饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

第 19 页

作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15380 字 更新时间:2026-6-23 05:27

無理をするお母さんに、楽をさせたい。

しばらく話し合って、しぶしぶ了解してもらえた。

赤い糸destiny 「働くのは、最高でも週3回までよ。成績が落ちたら辞めさせるからね! あとね、家のためを考えてるならバイトしないで。お母さんがどうにか──」

「わかった! わかったから! ありがとねっ!!」

アタシはお母さんの言葉を遮り、電話を切った。

良かったぁ!

スタンドのバイトって、楽しそう!

さっそく履歴書を買いに、駅に向かって走り出した。

そして数十分後……。

アタシは、拓弥がバイトしているスタンドの前にいた。

善は急げだよね?

いつでもいいって聞いてるし、今は客もいなくて暇そう。

書き終えたばかりの履歴書をギュッと握り締め、スタンドの中に入る。

まわりを見渡すと、店内で同僚と話している拓弥の姿を見つけた。

「いらっしゃ──あれっ?」

「……来ちゃった。面接はいきなりすぎだからダメかな?」

急に来たアタシを見て、拓弥は驚いてるようだった。

ドアに手をかけたまま、その場で立ち止まってしまう。

赤い糸destiny 「……誰? 拓弥の友だち? そこに座っていいよ!」

拓弥の同僚が声をかけてきた。

30歳くらいの爽やかな男の人。

「すいません。じゃあ……」

「──あっ。さっき話した友だちです。中学んときの同級生の……」

「あれ? 君が? 僕、店長の西田です。よろしく!」

……店長!? こんなに若い人が!?

アタシは座りかけた椅子から立ち上がり、頭を下げる。

「は、初めまして! よろしくお願いしますっ!!」

「そんなに緊張しないでも大丈夫だよ。事務所で話そう」

店長は、〈STAFF ONLY〉と書かれたドアを開いた。

「じゃあ拓弥、レジ頼むな! 何かあったら呼びにこいよっ」

「あ、はい! わかりました。──芽衣、後でなっ!」

「うん、後でね」

店長に招かれ、ドアの奥にある事務所に入る。

そして、初めてのバイトの面接が始まった。

握り締めていた履歴書を手渡し、簡単な仕事内容の説明を受ける。

赤い糸destiny 面接は十分程で終わった。

「芽衣チャン、お疲れ! 飲んでいいよ!」

店長は笑顔になり、冷たいお茶を出してくれた。

「……はい」

初めての面接は、思っていたよりも緊張した。

何度も言葉をかみ、テンパってしまった。

「いただきます」

「どうぞー」

カタッ──

グラスを持った手が震えて、落としそうになった。

面接は終わったのに、まだ緊張が解けない。

「じゃあ……いつごろから働ける? うちは人手が足りないから、明日からでも働いてほしいんだけど」

「──へっ!?」

「どうかな?」

「は、はいっ! 明日から出れます! よろしくお願いしますっ!!」

いきなりの店長の言葉に、思わず声が裏返ってしまった。

……これは、受かったってことだよね?

こんなに早く結果が出るとは思わなかった。

アタシ、明日からこのスタンドで働くのかぁ。

期待に胸が膨らんでいく──

赤い糸destiny 「今日は休みなんだけど、毎日働いてくれてる男の子がいるんだよ。明日から芽衣チャンには、彼に仕事を教わってもらおうと思ってるから」

「そうなんですか。わかりました!」

ガチャ──

「店長ー!! ガソリン入れにきたよ!!」

アタシの後ろで、ドアが開いた音と男の声がした。

……あれ?

聞き覚えがある声──

「おぅ! ちょうど良かったよ。この子が明日からバイトの──」

「──え!? 芽衣!?」

──ッ!

