饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15367 字 更新时间:2026-6-23 05:27

「じゃーね!」

ガラガラガラッ

扉が閉まり、車は通りに出て去って行った。

「アハハ……自業自得? ……だって……」

赤い糸 美亜が独り言のように、笑った。

「これってさ……レ……レイプだよね。アタシ……、アタシね……中で出されたよ──」

「美亜も……どうしよう」

体中が痛いよ。

自業自得ってなんだろう。

レイプに自業自得なんて、あるのかな……。

夏休み、最後の夜だったのに、最悪の夏休みになっちゃった。

レイプなんて、他人事だと思ってたのに。

まさか、自分がヤラれるなんて……。

「オェッ……ゲェーッ」

「──み、美亜!? 大丈夫!?」

吐き続ける美亜。

ラブホで、アタシと美亜は命令を聞く生きたロボットのように犯された。

むりやり挿入されて、口にも突っ込まれた。

男たちの精子も、吐き出すと殴られて……。

アタシも一度、飲まされた。

苦くて……臭くって……。

「芽衣……ヒック……もう……グスッ……し、死にたいよぉ……」

泣きながら、美亜が言った。

アタシも、同じ気持ちだよ……。

赤い糸 昔、レイプのシーンがある漫画を読んだ。

こんなことされるなら絶対に舌を噛んで死ぬって思った。

だけど……、

「ねぇ……死にたいけど、怖くて死ねないよ。あんなことされたのに……」

──現実はそう。

怖くて死ねなくて、生きてしまうんだ。

きっと今日の記憶は、一生消えない──

アタシの胸に、深く深く……刻み込まれた傷になった──―

赤い糸 2学期の始まり

アタシと美亜は、駐車場から一番近い日サロに入った。

──一刻も早く、この体を洗い流したい。

日サロなら、シャワーがあるし……。

そして、ふたりはシャワーを浴びた。

体が真っ赤になるくらいにタオルでこすった。

──でも……。

こすっても、こすっても、アイツらの汗が臭う気がした。

……犯された。

頭の中で、何度も繰り返される言葉──

シャワーを浴び始めてから1時間くらい経った頃

「もう帰ろっか……」

アタシはつぶやいた。

ふたりはタンニングをせずに、日サロを出た。

焼かずに帰るふたりを、店員は不思議そうな顔で見送っていた。

日サロを出ると、美亜が目の前のタクシーに片手をあげた。

「一緒にうち行こ?」

「──うん」

ひとりになりたくない……。

ふたりはタクシーに乗り込み、美亜の家に向かった。

明日から、2学期。

学校が始まる。

アッくんがいる毎日が始まる……。

赤い糸 カーテンの隙間から朝日がさして、アタシは目を覚ました。

「あぁ……朝だぁ。──イタッ……」

起き上がろうとしたとき、脇腹に激痛が走った。

……やっぱり、現実なんだ。

殴られて、犯されたんだ──

脇腹の痛みを抑え、タバコを手に取った。

まだ朝の5時かぁ……。

「スゥ──」

タバコを吸うと、落ち着く。

「……んん……。芽衣?」

美亜がベッドの中で体をよじる。

「ゴメン、起こした?」

「……ううん。平気ぃ……」

美亜も体を起こし、タバコに手を伸ばす。

「……もう起きるの?」

「今日から、2学期だし……」

そうか……今日から2学期か。

「行きたくないな……」

「だよね」

学校に行けば、アッくんと顔を合わせてしまう。

まだ、アッくんと顔を合わせたくないよ……。

最近、ムカつきが寂しさへと変わった。

アッくんの愛情がほかの女に向くなんて、信じられない。

赤い糸 時間が経てば経つほど、そう思う。

アッくんからの最後のメールが信じられないよ……。

──つらいから信じたくないだけなのかもしれないけれど……。

ふたりは横になって、タバコを吸い続けた。

……このままずっと、だらだらできたらいいのに。

?~?~?~

久々の優梨からのメールだ。

優梨は2週間前から海外旅行に行っていた。

