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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15383 字 更新时间:2026-6-23 05:27

誰にも言えない。

みんなに軽蔑される。

そんな関係を持つ自分が嫌だったけど、ついつい会ってしまう。

このときは、なぜだか自分でもよくわからなかった。

きっと、愛を感じて繋がっていたかったからなんだと思う。

自分が愛してる愛してないは関係なくて、愛されている感覚が心地良かった。

そしてセックスを覚えたてのアタシは、麻薬中毒のようにセックスの快感の虜にもなってしまったんだ……。

寂しかったのかもしれない。

赤い糸 愛していた悠哉に愛されなくて、

初めてできた彼氏に裏切られて、

友達に裏切られて、

レイプされて、

自殺未遂して、

養子とわかり、親も離婚して……。

1年の間にこれだけのことが起きた。

寂しさがないなんて言えば、嘘になる。

表には出なくても、寂しさは蓄積されていた。

セックスしているときは、何も考えなくていい。

快感に身を委ねるだけ。

一時的に、満たされる。

アッくんとのセックスの後は、決まって虚しさが襲ってきた。

ヤラなきゃ良かったと毎回後悔した。

でも、それ以上の何かがセックスにはあった。

幸せなセックスしかしたことのない人にはわからないかもしれない。

だけど、不幸なセックスをした人ならわかってくれると思う──

あっという間に5月も終わり、6月なかばにある修学旅行まであと少しになってきた。

パンフレットが配られ、班別のミーティングが毎日のように行われる。

大阪に2泊3日の修学旅行。

大阪に行ったことのないアタシは、今からショッピングや観光で頭がいっぱいだった。

赤い糸 修学旅行まであと1週間──

「来週は修学旅行だから、今日も班別に分かれて計画を立ててください!」

学級委員の声で、生徒はゾロゾロと同じ班同士で集まっていく。

最近、ホームルームは修学旅行の準備ばかりで楽しかった。

「高橋クン、横に座っていい?」

「いーよ!」

沙良がすぐにたかチャンの横の席をキープ。

沙良は本当にたかチャンが大好きで、最近は好きだってことがバレバレな態度。

沙良の気持ちに気づいてないのは、たかチャン本人くらいだと思う。

ホームルームが終わると、クラスに拓弥クンとミツが入って来た。

「大阪で1日、自由行動の日あるじゃん。吉本見に行こうぜ~」

拓弥クンがみんなを誘う。

「行きてぇ~! 沙良ちゃん、お笑い好きだよな☆」

「うん、行きたい! みんな行こうょ! 高橋クンも行くでしょ!?」

酒井はノリ気。

沙良もノリ気でアタシたちを誘う。

視線はたかチャンだけど……。

「俺は……ちょっと大阪の友達の家に行くから無理かな」

「えーっ……」

明らかに落ち込む沙良。

「仕方ないよ! うちらで行こう!」

「……うん、そうだね」

赤い糸 修学旅行の予定がいろいろと決まってきた。

朝8時に駅に集まり、新幹線で大阪に向かう。

大阪に着いて、みんなで大阪城や博物館を見て……。

その日はそれで終わり。

2日目は、自由行動の日。

アタシたちはみんなで吉本だ。

途中で抜けて、優梨と美亜に会う予定。

3日目は班別で観光して、新幹線に乗って帰る。

放課後、帰る用意をしているアタシにたかチャンが聞いた。

「芽衣は吉本行きたい?」

「え? んー…ぶっちゃけ、どっちでもいいかな? USJ行きたかった!」

「そっかぁ。じゃあ、また明日な!」

「バイバイー!」

アタシはひとりで学校を出た。

しばらく歩くと、私服のアッくんに会った。

「あれ? 学校は?」

「さぼった」

相変わらず適当なアッくんに、苦笑いのアタシ。

「夜中までヒマだから、家来ない?」

「アタシもヒマだし行こうかな~」

ふたりはアッくんの家に向かって歩き始めた。

そのとき少し離れた場所からふたりを見ていた人がいた。

──沙良だ。

沙良はふたりの仲の良さそうな姿を見て、声をかけそこねて帰って行った。

赤い糸 アッくんの部屋で、アタシはベッドに横になりながらくつろいでいた。

隣にはアッくんが横になっている。

「修学旅行、楽しみ?」

「うん☆」

「オレは行きたくないですよ~」

アッくんはアタシを抱き締めながら、ダルそうに言う。

アッくんのクラスは真面目な人ばかりで、合いそうな人は確かにいなかった。

「つまんないよ~。芽衣、夜這いしてねっ?」

「あははっ?」

笑い飛ばしながらも、言われるままに夜這いしてしまいそうな自分。

アッくんとアタシの関係は何なんだろう……。

セフレ?

