饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

第 25 页

作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15384 字 更新时间:2026-6-23 05:27

赤い糸destiny アッくんからの誘いに、心の底から嬉しさが込み上げた。

また会える。

大好きなアッくんに、また会えるんだ……。

今ごろ、幸せなアタシの影で麻美チャンは苦しんでいる。

麻美チャンの気持ちを知ってるのに、別れを喜んでしまうなんて。

きっとアタシは酷い女だね。

それはわかっているけど、嬉しいの。

酷い女になっても、会いたいんだ。

アタシの口から出るのは、本音の気持ち──

「うん、遊ぼうね」

誘いを明るく受けた言葉だった。

「あさってナツが帰ってくるんだ。そのときにしないか?」

「うん」

「じゃあ、また明日連絡するよ」

「じゃあまた明日ね。バイバイ」

「『明日連絡する』……だって。まだ信じられないっ」

独り言を呟き、アタシは目の前にあった枕を抱き締める。

……アッくんとこうして電話をしたり、あさって会えるなんて今も信じられないよ。

麻美への罪悪感もあって、素直には喜べないけど、あさってが楽しみで仕方なかった。

電話に出て、本当に良かった──

赤い糸destiny 翌日、アタシは、優梨の家を訪ねた。

「いらっしゃい! アッくんのこと、良かったね!」

「知ってるの?」

「うん! まぁ、あがってよ」

玄関先で、さっそくからかわれてしまった。

優梨はすでに話を聞いているようだ。

「ナツから連絡がきて、ビックリしたよー。まさか麻美チャンと別れたとはねぇ……」

優梨はリビングの扉を開き、ソファーに座った。

「ダァ……ダァ」

カーペットの上では、梨夏が楽しそうにおもちゃで遊んでいた。

アタシもソファーに腰を下ろし、優梨に問いかけた。

「優梨は麻美チャンから聞いてなかったの?」

「んー、あたしには言いづらかったんじゃない? 別れた理由聞いた?」

「ううん」

アタシは首を横に振った。

そんなに話してないし、大好きになれなかったことしか知らないけど……。

「なんかね、心臓の病気って嘘だったらしいんだよね」

「ええっ!?」

優梨はそう言い、顔をしかめた。

……嘘?

まさかそんな──

優梨の言葉が信じられない。

赤い糸destiny 「どういうことなの?」

アタシは優梨に問いかけた。

わけがわからなくて、頭の中が混乱していく。

「高1の始めごろ、麻美がアッくんに一目惚れして告白したの。アッくんは断ったんだけど、試しに1カ月だけつき合ってって麻美が説得して……強引につき合い始めたんだよね。だけど、やっぱり1カ月後に別れ話になったんだ。──そしたら麻美、あたしは心臓が悪くていつ死ぬかわからないんだって泣いたらしいの。それでアッくんは別れられなくて……」

心臓病って、別れたくなくてついた嘘だったの?

アタシはそんな嘘を信じて苦しんでいたなんて。

……麻美チャンが許せないよ。

「酷い。そんなの酷いよ」

胸の中が怒りと悲しみでいっぱいになる。

簡単に病気を使って男を引きとめるなんて卑怯だよ。

そんな嘘、最低じゃん──

「そうだよね。あたしもいっぱい心配したし、騙されてショックだった。でも、気持ちはわかるんだ。好きだから、嘘をついてまで離れたくなかったんだよ。嘘をつき続けた麻美も、すごくつらかったと思うよ」

赤い糸destiny 優梨はアタシを諭すように言う。

今まで悩んで苦しんだことが悔しいよ。

アタシは拳を強く握り締め、やり場のない怒りを抑えた。

「あたしの妊娠がわかったとき、麻美がカラオケに来たでしょ? あの少し前のことだったらしいんだ」

そういえばあの日、あのふたりはひさびさに会ったと言っていた。

あのときに嘘だと気づいていたら、こんなことにはならなかったのかもしれない。

みんなが傷つくこともなかっただろう。

「それ以来、嘘をつき通してたみたい。アッくんに愛されたくても愛されなくて、情緒不安定になってメンタルクリニックに行ってたらしいよ。それで、芽衣とアッくんが再会しちゃって余計に精神的におかしくなったんだって。入院してたのは、睡眠導入剤の飲みすぎ。麻美の両親も、アッくんと別れたらまた自殺未遂をしそうで怖かったから嘘に合わせたって聞いたよ」

