「外国船を発見すると、あそこで狼煙《のろし》をあげて知らせたんですね」
「そうだ。時忠が住みついた場所は、言ってみればそういう重要な土地のすぐそばさ」
「狼煙《のろし》か……」
浜田は北海の荒波が吠える岬の突端を思い泛べていた。
「狼煙には今でも灯台がありますよ。すぐそばに山伏山というのがあって、昔はそこの山に出る狼たちの糞を集めて狼煙の燃料にしたんだそうです」
小野が言うと、南川は半信半疑の顔になった。
「へえ。それで狼の煙と書くのかい」
「どうですかね」
陽がかげりはじめていた。沖からホテルのほうへ一直線に、小さなモーター・ボートが凪いだ海の上を近寄って来ていた。