やっぱりそうだ。

ゆっくり振り返ると、そこにはバイクのヘルメットを持った、たかチャンが立っていた。

「……なんでここに?」

「それ、俺の台詞! なんで!?」

「面接に来たの」

まさか、ここでたかチャンが働いているなんて……。

「知り合いなのかぁ! ちょうど良かった。芽衣チャン、さっき話したのが高橋だよ。明日から一緒に頑張ってね!」

驚いたまま、アタシは頭をコクコクと縦に振った。

まさか、こんな偶然があるなんて──

赤い糸destiny 「俺は店内に戻るから。──高橋、後はよろしく頼むな!」

店長はそう言い、店内に戻っていった。

アタシたちは事務所にふたりきりで残されてしまった。

「……なんか、偶然が続くよなっ」

「そうだね……ビックリしたよ」

驚いて固まったまま、なんとか話をする。

面接中よりも緊張している気がした。

「明日から、よろしくな!」

「はい。よろしくお願いしますっ」

ペコッ──

頭を下げ、冷静を装っているけど、頭の中はメチャクチャに混乱して、胸のドキドキが止まらない。

「あ、あの……ガソリンって、原チャか何か買ったの?」

「あぁ、ミツの兄貴から単車を買ったんだ。スタンドでバイトするとガソリン安くってさ」

たかチャン、バイクの免許を取ったんだ。

しばらく会わないうちにいろいろ変わったんだね。

「もう帰るのか?」

「うん……」

「俺、ガソリン入れたら帰るんだ。送ってこうか?」

うつむきながら話すたかチャンの優しい声。

ドキン──ドキン──

その誘いに、アタシの鼓動は高まっていった。

赤い糸destiny 「……ありがと」

アタシはたかチャンの誘いを受け、一緒に事務所を出た。

「おー! 高橋と芽衣のツーショットって久しぶりに見たなぁ」

拓弥がからかうように笑いながら近づいてきた。

「……てゆうか、たかチャンが働いてるなんて聞いてないよ!?」

「あれ? 言わなかったっけ? まぁ、いいじゃん! 明日からよろしく! 高橋もまた明日な!」

たかチャンは拓弥に笑いかけ、停めてあったバイクに駆け寄っていった。

「あっ……また明日ねっ! 拓弥クン、頑張ってね!」

アタシもたかチャンの後を追って走る。

「気持ちいーね!」

「だろっ!!」

アタシはたかチャンの運転するバイクに乗り、家まで向かっていた。

初めて乗ったバイクは少し怖かったけど、慣れるにつれて気持ち良くなっていった。

「風が気持ちいいね!」

「しっかりつかまってろよっ!!」

言われた通り、ギュッとたかチャンの背中にしがみつく。

久しぶりに触れた背中は、相変わらず大きくて、懐かしさに、胸がいっぱいになってしまった。

赤い糸destiny あっという間に、自宅のマンションが見えてきた。

「もう着くよな! バイクだと早いだろ?」

「楽しかったぁ!」

「またいつでも乗せてやるから!」

たかチャンの言葉に、一挙一動に……気持ちがグラグララと揺れ動く。

──翌日から、アタシはバイトに通い始めた。

たかチャンと拓弥と働く職場は、とても楽しかった。

まるで、中学時代に戻ったよう……。

海斗から聞いたたかチャンの気持ちには、今も戸惑いがある。

優しくされるたび、好きだからかなって思う気持ちも。

だけど、毎日がすごく楽しくて、充実して……。

アタシの気持ちも、たかチャンにどんどん傾いていったんだ──

今日は、日曜日。

日曜と祭日は、たかチャンと同じ時間にバイトが終わる。

「今日も疲れたなぁ」

「わかるっ! さっきの客、かなり感じ悪かったよねー」

事務所の中で、愚痴ったり笑ったり……。もうふたりきりの室内でも緊張はしなかった。

アタシたちは、少しずつだけど昔のような関係に戻っている気がした。

赤い糸destiny 「今日、送ってく?」

「やったぁ! お願いしまーす」

「じゃあ、先に着替えろよ! 俺、ここで待ってるな」

この事務所には、男女別の更衣室はない。

男女で居る場合はどちらかが事務所内で待ち、どちらかが更衣室に入ることになっている。

「じゃあ、お先に!」

そう言って更衣室に入ろうとしたとき、たかチャンの頬についた油に気がついた。

「あれ? 油ついてるよ? 取ってあげる!」

アタシはクルッと向きを変え、制服の袖でたかチャンの頬を拭う。