麻美チャンの気持ちはわかる。

でも、納得はいかない。

「なんでわかったの?」

「それがね……アッくんが偶然麻美の日記を見ちゃったらしいの。すぐにナツに電話がきてさぁ」

赤い糸destiny 「それで、アッくんが別れを切り出したんだ」

「うん。別れ話は詳しく聞いてないけどね」

「そっかぁ」

話を聞くと、気持ちは怒りから憐れみに変わってきた。

麻美は可哀想な女の子。

嘘をつかないと好きな人を引き留められないなんて……

悲しすぎるね。

「1年以上もつき合ってたから、すっごく好きになってたと思うし。きっと今はつらいよね。──あのときに嘘つかないで別れてたら、今よりずっと楽だったと思う」

そうだね。

アタシもそう思うよ。

罪悪感はあっただろうし、苦しかったと思う。

「美亜も今ごろ、きっと苦しんでるよね。連絡とれた?」

「ううん、取れないままだよ」

「そっか……」

美亜もミツを失って、今はすごく苦しんでいるだろう。

吉岡サンにミツを奪われたと思って、きっと毎日がつらいはず。

──恋って悲しいね。

実る恋より、実らない恋の方が多い気がする。

「優梨はいいな。幸せそうだから……」

「そうだよね。ナツと梨夏がいて、これって幸せな状況なんだよね」

赤い糸destiny 優梨はそう言い、立ち上がって梨夏を抱いた。

「ダァ」

嬉しそうに笑う梨夏に、優梨は目を細めて微笑む。

アタシはこんなふうに幸せになれるのかな?

胸が切なくて、やりきれない気持ちになった──

その夜──

帰宅した後も、心はずっとモヤモヤしたままだ。

「はぁ……」

溜め息をつき、携帯を眺める。

まだアッくんからの電話はかかってこない。

優梨から聞いた話が、頭の中でグルグルと回っていた。

麻美チャンの愛情は歪んでいたけど、それくらい本当に愛してるんだろう。

その気持ちを考えると、アッくんに会うことを躊躇してしまう自分もいた。

明日は約束の日だっていうのに、アタシの中には、消せない迷いがあった。

?~?~?~

「あっ……」

きっとアッくんだ。

鳴り始めた携帯を開くと、予想通りにアッくんの名前が出ている。

「もしもし」

「オレだけど、明日は何時くらいに待ち合わせる? ナツは昼過ぎなら大丈夫らしいよ!」

「んー、どうしよっか」

赤い糸destiny 会えることは嬉しいけど、やっぱり麻美チャンのことが引っかかる。

こんな複雑な気持ちで、明日アッくんに会うなんて。

「明日は……えっと……」

答えに困ってしまい、曖昧な返事しかできなかった。

「もしかして、用事が入ったのか?」

「えっ……ううん。そういうわけじゃないんだけどね」

アッくんはアタシが戸惑っていると気づいたようだ。

それが麻美チャンのことだとはわかってないみたいだけど……。

「あのさ……何かあるならまた今度にするか?」

「えっ──」

どうしよう……。

迷いはあるけどアッくんに会いたい気持ちでいっぱいだ。

「やめとく?」

「……」

「やっぱり明日はやめ──」

「待って!」

アタシは慌ててアッくんの言葉を遮った。

明日会わなかったら、次はいつ会えるかわからない。

そう思うと……、

「明日の11時に待ち合わせしない?」

口からは約束の言葉が出る。

麻美チャンには悪いけどアタシはアッくんに会いたい。

アタシだって、アッくんが大好きなんだ。

赤い糸destiny 「大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

「じゃあ、明日迎えに行くから……」

これで明日の約束は成立した。

アタシの選択は間違っているのかな?