確か、昨日帰国したはず……。

〈ヒサビサ!マズイお菓子と化粧品のお土産あるから☆〉

「優梨がお土産あるって! 化粧品とマズいお菓子」

「気になるねぇ~。マズいなら、買わなきゃいいのに」

久しぶりに、ふたりの間に笑いが起きた。

「──マズいお菓子を食べに、行きますか?」

「……そうですね☆」

何かキッカケがないと、学校へ行けなそうだった。

今日行かなければ、日が経つにつれ余計行きづらくなっていく……。

優梨からのメールは、いいキッカケになった。

──そして、ある真実も、今日の始業式でわかることになる──

赤い糸 まだ何も知らないふたりは、ベッドから起き上がった。

いつもより化粧と髪をしっかりと決め、ふたりは学校に向かった。

派手な髪の毛は直すか悩んだけど、コータたち3年と仲が良くなったから、そのままにすることにした。

アタシは制服を取るため、美亜と別れて家に帰った。

夏休みは終わったんだ……。

そう強く実感した。

この夏休みは、いろんなことがあった。

嬉しいこと。

楽しいこと。

そして、とても、とても、つらい出来事。

忘れられない夏休み。

制服に着替え、部屋を出る。

よし、行くか……。

玄関に行くと、顔をしかめた春菜が立っていた。

「芽衣……。久々だね」

「……う、うん」

気まずくて、顔を見て話せない。

下を向くアタシに、春菜はキツイ口調で言った。

「芽衣さぁ、そんなに遊び回って楽しい? お母さん、毎晩ご飯も食べずに待ってるんだよ。お父さんとお母さんは芽衣のことで毎日ケンカだし、迷惑なの!」

「……」

──何も言い返せなかった。

赤い糸 春菜はそう言うと、こっちを見ずに玄関を出て行った。

ハァ……。

アタシは重い足取りで学校へ向かった。

「芽衣~~?」

校舎に入ると、何人もの友達に声をかけられた。

派手になったアタシは、見つけやすいらしい。

簡単に挨拶をして、クラスに向かう。

教室の前にはすでに登校していた美亜と優梨がいた。

「あっ! 芽衣~?」

優梨が手を振る。

そして……。

「アッくんもオハヨ! !」

優梨が言った。

アッくん……?

恐る恐る振り返ると、真後ろにアッくんがいた。

1週間ぶりに見たアッくんは痩せていて、目も、少し虚ろだった。

「アッくん……」

「……オハヨ」

アッくんはひと言だけ言い、教室に入って行った。

──アッくん、様子おかしくない?

痩せたな……。

「芽衣、お土産ー! !」

「……あ、優梨。ありがと!」

優梨に話しかけられて、紙袋を手渡される。

アタシはお土産の中身も見ずに、アッくんを見ていた。

赤い糸 「そろそろ始業式に行かなきゃね!」

海外の話をしていた3人は、体育館に向かった。

あれ? いない?

──気がつくと、アッくんの姿はなかった。

気にかけて、目で追ってしまう自分が嫌だ……。

フラられたし、汚れてしまったのに。

もう男はいらない。

すべて忘れよう──

アタシは自分に言いきかせた。

体育館へ向かう廊下で、コータや菜穂さんたちに会った。

「おはよー! 昨日来なかったから心配したぁー」

「──あ、うちら急に用事入っちゃって……」

菜穂さんの言葉を曖昧にごまかすアタシと美亜。

コータたちは残念そうな顔をして、ほかの3年たちと体育館に向かって行った。

忘れていたのに、また気持ちが悪くなる。

はぁ……。

──少し遅れて体育館に着くと、今度は悠哉に会った。

今日はみんなによく会う日だな……。

赤い糸 悠哉は笑顔で話しかけてきた。

「おっ 芽衣! 久しぶりだな」

「あー、悠哉……」

悠哉に会うと、まだ少しだけドキドキしてしまう。

「芽衣、最近遊び回ってんだろ? 春菜に聞いたよ。最近、夜道が危ないから気をつけろよ! 拉致られるとかあるらしいぞっ」

「え……拉致?」

拉致という言葉に、アタシの体は反応した。

昨日の今日で、こんな話されるなんて──

ただの偶然なの?

