饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

第 24 页

作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15404 字 更新时间:2026-6-23 05:27

「あっ……」

美亜の手が何かに当たり、鈍い音がした。

近くにあったゴミ箱が、倒れて転がっていった。

「あっ! ごめんねっ。本当にごめん……」

「いーよ、いーよ」

こぼれた紙屑やティッシュを、ふたりで拾った。

美亜はしょんぼりとして、気まずそうに笑う。

「あたしって……吉岡って女に比べて、そんなに魅力ない女?」

「え?」

赤い糸destiny 「あたしはミツと仲良しだと思ってた。ミツに愛されてて幸せだと思ってたんだよ。馬鹿な女だよね」

美亜は紙屑をひとつひとつゴミ箱に戻しながら言った。

アタシはゴミを手に持ったまま、固まってしまった。

「美亜……。そんなことないよ! アタシは美亜が馬鹿だなんて思わないし、馬鹿なのはミツだよ!」

コロン──

「──あっ!!」

そのとき、アタシの手につままれていたティッシュから、白い錠剤がこぼれ落ちた。

やばい。昨日捨てたタマだ。

アタシはタマを拾おうと、急いで手を伸ばした。

「……あれ? これ、サプリメント?」

アタシが掴むより先に、タマは美亜が拾い上げた。

背中から変な汗が流れるような感覚がして、タマだとばれてもいないのに、アタシは必死に言い訳を始めた。

「あー、これ、よくわかんないんだけどねっ。なんか、ミヤビの友だちの……あ、ミヤビってうちのクラスのあのミヤビなんだけど……」

「……うん。なんか芽衣、テンパってない?」

「んとね、なんかね……」

赤い糸destiny どうしよう。

頭の中が、混乱していった。

明らかに動揺するアタシを見て、美亜は不思議そうな顔をしている。

「間違って持ってきちゃったんだ……」

「うん。──で、これ何?」

「あのさ……。エクスタシーってクスリ、知ってる?」

「──え!! マジで!?」

美亜はアタシの言葉を聞き、驚きながら手のひらの錠剤を見つめた。

昨日の嫌な光景が頭に広がった。

「昨日ね、ミヤビに男の子を紹介されたの。変なバーに連れてかれて、これ飲まされそうになって……逃げてきたんだ。そのとき、間違って持ってきちゃったんだよね」

美亜はタマを見つめたまま、ボソッと言った。

「使いたいとかゆう訳じゃないけど……。これって、使うとどんなことになるのかな?」

「えっと、確かね……」

昨日の愁たちの言葉をそのまま伝えた。

美亜は話を聞き、コクンコクンとうなずいた。