……ううん。

アタシは会いたいんだ。

アッくんに会わなかったら後悔する。

「明日、楽しみだね」

「そうだな。みんなで集まるなんて、本当にひさびさだもんな」

「うん」

アッくんが嬉しそうに笑うと、アタシもつられて笑ってしまった。

こういう雰囲気、懐かしいな。

ふたりで笑い合うなんて何年ぶりだろう。

──電話を切った後、すぐにクローゼットを開いて、明日着る服を選んだ。

アッくんの好きなゆる巻きの髪に合わせて、可愛くて女の子らしい服を着たいけど……。

クローゼットに入っている服をベッドに広げていった。

「うーん……」

なかなか服が決まらない。

最近はお洒落をする機会がなかったから、明日のデートで着たいと思える服なんてクローゼットには入っていなかった。

今日、買いに行けば良かったなぁ。

ベッドの上に乗せた服を眺めながらため息をつく。

赤い糸destiny んー、仕方ないっ──

部屋を出て、春菜の部屋のドアを叩いた。

「お姉ちゃん、入るよーっ!」

「いいよっ」

中から明るい春菜の声が聞こえる。

ドアを開くと、春菜が部屋の中でチョコを食べていた。

「どうしたの?」

「んっとね、お願いがあって」

「どうしたの? ……こっちに来て座りなよ」

チョコをつまみながら手招きする春菜。

その隣にチョコンと座り、手を合わせた。

「お願いっ! 可愛い系の服を貸してっ」

「えっ? 貸すのはいいけど……。芽衣って可愛い系の服はあんまり好きじゃないよね? ──もしかして、デート!?」

ニヤッと笑う春菜に見つめられ、アタシの顔は赤く染まった。

赤くなったアタシの反応を見て、春菜はからかうように笑った。

「アハハッ、当たりだぁ! 芽衣がデートなんて久しぶりだね! 相手は誰? 高校の人とか?」

もうっ。

こうなるのがわかってたから、お姉ちゃんにはあんまり借りたくなかったんだよね。

からかわれるのって、恥ずかしいよ。

赤い糸destiny アタシは赤く染まった頬をパチパチと叩く。

「デートってわけじゃないんだけどね。アッくんと優梨カップルと4人で遊びに行くんだ」

「そうなの? アッくんの彼女は?」

「別れたんだって」

「やったじゃん!」

春菜はアタシの背中を叩き、自分のことのように嬉しそうに笑った。

やったじゃん! ……かぁ。

そうなのかな?

少し眉をひそめ、笑顔の春菜に言う。

「彼女も知ってるし、素直に喜べないっていうか……」

アタシの曇った顔を見て、春菜はキッパリと答えた。

「喜ぶっていうか、別れてるんだから気を遣うのもおかしくない? そんなの気にしてたら、恋なんてできないでしょ?」

「微妙なところだよぉ……振られた彼女の気持ちを考えちゃうし。原因にアタシのこともあるみたいだしさぁ」

そう言いながら春菜のチョコをひと粒つまむ。

口に入れると、甘くてほろ苦い味が広がった。

まるで、今のアタシの気持ちのよう──

「人間、いつ死ぬかわかんないんだから。気を遣って恋に臆病になってたら後悔するよ!」

「……そうかな?」

赤い糸destiny 春菜は少し気まずそうな顔をして、言葉を続けた。

「これは言わないつもりだったけど……。昔、悠哉のこと好きだったでしょ?」

「え、ええっ?」

なんでいきなり!?

突然の春菜からの問いに、思わず口からチョコが吹き出そうになる。

驚きながら、ティッシュで口を拭った。

「あたし、悠哉とつき合ってすぐに気づいたんだ。芽衣にすごく避けられてるし……。それがつらくて、悠哉と別れて芽衣を応援しようかなって何度も考えたんだよ。でも──あたしにはできなかった。大好きな妹を傷つけても、悠哉と離れたくなかったんだ」

「お姉ちゃん……」

「芽衣、ごめんね──」

春菜はそう言うと、小さく頭を下げる。

あのころお姉ちゃんは、アタシの気持ちを知ってたんだ。

それに、そんなことを考えていたなんて──

「ううん、謝らないで。それで良かったんだよ。今は、悠哉とお姉ちゃんがラブラブで嬉しいもん」

春菜の口にもチョコを運ぶ。

ふたりは目を合わせ、小さく微笑み合った。

赤い糸destiny 「芽衣、ありがとね」

「ううん」

悠哉に恋していたころかぁ……。

懐かしいな。

あのときはつらかったけど、今はもう過去の笑い話になっていた。

悠哉以上に愛せる人はいないと思ってたくさん泣いたけど、4年経った今は、いい初恋の思い出になっているよ。

「ねぇ、芽衣。なんで今この話をしたのって思った?」

「あっ。そういえばそうだね」

「あたしはね、好きな人に彼女ができたり振られたりしても、時間が経てば先に進めるって言いたかったんだ。アッくんの元カノも、今はつらくてもきっとまた新しい恋ができるよ。今回の恋を経験にして、もっといい恋できるんじゃないかな?」

……そうなのかな?

