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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15364 字 更新时间:2026-6-23 05:27

会いたいよ……。

──恋と友情の狭間に立つのは、すごくつらいよ。

会いたい気持ちが募り、胸が痛くて苦しかった。

ミヤビとの待ち合わせ場所に着くと、そこにはなぜか智輝もいた。

「……久しぶり」

「う、うん……」

智輝と会うのは愁と初めて会った日以来で……。

アタシは気まずくなりながら、ミヤビに問いかけた。

「なんで智輝が?」

「さっき、智輝の携帯に愁から電話があったんだって」

「えっ? 本当に!?」

目を大きく見開き、智輝に視線を向けた。

「そうなんだよ。金貸してくれって……」

「それで!? ──あと、美亜は一緒だったの?」

赤い糸destiny 「うん……。愁はパクった金を全部シャブに注ぎ込んで、もうふたりには金がないらしいんだ。アイツ、なんでそこまでしたんだろう──」

智輝は目を伏せながら言った。

きっと智輝にとって愁は地元の大事な友だちなんだろう。

クスリ遊びの域を越えた愁に、悲しんでいるように思えた。

「ねぇ……。ふたりはどこにいるの?」

「わかんねぇ。だけど、今日の7時に金を貸す約束したから。ミヤビに話聞いてたし、貸すつもりはないけど呼び出しといたよ」

「じゃあ……」

ミヤビはコクンとうなずき、厳しい表情で言う。

「そこで愁たちを捕まえようと思ってるの。このままじゃ、あのふたりはどうなるかわかんない」

「そうだよね……」

携帯の時刻を見ると、もうすでに5時近かった。

後、2時間──

心臓の鼓動が早まっていく。

6時半──

待ち合わせをしているコンビニまで移動した。

そこはなぜか……前にバイトしていたガソリンスタンドのすぐ目の前だった。

赤い糸destiny アタシはスタンドを見ないように目を背ける。

「ここに3人でいたらバレるから、ふたりは近くに隠れてろよ」

智輝はアタシとミヤビに言った。

「うん。芽衣チャン、あのガソスタの近くなんてよくない?」

「──ッ!? 無理!! ダメ!!」

「なんで? ほかにはないじゃん」

ミヤビは困ったようにアタシを見た。

……確かに、ほかに隠れて見ていられそうな場所はない。

だけど……あそこに行けば、たかチャンがいる。

それはやましい気持ちでなくてもアッくんを裏切ること。

そして、たかチャンを傷つけることのように思えた。

「早めに愁が来たらどうすんだよ! 早く隠れろって!」

「ええっ……」

智輝に怒られ、戸惑いながらもスタンドの方へ向かう。

そのとき──

正面から、スタンドの制服を着て帽子を目深に被った人が近づいてきた。

小さな頭に、スラッと高い身長。

スタンドの敷地を出た途端、だるそうにタバコをくわえた姿。

その人は……間違いなくたかチャンだった──

慌てて両手で顔を隠す。

赤い糸destiny だけど、そんなことで昔つき合ってた人を騙せるわけもなく……。

「あれ? 芽衣だろ!?」

「……」

すぐに、たかチャンに見つかってしまった。

気まずそうに顔から手を離す。

「無視すんなよっ。久しぶりだな!」

「……うん」

「元気にやってんのか? アツシとはどうなったんだ?」

たかチャンの明るい笑顔がつらくて、アタシはぎこちなく笑いながら答えた。

「まぁまぁかな……。後ね……。アッくんとはつき合ってるんだ」

「……そ、そっかぁ……。良かったな」

一瞬の沈黙の後、たかチャンも少しだけ笑う。

「俺も最近……夢ができて、頑張ってるところなんだよ。……恋愛はしてないけど」

「そっかぁ。夢って何?」

「だせぇけど……親父のボロい定食屋を継ぎたいんだ。高校を出たら、調理師免許を取ろうって思って……」

そう言うと、たかチャンは恥ずかしそうに帽子をより深く被った。

その姿が可愛くて、思わず微笑んでしまう。

「たかチャンのお父さんは、ナツくんの憧れなんだって! そういうマスターになってね」

赤い糸destiny 優梨の陣痛で自信をなくしたナツくんを励ましたのは、定食屋のマスターの言葉だった。

定食屋のマスター……というか、たかチャンのお父さんの言葉は、今でもナツくんの胸に刻まれている。

たかチャンもいつか、お父さんのように人に憧れられる人になるのかな?