赤い糸destiny そして、手のひらの小さな錠剤を触ったり、臭いをかいでみたりしていた。

「……もう捨てない?」

美亜の姿に、少しだけ嫌な予感が走った。

アタシは美亜の手のひらからタマを取り上げた。

「あっ……」

「心のサプリとか言ってたけど、そんなの嘘に決まってるじゃんねぇ。クスリとか怖いよね!」

「う、うん……」

ポンッ──

苦笑いをしながらゴミ箱にタマを投げ込んだ。

美亜は一瞬だけゴミ箱を見つめた後、またアタシに向き直った。

しばらく経つと、アタシはタマのことなんて忘れていた。

ミツと美亜のことで頭がいっぱいで、ただ美亜の話を聞き続ける。

?~?~?~

「あっ! 家電が鳴ってるから出てくるね!」

電話の着信音が聞こえ、アタシは部屋を出てリビングに向かった。

部屋に残された美亜は、暇そうにタバコに火をつけた。

「あーあ、ラスト1本だよぉ……。買いに行かなくちゃ」

空になったタバコの箱を潰し、美亜はゴミ箱を手元に引き寄せる。

赤い糸destiny 「あっ……」

何かを思い出したようにゴミ箱を覗き込んだ。

タバコの箱を床に置き、ゴミ箱の中へ手を伸ばす美亜。

……まるで、何かに取り憑かれたようだった。

チラッ──

美亜はキョロキョロと視線を動かし、まだ芽衣が戻らないことを確認した。

そして、紙屑を掻き分け、目当ての物を探し始めた。

「別に……やりたいわけじゃないけど、捨てるならね」

小声で言い訳を呟き、美亜はゴミ箱から手を出す。

その日焼けした指先には……、さっき捨てたタマがあった。

「美亜ー! 遅くなってごめんね」

ビクッ──

「だ、大丈夫!」

戻ってきた芽衣にばれないよう、美亜はタマをポケットに詰め込んだ。

美亜の心臓はバクバクと鳴り、指先が震え始めていた。

「タバコなくなったし、そろそろ帰るね!」

焦ったようにそう言うと、美亜は荷物をまとめ始めた。

赤い糸destiny 何も知らない芽衣は、心配そうに美亜を見つめて言った。

「そっか……。ひとりで大丈夫? また後で電話するね」

「うん、平気。電話待ってるね」

美亜は荷物を持ち、足早に家から出て行った。

ポケットには、タマを忍ばせたまま──

美亜が帰った後、アタシは出かける用意をしていた。

……吉岡サンに話を聞きたい。

少ししか一緒に働いてなかったけど、人の彼氏を取るようなことをする人じゃなかった。

余計なお世話かもしれないけどアタシはこの話の真実が知りたいよ──

吉岡サンのバイトが終わる時間を見計らい、ガソリンスタンドに向かった。

スタンドに近づくにつれ、緊張が高まる。

……ここに来るのは久しぶり。

たかチャンに告白された日以来だ。

今日もたかチャンはバイトなのかな?

