から県外に行ってしまうナツ……。

優梨は、少しでも長く一緒にいたいと言っていた。

そう思うと、アタシは幸せなのかもしれない。

たかチャンと高校は違っても、いつでも会える距離だから……。

赤い糸 この日は夜までみんなで語り合った。

あと1年くらい中学生でいたかったな。

もう少しでバラバラになるなんて、実感わかない……。

そして翌日──

中学生のような、高校生のような、微妙な春休みが始まった。

中学は卒業してるけど、まだ高校には入学していない。

プータローになった気分だ。

──今日は、朝から姉の春菜が家に来ていた。

合格祝いに来てくれたらしい。

「これ、ありがと☆ 受験、4勝にしといたよ!」

アタシはご利益のあったお守りを返す。

春菜はお守りを受け取りながら、意外なことを口にした。

「芽衣、ほんと良かったね! ! お父さんも、すごく喜んでるんだよ」

「──え?」

「酔って帰ってくると、いつも芽衣に会いたいって言うんだから……」

……お父さんが?

お父さん、アタシに会いたがってくれてたの?

「今度さ……お母さんとお父さんとウチら4人で、ご飯でもいかない?」

思ってもみなかった春菜からの誘い……。

アタシは返事に困ってしまった。

赤い糸 お父さんには、会いたいけど、会いづらいよ。

どんな顔して会えばいいの?

──お互いにそうだよね。

一度開いてしまった心の距離は、いくら親子でも埋めにくい。

それに、アタシとお父さんは実の親子ではないから、余計にそうだ。

アタシはお父さんの言葉で、とても傷ついた。

死んでしまいたいくらい、傷ついた。

それが本心ではなかったとしても──

「ちょっと考えさせて……」

「──だよね。ごめんねっ。アタシ、また前みたいに4人で暮らしたくて……芽衣の気持ちをあんまり考えれなくて、ごめん」

お姉ちゃんの気持ちは、よくわかる。

住み慣れた街を離れて、悠哉とも離れて……、きっと、寂しいんだよね。

赤い糸 ピンポーン

「──あっ? 来たぁ?」

春菜のテンションが急に上がった。

笑顔でリビングを飛び出し、玄関に走って行く。

「はぁ……」

お父さんの話が終わって良かった。

……でも、誰だろ?

「おじゃましまーす」

「どーぞっ!」

──! !

悠哉の声だった。

最近は連絡も取っていなくて、新年の挨拶以来の久々の再会。

昔は毎日会ってたのにな……。

ガチャ

リビングの戸が開き、ふたりが入って来た。

悠哉はニコッと笑い、片手に持っていた紙袋をアタシに差し出した。

「これ、進学祝い!」

「うっそ……ありがとー! ! ……てゆうか、久しぶり☆」

「そうだな! たまには連絡しろよ」

「悠哉こそ、ねっ☆ これ、開けていい!?」

紙袋の中をのぞくと、アタシの大好きなショップの包みがあった。

何だろぉー?

ガサゴソと包みを開く。

──中にあったのはパスケースだった。

赤い糸 「うわぁ? ちょー可愛いっ! !」

「春菜から、芽衣はこの店の小物が好きだって聞いてさぁ。女物の服屋に入るなんて、マジ恥ずかしかった!」

「──嬉しいっ!」

ギュッ☆

照れ笑いをする悠哉に、アタシは抱きついた。

「お……おいっ!?」

いきなり抱きつかれた悠哉は驚いている。

春菜は少しすねた顔をして、「あたしもー」ってふたりに抱きついてきた。

リビングではしゃぐ3人。

……幼馴染みって、ほんとにいいね。

数ヶ月会わなくたって、会えばまた──

すぐに仲良しだ☆

中2の頃まで、アタシは悠哉が好きだった。

悠哉とつき合った春菜に嫉妬して、避けていた時期もあった。

だけど……今はもう大丈夫。

今日久々に3人で集まって、それがよくわかったんだ。

しばらく経つと、

「これからデートしてくるねっ?」

そう言い残し、春菜と悠哉は家を出て行った。

だいぶ前に別れの危機を迎えたふたりだったけど、今は仲良しらしい。

アタシもたかチャンに会いに行こうかな?

ふたりに刺激されちゃったよ?

赤い糸 連絡を取ると、たかチャンは家にいた。

悠哉からもらったパスケースに小さい頃の3人の写真を入れ、バッグにしまう。

あたたかくなってきた春の道をゆっくり歩き、たかチャンの家に向かった。

たかチャンの家に着くと、玄関前でたかチャンは待っていてくれた。

「どうしたの?」

「いや……チョットな」

言葉を濁すたかチャン。

「家、入っていーい?」

「──え!? ちょっと待って! !」

──?