そう思うと、素直に嬉しかった。

「頑張ってね。応援してるから……」

「いつかアツシと別れたら、定食屋の女将やってくれよ」

「えっ」

「冗談だって」

笑いながら言うたかチャンの言葉は冗談に聞こえなくて、アタシは視線を下に向けた。

「──あっ!! ふたりとも、隠れてっ!!」

黙っていたミヤビが急に叫び、ふたりの腕を掴んで走り出す。

「えっ?」

「いいから!」

たかチャンも訳がわからないまま、手を引かれて走った。

そして、3人はスタンドの脇の物陰に隠れる。

……来たのかな!?

チラッとまわりを見渡すと、遠くから愁が近づいてきていた。

愁の後ろからは、まわりをキョロキョロと見渡す美亜の姿も見える。

赤い糸destiny 「あれ? 美亜じゃん。なんで隠れんの?」

何も知らないたかチャンは、不思議そうにアタシを見つめた。

「あの……。いろいろあって……」

「何かあったのか?」

そう話している間にも、愁と美亜は智輝に近づいていく。

そして……智輝の前にふたりが立った。

そのとき──

「ミヤビ!! 芽衣っ!!」

智輝が愁と美亜の腕を掴んで叫ぶ。

「行こうっ!!」

「うん!!」

ミヤビの声に合わせ、アタシはコンビニに向かって走り出した。

「──痛ってぇ! 離せよ!!」

「キャーッ!!」

近づくにつれ、愁と美亜の声が鮮明に聞こえてきた。

アタシは必死に美亜に掴みかかって押さえた。

「美亜っ!! もうやめてっ!!」

「嫌ぁ!!」

「やめてよぉ!!」

抵抗する美亜の体はガリガリというくらいに細く、すぐに押さえ込むことができた。

隣では、愁が智輝とミヤビに押さえ込まれていた。

「な……何があったんだよ──」

後を追ってきたたかチャンは、呆然として5人の姿を見ていた。

赤い糸destiny その後……。

愁は、智輝とミヤビに連れられて地元へ帰って行った。

たかチャンも、みんなを気にしながらバイトへと戻っていった。

コンビニの前に残ったのは、アタシと美亜のふたりだけ。

──美亜はその場で座り込み、ボロボロと涙をこぼしながら言った。

「な……なんで……ウウッ。ひどい……グスッ……騙すなんてひどいよぉ──」

「なんで!? みんな、心配だから……」

「──嘘! め……芽衣にはアッくんがいるじゃん!! ……ウウッ。あ……あたしたちには……」

美亜は泣き崩れ、その先は言葉にならなかった。

アタシは泣きじゃくる美亜の背中を撫で、優しく問いかける。

「ねぇ……。どうしたの?」

「ううっ……」

「うちに来ない?」

美亜は体を小刻に震えさせながら、少しだけ頭を縦に振った。

──家に着くころは、美亜は落ち着き、涙も止まった。

「愁は……あたしを必要としてくれたの」

そう言うと、美亜は苦しい胸のうちを語り始めた。

赤い糸destiny 「……引かないで聞いてくれる?」

「うん……」

「長くなるんだけど……あたしはずっと、誰にも必要とされなくて愛されてないって思ってたんだ。──昔は幸せだったんだよ。だけど、8歳のときにお父さんが不倫して……不倫相手の女に子供ができたから、お母さんが出ていったの。あたしはお父さんが凄く嫌で、お母さんについていきたかった。だけど……お父さんと顔が似てて憎らしいっていう理由で、お母さんには捨てられちゃったんだ。そのときからかな……」