できれば会いたくないよ──

告白以来、たかチャンからは数回電話とメールがきていた。

〈困らせてごめん〉

そういう内容のメール。

たかチャンの気持ちと優しさに胸が痛み、一度も電話に出れず、返信もできないままだった。

赤い糸destiny 悲しい過去

時計を見ると、針は吉岡サンのバイトが終わる時間をさしている。

……行こうかな。

アタシは一度深呼吸をした。

そして、目の前のスタンドに向かって歩き出した──

今日のスタンドは混んでいて、車の合間をぬって吉岡サンを探した。

「あっ、芽衣チャン久しぶりだね! 高橋に会いに来たの?」

声の方を向くと、給油中の店長と目が合う。

家計のために働いていたことを知る店長は、お父さんが退院して辞めたアタシに優しくしてくれた。

店長に笑いかけ、首を横に振る。

「吉岡サンに会いに来たんですよ!」

「仲良くしてたんだ。弘子チャンはさっき上がって事務所にいるから。入っていいよ!」

「わかりました。お疲れ様です!」

店長に手を振り、事務所に向かった。

幸い、たかチャンはいないようだ。

ガチャ──

「お疲れ様でーす」

昔の癖で、声をかけながら事務所に入った。

そして、ドアの隙間から中を覗き込んだ。

「──ッ!」

そこには、吉岡サンの姿はない。

その代わりに、たかチャンの後ろ姿が見えた。

赤い糸destiny 入り口のドアに手をかけたまま、アタシは固まってしまった。

どうしよう……。

とりあえず外に戻ろうかな。

アタシがドアを閉めようとしたとき、

「……あれ?」

「あっ……」

たかチャンが振り返り、目が合ってしまった。

「なんで……ここにいんの?」

「あ、うん。吉岡サンに会いにきて……」

ぎこちない空気が流れる。

「弘子は今着替えてるから、もう来るよ。……最近どう?」

アタシは戸惑いながらも、その問いに答えた。

「うん、普通だよ」

「そっか……。良かったな」

たかチャンはそう言い、タバコをくわえた。

火をつけようとする横顔が、少しだけ寂しそうに見えた。

「電話出れなくてごめんね。ひどい態度取っちゃって……」

「そんなことねぇよ」

「だって……」

「アツシが好きって知られたくなかったからだろ? 俺を傷つけたくないから距離あけたのはわかってるからさ」

「たかチャン……」

たかチャンの言葉に胸が痛む。

赤い糸destiny 「アツシとはどう?」

「失恋したよっ。アハハッ……」

「そっかぁ……」

たかチャンは大きな手のひらをアタシの頭に乗せ、

クシャクシャ──

いつものように優しく撫でた。

「元気出せよ。好きなら彼女がいても諦めるな」

「たかチャン……」

「俺、店長に用事あるからもう行くな! じゃあまたな」

たかチャンは灰皿にタバコを押しつけ、事務所から出て行った。

「はぁ……」

ひとりになったアタシは、小さな溜め息をついた。

たかチャン……。

相変わらず優しかったなぁ。

あの手を取れれば、今ごろ幸せだったはず。

なんでアタシの気持ちは、叶わない恋を選んでしまうんだろう。

たかチャンよりアッくんを選んで苦しんで……。

──あれ?

そういえば、なんで?

アッくんや彼女の話を知ってるんだろう。

アタシ、たかチャンにそんな話してない。

アッくんが好きだなんて言ってないよ?

なんで知ってたんだろ。

優梨にも美亜にも海斗にも、言わないでって口止めしてる。

赤い糸destiny たかチャンが知ってるわけないのに……。

ガチャ──

更衣室のドアが開き、疲れた顔の吉岡サンが姿を現した。

「あっ……芽衣サン、久しぶりです」

「久しぶりっ……」

先に吉岡さんがアタシに気づき、笑顔で挨拶をしてきた。

そして、吉岡サンは事務所に置いてある大きな鞄を持ち上げた。

「──待って! そんなに重いのを持ったらダメだよっ!」

アタシは慌てて鞄を取り上げて抱えた。

中身はわからないけど、持ってみると、とても重い鞄だ。

妊娠してるのに、こんな物を持つなんて危ないよ。

「無理しちゃダメだよ……」

「えっ……なんで?」

吉岡サンは戸惑ったようにアタシを見つめた。

そういえば、とっさに動いちゃったけど、吉岡サンはまだ意味がわかってないよね?

「あ、あのさ、ミツの赤ちゃんがいるんでしょ?」

「ミッチャンか陸に妊娠の話を聞いたの?」

「ミッチャン? あ、ミツのこと? ふたりとも違うんだけどね……チョット話せないかな?」

……陸?

吉岡サン、なんでたかチャンを陸って呼ぶの?