でも、アタシも時間とともに悠哉を忘れることができた。

「失恋したことがない人なんて、ほとんどいないよ。みんなそれを乗り越えて成長して、前回以上の素敵な恋をしていくんだよ」

春菜の話には、妙に説得力がある。

アタシより2年長く生きてる分、いろいろな体験があったんだろうな。

赤い糸destiny 「相談に乗ってくれてありがとう。モヤモヤしていた気持ちの整理がつけられそうだよ!」

その言葉を聞き、春菜はホッとしたように笑った。

「良かった! アッくんとうまくいくかはわかんないけど、気持ちを抑えて後悔しないようにね。昨日買ったワンピ貸してあげるから楽しんでおいで」

春菜は立ち上がり、部屋の隅にあったショップの袋からワンピースを取り出す。

それは、少しだけ胸元が開いた真っ白なワンピだった。

「マジ可愛いっ!」

「でしょ? 今月の雑誌見て、即買いに行きましたっ」

これを着てアッくんと会っている光景が頭に浮かび、思わず照れ笑いをしてしまった。

……お姉ちゃんに話して、本当に良かった。

アタシはアッくんが好きなんだから素直になろう。

いつかきっと、勇気を出して、この気持ちを伝えられたらいいな──

部屋に戻ると、ワンピースに合いそうな鞄を探した。

そして、荷物を詰め始めた。

……財布でしょ?

鏡とグロスでしょ?

ティッシュってどっかにあったっけ?

赤い糸destiny 普段はポケットティッシュなんか持ち歩かないけど、明日は特別な日だ。

何かあったときにサッと出せると、女の子らしいよね?

あ、あと、ハンカチもアイロンかけなくちゃ!

「あーっ! やることがいっぱいだよ」

まるで、遠足の前夜のようだ。

慌ただしく動き回り、用意を進めた。

「げっ……。もうこんな時間」

すべて終わるころには、夜の0時を回っていた。

……やばい。

寝なくちゃ!

久しぶりの再会なのに、寝不足でクマなんかできちゃったら最悪だよ。

唇に保湿パックをつけ、部屋の電気を消す。

そして、急いでベッドに入った。

……やり忘れたことはないよね?

ベッドに入っても頭の中は明日のことでいっぱいだ。

なかなか眠れそうにない。

もぉっ……早く寝なきゃ。

アタシはギュッと瞼を閉じ続けた──

?…?…?…

翌朝──

携帯のアラームが、大音量で鳴り響いている。

「う、うぅん……眠い……──あっ!!」

もう朝だっ!

いつもは寝起きが悪いアタシも、今日は勢いよく起き上がれた。

赤い糸destiny 高まる気持ち

時計を見ると、朝の9時ちょうどだった。

これから用意をすれば、11時には間に合う計算になっている。

シャワーを浴びて……髪をゆるく巻いて。

念入りにファンデーションをはたく。

今日はギャルメイクじゃなくて、ワンピに合わせて清楚なメイクにしよっと。

そう思い、目元に淡いピンクのアイシャドーを塗った。

マスカラもしっかりつけて、口紅を引いた唇の上にグロスを重ねる。

「できたぁ!!」

余裕を持って準備したのが良かったのか、10時半にはすべての用意が完了した。

後はアッくんのお迎えを待つだけだ。

鏡の前に立ち、全身をくまなくチェックする。

いつもと違うメイク。

そして、いつもと違うファッション。

鏡の中には、いつものアタシじゃない自分が立っていた。

……アッくんは今日のアタシを見て、どう思ってくれるんだろ?

可愛いって思ってくれるかな?

──そう思うと、胸がドキドキしてしまう。

早くアッくんに会いたいよ。

約束の時間までの30分間が、今のアタシにはとても長く感じた。

赤い糸destiny ?~?~?~

約束の時間の5分前──

携帯が鳴り始めた。

アッくんが着いたのかなぁ?

「はぁい! もう用意できてるよ!」

楽しみな気持ちを隠しきれず、自然と声が明るくなった。

やっと会える──

会える嬉しさで、胸がいっぱいになっていった。

だけど……。

「芽衣? ほんっとごめん!!」

携帯から聞こえてきたのは、予想もしてなかったアッくんのひと言。

ごめんって?