なんで?

訳がわからないまま、アタシは家の前で待たされた。

5分ほど経った頃、

「ちょっと、ここにいてっ……」

たかチャンはそう言い、ひとりで家の中に入って行ってしまった。

何かあったのかな?

ガチャ

「もう大丈夫! 待たせてごめんな!」

「……うん」

アタシは違和感を感じながらも家にあがった。

そして……

部屋でイチャつくうちに、そんなことはすっかり忘れていた。

「俺、通信と夜間の願書出したよ!」

「そっかぁ? 受かったらいいね!」

「もう後がないから落ちれねーよ」

笑い合うふたり。

赤い糸 そういえば……、

「これ、見てー?」

アタシはバッグからパスケースを取り出した。

「これ、何?」

「悠哉にもらったの。可愛いよね!」

「──は?」

たかチャンの笑顔が消えた。

えっ……。

何かしちゃった?

たかチャンはアタシの手からパスケースを取り、3人の写真を見る。

「これ……芽衣と姉ちゃんと悠哉センパイ?」

「……うん。何か、怒ってる?」

「別に……」

たかチャンは立ち上がり、本棚からアルバムを1冊持ってきた。

そこには、楽しそうに笑うアタシたちの笑顔がある。

ピリッ

たかチャンは、アルバムから1枚の写真を取り出した。

「この写真入れといて! ほかの男の写真は持ち歩くなよ!」

「……」

たかチャンに渡された写真は、アタシとたかチャンがキスしてる写真だった。

「悠哉は男ってゆうか……幼馴染みだから──」

「でも、男だろ?」

「……」

キレた話し方……。

なんで機嫌が悪いのか、よくわからないよ?

アタシは複雑な心境のまま、パスケースから写真をはずした。

そして、代わりにふたりの写真を入れた。

赤い糸 たかチャンはパスケースに収まったふたりのキス写真を見て、また笑顔に戻った。

「こっちの方がいいじゃん☆」

「……そうだねっ」

言い返すこともできず、アタシはたかチャンに合わせた。

……ただのヤキモチよね?

それにしても、あの顔は怖かった。

それから7時頃までたかチャンの部屋で過ごし、アタシは帰宅した。

家に帰ると春菜がパジャマを着て、リビングでくつろいでいた。

「今日、泊まるから?」

「ほんと!?」

お父さんと出て行ってしまって以来、一度も家に泊まらなかった春菜。

嬉しくて、顔がほころんでいく……。

その夜、ふたりでいろいろ語り合った。

「最近どうなの?」

「んー……まぁ、順調かな?」

「お母さんに迷惑かけてないよね!?」

「──はい!」

「なら、良かった」

春菜は笑い、ベッドに横になった。

アタシも春菜の隣に寝ころぶ。

赤い糸 「お姉ちゃんこそ、どうなの?」

「アタシ? 普通かなぁー。勉強もやってるし、仲良しの友達もできたし」

「……悠哉は?」

「えっ!?」

いきなり真っ赤になり、動揺する春菜。

そしてふたりはお互いの恋を話し、気づけばそのまま眠っていた──

翌日の昼、春菜はお父さんの所に帰って行った。

「また来るね」

そう言って玄関で靴を履く春菜の姿に、思わず涙が出てしまった。

お母さんも泣いている。

仲良く家族4人で暮らしていたときを思い出した。

「もう! 泣かないでよっ」

春菜はそう言い、笑う。

……だけど、目からは大粒の涙が溢れていた──

赤い糸 数日後──

たかチャンは、夜間の高校に合格した。

皆で集まって、合格祝いをしてた。

「たかチャン、おめでと! 進路が決まって良かったねっ!」

美亜の言葉に照れるたかチャン。

「ほんと良かった! 来月からはみんなで高校生だね! !」

「そうだな」

たかチャンは、ほんとに嬉しそうな笑顔をしていた。

……良かった!

アタシは心からそう思った。

4月になり、皆は新しい春を迎えた──

それぞれ新しい道へ進んで行く。

アタシも、新しい制服に袖を通していた。

「お母さん、今日は9時半から入学式だからね!」

母に念を押し、家を出た。

今日はE高校の入学式だ。

悠哉にもらったパスケースに定期を入れる。

──そして、

たかチャンにメールを打った。

〈これから学校に行ってくるね!たかチャンも遅刻しないようにっ☆〉

今日はたかチャンの高校も入学式。

高校は違うけど、ふたりは同じ日に新しい一歩を踏み出した──

赤い糸 美亜とふたりで電車に乗り、E高校へ向かった。

高校へ着くと、知らない顔の人ばかり……。

気まずいな。

ふたりはクラス表を見て、自分のクラスを探す──

……あった!

