饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15376 字 更新时间:2026-6-23 05:27

「芽衣! 待たせてごめんっ!」

しばらく待つと、美亜が姿を現した。

走ってきたのか、息を切らしている。

「ひと口ちょうだい!」

美亜はアタシの前に座り、飲みかけのコーラを飲んだ。

「そんなに急がなくても良かったのに……」

「てゆうか、急がなきゃいけなかったの! 芽衣、嘘ついたでしょ」

……え?

あたし、美亜に嘘なんかついてないよ。

戸惑うアタシに、美亜は話を続ける。

「あたしにじゃなくて、アッくんに嘘ついたよね」

「な……なんで知ってるの?」

「電話きたの。あたし、本当の話したよ」

美亜の顔は、真剣な顔に変わっていった。

思わずアタシは、目をそらした。

赤い糸destiny 「アッくんの話を聞いたら、嘘はつけなかった。ごめんね」

どういうこと?

まさか──

美亜をジッと見つめながら尋ねた。

「なんでアッくんから電話がきたの?」

「……さっきのキャッチ、出てみたらアッくんからの電話だったの。いきなり、芽衣に彼氏がいるか聞かれたよ」

「……」

そこまでするアッくんが、よくわからなかった。

なんて答えたらいいのかもわからない。

「ねぇ……なんで嘘ついたの? アッくんはきっと芽衣に未練があるんだよ。ミツからたかチャンを振ったって聞いたけど、それはアッくんへの気持ちが強いからじゃないの? そりゃあ、彼女いるのにそんなことを言うアッくんも勝手だけど……」