「なかなか取れないなぁ……」

早く取らなきゃ……。

なかなか油が落ちなくて焦ってしまう。

間近にあるたかチャンの顔に、顔が赤く染まってしまいそうだった。

「もうちょっと待って! 落ちてきたから」

「あぁ」

さっきからたかチャンの顔は、息がかかるほどに近くにある。

ドキッ──ドキッ──

「あっ!! やっと落ちたぁ」

あまりにも近い距離に恥ずかしくなり、アタシはスッとたかチャンから離れた。

赤い糸destiny 「ありがとな」

「じゃあ、着替えてくるね!」

ドキッ──ドキッ──

鳴り続ける胸を押さえ、すばやく更衣室に入った。

更衣室のドアを閉め、ひとりになった途端、アタシは、腰が抜けたように座り込んだ。

顔が熱くなる……。

久しぶりに触れた肌は、昔と変わらなかった。

──着替えを済ませて事務所に戻ると、たかチャンはタバコを吸いながら下を向いていた。

「待たせてごめんっ!」

「芽衣……」

アタシに気づくと、タバコを置き椅子から立ち上がった。

そして、目の前までゆっくり近づいて来て……、

「──キャッ!!」

アタシの体を、優しく抱き締めた。

「もう、我慢できない」

たかチャンの手が、アタシの背中を撫でる。

ドキッ──ドキッ──

体中の血液が、大きな音を立て始めた。

「芽衣……やり直さない?」

耳元で囁かれる、たかチャンの甘い言葉──

赤い糸destiny 何が起きているのか、よくわからなかった。

気がついたら、たかチャンの胸の中にいて──

「なぁ……芽衣が好きなんだよ。偶然が続いて一緒にいれたのも、運命みたいな気がするんだ」

ドキドキドキ──

壊れちゃうくらいに、激しく心臓が鳴っている。

耳元で囁かれるたび、アタシの脳はとろけて、思考回路が麻痺していく。

「たかチャン──」

アタシは、胸に埋まっていた顔を上げた。

「芽衣?……」

至近距離で、ふたりの目が合った。

たかチャンの瞳はうるんでいて、アタシはその瞳に吸い込まれそうになる。

目が離せない。

ゆっくりとたかチャンの顔が近づいて、無意識にアタシも踵を上げた。

ふたりの距離は近づいて、唇が近づいて……アタシは、そっと瞼を閉じた。

ガチャ──

「あぁ! 疲れたぁ……あっ! ごめん!」

赤い糸destiny 「「──ッ!!」」

突然現れた人の声に、アタシたちは慌てて離れた。

事務所の入り口には、気まずそうに立ち尽くす拓弥の姿。

「──ゴメン! じゃあまたっ!」

拓弥は焦るようにドアを閉め、店内に戻っていく。

……夢から現実に戻されてしまった。

恥ずかしくて、火がついたように顔が熱くなる。

「──ご、ごめんっ」

「へっ? あっ…うん……」

たかチャンも顔を赤く染め、アタシから顔をそむけた。

ドキドキする胸は、今もおさまらなくて、たかチャンに抱き締められた体は、今も熱い。

「とりあえず、着替えてくる!」

「うん……」

更衣室に消えていくたかチャンの姿。

「はぁ……」

更衣室のドアが閉まると、アタシは崩れるように近くの椅子に腰かけた。

両手で顔を覆い、熱くなる頬をパチパチと叩く。

──あのとき、拓弥クンがこなかったら、アタシは……たかチャンと、キスをしていた。

赤い糸destiny アタシもキスしたくて、顔を近づけた。

キスする覚悟で、瞼を閉じた。

だけど──

拓弥クンが来てくれて、ホッとしたの。

なんでなんだろう。

心の中がまたモヤモヤしているよ……。

たかチャンの着替えが終わり、ふたりはバイクに乗ってアタシの家に向かった。

たかチャンの背中から体を離し、そっと腰につかまる。

恥ずかしくて、気まずくって………。

今までのように、背中にくっつくことができなかった。

「……着いたぞ」

「うん。ありがと」

マンションの前に着き、バイクから降りる。

「さっきの言葉……勢いだけじゃなくて、本気だから。──じゃあなっ!!」

「あっ、あの──」

アタシの言葉も聞かず、たかチャンはバイクで走り去ってしまった。

……どうしたらいいの?

アタシはたかチャンの姿が見えなくなるまで見送って、ゆっくりとマンションに入っていった。

赤い糸destiny 3年ぶりの再会

「ただいまぁ……」

玄関にローファーを脱ぎ捨て、室内に声をかけた。

……あれ?