1年1組だ。

──しかも

美亜と一緒じゃん! !

「一緒だ! !」

「ほんと!? ちょー嬉しいっ! !」

美亜と同じクラスになったのは中1以来で、ふたりはクラス表の前で大騒ぎしてしまった。

教室に行くと、出席番号順に席が決められていた。

美亜は前の方で、アタシは後ろの方の席。

「さすがに席まで隣にはならないかっ」

美亜は少し落ち込んだ様子で、席に着いた。

アタシも緊張しながら、決められた席に着く。

……なんかヘンな感じ。

ドキドキするなぁ。

アタシの左隣は、いかにもガリ勉な男の子だった。

──そして、右隣はまだいない。

どんな人なんだろ?

期待に胸を膨らませた。

赤い糸 ガラガラ

教室の扉が開き、いかにも遊んでそうな男が入って来た。

その男は座席表を見て、アタシの右隣に座った。

「……ヨロシクね」

「……」

軽く流された挨拶。

……なんだ、コイツ。

少しイラついたけど、なんとか押さえた。

男は不機嫌そうに、携帯をピッピッといじり始めた。

感じ悪い……。

男の姿をジッと見る。

視線に気づいたのか、その男はチラッとこっちの方を見て言った。

「──なんだよ」

「別に……」

「あのさぁ……アンタ芽衣って子がどの子か知ってる?」

「──!?」

いきなり出た自分の名前──

なんでコイツが!?

……芽衣って名前はめずらしいから、きっとアタシのことだよね?

なんでアタシを探してるの?

「……アタシかも。アタシ、芽衣ってゆうんだぁ」

「マジで!? 陸のカノジョ?」

陸って、たかチャンの名前だ。

この人……、たかチャンの知り合い?

「陸って、高橋陸だよね?」

「そうそう!」

「アタシ、彼女だよ」

赤い糸 「──マジで!?」

そう言って、驚く男。

アタシがコクンと頷くと、男は急に人なつっこい笑顔になった。

さっきまでの不機嫌な顔とは大違い……。

そして男は、片手をアタシに差し出した。

「俺、羽柴海斗! よろしくな! ! 陸とは小学生からの友達なんだよ」

「──そうなの?」

差し出された手を握った。

海斗はまた、ニコッと笑った。

──!

よく見ると、この男はたかチャンと雰囲気が似てるかも。

笑った顔とか、服装のセンスとか……。

今さっきイラついたはずなのに、急に親近感を持ってしまった。

「アタシ、芽衣! よろしくね! !」

「こちらこそー」

ガラガラッ

「おはようございますー! ! 今日から君たちの担任になる町田です」

いきなり前の入り口が開き、秋葉系の男が入って来た。

このクラスの担任らしい。

「……Aボーイじゃね?」

海斗がボソッと言う。

「確かにっ」

ツボが同じで、思わず笑ってしまった。

海斗は思ったより、いいヤツなのかもしれない……。

意外と気が合いそうだ。

赤い糸 町田先生の挨拶が終わると、皆は入学式のために体育館に向かうことになった。

アタシは美亜のもとに駆け寄った。

「美亜! 一緒に行こっ」

「──てゆうかさぁ? 隣の男の子とさっそく仲良くしてたねぇ☆ しかも、かっこよくない?」

美亜はからかうように、アタシの腕をつついた。

……完全に勘違いされてる。

「あの人は、たかチャンの小学生時代からの友達なんだって! だから、怪しくないよ!」

「え? マジ?」

美亜は驚きながら、少し前を歩く海斗を見た。

「アタシはたかチャン一筋だから、高校生になっても浮気はしませーん!」

アタシは、美亜に宣言する。

……だって、たかチャン以上の男なんていないもん?