美亜の話を聞きながら、アタシはコーラを手にする。

「もういいんだ。もう触れないで」

「なんで!? なんでそうやって自分の気持ちから逃げるの!?」

バンッ──

「──逃げてないよ!」

アタシはコーラをテーブルに叩きつけ、立ち上がった。

美亜も隣のカップルも、驚いたようにアタシを見た。

赤い糸destiny 「め、芽衣?」

「アタシは一生懸命忘れようとしてるのに……なのに、なんで!?」

「ちょっと……落ち着いて座りなよ」

「──もう嫌!」

気がつけば、アタシの頬には涙が伝っていた。

ペタン──

椅子に座り、両手で顔を覆った。

指の隙間から、ポタポタと涙がテーブルにこぼれ落ちていった。

「何があったの?」

「アタシ──」

ひとりで抱えていた想いや出来事を、すべて美亜に話した。

たかチャンのこと。

アッくんに会って、ひと晩過ごしたこと。

そして、麻美が倒れたこと。

美亜は何度もつらそうに顔を歪めながら、アタシの話を聞いてくれた。

「だから……もう、すべて忘れたいの。グスッ……。こんな状況、嫌──」

美亜はアタシの横に座り、そっと頭を撫でてくれた。

「芽衣……」

ハンカチで涙を拭われ、美亜の優しさが胸にしみた。

「なんで話してくれなかったの……。アッくんに話しちゃってごめんね」

「……ウウッ、美亜ぁ……」

「つらいよね。つらいよね──」

アタシは美亜に抱きつき、声を殺して泣き続けた。

我慢していた気持ちが、涙に変わって流れていった──

赤い糸destiny ──それから3日後。

アタシは昼間なのに、自分の部屋のベッドで横になっていた。

あれ以来、学校に行く気がしない。

それに、フラフラして、何もしたくなかった。

トントン──

「入るわよ」

お母さんが部屋に入ってきてお皿に乗せたおにぎりを、机の上に置いてくれた。

「もう3日よ。そろそろ何か食べなきゃ……無理して学校に行けとは言わないから」

「ごめん。食欲ない──」

「……芽衣。お願いだから食べて」

アタシは横になったまま、首を横に振った。

まったく食欲がない。

お腹が空いても、食べたいと思えないんだ。

「ごめんね……」

「置いておくから、食べなさい。何かあるならお母さんに話してね……」

パタン──

お母さんはそう言い残し、悲しそうに部屋を出て行った。

「はぁ……」

お母さんが出て行くのを確認すると、アタシは溜め息をつき、天井を見上げた。

「もう、やだぁ……」

頭の中に、アッくんの顔ばかり、浮かんでは消えていく。

赤い糸destiny やっぱり、アッくんが好きだよ……。

諦めようって思えば思うほど、アタシの体は反発する。

眠りを妨げ、食欲をなくし、アタシの気力を奪っていく。

……何もしたくない。

もう、何も考えたくない。

?…?…?…

〈大丈夫? なんで学校来てないの? 連絡して〉

〈おーぃ! 何してんのー?〉

「……」

心配してくれる友だちからのメール。

アタシはそのメールにさえ、返す気力がなかった。

横になったまま、お腹を触る。

この3日間、水しか入っていないお腹はげっそりと痩せていた。

「はぁ……」

何回目になるのかわからない溜め息をつき、ベッドから体を起こした。

……トイレ行こっと。

ベッドから降り、床に立ち上がった。

「──ッ!?」

頭の中がグラッと揺れる。

……え? 何?

そして、目の前が暗くなって──

アタシは、意識を失った。

赤い糸destiny 突然の訪問

ぼんやりとする意識の中、消毒液の匂いが鼻を突く。

目を開けると、見慣れない白い天井が目に入った。

ゆっくりとまわりを見渡す。

……あぁ……ここは病院だ。

確か、アタシはベッドから降りたときに頭がクラクラして、気を失っちゃったんだ。

アタシのベッドを囲むカーテンが開かれ、お母さんが顔を出した。

「お母さん……」

「目を覚ましたのね。芽衣はさっき、貧血を起こして倒れたのよ」

お母さんは心配そうな顔をして、アタシの手を握った。

お母さんと手を繋ぐなんて、久しぶりだった。

前よりさらに細くなったお母さんの手……。

「点滴が終わったら先生が来るからね。ただの貧血だから、帰れるようならすぐに帰ってもいいらしいわ」

「うん……。お母さん、ごめんね」

「そう思ってくれるなら、これからはご飯を食べてちょうだい」

アタシ、何やってんだろ。

お母さんはただでさえ、お父さんのことで大変なのに。

赤い糸destiny 「もう、大丈夫だよ。点滴が終わったらひとりで帰るね。早くお父さんのところに行ってあげて」

お母さんの手を離し、手を振った。

頭はまだクラクラとするけど顔には笑みを浮かべた。

「お姉ちゃんがお父さんのところに行ってるから大丈夫よ。ゆっくり休んで、一緒に帰りましょう」

「……大丈夫。家まで歩いてすぐなんだから、帰れるって! ご飯もちゃんと食べるから」

「もうっ……」

お母さんは困った顔をして、アタシの髪を撫でた。

そして、優しく話しかけてくれた。

「一緒に帰ろう。変な気を遣わないでちょうだいね」

「お母さん……」

「ゆっくり休んでいいから……」

お母さんの言葉に、申し訳ない気持ちや切なさが込み上げてきて、アタシはもう、何も言えなかった。

「……あら、点滴がもうないわ。お医者さんを呼んでくるわね」

お母さんはそう言って病室を出て行った。

残されたアタシは枕元にあった鞄から携帯を取り出した。

〈受信メール1件〉

気づかないうちに、また受信メールが増えていた。

みんなにも連絡しなきゃ……。

アタシは何気なく、メールボックスを開いた。

赤い糸destiny 〈話がしたいから会えない?〉

それは、知らないアドレスからのメールだった。

……誰だろ?