それとも?

よくわからないまま、今日も抱かれてしまう。

──というか、考えても結論が出なかった。

壊れ始めた友情

「芽衣! 起きて! !」

「う、う~ん……」

シャーッ

部屋のカーテンをお母さんに開かれ、アタシは朝日の眩しさに目を細める。

時計を見ると、朝の6時半を少しまわっていた。

「今日から修学旅行でしょ!? 早く起きなきゃ置いていかれるわよ! !」

「うぅ……ん。起きるぅ……」

ベッドから起き上がり、タバコに手を伸ばす。

「タバコはやめなさいって言ってるでしょ! 修学旅行でバレたら、途中で強制帰宅よ! !」

母はタバコを取り上げてリビングに戻っていった。

「あぁ……タバコ……」

仕方なく、リビングに向かう。

修学旅行は楽しみだけど、早起きはダルい!

リビングのゴミ箱から捨てられたタバコを拾い、トイレにかけこんで鍵をかけた。

「芽衣! タバコはやめなさいってば! !」

鍵もかけてるし、無視して寝起きの一服。

最近、お母さんは強くなった気がする。

夜中の泣き声も聞こえなくなり、よく怒る。

うるさいなって思う日もあるけど、元気になったお母さんをアタシは嬉しく思っていた。

赤い糸 集合時間の8時ギリギリに駅に着くと、みんな集まっていた。

少し遠くにダルそうなアッくんの姿も見える。

「楽しみだねっ! 新幹線、隣の席に座ろうね!」

沙良は朝からハイテンションで、アタシの隣で騒いでいる。

アイちんは少し離れた場所で、ほかのクラスメイトと話していた。

新幹線に乗り、いつものチョコを取り出す。

沙良とつまんでいると、たかチャンがやってきた。

「ひとつ食いたい!」

「いーよ☆」

たかチャンはチョコを食べながら、またどこかに行ってしまった。

「あー たかチャンかっこいい……」

沙良はたかチャンの姿を目で追いながら、独り言のように言った。

「ほんと好きだねぇ」

「うん!」

迷いのない沙良の言葉。

「アタシね、修学旅行中にコクろうと思うんだ! !」

「えっ!?」

「頑張るっ!」

「頑張ってね~ 協力するから☆」

沙良の決意には驚いたけど、応援したかった。

友達には幸せになってもらいたい………。

「協力、頼みますっ!」

「もちろん! !」

アタシと沙良は手を握り合った。

赤い糸 大阪に着き、バスに乗り換えた。

隣にはまた沙良が座り、明日の吉本の話や班別行動の話をした。

それから大阪城を見て、博物館を見ていると、あっというまに夕方になった。

バスは宿泊先のホテルに向かった。

夕食を取り、入浴してから部屋に戻ると美亜が部屋に遊びに来た。

「ちょっと芽衣、外、出れない?」

「? 待ってて~」

沙良とアイちんに声をかけ、アタシは部屋の外に出た。

美亜はアタシの手を引いて、ひとけのない場所に向かって行った。

「……どうしたの?」

「あのね、さっきたかチャンに会って……芽衣に話があるらしいよぉ。みんなにバレないようにコッソリ会いたいんだって。ホテルの横にある神社の境内で待ってるって☆」

「何かあったのかなぁ?」

「わかんない~。とりあえず、今から行ってみて!」

「……うん」

アタシは先生にバレないようにホテルの外に出た。

そして、隣にある小さな神社の境内に向かった。

赤い糸 ジャリ……ジャリ……。

丸石が敷き詰められた道を歩く。

外は陽が落ちて暗くなり、肌寒かった。

境内にたかチャンの姿はない。

来るのが早すぎたかな……。

「おぅ!」

「キャッ! !」

暗闇からいきなり声がした。

心臓がバクバク鳴って体が固まった。

誰?