隣にいる美亜と目を合わせた。

「うちのクラスの女が話してたんだよ。バンに乗った男たちが、むりやり女をふたり拉致ってたらしーぞ。ナンバー見たから通報しようか悩んでるって」

「ナンバー……あっ! 犯人わかるよね!?」

「そーだろ。だからそいつらは捕まるだろーな」

ギュッ

美亜に、強く手を握られた。

手のひらから美亜の気持ちが伝わる──

「悠哉さん……拉致った現場見たのって、誰ですか?」

美亜の突然の質問に、事情を知らない悠哉と優梨は不思議そうな顔をした。

赤い糸 「──アタシも知りたい」

「え……どしたんだよ」

真剣なふたりに驚きながらも、悠哉は名前を教えてくれた。

3年2組。坂井サン……。

この人が、ふたりの恨みをはらしてくれる──

レイプされて警察に行ったって、所詮犯人なんて捕まらない。

それなのに、何されたか話すなんて嫌だった。

だけど──

坂井サンが見てくれたから、犯人がわかりそうだ。

それなら、このまま泣き寝入りなんて嫌だった。

あいつらが許せないよ……。

始業式に出席している間も、頭の中は悠哉の話でいっぱいだった。

「芽衣……何かあった?」

隣に座る優梨が、コソッと言う。

「──えっ?」

「何か、様子が変じゃない?」

「ううん、別に……」

アタシはごまかした。

最近、優梨に隠し事が多いな……。

アッくんのことも話せてない。

親友なのにね──

赤い糸 長い先生たちの話が終わり、始業式は終わった。

「先、教室行ってて! ごめんね」

「……え? ──うん」

優梨に別れを告げ、アタシと美亜は3年の教室に急いだ。

坂井サンと話したい。

3年2組の前で、顔も知らない坂井サンを待つ。

見慣れない下級生のアタシたちを、3年生はジロジロと見ていた。

それでもふたりは、すれ違う3年生の名札を見続けていく──

坂井サンは、まだ来ない。緊張が高まる。

「──あっ! 美亜! !」

「えっ? 来た!? ──ホントだ!」

正面から地味そうな女の子が向かって来る。

胸には、坂井という名札。

「間違いないよね?」

「た、たぶん……」

アタシが答えると、美亜が動いた。

スタスタ歩き、坂井サンの前に立つ。

「え……? あの……」

見知らぬギャルの美亜に行く手を阻まれ、坂井サンは驚いた顔をした。

そして、戸惑っている。

「坂井サンに話があるんですけど」

「……わ、私に?」

坂井サンは不安そうに、アタシたちを見た──

赤い糸 ──あっ!