どういう意味?

「マジごめん! 急用ができて……。なるべく早く合流するつもりだけど、もしかしたら行けないかも──」

嘘……。

会えないの?

雲の上にフワフワと浮いているような幸せから、ストンと地上に落ちてしまったような感覚がした。

「そうなんだ……」

「本当にごめんな」

「ううん、平気」

アタシはベッドに座り込み、膝を抱えた。

「……じゃあ、また今度にしない? 優梨とナツくんは久しぶりに会うんだから、アッくんが来ないなら家族水入らずの方がいいんじゃないのかな?」

赤い糸destiny それもあるけど、アッくんと会えなくなって、気が抜けてしまった。

外に出る気力もなくなり、お洒落をしている自分が虚しく見える。

「そうかな。オレが誘ったのに、本当にごめん。早く終わったら連絡するから──」

はぁ……。

思わず溜め息が漏れた。

会いたかったのにな。

これからはいつでも会えるんだろうけど、期待していた分、ショックが大きいよ──

電話を切ると、アタシはワンピを脱いで部屋着に着替え、優梨に電話をかけた。

「今日、アッくんがダメになっちゃったみたい」

どうしても声が沈んでしまう。

「あー……今、ナツにも電話がきてたよ。なんか病院行くとか言ってたけど」

「……え? どっか悪いの!?」

「ううん、お見舞いだって」

「ビックリした──」

一瞬アッくんの体調が悪いのかと思い、胸がドキッとしてしまった。

赤い糸destiny お父さんのことがあって以来、病気という言葉には敏感になっている。

「残念だったよね。今日はなしになったんでしょ?」

「うん……。みんなで遊びたかったなぁ」

思わず本音が漏れた。

お見舞いなら仕方ないってわかるけど……。

「また近いうちに集まろうね」

「うん、そうだね。じゃあまたね」

「はぁい」

アタシは電話を切ると、リビングに向かった。

今はひとりでいたくないよ……。

リビングに入ると、キッチンで洗い物をしていたお母さんが、話しかけてきた。

「あら? 出かけるんじゃなかったの?」

「なくなったのー……はぁ」

お母さんに答え、髪が乱れるのも気にせずソファーに寝転がる。

……つまんないな。

テレビのリモコンを持ってチャンネルを回してみるが、この時間は面白そうな番組もやっていなかった。

「もぉっ……夏休みだからってゴロゴロしてないの。暇なら自分の部屋の掃除でもしたら?」

「えーっ。いいよ、キレイだし」

「あれがキレイなの? 飲みかけのペットボトルとか、出しっぱなしの教科書とかも?」

お母さんの小言が飛んできた。

赤い糸destiny アタシは聞こえないフリをして、つまらないテレビ番組をボーッと眺めた。

アタシ……本当にアッくんが好きなんだな。

ドタキャンされただけで、こんなにも気分が落ち込んでしまうなんて。

「芽衣ー。今から掃除機かけるから、そこどいてて!」

洗い物を終えたお母さんが、掃除機を引きずりながらリビングに来た。

「えーっ」

「ソファーも拭きたいの! 早く早く!」

お母さんに急かされ、アタシはだるい体を起こしてソファーから下りる。

居場所ないなぁ……。

アタシはしぶしぶ、部屋に戻った。

──グチャグチャになった机の上が目につく。

言われてみれば汚い自分の部屋。

……やることもないから、掃除でもしよっかな。

気分も紛れそうだし。

そう思い、アタシはコンビニ袋を掴んで部屋の掃除を始めた。

ポイッ──

ガサッ──

机の上を片づけていると、だんだん気分がのってきた。

棚もクローゼットも、すべてをキレイに整頓したくなってきた。

もともと、やり始めたらとことんやるのが好きなタイプ。

気がつけば、アタシは掃除に熱中していた。

赤い糸destiny 夕方──

「終わったぁ!」

コンビニ袋5個分のゴミを捨て、アタシの部屋はキレイに生まれ変わった。

どこを見ても完璧にキレイ!