そこまで言うと、美亜は小さく溜め息をついてタバコに火をつける。

煙を吐き出しながら遠い目をして、幼い過去を思い出しているようだ。

「それから愛人の女……っていうか、今の母親が家に引っ越してきたの。少し膨らんだお腹を撫でながら、こんにちはって笑顔で挨拶された。新しい母親はすごく優しかったんだ。最初は嫌だったけど、子供だから少しずつ母親に打ち解けていったの。でも、お腹の子供が産まれるのは嫌で……あたしより我が子が可愛いだろうし、膨らむお腹が嫌いだった。お父さんがお腹の子供を喜ぶのも……」

赤い糸destiny 美亜がお母さん。

ミツがお父さん。

吉岡サンが新しい母親。

少し違うけど、3人のことのようだった。

だから美亜は、異常なくらい吉岡サンを恨んで許せなかったのかも……。

「そしたらさ……。お腹の赤ちゃん、いきなり消えちゃったんだ。ストレスからくる死産だったの。お腹の子が嫌だったのに、あたしは悲しくて病院で泣いてた。そしたら……新しい母親はヒステリックに叫んだんだ。──アンタがストレスよ! アンタのせいでお腹の子供が死んだのよ! ……って。それで、その日から母親はあたしに冷たくなった。お父さんは死産してショックを受ける母親ばかりかばって……あれ以来、家には居場所なんかなかったよ。今なら母親に切れて、人のせいにしないでって言える。だけどあのときは何も言えなかった……」

中学時代からのつき合いだったし、美亜は家族の話をしなかったから知らなかった。

アタシは、親友の気持ちを何もわかっていなかった──

タバコを吸いながら、切なそうに顔を歪める美亜に声をかけた。

「つらかったね……。聞いちゃってごめん。……無理して話さなくてもいいからね」

赤い糸destiny 「ううん、ここまで来たら話したいよ。聞いてほしい……」

アタシは目を伏せてうなずき、タバコに火をつけた。

美亜の気持ちを考えると、つらくて涙が溢れてしまいそうになる。

「みんなに家の事情を知られたくなくて、学校ではいつも嘘の楽しい家族の話をしてた。小5で初めて生理が来たときだって、母親に無言でナプキンを渡されただけ。タバコを吸って見つかったときも、見て見ぬフリ。夜遅くに帰ったって、補導されたら面倒だから嘘の住所言って逃げろって言われただけだった。母親にとって、あたしは邪魔なだけの同居人だったんだよね」

タバコの煙が目に染みたのか、つらい過去を聞いて悲しかったのか……。

アタシの瞳からポタポタと涙が溢れた。

家を訪ねたときの美亜の母親の態度……。

あれは、ただサッパリしているというわけではなく……美亜を信じているわけでもなかったんだね。

「あたしもお腹の赤ちゃんのように消えたかったよ。それと、本当のお母さんに会いたかった……。顔がグチャグチャになれば、お母さんも昔のようにそばにおいてくれるかなって本気で考える毎日だった。新しい母親でも、母親は母親じゃん。かまってほしかったし、愛されたかったよ。でも、何をしても孤独を実感するだけだった。大事に育ててくれたお母さんに会いたくて、声を殺して毎日泣いてた。そしたら……小6のとき、母親に言われたんだ。──アンタの顔も見たくないし、耐えきれないから実の母親のところに行け。……って。つらかったけど、お母さんに会いたかったから嬉しい気持ちもあったよ。お父さんは母親に何も言わないで、ごめんなってあたしに言ってからお母さんに電話をかけた。──こんな状況なら、お母さんはあたしをそばに置いてくれるって信じてたの。実の子供を愛さない親はいないって先生が言ってたし、そう信じてた。だけど……あたしはまた捨てられたの。──知らない。いまさら押しつけるな。……って。そう言ったお母さんと母親は喧嘩になった。親権争いって、普通はお互い欲しくてやるじゃん。でも、あたしの場合はお互いがいらなくて争っていたの。……死ねばいいのかな? って思ってた。お父さんは気まずそうにうつ向くだけで、あたしの味方は誰もいなかったよ。そんな状況の中で、あたしは中学に入学したんだ。親への気持ちは、いつの間にか愛から憎しみに変わっていたよ。ここまできたら、とことん迷惑をかけてやりたくて……あたしは髪を金色に染めて登校した。みんなが白い目でみる中、芽衣が近寄ってきて言ったよね。──1度、金髪にしてみたいなぁ……キレイだね。……って。馬鹿なくらいに純粋で、仲良さそうに優梨と笑い合う芽衣。自然とあたしの視線は芽衣を追ってた。そのころ、あたしには初めての彼氏ができていたの。だけど、その人のことは好きでもなんでもなかった。ていうより……愛されてないあたしは、愛し方すらわからなかったんだ。そして彼とはセフレのような関係になっていった。だけど……それでも良かったんだ。セックスをしてるときは心が満たされるの。例え、体だけでも……必要とされていることが嬉しかった。そうすることで、あたしは存在してもいいんだなって思えたんだ。それがあたしは嬉しかったんだよね──」