お母さんからの「おかえり」の返事がない。

リビングには明かりがついているし、いつも返事があるのに……。

ガチャ──

「えっ?」

「あっ、芽衣。おかえりー」

リビングのドアを開くと、そこにお母さんの姿はなかった。代わりに姉の春菜がアタシを迎えた。

「お母さんは?」

今日パートは休みのはずなのに。こんな時間にどこへ?

「んっとね……今、出かけてるよ」

「どこに?」

「……病院に行ってるんだ」

「えっ……」

持っていた鞄が床に落ちる。

「──ねぇ! お母さんに何かあったの!? 大丈夫なのっ!?」

頭から、血の気が引いていく──

春菜に駆け寄り、激しく問い詰めた。

「ねぇ!! 説明してよっ──」

「ちょ……ちょっと落ち着いてっ。お母さんは、元気なの。だけど……」

春菜は目を伏せ、言葉を止めた。

よく見ると、瞼が少し腫れていた。

「お姉ちゃん……何があったの?」

「……グスッ」

「お姉ちゃん?」

春菜の顔はクシャッと歪み、答えの代わりに涙が頬を伝っていった。

「ウウッ……お、お父さんが……」

「──え?」

「癌に……癌になったの……」

……嘘でしょ?

ねぇ、嘘だよね?

「お父さんが、癌?」

お姉ちゃんの言葉の意味が、理解できないよ……。

「にゅ……入院しちゃった……。お母さん……手続きに行ってるんだ……」

春菜は大粒の涙を流して、肩を震わせている。

そして、震える声で話し続けた。

「し、心配しないで……。きっと、大丈夫。大丈夫だから──」

まるで自分自身に言い聞かせているよう。

「お姉ちゃん。無理しないで……。アタシはもう子供じゃないよ」

「芽衣……」

アタシは、春菜の両手を強く握り締めた。

「どうなっちゃうんだろう……怖いよ──」

「お姉ちゃん……」

握り締めた春菜の手は、ガタガタと震え続けた。

赤い糸destiny ──この夜、お母さんは家に帰ってこなかった。

翌朝聞いたのだが、お父さんのマンションに寄って入院の用意をしていたらしい。

「お父さんね……肺癌なのよ」

帰宅したお母さんは、アタシと春菜に話をした。

目の下にはクマを作り、このひと晩でだいぶやつれたように見える。

「でも、まだ癌は初期なの。不幸中の幸いよ。今の医学なら8割の人は完治するらしいわ。だから、心配しなくても大丈夫だからね」

何年も連絡を取らなくて疎遠になっていても、お父さんは大切なお父さんだ。

お母さんの言葉に少し胸を撫で下ろす。

「春菜……今日から、家に戻ってきてちょうだい。これはお父さんの希望なの。春菜もひとり暮らしなんて大変でしょ?」

「えっ? あたしがここに?」

「ここからの方が病院にも近いし……。今日、荷物を取りに行きましょう」

春菜がうなずくと、お母さんはホッとした顔になり、初めて笑みを見せた。

「お父さんが退院するまでは、3人で頑張っていきましょうね」

「──うん」

春菜は瞳をうるませ、悲しそうに笑う。

赤い糸destiny 「春菜も芽衣も、今から学校に行きなさい。まだ8時だから間に合うでしょ?」

……え?

こんな状況で学校?

「お母さん、大学なんか行けないよっ! お父さんのお見舞いに行ってくる!!」

「そうだよ……。授業なんて頭に入らないもん」

姉妹揃ってお母さんの意見に反発する。

アタシはまだしも、お姉ちゃんは、ずっと一緒に暮らしてたお父さんが、癌になっちゃったんだよ。

誰よりもお父さんのそばにいたいはず──

「ふたりとも、よく聞いてちょうだい」

「嫌っ!」

「春菜っ! 春菜が休んでお見舞いに行けば、お父さんの病気は治るの?」

お母さんの強い口調に、春菜は一瞬黙る。

「お父さんにはお母さんがついているから……。大学に行きなさい。お父さんだって、そう望んでるはずよ」

「──ッ」

バタン──

春菜はリビングから出ていってしまった。

「……はぁ」

お母さんは溜め息をつき、頭を抱える。

アタシはそんなお母さんを見つめるだけで、何も声をかけてあげられなかった。

赤い糸destiny バタバタバタ──ガチャ──

廊下を走る音とともに、春菜がリビングに戻ってきた。

片手には鞄を持ち、着替えも済ませている。

「……春菜」

「芽衣! 学校行くよっ!!」

──お姉ちゃん、泣きそうな顔をしてるよ。無理をして涙をこらえているんでしょ?