部屋には塵ひとつ落ちていない。

気持ちのいい汗を拭い、アタシはリビングに戻った。

「お母さん、掃除終わったぁ!」

リビングにいるお母さんは、コーヒーを飲みながらアタシに微笑む。

「やればできるじゃないの! たまには掃除しないと」

「そうだねぇ」

アタシも冷蔵庫から冷えたコーラを出して、ポンッとソファーに座った。

部屋がキレイになったことで、気分も晴れている。

お母さんと並んでテレビを眺めた。

「最近、怖いニュースが多いねぇ」

「そうね。気をつけなきゃ」

そんな日常会話を交しているとき──

?~?~?~

アタシの部屋から、携帯の着信音が聞こえ始めた。

アタシは立ち上がって、小走りで部屋に戻った。

?~?~?~

「ちょっと待ってね……」

独り言を呟きながら机の上の携帯に手を伸ばした。

折りたたまれた携帯を開くと、そこにはアッくんの名前が表示されていた。

赤い糸destiny 「もしもし?」

「今日は本当にごめんな!」

アッくんは挨拶もせず第一声で謝ってきた。

その声は本当に申し訳なさそうで、アタシはアッくんに声をかけた。

「大丈夫だよ! わざわざ電話ありがと」

「本当に悪かったよな。今、用事終わったんだ」

ドタキャンされても、こうやってすぐに謝られるとつい許してしまう。

そんな優しさや気遣いも、アッくんの大好きなところ。

「気にしないで! アタシも部屋の掃除してたから」

「……あのさ。もう掃除は終わった?」

「うん!」

「……」

アタシの返事を聞くと、アッくんは急に口ごもってしまった。

あれ?

アタシ、何か変なことでも言っちゃった?

「あの……」

「あ、あのさ。暇なら今から会えない? 飯でも行かないか?」

……え?

「ご飯って……。優梨たちとみんなで?」

「あいつらと一緒がいいなら誘うけど……。今日の埋め合わせでオレにおごらせて!」

──っていうことは、ふたりきりで食事ってこと?

胸がドキドキと鳴り始めた。

アタシは壁にかかっている白いワンピースを見つめた。

赤い糸destiny 「急だし、無理?」

「あ、あのっ……」

まるで──

初めてのデートのように緊張してしまう。

予想してなかった展開に、胸はドキドキと鳴り続け、ひとりきりの部屋で、アタシは火照っていく顔を押さえた。

「どうする?」

少し崩れてはいるけど、化粧も巻き髪も朝のままだ。

服もここにある。

「えっと……どこに行けばいい?」

アタシは頬を赤く染めながら、アッくんに尋ねた。

「良かった。今から街に来れる? オレも向かうから」

「うん、向かうね」

──話が具体的に決まり始めていった。

アッくんと街中に出るなんて、つき合っていたとき以来だ。

3年ぶりだよ。

アッくんは、これはただの食事だって思っているかもしれない。

だけど……アタシからしたら、嬉しくてたまらないデートのお誘いなんだ。

服を着替え、急いで外に出た。

自然と早くなっていく足取りと鼓動。

アッくん……。

早く会いたいよ。

赤い糸destiny アタシは待ち合わせの場所に向かった。

人をかき分け、アッくんの元へと急いだ。

──いたっ!

待ち合わせている場所では、数組のカップルが仲良さそうに座っていた。

その脇で、アッくんは携帯電話をいじっている。

久々に見たアッくんの姿が愛しくて……。

「アッくん!!」

アタシは思わず叫んでしまった。

胸がキュンと痛む。

想いが溢れ、アタシはアッくんに向かって走り出りだしていた。

声に気づいたアッくんは、携帯から顔を上げる。

そして、アタシの姿を探すようにまわりを見渡した。

「こっちだよ!」

アタシは走りながら、もう一度声をかける。

すぐに視線は合い、ふたりの間には笑みがこぼれた。

その笑顔は、ずっと見たかったのに、ずっと我慢していた大好きな笑顔──

アッくんの目の前まで来ると、少しだけ乱れた髪を直した。

「ハァ……ハァハァ……ま、待った?」

「平気だよ」

「久しぶりっ……だねっ」

息が苦しくてうまく話せない。

そんな状況なのに、顔は嬉しさで勝手にほころんでいく。

赤い糸destiny アッくんと別れてからも、街には何十回も来た。

だけど──

こんなに幸せを感じてこの街を歩くのは、いつ以来だったかな?