赤い糸destiny アタシが平凡な毎日を過ごしていた間、美亜はこんなにも苦しんでいたんだね。

愛を受けないと愛し方がわからないというのなら……。

物心がついたときから悠哉を愛していたアタシは、どんなに恵まれていたんだろう。

実の子供でないアタシを、こんなにも深い愛で包んでくれる両親──

「体なんて愛されるための道具。セックスは一時的に愛を感じる手段。……そんな風に感じてた。おかしいよね。汚いよね……。だけど、それくらいしか必要とされる術を知らなかったんだ。そんな中で、芽衣や優梨と少しずつ仲良くなって、時間が経つにつれふたりはあたしを仲間に入れてくれた。みんながあたしの外見で避けていくのに、ふたりはそんなこと気にしないでそばにいてくれたでしょ? すごく……それが、すごく嬉しかったの。ふたりといると、自然に適当なセックスも自虐的な考えも減っていったんだ。芽衣たちの何気ない優しさに、何度救われたか……」

美亜はそこまで話すと、目に涙を溜めて上を向いた。

「やばい……泣きそうっ……」

「アハハッ。アタシなんて……グスッ。も……もう、とっくに泣いてたよ……」

赤い糸destiny 美亜を抱き締め、頬に伝っていく涙を拭う。

「もぉ……グスッ。なんでそんなに泣くの? もらい泣きするじゃんっ!」

「親友だからでしょ? 美亜の馬鹿!」

「芽衣……ウウッ。で……でも、まだ泣けないっ。話したいから──」

ゆっくりと美亜はアタシから離れ、ティッシュで涙を拭いた。

そして、タバコを吸いながら話し出す。

「あ……どこまで話したっけ?」

「もうっ。うちらが仲良くなってってところだよぉ」

「あっ、そうだ。それで……あたしはふたりのお陰で、中学生の間にみんなと同じような感覚まで成長できたんだと思うんだ。海斗に会ったとき、本当に胸がドキドキした……偽りの恋じゃない初めての恋をした。でも……恋の仕方がわからなくて、ミツに相談したんだ。芽衣たちに相談したら、今までの話をしなきゃいけない気がして……嫌われたくなくて、怖くてあんまり話せなかった。軽蔑されるような汚い毎日だったから……。──それでミツに相談してるうちに、気づいたら恋してたの。海斗じゃなくて、親身になって相談に乗ってくれるミツに」