陸って呼ぶ人は、ごく一部の友だちだけだ。

赤い糸destiny そういえば、たかチャンも吉岡サンを弘子って呼んでた。

……今日は気になることばかりだよ。

「芽衣サン、ここじゃ話しづらいから外に出ない? ミッチャンと陸以外は、妊娠のこと知らないの」

吉岡サンはそう言うと、気まずそうに笑った。

アタシは吉岡サンの鞄を持ち、事務所のドアを開いた。

「ごめんね。荷物持ってもらっちゃって……」

「大丈夫。友だちがちょっと前に子供産んだから、荷物持ちには慣れてるの」

「……ありがとう」

ミツの浮気相手でも、吉岡サンは妊婦だ。

無理はさせたくない。

ふたりはスタンドを出て、夜道を歩き始めた。

……少し歩くと、吉岡サンは急に足を止めた。

そして、右手にあるアパートを指差した。

「ここのアパート、屋上に行けるの。そこでいい?」

そのアパートは古びていて、入り口のライトがチカチカと点滅していた。

……なんでこんなところ? まるでお化け屋敷だ。

吉岡サンは歩き出し、慣れた様子でアパートの入り口をくぐる。

「ちょっと待って」

アタシも慌てて後を追った。

赤い糸destiny トン……トン……トン……

「なんでここなの?」

アパートの階段をのぼりながらアタシは尋ねた。

先を行く吉岡サンは、少しだけ振り返ってニコッと笑った。

「ここの302号室、あたしの家だったんだ」

「──えっ?」

「ミッチャンの家は301。……まぁ、ミッチャンのお祖父ちゃんが亡くなるまでだけどね。お父さんが後を継いで社長になったら引っ越しちゃったけど」

ミツのお祖父ちゃんは、小学生のときに亡くなったと聞いたことがある。

ふたりは、昔からの知り合いだったんだ。

ふと、悠哉の姿が頭に浮かんだ──

もしかして……あのふたりも?

トン……トン──

「着いたぁ……」

吉岡サンの足が止まり、目の前からはのぼり続けてきた急な階段が消えた。

その代わりに、小さな扉が見える。

ガチャ──

吉岡サンがドアノブを捻ると、キィーという音とともに扉が開かれた。

赤い糸destiny そこには、何もないアスファルトの地面が広がる。

「……全然、変わってないよ」

吉岡サンは、引き込まれるように屋上に出ていった。

その姿に声をかけることができず、アタシは無言で屋上に足を踏み入れた。

「ここでミッチャンとたくさん遊んだんだぁ。赤ちゃんのときから、ずっと一緒だったの」

吉岡サンは懐かしそうに笑ってまわりを見回す。

やっぱり、ミツと吉岡サンは、幼なじみなんだね。

「お腹、大丈夫? 階段のぼったし大変じゃなかった?」

吉岡サンは地面に座り、手を横に振った。

「大丈夫! そんなにヤワな体じゃないから」

「それなら良かった」

アタシも吉岡サンの横に座り込んだ。

美亜のことがあり、恨んでもいいはずの人なのに、なぜか吉岡サンは、恨むことができない人だった。

「話ってなんなの?」

「えっと……」

何も警戒していない吉岡サンに、思わず言葉が詰まる。

「もしかして……美亜サンのこと?」

「……」

心を読まれてしまったようで、アタシは黙ってしまった。

赤い糸destiny 「ミッチャンと美亜サンと芽衣サンは、同じ中学だって聞いてたから……」

アタシは小さくうなずく。

吉岡サンは空を仰ぎ、溜め息をついた。

「あたし、美亜サンに酷いことをした」

その横顔は、とても悲しそうで、人から彼氏を奪った女には見えない。

「ねぇ……。なんで美亜がいるのに……」

アタシは吉岡サンに尋ねた。

吉岡サンは上を向いたまま、口を開いた。

聞こえてきたのは、吉岡サンとミツの初恋の物語だった。

「あたしの父親……ミッチャンのお祖父ちゃんの会社に勤めてたの。ここは、その会社の社宅なんだけどね。物心がついたときから、あたしの隣にはいつもミッチャンがいた。あたしもミッチャンも、お互いが初恋だったんだ……。毎日楽しかった。ミッチャンと毎日遊んで、毎日一緒にいて──だけどそんな毎日は、小学6年のときに終わったの。ミッチャンのお祖父ちゃんが亡くなって、社長になったミッチャンのお父さんは家を買ったんだ。そして、このアパートを出ていった」

吉岡サンの目がうるみ……月明かりに照らされて、キラキラと光り出した。

赤い糸destiny 「ミッチャンとは小学校が一緒だったから、家が離れても毎日会えた。寂しかったけど、会えるだけで幸せだったの。でも、そんな幸せすら、すぐに消えていった。ミッチャンのお父さんが、あたしのお父さんを左遷したの。すごい田舎町の工場の主任に決まって、向かいの家に住んでて仲が良かったのに、経営者になったミッチャンのお父さんは冷たかった。まぁ、うちのお父さんがリストラされた部下のことを抗議したのが原因なんだけど。──そして、あたしたち一家は田舎町に引っ越したんだ。自然がいっぱいで、あたしはけっこう楽しかったよ。でも……お父さんは、ストレスが溜っていったみたい──精神的に……おかしくなっ──……ご、ごめんっ……」