「芽衣、お医者さんを呼んできたわよ」

「具合はどうですか?」

「あ、はい。大丈夫です……」

アタシは携帯を置き、医者の話を聞く。

軽く診察してもらうと、帰宅の許可がでた。

点滴のおかげなのか、体はすっきりとして体調も良くなった気がした。

──病院の前でタクシーを拾い、アタシとお母さんは家に向かった。

タクシーの中で、睡眠導入剤や鉄剤などが入った袋を握り締めた。

「しっかり飲んで、早く元気になってね」

「うん……」

家に着くと、すぐに睡眠導入剤以外の薬を飲んだ。

そして自分の部屋に入り、残したままの食事を口にする。

「……モグ……う、うぇっ──」

少し食べただけなのに、いっきに吐き気が込み上げた。

「おえっ……」

気持ち悪い。

トイレに入って便器に向かっても、空っぽの胃からは何も出てこない。

赤い糸destiny 食べないことに慣れた胃は、何も受けつけない胃に変わってしまっていた。

「はぁ……はぁ……」

お母さん、ごめん。

口を拭って部屋に戻り、残った食事を袋に包んで捨てた。

「はぁ……。気持ち悪いよ」

空っぽになった皿を持ち、リビングに向かう。

「お母さーん」

「はぁい! ──あらっ、ご飯食べれたのねっ」

「うん、ありがと!」

アタシは笑顔を作り、皿をシンクに運んだ。

……少しずつ、食べることに慣れていこう。

お母さんには心配かけないようにしなきゃ。

約束したのに食べれなくてごめんね……。

翌朝──

「行ってきます!」

元気な姿を装い、家を出た。

いつも通りに学校に向かった。

朝食はほとんど口にできなかったけど、睡眠導入剤のおかげで睡眠だけは取ることができた。

だいぶ体調はいい気がする。

アタシは眩しい朝日に目を細め、学校への道を急いだ。

赤い糸destiny 学校に着くと、何人もの友だちに声をかけられた。

「連絡取れなかったから心配したよぉ!」

「ごめんね。もう大丈夫だからっ!」

「そっか。良かったねー!」

人を変え、何度となく繰り返される同じ会話。

元気なんかないのに、アタシは嘘の笑顔を繰り返した。

そんな中、美亜だけはアタシの本音をわかっていた。

「芽衣! 大丈夫なの!? 無理しちゃダメだよ!」

「美亜……。大丈夫だよ」

美亜にはこの前、やつ当たりをしてしまった。

謝らなくちゃ──

「もう元気だから……。この前はごめんね」

「全然いいよ! てゆうか、大丈夫なんかじゃないじゃん! 無理しないでよ。あとね、話があるんだ」

美亜はアタシを、人気のない階段へ連れて行った。

「ち、ちょっと──」

「いいからっ!」

弱った体には力が入らず、美亜に連れられるままノロノロと歩いた。

赤い糸destiny 階段に着くと、やっと美亜は立ち止まった。

まわりに人がいないことを確認し、小声で話し始めた。

「この辺でいっか。ちょっと、話したいの」

「うん……あっ! もしかして、昨日変なアドレスからメールした!?」

昨日の知らないアドレスからのメールを思い出し、美亜に尋ねた。

「えっ?」

「話したいってメールしたでしょ?」

「……してないけど」

美亜は言葉を止め、眉をひそめた。

……美亜じゃないの?

誰からのメールなんだろう。

「昨日、会って話したいってメールがきたんだ。しかも、知らないアドレスで……」

「うん」

「無視しちゃったんだけどね」

「……もしかして、麻美チャンかも」

──えっ?

いきなり出た麻美の名前に、鼓動が早まった。

「なんで麻美チャンが?」

美亜を見つめると、美亜は少し考えて口を開いた。

「実は昨日、優梨から電話がきたんだ。麻美チャンのことなんだけど……。アッくんの携帯を見ちゃったらしいんだよね」

赤い糸destiny まさか……。

「アッくんから、海斗クンが本当に彼氏なのかってメール来たでしょ? それも見ちゃったらしいんだよね」

「マジ……」

「最近、ナツくんにカマかけていろいろ聞き出したらしいし……。麻美チャンのアドレス、数字ばっかりのアドレスらしいんだよね。芽衣にきたメール見てみて」

アタシはポケットから携帯を取り出し、あのメールの差出人を見た。

たくさん並んでいる数字をよく見ると、アッくんの誕生日が入っていた。

「……たぶん麻美チャンだよ」

「やっぱり。どうするの?」

携帯を見つめ、すぐに結論を出した。

「もうアタシはアッくんと関わるつもりはないし……。知らないアドレスだから、返信しないよ」

「……そっか。揉めるのが目に見えてるもんね。それが無難だよ」

「うん、そうだね」

アタシは、麻美からのメールを消去した。

……このままアタシがアッくんに関わらなかったら、忘れてくれるよね?