坂井サンの後ろに悠哉の姿が見えた。

悠哉も気づき、アタシに声をかけてくる。

「坂井にさっきの話?」

「──うん」

アタシは素直に頷いた。

アタシと悠哉が話す姿を見て、坂井サンは少し安心した顔をした顔をして言う。

「悠哉くん……知り合いなの? 話があるって言われたんだけど……」

「彼女の妹なんだよ。聞いてやってくんないかな?」

「そうなの? ──それならいいよ」

坂井サンはアタシたちに聞いた。

「ここで話せる話? 放課後でもいいけど……」

「じゃあ、放課後にまた来ますっ」

「わかったわ」

坂井サンはそう言い、教室に入って行った。

緊張した……。

いっきに肩の力が抜ける。

「じゃあ俺も教室入るから。何があったのかはわかんなぃけど、俺で力になれるならなるからな!」

「うん……ありがと」

悠哉はアタシに、何も聞かなかった。

……何か気づいていたとは思う。

悠哉はいつも優しい。

子供のときから、ずっと……。

この優しさが大好きなんだ。

赤い糸 恨み

放課後、アタシと美亜は坂井サンを迎えに行った。

そして3人で中庭に向かった。

「……時間とらせてごめんなさい」

ペコッと頭を下げるアタシに、坂井サンは初めて笑った。

「アタシ、春菜センパイと同じ吹奏楽部なの。芽衣ちゃんはセンパイの妹なんでしょ? センパイにいっぱい助けてもらったから、なんでも聞いて」

「そぅなんですかぁ……」

坂井サンはさっきとは違い、優しい顔を見せている。

……それは、きっと悠哉のおかげ。

警戒する坂井サンに、アタシのお姉ちゃんが春菜だってことを話してくれたんだと思う。

中庭に着き、誰もいない芝生に腰を下ろす。

──春にここで、悠哉の気持ちを聞いた。

あれから5ヶ月も経ってないのに……。

いろいろあった。

今はここで、レイプ犯のことを聞くんだ──

「……い? 芽衣? ──芽衣っ! !」

「──へ? ぁ……はぃっ!」

「ボォーッとしすぎ!」

「ご、ごめん」

思わず気持ちが、どっかに行っちゃってたよ……。

美亜にニラまれて、苦笑いでごまかす。

赤い糸 でも、うまくは笑えなくて、顔がヒクヒクと引きつった。

美亜を見ると、落ち着かなそうに手を握ったり開いたりしている。

「──あぁ、もうダメ!」

美亜はバッグを開き、タバコの箱を取り出した。

「タ?タバコ吸っていいですか?」

「ええっ!?」

「中庭はセンセイ来ないんで、多分平気です……ねぇ、芽衣?」

「えっ?」

いきなり話を振られ、困ってしまった。

けれど美亜は返事も聞かず、タバコに火をつけた──

「あ、間違った!」

タバコの葉じゃなくて、フィルターに火をつけてあせる美亜。

美亜の顔色は、どんどん青ざめていった。

あせりを隠すように、新しいタバコに火をつける。

美亜……。

聞くのが怖いんだね。

アタシもだよ──

アタシも坂井サンにひと言断り、タバコを吸った。

「フゥ──」

煙を吸って、ゆっくりと空に向かって吐く。

真っ青な空に、煙でできた白い雲が浮かんだ。

太陽の光が目に染みて、涙が出そうになるよ……。

「……話、しよっか?」

坂井サンが口を開いた──

「……」

話を聞くために来たはずなのに、アタシも美亜も言葉に詰まった。

──知りたいけど、思い出したくない。

まだ整理できてない頭と気持ち……

──でも、ここまできたら、知りたい。

知らなくちゃいけない。

あの男たち、許せないよ……。

「……昨日の夜、見たことを教えてください」

「昨日? ──まさか、バンの男の話……」

「……」

言葉が出ない。

昨日の出来事が頭にリプレイされて──

「その話……あの男の話を聞きたいの?」

震え出した体を押さえ、アタシはコクッと頭を下げた。

坂井サンは、明らかに動揺していた。

「……昨日ね、塾の帰りに見たの。バンに女の子が連れ込まれていて……助けを呼ぶにも人がいないし、巻き込まれるのが怖かった……」

「……ナンバー見たんですよね? 教えてください」

「でも──」

赤い糸 「──教えてください!」

黙っていた美亜が、少し強い口調で聞いた。

「……そ、それは……」

坂井サンは言葉を濁す。

……なんで答えてくれないの?

「なんで言えないんですか?」

「……ごめんね」

「だって──」

坂井サンは下を向いてしまった。

坂井サンの肩、少しだけ震えてる?

坂井サンはフゥと大きく息を吐いて言った。

「誰かにナンバーとかを言うと、同じ目に遭わせるって言われたの……すごく悩んだけど、怖くて……」

「そんな……だって、その男たちとは話してないんでしょ? 誰に脅されたんですか!? ──まさか! ! うちの中学に仲間がいるってことなんですか!?」

黙り込む坂井サン……。

コクンッ

数秒後、坂井サンは頭だけ縦に振った。

「──嘘っ……」

頭から血の気が引いていく──

それって、どういう意味……?

──うちの中学に、バンの男たちの仲間がいる。その仲間は坂井サンが偶然見たことを知って、口止めした。

そういうことなの?

赤い糸 ──でも、あの日、バンの中には、うちの中学の生徒はいなかった。

あの駐車場の周りにも、いなかった。

……誰?

誰なの?

