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■■ 鈴が鳴る! ~第六回~ ■■

作者:日-紅子 当前章节:2760 字 更新时间:2026-6-22 21:37

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 家庭科室を覗いてみた。放課後は手芸部が部活に使ってるはずだ。

 通常教室よりも広く作られた室内は女の子だけだった。

 いきなりの訪問者に全員が顔を上げる。

 が、すぐさま自分の作業に戻ってしまう。

 男だと入部希望者ではないだろうし、鳴海はそれほどイケてる生徒ではない。

 当然のリアクションだろう。

 それにしても、全員が並んで編み棒を動かす様はかなり不気味だ。

 女の子ばかりの楽しい部活という噂は、幻想だったかも知れない。

「無愛想でごめんね。文化祭に向けて、みんな真剣なの」

 立ち尽くす鳴海に、眼鏡の子が優しく声を掛けてきた。

 グリーンのネームプレート。三年生だ。

「え、あ、ボクの方こそ、いきなりお邪魔しちゃって」

 やや緊張して早口になってしまう。

 そんな鳴海に好意的な表情を浮かべながら、

「で、何の御用かな」

 用向きを尋ねる。

「あ、えっと、一年の春日さん、居ます?」

 眼鏡の奥の目がすっと細くなる。冷ややかな視線。

「あ、違うんです。あの、春日さんに頼まれてた事があって」

 何が違うのか解らないが、大慌てで否定する。

「ふ~ん。頼まれてた事ね」

「クラスメイトなんです」

「そのスケベ面はイマイチ信用できないな」

「う」

 なかなか酷い評価だ。

 しかし、こういう場合に真剣に訴えるのも、逆に怪しい気がする。

 どうすればいいのか。

「うそうそ。冗談冗談。変なナンパ野郎がたまに来るの」

 眉をひそめ、大袈裟に溜息を溢してみせる。

「色々大変なんですね」

 鳴海のコメントに、ぷっと吹き出した。

「神楽坂くんだっけ? 君、面白いね」

 ころころと変わる表情が魅力的な人だなと思う。

「あ、そうそう、春日さんね。体調が悪いらしくて、保健室でちょっと休んでから帰るって」

 保健室で休む。まさか。

 次に眠ったら、おそらく。

 リンの冷酷な言葉が過ぎる。

「昨日さ、あんまり眠れなかったからって……。どうしたの?」

「あ、ありがとうございます」

 礼を残して、脱兎の如く部室を飛び出した。

 廊下を全力疾走で保健室に向かう。

 家庭科室は東校舎の三階、保健室は南校舎の一階にある。

 一分も掛からなかった。

 扉を乱暴に開けて、滑り込んだ。

 中の様子を確認する。誰もいない。

 奥のベッドのカーテンが掛かっているのが見えた。

 弥生が横になっているのだろう。

 ギリギリ間に合ったみたいだ。ほっと息をついた。

 っと、こうしてる場合じゃない。眠るのは危険だ。

 とりあえず起こさないと。ベッドの方に向かう。

 最初に違和感を感じたのは音だった。

 水滴の落ちるぺちぺちと定期的なリズムが聞こえた。

 なんだろう。

 不安が広がっていく。

 音は明らかに進む方から、ベッドの方から聞こえてくる。

 壁にもたれていたパイプ椅子を無意識に掴んだ。

 本能が危険を告げている。

 次は色だった。

 掛かったカーテンに赤黒い染みついている。

 いつも神経質なくらい白くクリーニングされていたハズなのに。

 唾を呑んだ。後頭部が熱を持つ。脳が麻痺するような錯覚。

 足先に何か当たった。

 ほっそりとした細い腕に見えた。マネキンだろうか。

 根元から不自然にねじ切られ。肘から先があらぬ方向を。

 何故、こんな物がベッドの近くに転がっているのか。

 カーテンに手を伸ばす。ゆっくりとゆっくりと。

 さらりとした感触が触れた。

 開けようと。

 重い。

 じんわりとした重さ。

 濡れている。

 液体に。

 赤い。

 黒い。

 生臭い。

 匂い。

 水滴の音。

 カーテンに映る影。

 大型の犬よりも更にデカイ。

 ぴちゃぴちゃと耳障りな。

 小さな呻き声。

 力を込める。

 震える手。

 一気にカーテンを。

 開いた。

 ありえない光景だった。

 異形の獣。

 黒いぬめぬめした肌。頭部を埋め尽くした沢山の目。

 仰向けに倒れた少女。根元から千切られた右手と左足。

 腹部に獣の顔が潜り込み、ぐちぐちと音を立てていた。

 獣の口が動く度に、少女から微かに絶望の息が漏れる。

 虚ろに天井を見つめる瞳から涙が流れて頬を伝う。

「うわぁぁぁ!」

 何も考えなかった。

 手にしたパイプ椅子を振り上げ、獣の頭を力一杯に殴りつける。

 手が痺れた。鉄の塊を打ち付けたかのような重い反動。

 獣が顔を上げる。いくつもの瞳が次々と鳴海をを追ってくる。

 食事中の乱入者に対する明らかな敵意。

 剥き出した牙の間から、獰猛な唸りが溢れた。

 鉤爪を備えた太い腕を無造作に振るう。

 咄嗟に構えたパイプ椅子が、粉々に吹き飛んだ。

 じりじりと後退る鳴海に、舌なめずりをしてみせる。

 それは時間を掛けて、いたぶり殺すという宣言だ。

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