赤い糸destiny 「そういえば……。ミツは純粋に恋する美亜を好きになったって言ってたよね」

「うん、確かに初恋だから純粋だったと思うよ。本当にミツはいい人だった……」

美亜は唇を震わせ、涙をこらえるように瞼を強く閉じていた。

美亜は、今もミツを愛しているんだろう。

「つき合ってから、本当に大事にされた……。親友からの愛とはまた違う愛をくれて、あたしは本当に幸せだった。両親の離婚を見てたから、永遠の愛なんか信じてなかったけど……ミツに対しては、永遠の愛を誓えたくらい。だけどね、すぐにあの女があたしの掴んだ愛も幸せも奪っていったんだ。呆然とした後、頭の中はメチャクチャになった。苦しくて、口ではミツを見返すとか言いながら、耐えきれなかった。芽衣の家からクスリを盗んだのは、ただの興味だったけど……思わず飲んでしまうくらいにつらかった。……優梨にはナツと梨夏がいる。芽衣には、血が繋がらなくても愛してくれる両親とアッくん。あたしには、ミツがいなくなって、誰にも必要とされなくなったって感じたの。昔に戻ったようだった……。忘れたくて……クスリが欲しくてクラブに行ったんだ。そしたら愁に会ったの。──前に話したように、愁と寝たのは勢いだけ。忘れたくて、前みたいに寝ただけ……。芽衣にばれたとき、本当にみんなに大事にされてるって感じて嬉しかった。叶わない恋してるところも一緒だったし、あたしも立ち直ろうと思えたの。だけど、気持ちとは逆に、体がクスリを欲しがって……ズルズルとクスリを続けた。またばれて縁を切られたくなかったから、カラコン入れてごまかしながら……。二度目に怒られたときは、さすがにもうやめようと決意したんだ。だけど、海斗といるときに愁から連絡が来て……やばいことになって逃げるからついてきてほしいんだ。俺には美亜しかいない。……そう言われて、電話越しに泣かれたの。愁も家庭に恵まれなくてあたしと境遇が似てたから、痛いほどに気持ちがわかっちゃったんだ。あたしは、愁を見捨てられなかった……。芽衣や優梨にはみんながいるけど、愁はひとりだったから──。今となれば、間違いだったのかもしれないけど」

パチッ──

美亜は携帯を開いた。

愁からの連絡を待っているのだろうか……。

「ねぇ、美亜。それは優しさなんかでもなくて、間違った同情だよ……。今の愁と一緒にいたら、お互いがダメになる。愁だって気づいていないだけで、想ってくれている友だちがいるんだよ。ミヤビも立ち直ろうとしているし、美亜も立ち直ろうよ──」

「芽衣……。あたしは……立ち直れるのかな? 今もミツが好きで、こうやって話している時間もクスリがやりたくて仕方ないんだ……」

かける言葉が見つからなくて……アタシはもう一度、美亜を抱き締めた。

「なんて言えばいいのかわからないけど……つらくなったらそばにいる。クスリをやめられないならカウンセリングに一緒に行こう。だから……だから、もういなくならないで──。アタシにも、優梨にも、海斗にも、ほかのみんなにも……美亜は大事な存在なんだよ」

ふたりの間には、もう言葉なんていらなかった。

抱き締め合った腕から、お互いを想う気持ちがヒシヒシと伝わり合う。

そして……この日以来、美亜がアタシたちの前からいなくなることはなかった。

やっと、戻ってきてくれたんだ。

赤い糸destiny もし……美亜の気持ちをすべてわかることができる?