アタシの体に、得体の知れない恐怖が襲いかかった──

「……坂井サン。口止めした人は誰ですか?」

「……」

「──もうわかってると思うけど、レイプされたのはウチらなんですよ! アタシは……犯人を知りたいのっ!同じ女なんだから、気持ちわかるでしょ!? ──てゆうか、わかってよっ! !」

美亜は叫びにも似た大声をあげた。

大きな美亜の瞳から、ポロポロと涙が流れ出す。

「もぅヤダ……余計グチャグチャだよぉ。忘れようとしたのに……それなのに……グスッ。思い出させて混乱させて……結局何も言えませんって……だったら、最初から何も言わなきゃいいじゃんっ! すごくヤだよ……」

「……美亜」

……確かに、そうかもしれない。

悠哉に何も聞かなくて、坂井サンから仲間がいるって聞かなかったら──

……忘れようと努力できた。

赤い糸 でも、聞いてしまった今。

忘れるなんて、できない──

アタシは、泣き続ける美亜の背中を優しくなでた。

まるで、傷ついた自分をなでているように……。

美亜の体はヒクヒクと震え、大きな瞳からは大きな涙が溢れ続ける。

「ご、ごめんなさい……」

坂井サンは、申し訳なさそうにふたりを見た。

……誰だって、そんな脅しをされたら怖い。

そんなのわかってる。

だけど──

アタシたちのこの気持ちは、どこに持っていけばいいの?

「私──」

「坂井サン……これ、見てください」

アタシは坂井サンの話を遮り、スカートのホックをはずした。そして、シャツをまくり上げた。お腹が、シャツの下からあらわになった──

「──えっ!?」

坂井サンはアタシのお腹に視線を向け、驚いたように目を見開いた──

アタシのお腹には、昨日殴られたときの大きなアザが濃く残っている。

「ひどいっ……」

口に手を当て、泣きそうな顔をする坂井サン……。

赤い糸 アタシは覚悟を決め、話し始めた。

アタシのため。そして、美亜のため。

「……殴られてむりやりヤラれたの……。膣も切れて、腫れて──すごくつらい時間だった。美亜もそう……。それでも、坂井サンは犯人を隠すんですか?」

坂井サンは口に手を当てたまま、固まっている。

そして──

「……ひどい」

また、独り言のようにつぶやいた。

「助けて……犯人を教えて……」

「──ッ」

坂井サンは、しばらく黙った後、小さな声で話し始めてくれた。

その内容は、信じられないくらいに残酷で、頭を鈍器で殴られたような衝撃──

まさか……。

嘘でしょ?

──美亜とアタシは、中庭を飛び出した。

……昨日のレイプは、計画的だった──―

あの女たちが、知り合いの男に頼んで、ウチらを回させたんだ。

殴ってもいいよ。ボロボロにしてやってって、頼んだなんて……。

──許せない。

アタシたちは、いつもコータたちがいる家に向かった。

赤い糸 今日はみんなであの家に溜まってるはず……。

あの女たちもきっと──

身体中に、怒りと憎しみが湧き出てきた。

頭が怒りに支配されていく……。

ピンポーン──ガチャ

溜まり場の家に着くと、チャイムを押して勝手に玄関を開けた。

「キャハハッ」

「……だよなぁ」

階段の上から、楽しそうな笑い声が聞こえる。

あの女の声も聞こえて……体が震えた。

靴を脱ぎ捨て、階段を駆け上がる──

「……あの女たち、ブッ殺してやりたい」

「……そうだね」

美亜は怒りに満ちた目をしていた。

気持ちは同じだ……。

ふたりは目を合わせ、みんなのいる部屋のドアを開けた。バタンッ! !