──そう思い、ニヤついてしまう。

入学式はすぐに終わり、アタシたちはまた教室に戻って来た。

アタシは美亜を海斗の席に連れていき、さっそく紹介した。

「親友の美亜! たかチャンとも仲良しなんだよっ」

「よろしくっ?」

いつもより1オクターブ高い美亜の声。

タイプなのがバレバレ。

思わずアタシは、恥ずかしくなってしまった。

赤い糸 「海斗クン、友達になってよ! ! 番号とメアド交換しよ」

ポケットから携帯を取り出す美亜。

初めて見た積極的な美亜の姿に、アタシは驚いてしまった。

「いーよ!」

「やったぁ!」

美亜は嬉しそうに、声をあげた。

そして、アタシにも話をふってきた。

「芽衣も隣同士なんだから、交換したらー?」

「──あっ! そうだねっ。赤外線しよーよ!」

隣同士だし、海斗はたかチャンの友達だ。

これからのことも考えて、仲良くしていきたい。

──だけど……、

「陸にボコられたくないから無理でしょ!」

海斗はそう言って、気まずそうに笑った。

「芽衣チャンの監視してくれってスゲェ頼まれて……俺のほかにも監視役がいるから、浮気とかはやめといたほうがいいよっ☆」

……は? 何それ?

呆気にとられるアタシと美亜。

「陸さぁ、スゲェ心配してんだよ」

「……そうなんだ」

「ヘンな男が近寄ったらブッ殺すとか言ってたー。陸って顔広いから、E高のヤツにもかなり回ってんじゃない?」

赤い糸 ……なんか、やりすぎじゃない?

そう思うのはアタシだけかな?

「まぁ……愛されてる証拠じゃないのかなぁ?」

美亜は苦笑いをしながら言った。

取ってつけたような、フォローの言葉だった──

その日の放課後、アタシと美亜は高校の近くのマックにいた。

「マックって、ほんとどこにでもあるんだねぇ」

「確かにっ! 中学でも溜り場はマックだったし、高校でもマックになりそうだね」

大好きなポテトをつまみながら答える。

周りの席には、同じ制服の学生がたくさんいた。

──だけど、皆見たことのない人ばかり。

「早くE高に慣れて、友達作らなきゃね!」

「だねー。初登校の感想はどう?」

「──どうって……なんか、たかチャンの話聞いたら気まずくなってきたかも……」

──監視してる。

海斗の言葉を思い出した。

「美亜はどう思う? 海斗は隣の人だし、たかチャンの友達じゃん? だけど、番号交換が無理で、アタシ知らない人たちに監視されてるらしいし……それ聞いて、なんか嫌だったんだぁ」

赤い糸 美亜は話を聞き、コクコクと頷いた。

「確かに微妙だよねっ。監視されなくても芽衣は浮気なんてしないし……心配しすぎだね!」

「でしょ!?」

思わず身を乗り出してしまう。

やっぱ、美亜もそう思ってたんだ……。

「これから大変そうだよね。男となんかあったら、ほんとボコりにきそう」

「──ッ! ! マジ笑えないよぉ……」

ほんとにそう。

──誤解を招く行動なんて、絶対にできない! !

「一応……今日海斗と話したことをたかチャンに言っとこっと。なんか嫌だなぁ~」

「──あっ! ついでに海斗のことを聞いといてほしいっ! !」

「?」

なんで?