そう誰かに聞かれたら、きっと答えられない。

──だけどアタシは美亜の気持ちを理解したかった。

親友だから……。

その晩、久しぶりに美亜は家に泊まっていった。

お母さんが残り物と有り合わせの材料で作った夜食を部屋に運んでくると……。

「手作りのご飯を食べるのは、どれくらいぶりかな……」

美亜はそう言って、また涙を流した。

そして、中学時代の楽しかった出来事を語り合いながらひとつのベッドで眠りについた──

翌日から、アタシは毎日美亜と会った。

学校が終わるとふたりでカウンセリングに通い、お茶をして別れる。

──美亜が立ち直って、クスリから離れていくことが嬉しかった。

アタシがそばにいることで美亜が普通の生活をできるなら一緒にいたい。

そう思い、美亜のために時間を割いた。

アッくんからは、毎日のように連絡がきている。

休日も放課後も会いたい……。

何度言われたか、わからなかった。

だけど──

今のアタシには、アッくんよりも美亜と過ごす時間が大切。

今は美亜といたかった。

赤い糸destiny アツシの母

アッくんとは約1カ月、登校のときしか会っていない。

……本当は、ゆっくり会いたいよ。

だけど今の状態では無理だってわかる。

「朝しか会えなくてごめんね」

アッくんには毎朝謝ってばかりだった。

「気にすんなよ」

いつもアッくんはそう言い、笑いながら頭を撫でてくれた。

今のアタシの気持ちを理解してくれるアッくんへの愛は深まり……。

信頼も強まっていった。

美亜と会うようになってから2週間近く経ったある日。

「たまにはアッくんと会わなきゃ。あたしばかり芽衣を独占したら悪いよね」

美亜はそう言い、申し訳なさそうに笑った。

「いいよ! アッくんには話してあるから」

「悪いって……。あたしは大丈夫!」

「でも……」

美亜は微笑み、ポンポンとアタシの肩を叩いた。

「芽衣、いつもありがとう。お願いだから会いに行ってきて」

「美亜……」

「ねっ」

アタシは悩んだ後……。

「じゃあ……今日は会いに行ってこようかな──」

赤い糸destiny そう言って、携帯を開いた。

ピッピッピッ……

長い付け爪が付いた親指を器用に使い、素早くメールを打つ。

〈今から会える?〉

……今日、アッくんが暇ならいいな。

そう思いながら返信を待った。

?…?…?…

──来たっ!

すぐにメールを開くと、そこにはハートの絵文字がふたつ並んで……。

〈会えるよ〉

アッくんからの嬉しい答えがあった。

「……どう? 会えそう?」

アタシは、心配そうな美亜に笑いかけてピースをした。

「うん、会えるって! 後で連絡するね」

「良かったぁ……。あたしも海斗に会ってこようかな。心配かけたまま、謝れてないし……」

美亜もポケットから携帯を取り出す。

海斗は……ずっと美亜を心配して、悩んでいた。

何度も裏切られながら、誰よりも美亜を信じ続けていたのは海斗だった。

「また裏切るなら、海斗が可哀想だから会わないでほしいけど……美亜はもう大丈夫だよねっ。頑張って!」

美亜は恥ずかしそうに下を向き……。

「もう、あんないい人を裏切れないよ」

そう呟いた。

赤い糸destiny 美亜と別れた後──

アタシはコンビニのトイレに駆け込んで化粧を直した。

……久しぶりのデートなんだから可愛くして行かなきゃ。

ずっと会えなかった分、今日は楽しい一日にしたいな。

美亜は……これから海斗と何を話すんだろう?