たかチャン?

すぐに暗闇から、苦笑いのたかチャンが姿を現した。

「驚かしてゴメンな!」

「ほんとビビった! 暗闇で何してたの?」

「あっちに小さい道あんだよね」

よく見ると、たかチャンの出てきた場所に小さな小道があった。

「あそこから、ホテルの裏口に抜けれるんだよ」

「マジだぁ☆」

「裏口はセンセーの見張りがないから、ここから抜け出せば夜中も遊び放題! !」

アタシとたかチャンは目を合わせて笑った。

そしてふたりは境内に座って、タバコを吸った。

「移動中とか吸えなくて、マジきつかった!」

「アタシも今日、トイレで吸ったりしたくらい。ヤニ切れだよー」

「だよなぁ……」

「……うん」

沈黙が流れる。いつもは気にならないのに……。

何か話さなきゃいけない気になる。

赤い糸 「そういえば、夜にふたりきりで会うのは初めてだねっ」

「そうだな……」

沈黙を破るように、明るくアタシは言った。

いつもたかチャンはおしゃべりなのに、その日は静かだった。

ヘンに緊張する。

「あのさぁ、芽衣は今彼氏いるの?」

「いないよ。知ってるじゃん」

「じゃあ、好きなヤツはいる?」

「えっ?」

頭に悠哉とアッくんの顔を思い浮かべた。

だけど、胸はドキドキしなくって……。

「いないよ」

アタシはそう答えた。

たかチャンは静かに2本目のタバコを吸い始める。

「俺は……いるよ」

「そうなんだぁ……」

またなぜか胸がバクバク鳴り始めた。

ヘン……。なんでだろう……。

自分でもよくわからなかった。

「たかチャンが好きな人いるなんて、初めて聞いたよー」

「まぁな……」

また会話が続かない。

赤い糸 たかチャンはタバコを地面にこすりつけて消した。

そして、アタシの方を真っ直ぐ向いて──

「芽衣、俺とつき合わない?」

「へっ!?」

頭が真っ白になる。

理解できない──

たかチャンはそんなアタシをよそに、しっかりと目を見ながら続けた。

「好きな人って、芽衣のことだから……」

「あ……あの……」

さっきからあったヘンな緊張やヘンなドキドキは、このせいだったのかな?

自分では気づかないうちに、予感してたのかな?