中にいたみんなが、一斉にふたりを見る。

「おっ、芽衣ちゃん?」

コータが笑いながら手を振る。

そんなコータを相手にする余裕はなかった──

「──テメェ、ふざけんじゃねーよ! !」

アタシと美亜は、あの女たちの姿を見つけて殴りかかった。

「キャーッ! !」

「──! ! 何やってんだよ! !」

赤い糸 アタシは綾の上に馬乗りになり、髪を引っ張る──

床にあったジュースがこぼれ、灰皿がひっくり返った。

綾の叫び声が響く──

「キャァ──! ! ──何すんの!?」

「考えればわかんだろ! !」

自分が自分じゃないようだった……。

綾が憎い。

こいつのせいで──

美亜もユリの頬を叩いた。

ユリは、マックで美亜にジュースをかけた女だ。

「──ッ! やめろよっ! !」

暴れるアタシを、誰かが背中から羽交い締めにする。

振り払おうにも力が強すぎて……。

「──はなしてっ! !」

アタシは押さえつけられた。

「誰!? 止めないでよっ! !」

「お……おい、どおしたんだよ!?」

後ろから押さえつけているのは、コータだった。

「──ヤメテ! はなして!」

美亜も押さえつけられて、手足をバタつかせている。

「ち、ちょっと……どうしたのよ! ねぇ……」

綾は青ざめた顔で、アタシを見た。

……どうしたって聞いた?

ふざけんな……。

「……ふざけんな! !」

──アタシはヒステリックに叫ぶ。

赤い糸 バンッ

思いきり暴れて、コータをはねのけた。

すぐに、また、綾にまたつかみかかる──

コータだけでは押さえきれないのがわかったのか、ほかの先輩も押さえつけてきた。

「はなしてよっ! !」

「──こっち来いよ!」

羽交い締めにされたまま、廊下に連れて行かれた。

美亜も部屋から出され、別の部屋に連れて行かれる。

「──嫌っ!」

コータたちを振りほどこうと、必死に抵抗する。

バンッ

「嫌ぁーーっ! !」

バコッ

暴れるたび、壁に手足を打ちつけた。

痛みなんて感じない──

「はなしてぇーー! !」

アタシの叫び声が廊下に響いた。

「落ち着けよ! ! 芽衣!」

ほかの部屋に押し込まれ、コータに抱き締められる。

バランスを崩したアタシはコータと一緒に床に座り込んだ。

「ハァ……ハァ……」

部屋に入った途端、体に力が入らなくなって、暴れる気力もなくなってしまった。

息が苦しい。

赤い糸 打ちつけた体も今さら痛くなって──

「ウッ……ウウッ……」

涙が溢れた──

「──芽衣……」

「ウワァ──ッ」

コータに抱きつき、大声で泣いた。

コータ以外の人は、そっと部屋を出て行った。

つらい……つらいよ──

「何があった?」

「ウウッ……フェッ……グスッ……」

戸惑いながらも優しく聞くコータ。

だけど……。

こんなこと、答えられない。

──レイプされたなんて言えないよ。

皮肉にも今いる部屋は、コータと初めて一線を越えた部屋だった。

「……どうしたんだよ」

優しい声が、耳に響く──

「……いつも穏やかだろ? さっきの状況、信じられなかった。芽衣があれだけキレるんだから、何かあったんだろ? 言わなきゃわかんないよ? ……なぁ、芽衣」

コータはアタシの頭をなで、優しく問いかけ続ける。

胸が苦しいよ。

悲しいよ……。

──綾さん、ユリさん。

なんで!?