アタシ以外の人にも会って、新しい一歩を踏み出そうとしている姿が嬉しい。

──いろいろな想いを抱えながら、淡いピンクのグロスを唇にのせた。

キレイに化粧直しを終え急いで地元の駅前に向かった。

そして駅前に着くと、待ち合わせ場所になっている改札前でアッくんの姿を探す。

しかし、そこにアッくんはいなかった。

待ち合わせに遅れる人じゃないんだけど……。

そう思うと不安になる。

アタシは駅構内やまわりをキョロキョロと見渡した。

そのとき──

「待たせて悪ぃ!」

改札に向かってくる人の波に流されながら、アッくんの笑顔が近づいてきた。

その手には……アタシの好物のチョコが握られている。

「アッくん!」

アタシは嬉しさと安心で顔をほころばせ、大きく手を振った。

赤い糸destiny 「待たせてごめんな! これ買ってきたから許してっ」

「──ありがとっ。後で一緒に食べよ!」

駆け寄ってきたアッくんからチョコを受けとり、ポケットに入れた。

そして、すぐにアッくんの手を握る。

朝も会って手を繋いだのに……。

ひさびさのデートだと、また何か違う感覚だった。

胸がドキドキと鳴って、アッくんと触れ合いたい気持ちが高まる。

抱き締めたくて……。

キスしたくて……。

アタシは本当にアッくんが大好きなんだなって実感してしまう。

「どこに行こっか?」

「そうだな……DVD借りて家で見るか?」

「うん」

繋いだ手に力を入れ、微笑んだ。

──DVDを借り、アッくんの家までの道を寄り添って歩いた。

「ふぅ~……」

両手を口元に当て、小さく息を吐く。

その息はタバコの煙のように真っ白になった。

「……寒いか?」

「うん。もうすぐ12月だもんね……。クリスマスだよ」

「そうだなぁー。クリスマスはどこに行く?」

「えっとぉ……考えておくねっ」

アタシは、右腕をアッくんの左腕に絡ませた。

赤い糸destiny 「こっちの方があたたかいだろ?」

アッくんに手を握られ、そのままズボンのポケットに入れられた。

ポケットの中にはアッくんの体温がたまっていて……。

「あたたかいっ」

繋いでいる右手がポカポカとあたたかくなる。

──今までずっと、冬は寒くて嫌いだった。

だけど……こんなふうに寒さをしのげるのなら、嫌いな冬だって好きになってしまいそう。

冬にはクリスマスもあるし、恋人たちの距離を縮めてくれる季節かもね。

「もう着くから、帰ったら暖房ガンガンにかけようぜっ」

「そうだねっ」

次の角を曲がると、すぐにアッくんの住むマンションがある。

ふたりは少し歩調を早めて角を曲がった。

「……なの。よろしくお願……」

「お母さん……頼みなら……」

角を曲がると、楽しそうに話す会話が小さく聞こえてきた。

マンション前で、制服の女の子と着物の女性が話し込んでいる。

「あ……あれ?」

近づくにつれ、ふたりの姿が鮮明に見え始めた。

そのふたりは……よく見ると麻美とアッくんのお母さんだった。

赤い糸destiny 「……また」

麻美はそう言ってペコッと頭を下げた。

そしてアタシたちに気づかないまま、反対側の道を歩いていく。

アッくんのお母さんは遠ざかる麻美の背中を見送り、マンションの中へと消えていった。

「な……なんで?」

「……わかんねぇから聞いてみる。頼みとかなんとか言ってたよな?」

「うん……」

……胸が掻き乱され、嫌な予感がする。

それに、アッくんのお母さんと親しそうに話す麻美に、嫉妬の気持ちがわいてしまった。

「お邪魔します……」

家に入ると、すぐに甘い香水の匂いがした。

それはいつもの家の匂いではなく、ほかの誰かの香水の匂い。

「先に部屋に入ってて。話してくる」

「うん……」

言われるままにアッくんの部屋へと入った。

アッくんはそのまま廊下を歩いてリビングに入っていった。

キィ─……

部屋のドアを少しだけ開き、ドアの手前に座って耳を澄ました。

赤い糸destiny 「なぁ、さっきのはなんだよ!」

「おかえり! そんな顔してどうしたのよ? ……お母さんね、すごくいいことがあったんだ」

「だからさぁ……聞いてんの? さっき麻美と話してたのはなんでなんだって質問してるんだけど──」

ドキドキドキ

ふたりの会話を聞いていると、緊張や不安で動悸が激しくなってくる。

アタシはグッと両手を握り締めた。

「あら。見てたの? さっきコンビニに行ったら、バイトが終わったばかりの麻美チャンに会ったのよ。それで話が弾んで家でお茶をしていたの。アツシと別れてつらいって泣いてたわよ……」

「──そういうことすんなよ! オレには彼女がいるんだし、麻美だっておふくろに会えば余計につらいだろ!?」

「でも……また会う約束してるの。麻美チャンのお父様も一緒にね。後で話すつもりだったけど、すごくいいお話を聞かせてもらったのよ」

「はぁ!?」

いら立ったような声をあげるアッくんを無視して、お母さんはとても嬉しそうに話を続けた。

「アツシにとっても、すごくいいお話なの。これは私の店に差し出された神の手よ」

赤い糸destiny ……いいお話?