アッくんといるだけで、飽きる程に歩いた街すら新鮮に感じるよ。

会えて良かった。

ずっと、アッくんに会いたかった。

伝えてしまいたいほどの強い想いを抱え、隣を歩くアッくんを見る。

その横顔は、昔と変わらずに整っていた。

「なぁ、どこに行く?」

「え、ええっと……」

急にアッくんが振り向き、目が合ってしまった。

アタシの視線を感じたのか、アッくんは不思議そうに言った。

「オレの顔、何かついてた?」

「──ううん、違うの。なんか、懐かしいなぁって思って見ちゃってた。ごめんねっ」

見つめていたことがばれてしまい、恥ずかしくなってしまう……。

思わずうつむくアタシに、アッくんは笑って言った。

「アハハッ。でも、懐かしいよな。──そうだ! 近くにうまい飯屋があるんだよ。パスタだけど行かない?」

「パスタ好きっ! 行きたい!」

「じゃあ行くか?」

赤い糸destiny アタシは笑みを浮かべる。

アッくんと一緒なら、何だっていいよ。

汚い定食屋だって、コンビニのおにぎりだって一緒に食べれるなら、なんでもいいの。

つき合っていたときは、一緒に食事をするって当たり前だった。

それがどんなに幸せなことだったか、今になってよくわかったよ。

アッくんに連れられて、ふたりで繁華街の奥へと歩く。

まわりは飲み屋や風俗店ばかりになってきた。

ヤクザのような集団とすれ違う。

すぐ横では、派手なドレスを着たキャバクラ嬢がビラ撒きをしていて、ここには、アタシのような子供が来たらいけない雰囲気が漂っていた。

「こんなところにあるの? なんか、ちょっと怖くない?」

いつもはこの辺まで来ることがない。

少しだけ不安になり、アタシはアッくんの顔を見上げた。

「もうすぐだよ」

アタシとは正反対に、慣れた様子で歩くアッくん。

キャバクラがひしめく一角にさしかかったとき、

「あそこだよ。ガキんときから行ってるんだけど、マジうまいんだ」

アッくんは一軒の小さなイタリア料理店を指差した。

赤い糸destiny 「のぶサン、入れる?」

アッくんは重そうな扉を開き、店内に向かって声をかけた。

隙間から少しだけ見える店内には、アンティーク家具が置いてあった。

風俗店ばかりの場所にあるから怖かったけど、意外と普通そうなお店で、ホッと安心した。

「おぅ、アツシ。今日は母さんと一緒じゃないのか?」

「あー。友だちと来たんだ」

「まぁ入れよ。俺は厨房に戻るけど、後で顔出しに行くから」

アッくんは、扉の奥にいるのぶサンという人と親しそうに話していた。

そして、のぶサンと話し終わったアッくんが大きく扉を開いた。

「どーぞっ」

「あ、ありがとっ」

少し緊張しながらも、アタシはゆっくりと店内に入った。

店内は思ったより狭く、テーブル席が5組しかない小さな店だった。

そのうちの4つはすでに埋まっている。

「ギリギリ座れて良かったよ」

「そうだねっ」

アタシたちは話しながら、空いていた席に座った。

赤い糸destiny 隣の席にあるリゾットから、美味しそうなチーズの匂いが漂ってきた。

……美味しそうっ!

アタシはさっそくメニューに手をのばした。

「さっき話してたのぶサンってここのマスターなんだ。おふくろと昔からの友だちなんだよ」

「そうなんだぁ。だから仲良さそうだったんだね。どれがおすすめ?」

「オレは昔からパスタはカルボナーラで、ピザはマルゲリータ」

「アハハッ。可愛いっ」

子供のころのアッくんがここで食事してる姿が頭に浮かんだ。

微笑ましい光景で、思わず笑ってしまった。

「笑うなって。マジで美味いからっ!」

「じゃあ、そのふたつとサラダ頼もっか? ──あ、あとコーラ飲みたいな」

「了解っ」

アッくんはニコッと笑い、厨房に向かって声をかけた。

「のぶサン! いつものとサラダとコーラふたつお願いっ!」

「おぅ、わかったよ!」

厨房の中から返事が聞こえると、アッくんはメニューのドリンクページを開いた。

目录
设置
设置
阅读主题
字体风格
雅黑 宋体 楷书 卡通
字体大小
适中 偏大 超大
保存设置
恢复默认
手机
手机阅读
扫码获取链接,使用浏览器打开
书架同步,随时随地,手机阅读
首 页 < 上一章 章节列表 下一章 > 尾 页