もう、アッくんにも麻美チャンにも関わりたくないよ。

赤い糸destiny だけど、麻美の気持ちは、それじゃおさまらなかったんだ。

アタシと話すため、麻美はすぐ近くまで来ていた──

放課後、アタシはまっすぐに地元に向かっていた。

体調がよくない体では、遊びに行く気がしない。

それより早く家に帰って、久しぶりにお父さんのお見舞いに行きたかった。

倒れたことは内緒にしているけど、きっとお父さんは見舞いに来ないアタシを心配してるはずだ。

──地元の駅で電車を降り、急いで改札に向かった。

「すいません……」

アタシは、学生たちで混み合う通路を急いだ。

声をかけて人の合間をぬいながら、改札を抜けた。

「──ッ! な、なんで?」

「メールしたじゃん」

「えっ……」

アタシの目の前に、怒った顔の麻美が立っていた。

「あの……」

「話せる場所に行かない?」

麻美にニラみつけられたアタシは、コクンとうなずいた。

麻美の剣幕に押され、断ることができない──

赤い糸destiny 突然のことで、アタシは動揺を隠せなかった。

気まずい空気の中、いつもの駅前のマックに入った。

そして空いている角の席に座る。

「……今日はどうしたの?」

「アツシのことを話しに来たの」

やっぱり……そうだよね。

「何を……話したいの?」

「あのさ、正直に答えて欲しいんだけど……」

麻美はそう言いながら、アタシの目をジッと見た。

「──えっ」

その視線に耐えきれず、思わず目をそらしてしまった。

「芽衣チャンは、アツシのことをどう思ってるの?」

「どうって?」

「だから──好きかどうかってこと」

心臓が自分でもわかるほど、バクバクと大きな音を立て始めた。

「えっ……それは──」

「答えて」

「ア、アタシは……」

好きじゃない。

……そう言わなくちゃ、いけないはずなのに。

麻美の瞳が、まっすぐにアタシを見て──

アタシに嘘をつけなくさせる。

赤い糸destiny 「アタシには……海斗がいるもん」

「──嘘。ただの友だちでしょ? 芽衣チャンの高校に友だちがいるから調べたの」

麻美はアタシから視線をそらさずに言った。

その視線が痛くて、もう嘘なんか通じないんだって思い知らされる。

「正直に話して」

「……」

「好きなんじゃないの!?」

バンッ──

麻美は声を荒げ、テーブルを叩きつけた。

まわりのテーブルの客たちが、ザワザワと騒ぎ始めた。

「ア、アタシは……」

「何?」

明らかにいら立っている麻美に、言葉が詰まった。

もう嘘はつけないよ──

「アッくんが……好きだよ」

「……やっぱりね」

動揺したように髪をかき上げる麻美は、怒りで唇を震わせていた。

「で、でも……もうアタシは、アッくんを諦めた。アッくんが大事なのは麻美チャンで、アタシじゃないってわかるから……」

ねぇ……わかって。

麻美はさっきまでのこわばった顔をゆるめ、フッと寂しそうな顔を見せた。

「アツシの大事な人は、アタシじゃない」

赤い糸destiny ……どういうこと?

「アツシはきっと……今も芽衣チャンが──」

麻美はそこまで言い、言葉を止めた。

アタシは思わずうつむいてしまう。

「ねぇ……。アツシとは寝た?」

「──えっ?」

いきなりの質問に、アタシは顔を上げて麻美を見た。

「な、なんで?」

恥ずかしさと戸惑いで顔に血がのぼっていった。

すると、麻美は初めてアタシから視線をそらした。

「あたしはしてない。1年もつき合ってるのに……」

「──え? ほ……本当に?」

麻美は目に涙を浮かべる。

そして、悔しそうに袖で涙を拭った。

「だけどあたしは絶対に引かないからね!」

「……」

「アツシは絶対に譲らないから……。あたしにとって、アツシはすべてなの! だ、だから……絶対に引かない。渡さない──」

……麻美チャン。

ポロポロと流れる涙を拭い続ける麻美に胸が痛んだ。

「アタシは……もうアッくんに連絡しないから」

「……絶対にしないって約束して」

赤い糸destiny 約束……。

その響きが胸に重くのしかかる。

アタシは本当に諦められるんだろうか……。

口ではそう言っても、アタシは約束できるの?