だから、ギュッと下唇をかんでいるんだよね……。

「お姉ちゃん、いいの? 大学に行くの?」

「うん」

春菜はアタシの言葉にうなずく。

「お父さんのそばにいたいけど……お見舞いは、大学の後に行ってくるっ」

「──わかった。今、用意してくるね」

アタシも自分の部屋に行き、制服に着替えた。

洗面所で顔を洗い、ボサボサの髪に櫛を通す。

用意を終えると、玄関でお母さんと春菜が待っていた。

「行こうか」

春菜が玄関のドアを開けると、外からまぶしい初夏の陽射しが射し込んだ。

「ふたりとも、行ってらっしゃい」

「はい」

「行ってくるね」

お母さんに手を振り、マンションを出て学校に向かう。

赤い糸destiny 今日も街には笑顔が溢れていた。

微笑み合う親子。

手を繋ぐカップル。

ところどころに幸せそうな空気が流れている。

「みんな、楽しそう……お父さんが病気になっても、世の中は変わらないんだね。あたしたちだけ、こんなにつらいんだね……」

春菜が独り言のように呟く。

「お姉ちゃん、初期にわかって本当に良かったよ。知らなくて末期になってるより、今気づいて良かったじゃん。芸能人だって、早期発見で完治してるでしょ? 大丈夫だから。──ねっ! 元気出して、これから頑張っていかなくちゃ!!」

春菜を元気づけるため、必死に話す。

そんなアタシを、春菜は冷めた目で見つめた。

「初期で8割が完治してるってことは、2割の人が亡くなってるってことでしょ? そんな状況で、なんでそんな呑気なこと言えんの?──ねえ。なんでそんなに冷静でいられるの?」

「……えっ」

春菜の言葉が胸を刺す。

……アタシには、返す言葉がなかった。

赤い糸destiny そういえば、なんでアタシ、こんなに冷静なんだろう。

ショックだけど、春菜のように動揺してない。

涙も流れない──

そんな自分に気づき、アタシは違和感を感じた。

「あの……」

アタシはうつむき、春菜と目をそらす。

「……ごめんっ。そんなつもりじゃなかったの……。芽衣だってつらいのに、やつ当たりしちゃった。あたしがこんなにダメになってるから、芽衣は強くなってるんだよね? ごめんね──」