でも、たかチャンの気持ちには答えられないよ。

だって……、たかチャンは沙良の好きな人──

「俺のこと、どう思ってる?」

「え、あ、あの……」

──どうって聞かれても──

「と、友達としてしか……見てなかったから」

「これから、男として見れない?」

見れる訳がない。

沙良がどんなにたかチャンを好きだかわかるから……。

でも、そんなこと言えない。

「……見れないかな。ごめん」

そう言うしかなかった。

──ほんとは見れると思う。

たかチャンは性格も好きだし、顔もタイプだし……。

赤い糸 沙良の気持ちさえなければ、嬉しい告白だった。

「そっかぁ……ごめんな。いきなり」

「ううん、ごめんね」

たかチャンの気持ちを考えると、胸が痛んだ。

下を向いてしまうアタシ。

「あのさ、明日だけでいいから、1日つき合ってくれない?」

「えっ?」

「そしたら諦めるから……明日1日だけ、彼女になってくんない? 自由行動が終わったら俺は芽衣の友達に戻るから、ほんとお願いっ! !」

顔を上げると、たかチャンはペコッと頭を下げていた。

プライド高くて、女の子に人気があるたかチャン……。

そんなたかチャンが、アタシに頼んでる姿は切なかった。

「うん、わかった」

「マジで!? ありがと、芽衣……」

「だけど、ひとつ約束してほしいの。みんなにバレると友達関係がおかしくなるから、ふたりで明日過ごすのは内緒にしよう」

「……わかった」

アタシは小道を通って裏口からホテルに戻った。

廊下はひっそりと静まり返り、同級生の姿は見当たらない。先生に見つからないように静かに部屋に戻った。

赤い糸 部屋に戻ると、部屋の隅にいた沙良とアイちんがアタシを呼んだ。

後ろめたさから沙良の顔を真っ直ぐ見れない。

アタシが悪い訳ではない。

だけど、たかチャンの気持ちは沙良ではなく自分にあることを知ってしまった。

「どうしたの?」

「あのね、たかチャンに明日コクろうと思ってるの」

「……」

沙良の言葉に返す言葉がなかった。

どうしたらいいんだろう……。

「芽衣もアイちんも協力してねっ☆」

「うん! !」

「……うん」

歯切れの悪いアタシの返事に、沙良は不安そうな顔をした。

「芽衣、何かあった?」

「え!? ……べ、別にないよ」

「なんか、ヘンだよ」

「あ、あの、お腹痛くてさぁ……」

苦笑いするアタシ。

「ちょっとトイレ……下痢だから、部屋じゃなくて廊下のトイレ行くね」

「大丈夫?」

「う、うん……」

アタシは逃げるように部屋を出た。

嘘は苦手。

沙良の気持ちを考えると、部屋にいることができなかった。

赤い糸 廊下に出ると、アタシは美亜の部屋を訪ねた。

「タバコいかない?」

「いーねぇ☆」

美亜はバッグからタバコを取り出して、廊下に出た。

ふたりはさっきの裏口から外に出た。

「こんな道、よく見つけたねー」

「たかチャンに聞いたんだぁ……」

たかチャンの名前を出すと、胸が痛かった。

神社の境内に入り、さっきたかチャンと座った場所に腰を下ろす。

「さっきね……」

アタシはたかチャンに告白されたことを美亜に話した。

美亜はウン、ウンと静かに聞いてくれた。

「すごく気まずいんだよねぇ……」

「そっかぁ……」

話を聞き終わった美亜は、少し考えてから話し始めた。

「たかチャンから芽衣の相談されたことあったんだ。沙良チャンのこともあるけど、たかチャンの気持ちも考えてあげてほしいな」

「でも……沙良が旅行中にコクるって言ってるの。どうしたらいいんだろ?」

「フラれるのがわかる告白だもんねぇ……。まだ早いからもう少し待ってみたら? って話すとか……」

ふたりで話し合っても、結論は出なかった。

赤い糸 気が重いまま部屋に戻ると、沙良がアタシのほうに走り寄ってきた。

片手に薬の瓶を持っている。

「大丈夫~!? これ、腹痛の薬だからちゃんと飲んでね!」

「……ありがとう」

沙良の優しさに、胸が痛んだ。

大好きな友達なのに、沙良を傷つけてしまう。

どうしたらいいんだろう……。

たかチャンに告白されたなんて、絶対言えないよ。

どうして人の気持ちはすれちがってしまうのかな。

アタシは悠哉を好きだった自分と、今の沙良の姿を重ねた。

「ハァ……」

溜め息しか出ない。

「大丈夫?」

「医者行く?」

ほとんど話したことのない同じ部屋のクラスメイトまで、心配してアタシに声をかけてきた。