アタシにとっても、アッくんはすごく大きな存在なのに。

「あの……」

「アツシはアタシの彼氏なんだよ。あたしはずっと、生きる希望なんかなく生きてた。いつ死ぬかわからなくて、いつ心臓が壊れるかわからなくて、夢や希望なんて持つ人間じゃないと思ってた。だけど、あたしはアツシに出会って変わったの。初めて夢を持てた。ずっとアツシと一緒にいたいの! いつ消えるかわかんない命だけど、ずっとアツシといたい!!」

麻美は興奮してまくしたてた直後、急に胸を押さえた。

苦しそうに体を丸める麻美に手を伸ばす。

「ま、麻美チャン!?」

「大丈夫だからやめてっ!!」

支えようとするアタシを止め、麻美は苦しそうに息をし続けた。

「ね……ねぇ……。アツシは諦めてよ」

「……」

「お願いだから──」

赤い糸destiny コクン──

アタシはその気迫と剣幕に押され、小さく頷いた。

「絶対だよ……」

「──うん」

念を押す麻美に、今度は強くうなずく。

麻美は胸を押さえながら、席から立ち上がった。

「芽衣チャン……。あたしは先に帰るね。じゃあ」

麻美は荷物を持ち、ゆっくりとマックを出て行った。

残されたアタシは、人混みに紛れて行く麻美の背中をジッと見送った。

そして、麻美の姿が消えた瞬間──

テーブルに伏せ、頭を抱えた。

「……はぁ……」

麻美の気持ちが、ひと言ひと言が、胸に突き刺さった。

アタシは溢れかける涙を、グッとこらえた。

そのころ、麻美は、駅の改札の前にいた。

顔には涙ではなく、笑顔を浮かべている。

「?~?~」

小さく恋愛ソングを口ずさむ麻美が、改札を抜けようとしたとき──

ガシッ──

「おいっ! 待てよ!!」

「──何!?」

ひとりの男が麻美の肩を掴んだ。

麻美は歌を止め、振り返る。

そこには、麻美の知らない若い男が立っていた。

赤い糸destiny 「……誰?」

「つーか、お前最悪だよな」

「はぁ?」

男の言葉に、麻美は顔色を変えて、突っかかった。

男は、そんな麻美の姿を見下したように言った。

「芽衣は……お前の体を心配して、両想いなのにアツシを譲ったんだろ?」

「えっ……芽衣チャンの友だち?」

「そうだよ。さっきの話も聞いてたし、お前が苦しむ振りをして騙したのも見てる」

「──関係ないでしょ!」

麻美は悔しそうに唇をかんだ。

そして、言い訳を始めた。

「あたしは、本当にいつ死ぬかわかんないの!! アツシを譲りたくない。絶対に譲りたくない!」

「はぁ……」

男は小さく溜め息をついた。

寂しそうに麻美を見つめる男の瞳……。

「気持ちはわかるよ。だけどさ、お前のやり方は卑怯だろ? そんなんでアツシを引き止めて、幸せか!?」

「それでも幸せ!! そばにいてくれれば幸せなのっ!!」

「それで幸せか? アツシは優しいヤツだから病気の女を捨てたりはしねーもんな。でもそれは幸せじゃねーよ」

赤い糸destiny 「あんたと話してる暇はないの! アツシと会うんだからっ!」

麻美は男を振り切り、改札に向かった。

だけど、男はしつこく食い下がった。

「待てよっ!」

「ついてこないでっ!」

「逃げるってことは、自分でもわかってるんだろ!? 現実から逃げんなよ! 本当に幸せになれる相手を探せよ!! 俺だって……お前と同じだから、気持ちはわかんだよ──」

急に麻美の足が止まった。

「同じって……」

麻美が見つめると、男は寂しそうに笑いかけた。

「俺も、叶わない恋ってヤツをしてんだよ」

「えっ……」

「──芽衣だよ。俺は芽衣が好きなんだ。俺の元カノだけど、忘れらんねーんだ。無理やりでもつき合いたいけど、そんなんじゃうまくいかないんだよな。……前に芽衣を暴力で束縛したことがあった。だけど、うまくいかなかったよ。お前は病気でアツシを縛りつけ、俺は暴力で縛りつけた」