吉岡サンの顔が歪み、目に浮かんでいた涙が、頬にツウッと流れた。

「……吉岡サン?」

「ごめんねっ……。なんか、思い出しちゃって──」

涙を流しながら、吉岡サンは苦笑いをした。

なんとなく先がわかってしまって……アタシは、胸が締めつけられた。

赤い糸destiny 吉岡サンは涙を拭い、話を続ける。

「それでね……お父さん、死んじゃったんだ。自殺しちゃった。うちは貯金もなくて、お父さんの死よりも先の生活で頭がいっぱいで……それからは貧しい生活を送ってきたの。つらかった。何度も死にたくなるほど……」

お父さんが自殺──

アタシのまわりでも、自殺は身近にあった出来事だった。

産みの母は自殺し、この世を去ったと聞いている。

沙良が自殺未遂をしたということもあったし、アタシ自身も経験があった。

でも──

寒気がして、腕にブツブツと鳥肌が立つ。

悲しすぎて、続きを聞くのが怖かった──

「貧乏で地味なあたしは、中学に入ったらいじめの対象になった。毎日が嫌で、涙が枯れる程に泣き続けたよ。──だけどね、そんなあたしをミッチャンだけが助けてくれたの。ミッチャンは毎日電話してくれて、負けるなよって励ましてくれた。ミッチャンがいなかったら、あたしは今……お父さんと同じように死んでたよ」

昔を思い出すように、吉岡サンは遠い目をした。

その瞳から涙は止まっているが、月明かりに照らされて、まだうるんでいた。

「吉岡サン……」

アタシは声をかけ、鞄からハンカチを取り出して渡した。

赤い糸destiny 「ありがとう……」

吉岡サンはそう言い、受け取ったハンカチで涙を拭いた。

「ずっと、ミッチャンが生きる希望だった。ミッチャンのことが大好きで、ミッチャンとの電話が唯一の幸せだったの。でも、中2の夏に、電話が繋がらなくなったんだ。ミッチャンの家の番号が変わったの。同時に、あたしの家も料金滞納で電話が使えなくなった。そして、音信不通に……」

そんな話って……、酷い。

酷すぎるよ──

「今までミッチャンを想って生きてきた。ずっとミッチャンに会いたかったの。そしたらこの春、いきなりあたしのお祖母ちゃんがボケたの。介護する人がいないお祖母ちゃんは、ひとりになってしまった。お祖母ちゃんはお母さんと仲が悪くて、困ったときも何も助けてくれなかった。だけどあたし、お母さんに頼んだの。お祖母ちゃんの介護をしようって。理由は……わかるよね? ひどい孫。だけど、ミッチャンに会いたかった──」

赤い糸destiny 美亜が出会う前から、吉岡サンはミツを想ってた。

そこまでしても、ミツに会いたかったんだね……。

美亜の気持ちもわかる。

だけど、初恋でそばにいてくれた人を想う気持ちもわかるよ……。

「それで戻ってきたら、ミツには美亜が……」

「……そう。ミッチャンには彼女がいたの。ミッチャンの家の前にいたら、可愛い女の子と手を繋いで帰ってきた。ショックだったよ。あたしのすべてが壊れてしまうくらい……。だけどね、あたしにはショックに浸る暇もなかった。働いて稼いで、お祖母ちゃんの介護もしなくちゃいけない。──そんなとき、あのスタンドの面接を受けて、陸に会った。陸と話し込んでいたら、いきなりバイクに乗ったミッチャンがスタンドに来たんだ。あたしとミッチャンの目が合ったとき──時間が止まったようにふたりで固まっちゃった。そしてこの日から、ミッチャンとは連絡を取るようになったの」