……そうなのかな。

3年も会ってない父親。

アタシとは、血の繋がらない父親──

自分の気持ちがよくわからなかった。

──高校に着くと、1限目の最中だった。

得意な現代社会の授業だ。

「……であるため、インフレは起きて……デフレは……」

教師の言葉を聞きながら、黙々とノートにペンを走らせる。

だけど、次第に目の前がぼやけて──

ノートの上には、ポタポタと涙がこぼれ始めた。

赤い糸destiny 「──ッ」

胸が痛み、涙が頬を伝った。

お父さんの笑顔が、楽しかったころの思い出が、頭の中をグルグルと回り続ける──

中学を卒業したとき、「お父さんが芽衣に会いたがってるよ」って、春菜から聞いた。

でもアタシは、それを断った。

ずっとお父さんを避け続けていた……。

だけど、もう二度と、会えなくなるかもしれない。

お父さんはこの世から、消えてしまうかもしれないんだ……。

「──おい、大丈夫か?」

「海斗……グスッ……」

隣の席に座る海斗が、小声で話しかけてきた。

泣き顔を見られたことが恥ずかしくなり、ハンカチで涙を拭う。

「……大丈夫か?」

「うん……。ごめんね」

黒板に目をやると、何行も新しい文章が書き加えられている。

アタシは胸の痛みをごまかすように、文章をノートに写し始めた。

赤い糸destiny 現代社会の授業が終わると、すぐに携帯を開いた。

そして、肺癌という言葉を検索する。

パチ……パチパチ……。

「──こんなに?」

700件近いサイトが、検索結果として出てきた。

たくさん並ぶ専門用語は、聞いたこともない言葉ばかり。

そして──

小さな画面には、目をそむけたくなる現実が広がっていた。

……癌なんて、テレビやドラマだけの病気だった。

自分には関係ない病気だと思ってた。

まさかお父さんが、こんなに恐ろしい病魔に体を蝕まれてしまうなんて──

携帯を持つ手が、ガタガタと震え始める。

お父さん。

お父さん……。

アタシは席から立ち上がった。

そして、教室を飛び出して廊下を走った。

お父さんに会いたい。

もう、逃げてばかりいるのはやめた。

お父さんの元に向かい、走り続けた。

「ハァ……ハァ……ッ。ここ……だよね?」

アタシは息を切らしながら、大きな総合病院の前に立っていた。

赤い糸destiny ここにお父さんはいる。

今からアタシは、お父さんに会うんだ。

──面会専用の通路から病院に入り、受付でお父さんの病室を聞く。

「7階の708号室ですよ。面会の方は、このバッジを着けてください」

受付で渡されたバッジを着け、7階に移動する。

7階に向かうエレベーターの中には、同じバッジを着けた人が何人か乗っていた。

「お爺ちゃんと会えるのは最後かもしれないわ」

「今日の手術は成功率が3割しかないの」

エレベーター内で交される重苦しい会話に、不安が募ってしまう。

エレベーターは数回止まりながらも、すぐに7階に着いた。

廊下には病院独特の臭いが漂っていた。

アタシはキョロキョロとまわりを見渡し、お父さんの病室を探した。

705……、

706……、

707……、

──あった。

708号室だ。

病室のドアの横には、お父さんの名前のプレートがあった。

ほかにも3人の患者の名前がある。

ドアの前で足を止め、アタシは胸に手を当てた──

赤い糸destiny お父さん、会いにきたよ。

お母さん、約束を破ってごめんね。

……久しぶりのお父さんとの再会が、こんな場所になるとは思わなかった。

大きく深呼吸をし、アタシはドアに手をかける。

トントン──

「……失礼します」

声をかけながら、静かに病室のドアを開いた。

「ゴホッ……ゲホッ……オエッ──」

すぐに苦しそうな咳が聞こえてくる。

この声は、お父さんの声だ……。

病室内には、数人の患者がベッドに横になっていた。

窓際のベッドで、お父さんは苦しそうに咳をし続けていた。

「お父さん、大丈夫!?」

思わずお父さんに駆け寄り、背中に手を当てる。

「ゴホッ──め、芽衣!? ……ゲホッ、ゴホッ……」

「お父さん! 無理して話さないでっ!」

背中をさすりながら、アタシは叫んだ。

お父さんの背中は骨が浮き出て、昔よりも明らかに痩せていた。

「落ち着いてっ。無理しないでいいから──」

声をかけ続け、必死に手を動かした。

赤い糸destiny 「落ち着いて……」

「ゲホッ……め、芽衣」

お父さんは苦しそうにアタシを見つめ、目にうっすらと涙を浮かべた。

その涙は咳のせいかもしれないけれど、お父さんの涙……あの日以来だね。

「お母さんから聞いた……。ずっと避けててごめんねっ。アタシも……アタシも本当は会いたかったんだ。でも、会うのが怖かったの……」

お父さんは、せきを切ったように、ボロボロと涙を流し続ける。

「ゴホッ……もう二度と……会えないのかと──」

「そんなことないっ!」

お父さんは苦しみに顔を歪めながらも、アタシの言葉に微笑んだ。

その笑顔は、昔から大好きだったお父さんの笑顔……。

「お父さん……大丈夫だから。これから毎日来るから、無理しないで──」

お父さんに会うまでは、あんなに不安があったのに……

いざ顔を合わせると、そんなものは吹き飛んでいった。

まるで、毎日一緒にいたよう。

やっぱり、親子なんだね……。

赤い糸destiny 親子っていうのは、血の繋がりなんか関係ないのかもしれない。

時間や距離があいても、会えばやっぱり親子なんだ。

「ありがとう……。本当に……ゲホッ……本当にありがとう──」

「お父さん……」

お父さんの涙声に、胸が締めつけられた。

「みっともない姿を見せて……ゲホッ。ごめんな……」

「そんなことないっ」

「芽衣に……ずっと会いたかったんだ──芽衣の顔が……見られたから、癌になって良かったかもな──」

……何言ってるの?

お父さん、そんなにアタシを想ってくれていたの?