「大丈夫……ほんとごめんね」

ごめんねって言葉は、心配かけてごめんという意味。

そして、沙良に対してのごめんという意味も……。

その晩はみんなと話しながらも常に上の空だった。

深夜に布団に入ってもなかなか寝着けない。

そんなとき、携帯に1通のメールが入ってきた。

赤い糸 みんなを起こさないように、コッソリ携帯とタバコを持って部屋を出た。

メールはアッくんからだった。

〈起きてる?〉

そのひと言。

廊下に出たアタシはすぐに返事した。

〈今、廊下!どこに行く??〉

〈行動早くね!?何かあった??〉

メールの返事を作っていると、少し遠くにアッくんの姿が見えてきた。

ふたりは手を取り合って、静かにホテルを抜け出した。

裏口から神社を抜けて当てもなく歩いていると、小さな公園にたどり着いた。

深夜の公園は静かで、薄暗い。

「公園って、昼間と夜は全然ちがうよね~」

アタシは小さなブランコに座って、タバコを取り出す。

アッくんも隣のブランコに座り、ブランコをこぎ始めた。

「何かあっただろ?」

「まぁ……ウン」

「どした?」

アッくんは元カレだし、話しづらい……。

「だ、大丈夫!」

「言いたくないならいいけど、あんまり無理すんなよ!」

「うん、ありがと」

赤い糸 アッくんはブランコからピョンと飛び降りた。

そして、アタシの正面にきて……。

「何かあったら、いつでも相談乗るからな──」

「うん……」

そう言いながら優しくアタシを抱き締めてくれた。

アッくんの胸の中はあたたかい。

久々に感じたアッくんの優しさ。

「つらいときや悩んでるとき、いつもアッくんが側にいてくれるね……」

「そうか?」

「うん……。つらいとき、一番効くお薬がアッくんかも」

「お前サァ……まぁ、オレもかなぁ。芽衣といると楽しいし、癒されるねぇ~?」

アタシとアッくんの仲は、不純かもしれない。

つき合ってないのにセックスするなんて、ただのセフレかもしれない。

だけど、絆がある。

どんな絆かはわからないけど、何かで繋がって通じ合って……。

お互いにとって、お互いが大切な存在なんだ。

赤い糸 始まり

翌朝──

アタシは眠い目を擦りながらも起きて、朝食を食べに大広間に向かった。

4時過ぎまでアッくんと公園にいたから、ほとんど眠れなかった。

「クマできてるよ?」

「どしたの?」

何も知らないアイちんと沙良が、声をかけてきた。

「夜中に脱出して、前のクラスの友達と遊んできちゃった?」

「マジ!?」

「うけるねっ!」

「先生に見つかったらどうしようって怖かったよお」

気まずさをまぎらわすようにふざけて笑う。

3人は大広間に着くと、班別に分けられたテーブルに座った。

たかチャンと酒井はまだ来ていなくて、少しホッとする。

気まずくて、たかチャンに会いづらい……。

しかも、隣には何も知らない沙良がいる。

朝食の時間まで3人で話していると、いきなり沙良の顔がパァッと明るくなった。

「高橋クン! 酒井クン! こっちだよ~?」

「おぅ! おはよー」

沙良の視線の先には笑顔の酒井と、少し気まずそうなたかチャンがいた。

「おはよ……」

「おはよう」

アタシも自然を装って、声をかけた。

赤い糸 5人が揃い、気まずい中で食事をした。

表面的には楽しい食事を装ったけど、全然喉を通らない。

?~?~?~

アタシの携帯の着信音が鳴った。

〈今日みんながホテル出たら迎えに行く〉

たかチャンからのメールだ。

携帯の画面から目を上げると、たかチャンと目が合った。

気まずい瞬間──

パッと目をそらしてしまう。

沙良に気づかれたら大変だよ……。

部屋に戻ると、沙良とアイちんは吉本に行くために用意し始めた。

「アタシね、前のクラスの友達と自由行動することになっちゃった……。だから、吉本行けないや」

「えっ?」

「なんで!?」

ビックリする沙良と、露骨に嫌な顔をするアイちん。

アイちんは、アタシに詰め寄った。

「約束してたじゃん。なんでいきなり!?」

いつも優しいアイちんは、明らかに不機嫌そうだった。

沙良は荷造りの手を止めて、アタシとアイちんを見ている。

「自由行動中に一緒にいる子がいないって聞いて……ひとりは可哀想だから……」

アタシはまた嘘をついた。

最近、ふたりには嘘ばかりついている。

赤い糸 嘘をつき続ける自分は嫌なのに、また嘘を重ねた。