ミツとまた会えて良かったね……。

思わずそう思ってしまう。

アタシはどちらの味方なんだろう。

赤い糸destiny 「美亜サンのことも聞いてたし、最初は昔話をしていただけなの。だけどね……会ううちに、お互いの気持ちが高まっていって、止まらなくなっちゃった。ミッチャンが初めてのキスで初めての男性になったんだ。美亜サンのことは頭にあったけど、初恋が叶って嬉しかった。それだけで幸せだった。美亜サンと別れてほしいなんて望まない。あたしは2番目でも、ただそばにいれることが嬉しかったの。そしたらある日、生理が止まって、検査をしたら陽性で……。ミッチャンに言うと堕ろせって言われそうだったから、あたしはずっと隠そうと考えた」

吉岡サンはお腹を撫でた。

愛しい人の頬を撫でるように優しく──

「でも、ミツにはばれちゃったんだね」

「あたしひとりで産むから大丈夫って話したら、ミッチャンは美亜サンと別れたの。悪いと思ってる。美亜サンには悪いことをしてしまったよね。──だけどあたしはこの子を産みたい……」

?~?~?~

「あっ、電話が──」

タイミング悪くアタシの携帯が鳴り始めた。

赤い糸destiny 画面に表示される美亜の名前──

「ごめん、ジュースでも買ってくるね」

「うん……」

吉岡サンから離れ、アパートの階段を駆け降りた。

──外に出ると、アタシは美亜の携帯を鳴らした。

「もしもし?」

「何してるの?」

「あー、コンビニ向かってるところだよ」

アタシは罪悪感を感じながらも嘘をつく。

美亜には、こんな話できないよ……。

「そっかぁ。明日、スタンドにつき合ってくれない? 吉岡って女と話したいんだよね」

「えっ……」

「いい?」

吉岡サンと話す?

美亜はきっと、吉岡サンを責めるだろう。

それは……それは避けたい。

吉岡サンの気持ちもわかる今、思わず美亜を止めてしまった。

「吉岡サンはミツと幼なじみなんだって……」

「──は?」

「ずっとミツが好きだったらしいよ」

……アタシは今、どちらの肩も持てない。

そんなアタシに気づいたのか、美亜は声を荒げて叫んだ。

赤い糸destiny 「だから何!? あたしは吉岡って女を許せないの!」

携帯越しに、美亜のいら立ちが伝わってきた。

「美亜……」

「ねぇ!? なんか吉岡をかばってない!? あたしから彼氏を奪った女なんだよ!」

それはわかってる。

アタシだって、吉岡サンが、適当な気持ちでミツを寝取ったなら許せなかった。

──だけど違ったの。

吉岡サンはそうじゃない。

「美亜は何も悪くないし、ミツと吉岡サンが悪いってわかるけど……」

「じゃあなんで!? どうしてあたしが泣き寝入りしなきゃいけないのっ!?」

もう、どうしたらいいのか、わからなかった。

ねぇ、ミツ。

どうにかしてよ。

ミツの中途半端な行動で、こんなにもふたりが苦しんでる。

「もういい。芽衣は親友だと思ってたのに、最低だね」

「ねぇ、アタシは……」

「言いたくなかったけど、同じだもんね。だから吉岡をかばうんでしょ?」

「えっ……」

どういう意味?