「嫌っ!」

麻美は耳を押さえ、男の言葉を否定した。

赤い糸destiny 「あたしは違う!」

そして、耳を押さえたまま叫んだ。

「違う! 違う──」

「わかってんだろ!?」

「……嫌ぁ!!」

麻美は叫び、男を残して走り去った。

まわりの人々は、ヒソヒソと話しながら男を見ていた。

「俺……何やってんだろ」

男は呟き、来た道を戻り始めた。

「おーい! 高橋!! 久しぶりだなっ!」

「おう!」

「さっきの女、誰? 新しい彼女か?」

「違うって!」

男……。

たかチャンは、偶然会った友人に笑いかけ、駅前のコンビニに入っていった。

アタシは、まだマックの椅子から立ち上がれなかった。

そんなことも知らず、ジッとテーブルの上を見つめ、息が苦しいほどに痛む気持ちを、必死でこらえていた──

赤い糸destiny 季節は夏へ

みんながさまざまな想いを抱えたまま、月日は流れた。

梅雨の時期を迎え、今日は夏休みの最初の日。

そして、待ちに待ったお父さんの退院の日でもあった。

──朝、7時。

ピピピッ──

「うーん……」

「早く起きてっ! 用意しないと間に合わないよ!!」

携帯のアラームとほぼ同時に、春菜がアタシの部屋に入って来た。

「早く起きなさーい」

「わかったぁ……」

「じゃあ後でね」

春菜はアタシを起こすと、慌ただしく部屋を出ていった。

……朝日が眩しい。

瞼をりながら、ベッドから起き上がった。

頭がクラッとして目の前が一瞬暗くなった。

最近、立ちくらみがよく起きる。

ご飯をあんまり食べていないからかな。

──今もアタシは、食事をあまり取れなかった。

睡眠導入剤がないと眠れない。

アッくんの顔が毎日浮かび、まったく先に進めなかった。

赤い糸destiny アタシは、机の上に置いてあるココアの缶を見つめた。

──アッくんの家で起きた出来事。

あの日の思い出が、この缶には詰まっている。

……気持ちも缶も、捨ててしまわなくちゃ。

そう、何度も思った。

だけど、今のアタシには両方とも捨てることができない。

用意を終えた春菜とお父さんの病院へ向かった。

外に出ると、いつもまわりを見渡してしまう。

……いるわけないか。

「はぁ……」

アタシは溜め息をつき、駅までの道を歩いた。

諦めたいのに……。

どこにいても、アッくんの姿を探してしまうよ。

何をしていても、アッくんを思い出して苦しくなった。

「なんで溜め息なんかついてんの? またアッくん?」

「……うん」

「もうっ。早く忘れなよ」

春菜は呆れたように言った。

毎日繰り返される、同じような会話。

「アッくんと彼女が別れないってことは、芽衣より彼女を選んだってことでしょ? 早く元気出して、新しい恋を探しなよ」

春菜はそう言い、アタシに笑いかける。

赤い糸destiny 「そんなに簡単に忘れられたら苦労しないよ……」

アタシはまわりに視線をやりながら、春菜に答えた。

目の前に、駅の外観が見えてきた。

「駅に着いたし、もうアッくん探しはやめて、お父さんのお祝いの話をしよう」

「……うん」

……今日も、アッくんを見つけられなかった。

ガックリと落ち込み、肩を落とした。

春菜はそんなアタシを諭すように話し始めた。

「早く忘れなよ! まだ高2なんだから、いくらでも新しい出会いがあるじゃん! お姉ちゃんが紹介してあげよっか?」

「いいって……」

そんなこと、毎日言わなくてもわかってるよ。

アッくんを忘れなきゃいけないことぐらい、ずっと前からわかってる。

忘れたいよ。

アタシ、毎日つらいよ──

新しい出会いがあれば、忘れられるのかな?