コータの胸の中で泣き続ける。

赤い糸 そのとき、部屋のドアが開き、隙間から菜穂さんが顔をのぞかせた。

「……芽衣チャン。話したいの……」

「菜穂?」

コータはアタシを抱き締めたまま菜穂さんを見た。

「綾とユリから、事情聞いた……」

菜穂さんの顔が歪んで……目から涙が溢れてきた。

「菜穂さん……」

アタシが話そうとした瞬間──

「──帰るって言ってんでしょ!」

「ふざけんな!」

「あいつが悪いんじゃん! !」

廊下から、ユリと男の叫び声が聞こえてきた。

「──ッ! 菜穂! 何があったんだ!?」

コータは苛立ったように叫ぶ。

菜穂さんはこっちをチラッと見て、下を向いてしまった。

「──逃げんじゃねーよ!」

「キャッ!」

「み、美亜ちゃん! !」

次は美亜のブチキレた声がした。

ユリの悲鳴と、あせる男の声も……。

「──何がどーなってんだよ! ! 菜穂! 早く話せ! !」

コータもキレて、みんながメチャクチャになっていく。

……もう、話すしかない。

「アタシね……」

アタシは下を向き、菜穂さんの代わりに話し始めた──

赤い糸 傷害事件

アタシの声を聞き、コータは菜穂さんに詰め寄るのを止めた。

菜穂さんは下を向いたまま、黙っている。

──言いたくない

そう思いながらも、昨日あったことをコータに話し始めた。

気づけば廊下は静かになっていて、部屋の中には、アタシの小さな声が響いていた。

──レイプされたっていう、告白。

あのときの恐怖や痛みが押し寄せて……ひと言、ひと言がつらい記憶を思い出させる。

話を聞き、コータは呆然としていた。

菜穂さんは泣き続けた。

すべて話すと、コータが目の前に座り込んだ。

「……ごめん。つらい話させたよな……」

「……軽蔑するよね」

「しない──」

……コータ。

本当は違うよね?

汚いアタシを軽蔑したでしょ?

話したことに、後悔が押し寄せる。

「……でも、なんでユリたちに? ──何か関係してんのか?」

コータは理解できずに困惑している。

そのとき、菜穂さんが口を開いた──

「……通りがかりの男じゃなかった。芽衣チャンたち襲ったの、ユリの友達……」

コータの顔がこわばる──

赤い糸 「ど……どうゆうこと?」

信じられないように、聞き直すコータ。

「ユリが綾とグルで、ふたりを襲わせた……」

「──は!?」

「芽衣チャン、ごめんなさいっ!」

「菜穂……全部話せ」

コータは菜穂さんをニラみ、今にもつみかかりそうだった。

菜穂さんは震えている……。

「アタシ……知ってた。昨日、綾から電話がきて……自慢げに、話された。綾とユリが怖くて……誰にも言えなくて……ウウウッ……」

泣き崩れる菜穂さん──

そんな菜穂さんを、アタシもコータも責めることはできなかった。

「ごめ……んなさ……」

菜穂さんは泣きながらも謝り続ける。

だけど……なんでアタシはここまで恨まれてたの?

「……芽衣と美亜を襲ったのはなんで?」

「ユリ、前の彼氏を美亜ちゃんに取られて恨んで……」

──そういえば、マックでユリは言っていた。

男を取ったって、美亜にキレていた。

……じゃあアタシは?

「それに綾はコータの元カノなの……」

そういうことか……。

「ハァ……」

アタシは溜め息をついた。

赤い糸 コータはいきなり出た自分の名前に驚いていた。

「……オレ、関係あんのか?」

恐る恐る、聞くコータ。

「……綾さんは、未練があったんじゃないの?」

菜穂さんの代わりに、アタシが答える。

「オレに?……それはないだろ」

菜穂さんは、首を横に振る。

「綾はまだコータが好きなの。だから……コータと芽衣ちゃんのことを知って、芽衣ちゃんに──」

「──ッ! !」

コータは部屋を飛び出した。

「キャ──ッ! !」

「コータ、やめろ! !」

すぐに綾の叫び声がする。

まさか……。

アタシと菜穂さんは、顔を見合わせて廊下に出た。

美亜も違う部屋から出てくる。

アタシたちは、叫び声がした部屋に入った──

「キャッ!」

部屋の中は、地獄絵図のようだ。

コータは綾の髪を掴み、アタシたちのほうに引きずってくる。

「イタイッ! やめてっ!」

「ふざけんじゃねーよ! !」

バシッ

コータが綾の頬を殴る。綾の口元から赤い筋が流れた。

──怖い。

みんなも固まる。

赤い糸 部屋の入り口で立ち尽くすアタシと美亜に、コータが向かってきた。

「──ッ」

右手は綾の髪をつかんだままだ。

引きずられながら、綾は抵抗もせず、犬のように四足でヨタヨタとアタシたちの前に来る──

綾の抜け落ちた髪が、床にちらばっていった。

服も乱れ、いつものクールな印象はまったくなかった。

グッ

アタシたちの目の前で、コータは綾の髪をはなした。

「キャッ……」

バランスを崩した綾は、アタシの足元でベタッと転ぶ。

「──ヒッ」

思わず後退するアタシ。

「どーしよっか? ブチ回すか、芽衣たちにしたことをコイツにもするか……」

コータは笑った。

背筋がゾッとした。

あんなひどいことをされたのに、今の綾を見ると惨めで何もする気になれなかった。

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