「途中で合流するね。友達をほうっておけなくて、ごめんね」

「……」

アイちんとアタシの間に険悪な空気が流れた。

「仕方ないよ。友達が可哀想じゃん。修学旅行なんだから、側にいてあげなよ」

そのとき、沙良がフォローに回ってくれた。

アイちんも沙良の言葉を聞き、納得したようだった。

「ごめんね……」

謝りながら、部屋を出る。

心配する沙良の姿を、これ以上見れなかった。

アタシは昨日行った神社に向かった。

そして、携帯を取り出した。

……たかチャンには悪いけど、断ろう。

これ以上、沙良を騙せないよ。

沙良を裏切れないよ──

たかチャンの携帯を鳴らした。

「もうみんないないの? 迎えに行こっか?」

何も知らないたかチャンは、楽しそうに話す。

たかチャンの気持ちを考えると心が痛んだ。

でも……。

このままじゃダメだよ。

たかチャンとの約束を断って、沙良に全部話そう。

沙良とずっと気まずいのは嫌だった。

赤い糸 「今日会うのはやめない?」

「えっ!?」

「ごめんね……」

「どこにいるの?」

「神社だよ」

たかチャンの沈む声に胸が痛む。

しかし、沙良の気持ちを一番に考えたかった。

「アタシは……」

「──芽衣! !」

受話器から……。

そして、後ろからたかチャンの声がした。

「え!?」

振り返ると、ホテルの裏口に繋がる小道からたかチャンの姿が現れた。

「芽衣、どうしていきなり……」

たかチャンは走ってきたのか、息を切らしている。

ハァ、ハァと苦しそうにアタシに問いかけた。

「だから……今日は一緒に過ごせない」

「なんでだよ!?」

「理由は……」

唇を噛み、下を向いてしまうタカちゃん。

断る言い訳が思い浮かばなかった。

「たかチャン、ごめん」

「芽衣……」

そのとき、たかチャンの頬にひと筋の涙がつたった。

ケンカも強く、リーダー的なたかチャンが泣いていた。

「ご、ごめんっ……」

アタシは動揺しながらハンカチを取り出した。

「お願いだから。今日だけだから……俺、マジだせぇけど……今日だけつき合ってくんない?」

「たかチャン……」

ハンカチを強く握り締めた。

赤い糸 そんなたかチャンを見たら、断れないよ……。

沙良を思う気持ちは、たかチャンの気持ちと涙に負けてしまった。

「ご飯でも行く?」

「……マジで?」

「だって……」

「涙は男の武器だねぇ」

「は!? わざと?」

「さぁ?」

たかチャンは急に笑顔になり、アタシの手を取って歩き出した。

よくわからないまま手を引かれるアタシ。

「どこ行くの?」

「USJ! 行きたいって言ってただろ?」

「──マジで!?」

こんな状況なのに、顔がほころんでしまった。

「行きたいって言ってただろ?」

「……うん」

──今日が最後だから。

今日だけだから。

自分にそう言い聞かせる。

たかチャンが強引だから仕方ない。

そう心の中で繰り返す。

アタシは、そうやって罪の意識から逃れようとした。

たかチャンと過ごしたUSJは楽しかった。

手を繋いでアトラクションをまわり、たくさん写真を撮って歩いた。

「楽しいねっ☆」

素直な気持ちが唇から溢れていく。

沙良……。

今日で終わりにするから許してね。

沙良……。

楽しんでごめんね。

赤い糸 楽しい時間はすぐに過ぎ、夕暮れになってきた。

「もう帰らなきゃね」

「そっか……」

たかチャンは悲しそうな顔で空を仰いだ。

西の空は赤く染まり、太陽がアトラクションの隙間に隠れようとしている。

「……帰りたくねぇな」

「……」

うん。とは言えない。

たかチャンと過ごした時間は確かに楽しかったけど、夢のように限られている時間──

ホテルに帰ったら、覚めてしまう夢。

「出ようか」

「……そうだな」

無言でゲートに向かうふたり。

隣で歩くたかチャンの横顔は、とても悲しそうだった。

ホテルへ向かう電車は、夢から現実に戻る電車のようだ。

USJからほとんど口を開かないたかチャンに、アタシは声をかけた。

「今日は楽しかったね。ありがとう」

「おぅ」

夢──

この感覚は、アッくんと過ごした屋上での出来事を思い出させた。

あのときアッくんに気持ちが揺れ動いたように、今日1日でアタシの気持ちはたかチャンに向かっている。

友達を越えた、何か違う気持ち……。

赤い糸 たかチャンともう少し一緒にいたい気持ちになる。

そんな気持ちはダメという理性。