でも、アッくんの代わりになるような男なんていない。

アッくんがいい。

アッくんが好き。

諦めようとすればするほど、アタシの気持ちは強まっていった──

赤い糸destiny お姉ちゃんの心配は、よくわかる。

アッくんを想うがゆえに、アタシは体調を崩した。

春菜も美亜も優梨もみんな、同じ話をする。

「早く忘れた方が楽」

「新しい恋を見つけなよ」

そうできたら、どんなに楽なんだろう。

今日だって、お父さんの退院を心から喜びたい。

それなのに、アタシの心には、常にアッくんの影がある。

そしてアタシは、暗闇から抜け出せない──

その晩、家族4人は、家で仲良く食事をした。

家族全員でする食事なんて、何年ぶりなんだろう。

昔は当たり前だった光景が、今は素晴らしく感じる。

このときばかりは、アタシもアッくんを忘れた。

家族が揃う嬉しさに胸があたたかくなる。

これは、どんなご馳走よりもアタシを喜ばせた。

──お父さんが無事に退院できて良かった。

また家族が揃えて良かった。

?~?~?~

家族の会話を裂き、アタシの携帯が鳴り始めた。

相手はクラスの友だちだった。

携帯を持ち、リビングを離れた。

赤い糸destiny 「はいはい」

「芽衣チャン、あさって空いてる? 遊ばない?」

「えっ?」

電話の相手……ミヤビは、そこまで仲がよくない女の子だった。

ギャルではなく、お水のようなお姉さん系の女の子。

いつもはグループも別なのに……。

そんなミヤビに誘われ、すぐに返事ができなかった。

「急にどうしたの?」

「あのね、あたしの男友だちが芽衣チャンを気に入ってるんだぁ。クラス写真見て一目惚れ状態なの」

──話が見えてきた。

ミヤビは男友だちに、アタシを紹介したいんだ。

そんなの無理だよ……。

「そういうのはちょっと行きたくないかな……」

「えーっ!! ちょーかっこいいし、優しいんだよっ。──お願い! あたしの顔を立ててっ!」

やんわりと断っても、ミヤビは食い下がってきた。

電話に出てしまったことを、アタシは後悔し始めた。

「本当に無理だから。ごめんねっ」

「一度でいいから会ってみない? お願い!」

「ほんとごめん……」

「えーっ!!」

断り続けても、強引なミヤビは引く気配がない。

赤い糸destiny 言いたくない台詞なんだけど、仕方ないな……。

「好きな人いるから行けないの」

そして、一瞬、口ごもったミヤビにすかさず言った。

「ごめんね。断っておいて」

「そっかぁ。気が変わったらいつでも言って! 連絡待ってる!」

「うん、わかった」

でも……気が変わることなんて、きっとない。

アタシはまだ、出会いなんか欲しくないんだ。

電話を切ると、アタシはベッドの上に携帯を放り投げ、リビングへと戻った。

楽しい家族団らんの時間は、遅くまで続いた。

翌日、昼前にリビングへ行くと、ソファーでお父さんが新聞を読んでいた。

「おはよう。遅かったな」

「おはよー! 夜中にケータイ小説を読んでたら、朝になってた! 寝不足っ! アハハッ」

「アハハじゃないだろ。早く寝ないと体に悪いぞっ!」

……お父さんが、おはようと挨拶してくれた。

お父さんがアタシに小言を言った。

そんな当たり前のことが、とても嬉しい。

い糸destiny

お父さんがここにいるだけで、家中に幸せな空気が流れている──

「お父さんっ」

「ん? 何だ?」

「好きだよっ!!」

「──ッ……何言ってんだか……」

お父さんに笑いかけて、椅子に座った。

何事もなかったようにお父さんは新聞に目を戻したけど、口元だけが、恥ずかしそうに笑っている。

「芽衣! お父さんが帰ってきたんだから、しっかりご飯を食べなさいね! 心配かけたらだめよ!」

キッチンからお母さんの声がした。

そしてテーブルには、次々と朝食が乗せられていった。

「うー……こんなにいらないっ」

「だめだ! 育ち盛りなんだから、しっかり食べなさい」

ソファーからお父さんが檄を飛ばした。

「やだぁ……」

「やだじゃない! そんなに痩せて──。芽衣が倒れたら、父さんもまた病気にかかってしまいそうだ」

「縁起が悪いから、そんな冗談言わないでよぉ」

「冗談なんか言ってないぞ」

お父さんは新聞をソファーの横に置き、アタシの目をジッと見た。

赤い糸destiny 「母さんも、春菜も……みんな心配してるんだ。食事をとらないと体が弱っていくだけだぞ。これ以上、心配をかけさせないでくれ」

お父さんはそう言い、また新聞を手にした。

──アタシは並べられた料理を眺めた。

残してしまうのに、お母さんは毎日たくさんの料理を作ってくれる。

この前は、サプリメントを買ってきてくれた。

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