美亜の冷たい言葉が、アタシの胸に突き刺さった──

赤い糸destiny 親友

「それって……どういう意味?」

「言葉通りだよ。芽衣も彼女がいる男が好きだもんね」

美亜の言葉には、冷たい棘があった。

「だから吉岡をかばうんでしょ? 人の男に手を出してるところが同じだから、気持ちがわかるんじゃないの?」

突き刺さった言葉が、さらに強く刺していく。

傷ついた心からは、悲しみや怒りやいろいろな感情が噴き出して──

「──ッ!」

思わず言葉になってしまわないよう、アタシは口を押さえた。

まさか美亜がそんなことを言うなんて、思わなかったよ。

「あたしがどれだけミツを好きだったか知ってるでしょ!? ──なのに吉岡をかばうなんて、そうとしか思えないじゃん。もういいから」

「み、美亜っ!? ちょっと待っ──」

プツッ──プー……プー……プー……

美亜の声が聞こえなくなり、代わりに機械音が聞こえてきた。

「……はぁ」

頭を抱えてしゃがみ込み、やり場のない気持ちに耐えた。

赤い糸destiny 胸は、今もズキズキと痛み続けていた。

だけど──

美亜に言われた言葉は、当たっているのかもしれない。

もしもアッくんに誘われたら、アタシはきっと、断れないだろう──

それからすぐに、吉岡サンを家まで送りとどけた。

ひとりになると、すぐに美亜の携帯を鳴らしたが、何度鳴らしても出なかった。

はぁ……また明日かけてみよう。

パチン──

アタシは携帯を閉じ、やり場のない気持ちを胸にしまった。

翌日──

?~?~?~

携帯の着信音が部屋に響き、アタシの目を覚まさせた。

──着信は優梨からだった。

アタシはまだ、優梨に謝っていない。

やつ当たりをして、傷つけてしまったままだ。

「もしもし! 昨日はごめんねっ──」

アタシは電話に出ると、すぐに謝罪の言葉を口にする。

電話なのに、思わず頭も下げてしまった。

「ううん、気にしなくていいよっ。あたしこそごめんね。芽衣の気持ちを考えてなかったよね……」

赤い糸destiny 胸は、今もズキズキと痛み続けていた。

だけど──

美亜に言われた言葉は、当たっているのかもしれない。

もしもアッくんに誘われたら、アタシはきっと、断れないだろう──

それからすぐに、吉岡サンを家まで送りとどけた。

ひとりになると、すぐに美亜の携帯を鳴らしたが、何度鳴らしても出なかった。

はぁ……また明日かけてみよう。

パチン──

アタシは携帯を閉じ、やり場のない気持ちを胸にしまった。

翌日──

?~?~?~

携帯の着信音が部屋に響き、アタシの目を覚まさせた。

──着信は優梨からだった。

アタシはまだ、優梨に謝っていない。

やつ当たりをして、傷つけてしまったままだ。

「もしもし! 昨日はごめんねっ──」

アタシは電話に出ると、すぐに謝罪の言葉を口にする。

電話なのに、思わず頭も下げてしまった。

「ううん、気にしなくていいよっ。あたしこそごめんね。芽衣の気持ちを考えてなかったよね……」

赤い糸destiny 話し終わった後、ふたりは自分の本音と美亜の気持ちで、板挟みになった気分だった。

「嘘でも、吉岡サンを悪く言えば良かったのかな……」

「あたしも……」

親友にわかってもらえなかったと感じている美亜。

美亜は今、何を思っているのだろう。

美亜、ごめんね──

あっという間に、一週間が経った。

美亜には毎日電話をしているが、いっこうに繋がらないまま。

……何してるの?

とりあえず出て!