まだ一緒にいたいという本能。

ふたつの両極端の思いで、アタシの心は揺れる──

トンッ……。

電車の揺れに合わせて、肩に重みを感じた。

ふと肩を見ると、たかチャンの頭が乗っていた。

スー、スー、と気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

「寝ちゃったんだ……」

たかチャンの顔にかかった前髪をそっと払ってあげると、可愛い寝顔が見えた。

いつもはキリッとしてるのに、寝顔は子供のように幼い。

可愛くて、思わず頭をヨシヨシとなでてしまった。

電車がホテルの最寄り駅に着き、たかチャンとアタシは電車を降りた。

たかチャンはまだ眠いのか、瞼をゴシゴシこすっている。

「なかなか起きなかったから、乗り過ごしちゃうんじゃないかと思った! ! 起きてくれて良かったよぉ」

「わりぃー寝ると思わなかった!」

「もぉ~っ」

怒ったフリをするアタシに、謝るたかチャン。

駅のホームを歩き、改札を抜けた。

赤い糸 もうすぐふたりの時間は終わってしまう……。

駅を出ると、同じ中学の生徒の姿が見えた。

「別々にホテル帰ろ」

「あ、ああ。そうだよな。一緒だと怪しいよな」

みんなにバレたら大変だ……。

アタシは立ち止まり、たかチャンに手を振った。

「楽しかった! 先に行っていいよ。ホテルでまた!」

「……じゃあな。ありがとな。芽衣」

永遠の別れでもないのに、切なくて涙が出そうだった。

遠くなるたかチャンの背中──

見えなくなるまで、アタシは小さく手を振り続けた。

ホテルに戻り、また班別に夕食を取った。

たかチャンとは何事もなかったように話し、沙良たちの吉本の話を聞いた。

食事が終わり部屋に戻ると急激な眠気が襲ってきた。

睡眠不足なのにUSJでたくさん歩き、夕食で満腹になっている。

もう起きているのは限界だった。

「ごめん、寝る……」

「ええっ!?」

「まだ9時だよ?」

あまりの早寝に驚く沙良とアイちん。

「相談があるのー!」

沙良はアタシの肩を揺さぶって、起こそうとする。

赤い糸 ……沙良には悪いと思いながらも、アタシの眠気は覚めなかった。

「ごめんっ、起きたら聞くから……」

「芽衣~っ……」

アタシは深い眠りに落ちた。

眠っている間に、信じられないことが起きていた。

幸せなのは、眠っているアタシだけ──

ガヤガヤする騒ぎ声で、アタシは目を覚ました。

枕元の携帯を手に取ると、AM2:00──

なぜか部屋の電気はまだついていて、誰か泣いているようだった。

「……こんな夜中にどうしたの?」

電気の眩しさに目を細めながら声の方向を見ると、アタシ以外の同じ部屋のクラスメイトが集まっていた。

「起きたみたい……」

「よく寝られるよね」

みんなはアタシの方を見ながらヒソヒソ話している。

みんなの中心で、沙良が泣いているようだ。

「どうしたの? ……沙良、泣いてるの?」

「はぁ!? 『泣いてるの?』 じゃないよ! ! 芽衣のせいだよ! !」

「えっ?」

アイちんがキレた。

睨まれて体が固まる。

嫌な予感がした。

赤い糸 沙良は大きな涙をポロポロとこぼしながら、アタシの布団に近づいてきた。

悲しい瞳──

沙良のこんな目をみたのは初めてだった。

何かにとりつかれたように、表情は何もない。

「さ……沙良……」

沙良の様子に体が震えた。

逃げるように布団から出て、座ったまま後ずさりするアタシ。

頭から血の気が引いていくのがわかる……。

沙良は壁に背をつけたアタシの目の前にペタンと座りこんだ。

そして感情のない声で話しかけてきた。

「ねぇ……何で嘘ついてたの? アタシの話聞いて、心ん中で笑ってたの?」

「違うよ……」

「高橋クンを好きだった沙良はバカみたいだよね」

沙良はいつもの沙良ではなかった。

赤い糸 アタシはパニックになりながらも、沙良に話しかける。

「沙良、ちが──」

「何が?」

「話をきい──」

「言い訳はいらない」

沙良は聞く耳すら持たない。

沙良の目から、いきなり激しい憎悪が伝わってきた。

沙良はキレた。

「友達だと思ってたのにぃーっ! !」

バシッ!

沙良は叫び、近くの枕をつかんでアタシに投げつけた。

頭がおかしくなったように、発狂し始める──

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