店って、アッくんのお母さんがオーナーママをやっているクラブのことだよね?

「店って……麻美は関係ないだろ? ──ッ……もしかして何か頼んだのかっ!? やめてくれよ!!」

……アッくんには言葉の意味がわかったようだ。

急に焦り、困ったような声になった──

「アツシ……。うちの店は前々から言ってたように、もう火の車なの。お客さんからお金は借りられそうもないし、今はスポンサーになってくれるような人もいない。──麻美チャンのお父様は銀行の支店長じゃない? きっとどうにかしてくれるからって言われたのよ。アツシの元カノに頼むのは少し気が引けたけど……店が潰れたら、私たちだけじゃなくて従業員も生活できなくなる。融資してもらって店を立ち直らせたいのよ!」

アッくんのお母さんは熱く語った。

……頭に、この前泊まったときの光景が浮かんだ。

酔っぱらって、店がやばいと愚痴っていたお母さんの姿。

「そんなことしてたら、ずっと麻美と縁が切れないだろ!? 麻美の親父に頼むなんてやめてくれよ! どうにかなんないのか?」

赤い糸destiny 「どうにもならないから頼んだのよっ! 高いジュエリーもバーキンもケリーも時計も……売れる物はたくさん売ってきたけど、どうにもならないのよ! コネでお金を借りるしか方法はないわ!」

「時計って……。おふくろがコレクションしてたヤツか? あんなに大事にしてたヤツを売ってまで、なんで店を続けんだよ! 借金すんなら潰せばいいだろ! オレだってバイトするし……」

こんな話を聞いてしまっていいのだろうか……。

そう思いながらも聞き耳をたて続ける。

「そんな簡単なものじゃない! あれは私だけの店じゃないし、私のすべてなのっ!! だから今まで、あんなにつらい思いをしても守ってきた! 私が守るって約束してるんだから、何があっても手放せない!!」

「なんだよ、それ……。その人に言えばいいだろ!? やりくりが無理だから潰すって──」

「言えないわ! もうこの世にはいないんだから……──形見なのよっ。もう……店に行く時間だから行ってくるわっ」

アッくんのお母さんの足音が近づいてきた。

アタシはソファーに移動して息をひそめる。

赤い糸destiny 「なぁ、おふくろ!」

お母さんを追って玄関に向かうアッくんの足音も近づいてきた。

「行ってくるから」

バタン──

すぐにドアを閉める音がした。

「──寒っ。風邪ひくぞ!」

「あっ……」

アッくんは部屋に入ってくるなり寒そうに体を縮めた。

エアコンをつけてからアタシの横に座った。

シンとして気まずい空気の中……、

「変な話を聞かせてごめんな」

アッくんはアタシの肩を抱き寄せながら言った。

「ううん……。大変そうだね」

「オレは、おふくろに借金をさせたくないんだ。しかも、麻美の親父に頼んで借りるなんて……」

そう言うと、アッくんは困ったように小さな溜め息をついた。

なんて言えばいいのかわからずに、そっとアッくんの肩に頭を乗せた。

大切なお店が……麻美チャンの助けで軌道に乗るというならば、アタシは何も言えないよ。

お仕事のことはよくわからないし。

借金を負いながら会社を立て直すってことも、大人の世界ではよくある話なのかもしれない。

こんなとき……アタシはなんて言ったらいいのかな?

赤い糸destiny 「話に乗ったら、麻美との関係や繋がりが続くじゃん。その話は善意で言った話なのかもしれないけど、作戦かもしれないし……」

──作戦?

もしそうだとするなら、すごく嫌だよ。

最近……麻美チャンからの嫌がらせは日に日に減っていた。

このまま終わってくれるんじゃないかって思っていたのに──

「麻美には早く新しい恋をしてほしいんだ。芽衣に嫌がらせしたりオレにつきまとうのはやめて、先に進んでほしい。この話はおふくろだけじゃなくて、麻美やオレ達のためにもよくないよな」

ポンッ

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