アタシや優梨の心配は、ピークに達していた。

耐えきれずに美亜の家に行ったが、一度も会わせてもらえない。

「会いたくないって言ってるから……」

美亜の母親にそう言われ、帰るように頼まれるばかりだった。

……もう、どうしたらいいのかわからない。

とにかく美亜と、しっかり話したい。

アタシは毎日美亜の携帯を鳴らし、返事のこないメールを送り続ける。

赤い糸destiny 気づけば、夏休みも残り半分をきっていた。

「んーっ……」

今日は、昼間からベッドの上に寝転んでいた。

予定もやることもない。

ケータイ小説でも読もうかなぁ。

携帯を手に取り、お気に入りの小説を読み始めた。

──美亜と連絡がつかなくなってから、もう半月以上経つ。

心配も、ここまで時間が経つと通りこした。

毎日美亜が気になるのは変わらないけれど……。

中学のときからこの前まで、美亜とは毎日のように一緒に過ごしていた。

優梨に子供ができてからは特にそう。

暇なときは、ふたりでいつもくだらない話をして笑いあっていたんだ。

「美亜。いいかげん、電話に出てよ……」

ポツンと独り言を呟く。

?~?~?~

携帯が鳴り、小説の画面が消えて着信画面になった。

「──ッ!!」

画面を見た瞬間、体が震えてしまった。

そこに表示される名前から目を離せない。

赤い糸destiny なんで……。

どうしてあなたが?

携帯を握った手から、汗が滲み出てきた。

ドクン……ドクン……ドクドク──

鼓動が大きくなり、どんどん早く鳴り始めた。

~?~?~

アタシが迷う間も、携帯からは流行りのドラマの主題歌が流れて続けた。

出る?

無視する?

ふたつの選択に頭を悩ませた。

~?~?~

このままだと切れてしまう……。

そう思った瞬間──

アタシの指は、ゆっくりと通話ボタンを押していた。

「は、はい」

心臓が激しく動くせいで、腕も声もすべてが震えている。

「アツシだけど……」

久しぶりに聞く声に、ギュッと胸が締めつけられた。

「うん……。久しぶりだね」

「そうだな」

「……うん」

アッくんの声が、アタシの体にしみ渡っていくよ。

ずっと、あなたの声が聞きたかった。

……だけどどうして?

麻美チャンのことが、頭をよぎる──

赤い糸destiny 「今日はどうしたの? 麻美チャンが知ったら……」

声が聞けて、本当に嬉しかった。

だけど、麻美チャンのことを考えると、素直に喜べない。

アタシたちが話したって知ったら、麻美チャンをまた傷つけてしまう──

「あの……実は……」

「うん」

「あのな……」

アッくんはアタシの問いに口ごもり、言葉を濁した。

ふたりの間に、小さな沈黙が流れる──

それは、たった数秒なのにとても長く感じた。

アタシは、沈黙に息が苦しくなって……。

「どうしたの?」

言葉の続きを急かすように言った。

そして、アッくんからの答えを待った。

「オレ……。麻美と別れたんだ」

「えっ? 嘘──」

アタシの頭の中が、真っ白になる。

そんな答えは想像もしていなかった。

呆然とするアタシに気づかないで、アッくんは言葉を続ける。

「本当だよ。別れようって話してたのは、けっこう前からなんだけどな。さっき、話し合って別れてきた」

真っ白になった頭の中に、いろいろな感情が生まれてきた──

赤い糸destiny 悲しさと嬉しさ。白と黒のような、正反対の気持ちが心を占めていく──

「なんで? 麻美チャンはアッくんが大好きなのに」

「だから別れた」

「意味がわかんない」

「オレは、麻美を大好きにはなれないから。……好きになろうと努力したけど、無理だったんだ」

ドクドクドク──

アッくんの言葉を聞けば聞くほど、鼓動は強まった。

アタシの心臓は、壊れてしまいそうなくらいのスピードで動き続ける。

「麻美チャンはわかってくれたの?」

「……たぶんな」

アッくんの言葉は曖昧で……。

別れを切り出された麻美の様子が瞼に浮かぶ。

きっとつらかっただろうな。

そう思うと、同じ女として胸が痛んだ。

だけど、嬉しさも隠せない。

──もう、無理してアッくんを諦めなくていいんだ。

アタシの閉ざされた未来が開かれていく。

「なんか、いろいろ迷惑もかけたみたいだな。駅前のマックで話したって聞いたよ。ごめんな」

「ううん、大丈夫」

「またみんなで遊ぼうな。麻美とつき合ってたときはみんなで遊べなかったし……」

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