「血が繋がらなくても、芽衣は……ゲホッ……俺の、大事な娘だからな──ゴホッ……」

苦しそうな姿に、8割が完治という言葉が頭に浮かぶ。

お父さんは絶対に8割に入って。

残りの2割にはならないで……。

絶対に、絶対に死なないで。

まだ、親孝行だってしてないんだから──

アタシは溢れそうになる涙をこらえ、お父さんの背中をさすり続けた。

赤い糸destiny 神社

病室のドアが開いた。

そこには驚いた顔のお母さんが立っていた。

「──芽衣、なんでここに?」

「……あっ」

さぼったこと、ばれちゃった。

「もこっちに来て座ってくれ」

咳がとまって落ち着いたお父さんが、笑顔でお母さんに話しかけた。

「芽衣が……俺に、会いに来てくれたんだよ」

「あなた……」

お母さんは、アタシの隣の椅子に腰をおろした。

何も言葉が出ないのか、アタシとお父さんの顔を交互に見ながら……、

「……グスッ」

「泣かないでよぉ。もうっ」

「だって……芽衣とお父さんが一緒にいるところを見たら、つい涙が──」

お母さんは泣き始めてしまった。

アタシがお父さんに会わないこと……ずっと気にかけてくれてたんだね。

「そんなに泣くんじゃないよ……」

「あ、あなた……」

優しくお母さんの肩を抱くお父さん。

──まるで、昔に返ったようだった。

違うことといえば、お父さんがお母さんを〈幸子〉と名前で呼ぶことだけ……。

赤い糸destiny 「アタシ、そろそろ学校に戻ろうかなっ」

「芽衣、もう行くのか」

「──あっ! そうよ。芽衣は学校に行かなきゃ……」

アタシは鞄を持ち、立ち上がった。

お父さんとお母さん。

すごくいい雰囲気で、恋人同士みたい。

お母さんたちはアタシが原因じゃないと言ったけど、離婚の引金を引いたのはきっとアタシだった。

アタシとお父さんの壊れた関係が、ふたりの仲も壊した。

たぶん、まだ、ふたりは愛し合ってるんじゃないかな?

「じゃあまた後で! バイトの前に来るね」

「芽衣もバイトをするような歳になったんだな……後でいろいろ聞かせてくれよ」

「はいはーい! お母さんも後でね」

「急いで学校に行くのよっ!」

ふたりに手を振り、病室を出て行った。

「いってらっしゃい」

「気をつけてな」

背中から聞こえる両親の声。

両親がまた揃って、アタシを送り出してくれた……。

胸の中が、ポカポカとあたたまっていった。

赤い糸destiny 1階に降り、来たときの通路を戻ろうとした。

でも……なぜか出口が見当たらない。

「──あれ?」

出口、どこだっけ?

巨大な病院の通路は、迷路のように入りくんでいた。

探し回っていると、外来患者の受付ロビーに出た。

入ってきた入り口とは違うが、ロビーの先には出入口も見えた。

……まぁ、ここでもいいや。

迷子のような状況から抜け出せて、ほっとした。

「──あれっ?」

まわりを見渡してしたアタシの視線は出入口で止まった。

……そこには、ガードマンと仲良さそうに話し込んでいる麻美の姿があった。

なんで麻美が?

誰かのお見舞い?

声をかけようと、麻美に近寄っていった。

赤い糸destiny 「麻美チャン!」

「え!? ……あっ!! びっくりしたぁ。芽衣チャン、どうして病院に?」

麻美は急に声をかけられ、驚きながらアタシを見ている。

「お見舞いに行ってたんだぁ。麻美チャンは?」

「アタシは……ちょっとお腹痛くて」

麻美は苦笑いをし、お腹を押さえる。

「そっかぁ。お大事にねっ」

「ありがと! じゃあまたねっ」

手を振り合い、すぐに別れた。

……麻美と話していると、どうしてもアッくんの顔が頭に浮かんでしまう。

またヤキモチやいて、嫌な気持ちになってしまった。

早歩きで病院の外に出て、バッジを返し、学校に向かった。

休み時間を狙って教室に入ると、海斗と美亜が心配そうに迎えてくれた。

目录
设置
设置
阅读主题
字体风格
雅黑 宋体 楷书 卡通
字体大小
适中 偏大 超大
保存设置
恢复默认
手机
手机阅读
扫码获取链接,使用浏览器打开
书架同步,随时随地,手机阅读
首 页 < 上一章 章节列表 下一章 > 尾 页