もしかして……。

「海斗のこと、気になるの?」

「──えっ!? ……バレたぁ? 海斗クンにマジになりそうかもっ?」

「──やっぱり!? そんな感じ、したんだぁ☆」

美亜は恥ずかしそうに顔を赤くした。

そして、照れ隠しに指でクルクルと髪をいじる。

その姿があまりにも可愛くて……。

「協力するからっ!」

アタシは心の底からそう思った。

赤い糸 溜め息

アタシの言葉を聞き、美亜は嬉しそうに笑った。

「ヤバいっ。恥ずかしいかも……」

「アタシに任せといてっ! バッチリ聞いとくから!」

「──お願いっ! !」

パチンッ

美亜は両手を合わせ、頭を下げた。

「アタシさぁ……こんなドキドキしたのって、久々なんだよね。いつも年上の男と、適当に遊んだりつき合ってたから……」

「……」

恋愛に関しては、アタシより何枚も上手に見えた美亜。

そんな美亜が一瞬、不安そうな顔をした──

「……アタシの中学のときの話、海斗クンには言わないでもらっていい? 年上の男と遊んだりしてるって思われたくないかも──」

「……美亜」

美亜はアタシが思ったより、海斗に真剣なのかもしれない。

知られたくない過去──

それは、アタシにもある。

美亜や優梨が黙っていてくれるから、たかチャンはアタシの汚い過去は知らない。

「わかってる。アタシもそうだから……」

「──ありがと」

美亜はやっと安心した顔をした。

そのとき──

?~?~?~

アタシの携帯が鳴った。

赤い糸 「噂をすれば……」

──たかチャンからの電話。

アタシは複雑な気持ちで電話に出た。

「……はーい」

「おぅ! 入学式、どうだった?」

「まぁまぁかなぁ~。そっちは?」

「友達や知り合いがけっこーいたよ。クラスに俺みたいに受験に落ちたヤツがいて、仲良くなった! ! ほかにも働いてるヤツとかいろいろなヤツがいたよー」

たかチャンは楽しそうに話す。

受験失敗のショックは、多少は残っているだろう。

だけど、前向きに夜間で頑張ろうとしてるのが伝わって、嬉しくなった。

「楽しそうで良かったね! !」

「芽衣は? ヘンな男とかと知り合いになってないよな?」

「大丈夫っ! ! ……そうだ! 海斗クンに会ったよ! !」

「マジ!? 海斗は俺の小学生からの友達なんだよ☆」

たかチャンは嬉しそうに海斗の話を始めた。

小学生の頃の思い出や、最近もちょくちょく遊んでいた話──

パサッ

美亜がマックの紙ナプキンをアタシの目の前に置いた。

……?

何か書いてある。

『彼女いるか聞いて』

美亜はまたパチンと両手を合わせた。

赤い糸 そして、美亜は口パクで「お?ね?が?い」と言う。

──よしっ! 任せといてっ☆

「そういえば……海斗って、彼女いるの?」

「は!? なんで?」

いきなり切り出した質問に、たかチャンは露骨に嫌な声を出した。

「えっと……ただ、気になっただけなんだけど──」

「ふーん……」

ごまかそうとするが、たかチャンの声は、明らかに不機嫌になっていく。

どうしよ……。

ヘンな風に思ってる?

アタシは顔をしかめた。

そんなアタシの姿を、美亜は心配そうに見ている。

「……どうなのかな?」

恐る恐る、もう一度聞いてみた。

パサッ

また美亜から紙ナプキンが置かれた。

〈美亜が気に入ってること、言っていいよ!ごめんねっ〉

たかチャンの不機嫌な様子に気づいたのか、美亜は申し訳なさそうな顔をした。

赤い糸 「あ……あのね。美亜が気に入ってるから知りたいんだって」

「──!? それなら早く言えよーっ。海斗は女いねーよっ! !」

たかチャンは美亜の気持ちを知ると、すんなりと教えてくれた。

──良かった。

アタシは美亜の目を見た。

美亜は不安そうに見つめてくる──

そんな美亜に笑顔を向けて……、

「そうなんだぁ。彼女いないんだ! ──美亜、いないって?」

アタシはたかチャンに答え、美亜にそう伝えた。

「ヤッタ!」

美亜は小さく叫び、ガッツポーズをした。

翌日──

美亜の猛アタックが始まった。

美亜は日に日に海斗を好きになっていってるようだ。

少しずつ、ふたりは仲良くなっていく。

そんな親友の姿を見て、アタシはほんとに嬉しかった。

美亜に幸せになってもらいたいよ。

両想いになって欲しい……。

「アタシがもし海斗クンとうまくいったら、ダブルデートしよう!」

最近の美亜の口グセはこれ。

ほんとにそうなったらいいのに……。

実現したらいいな──

赤い糸 その一方で、アタシは複雑な思いで毎日を送っていた。

原因は、たかチャンの束縛──

それは、日に日に強まっていった。

「毎日、登校前と学校が終わった後は電話して」

「放課後にどこか行くなら、誰とどこに行くか連絡して」

「男とあまり話さないで」

数え出したらキリがない程の約束をさせられた。

──そして、一番アタシを困らせた約束は……、

『毎日、会う!』

中学のときにアタシからしてしまった約束だった。

──アタシは夕方5時になると、必ず地元の駅前にいた。

ここがたかチャンとの待ち合わせ場所。

「おぅ!」

毎日笑顔で迎えてくれるたかチャン。

これは、最初はとっても嬉しかったことだった。

大好きな人に迎えられて地元に帰るなんて、すごく幸せなことだと思ってた。

駅の構内のエスカレーターで立ち止まる時間すらも、もどかしくって、走りながら改札に向かっていた。

だけど──

さすがに毎日はキツかった。

赤い糸 高校にも慣れ、クラスメイトたちからの遊びの誘いが増えた。

だけど、アタシのタイムリミットは、毎日4時40分。

この時間の電車に乗らないと、5時までに地元まで帰れない。

だから、友達と少しの時間しか遊べなかった。

……一度遅刻したとき、たかチャンはとても不機嫌になった。

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