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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15370 字 更新时间:2026-6-22 21:38

そして──

アタシの行動を詮索し始めた。

携帯の着信履歴を見られ、送受信メールもチェック。

遅刻したくらいで……。

やましいことなんてしてないのに。

そのときは、少しだけ気分が悪かった。

だけど、たかチャンともめたくもない。

アタシは、何も言わなかった。

──アタシが5時に着けばいい。

遅れたアタシが悪いんだ。

そう考えて……。

5時に着けば、改札前に笑顔のたかチャンが待ってくれている。

アタシは、たかチャンの笑顔が大好きだった。

笑顔を見ると、友達と遊べないつらさもすべて忘れられる。

……たかチャンに会えて嬉しい。

そう心から思う。

束縛が嫌だと思いながらも、会えばいつも幸せだった。

赤い糸 たかチャンは6時過ぎの電車で学校へ向かう。

たった1時間のデート。

別れを惜しむように、アタシは毎日ホームまでたかチャンを見送った。

──4月も終わりに近づいたある日曜日。

ふたりは街に遊びに出た。

いつものように手を繋ぎ、プリクラを撮ったり買い物をする。

「最近ゆっくり話せるのは土日くらいだなぁ」

「……そうだねっ。平日は5時から6時までの1時間しか会えないもんね……。寂しいね」

「今日はいっぱい一緒にいよーな!」

クシャクシャ

アタシの頭を、愛しそうにたかチャンはなでてくれた。

──そのとき、

「おーい! 芽衣! !」

そう言いながら、正面から男の子が来た。

同じクラスの男子だ……。

チラッとたかチャンの顔を見ると、明らかに怒っている横顔──

「チッ。行くぞ」

「──ッ!」

たかチャンは、グイッとアタシの手を引っ張った。

近寄ってくる男子を無視し、歩き出してしまうたかチャン……。

「あっ! また明日ねっ──」

アタシは男子に声をかけ、引きずられるようにたかチャンについて行った。

赤い糸 どんどん不機嫌になるたかチャンの顔……。

アタシの手を引いて、たかチャンは歩き続けた。

「ね……ねぇ……さっきの人はクラスメ──」

「──別にいいよ」

アタシの声は遮ぎられた。

──機嫌悪くなっちゃった。

男子に感じ悪いこともしちゃったし……。

振り返ると、さっきの男子が不思議そうにアタシを見ていた。

はぁ……。

いきすぎのヤキモチだよね。

「──なんで振り返ってんの!?」

「え? なんでって言われても……」

「そんなに今のヤツが気になんのかよ!」

つかんでいたアタシの手を放し、たかチャンは立ち止まった。

なんでそんなに怒るの?

ただのクラスメイトと話しただけじゃん……。

「せっかくの日曜なのに、なんでそーゆうことすんだよっ。一日中一緒にいれんの、楽しみにしてたんだけど」

「……ごめん」

たかチャンの剣幕に圧倒され、思わず謝ってしまう。

──だけど、内心は違う気持ちだった。

アタシ……、謝らなきゃいけないようなことしてない。

なんで謝らなきゃいけないの?

赤い糸 たかチャンの態度……、そして言葉に不満が募っていく。

「──もう、こーゆーのはやめろよ」

「わかった……」

「それなら、もういいよ」

アタシが謝ると、満足そうにたかチャンは笑った。

ハァ……。

溜め息が溢れる。

最近、溜め息が多いな……。

「じゃあ、今からカラオケでも行こーぜっ!」

ギュッ

たかチャンにつかまれた手のひら……。

──違う。

手を繋いでも、心があたたかくならなかった。

中学の頃……、手をギュッと繋げば、気持ちを伝え合える気がした。

手のひらから、お互いの気持ちが伝わって……、心が繋がってる。

──そう思っていたのに。

今日は全然違うよ……。

たかチャンのヤキモチは、アタシの心に黒い染みを垂らしていった。

ポツン……。

ポツン……。

少しずつだけど、確実に黒く染まる心。

──気がつけば、アタシの真っ白なたかチャンへの気持ちは、グレーで迷いのある気持ちへ変わっていた。

もうすぐ限界がきてしまいそう。

我慢できないかもしれないよ……。

赤い糸 迷いの中で

アタシは不満を抱えたまま、5月を迎えた。

今日はGW初日だ。

学校に行かなくてもいいという気持ちから、昼過ぎに起きてしまった。

?~?~?~

寝ぼけた頭に、しつこく鳴り響く携帯──

……たかチャンだ。

「……はーい」

「はーいじゃねーよ。何度も電話してんだけど」

「寝てたぁ……」

「嘘だろ!? だってもう昼過ぎだぞ。こんな遅く起きるの、おかしくない?」

またこんな会話かぁ……。

いつもの勘ぐり病が始まったよ。

「……休みなんだから、昼過ぎまで寝てただけ」

「はぁ? じゃあ、昨日俺と遊んだあとに夜遊びして寝坊したのか!? ──誰だよ! ! 高校のヤツだろ!?」

「──だから、違うってばっ。携帯で小説読んでたら、夜中になってて今起きたの!」

毎日エスカレートしていく、たかチャンの妄想。

可愛いヤキモチも、ただのイラつきに変わっていく。

「高校入ってから変わったよな。疲れるよ」

「──ッ! それは……」

それはこっちのセリフだよ! !

──怒鳴りたくなる気持ちを、アタシは必死に抑えた。

赤い糸 最近、こんな会話ばかりだ。

たかチャンがキレて、アタシが説明して……、最後は意味もわからないままに謝る。

「今日、どーすんだよ? とりあえず、家に来るか?」

「……」

「おい! 聞いてんの!?」

……なんか、疲れたなぁ。

たまには美亜や優梨と遊びたい。

今日、ふたりは一緒にいるはずだ……。

「今日……美亜と優梨と遊んだらダメかな?」

「──はぁ!? 無理っ」

思いきって聞いたのに、即答で断られてしまった。

たかチャンの言葉は冷たく突き刺さる。

「たまにはいいじゃん。優梨とは電話で話すくらいで、全然会ってないもん……」

「俺とだって、あんまり会えねーだろ!?」

「でも……」

「なんだよ! !」

「……」

少しの沈黙──

やっぱり無理だね……。

謝って、たかチャンと遊ぼう。

──そう思ったときだった。

「……じゃあいいよ。俺もミツや拓弥たちと遊ぶわ」

「マジで!?」

「つーか、嬉しそうに言う意味わかんない。俺は、芽衣のためを思って時間空けてんのに……」

赤い糸 たかチャンはボソッとつぶやいた。

「……」

何も言えないアタシに、たかチャンは続ける。

「学校違ってあんま会えないから、寂しがらせないよーにしてるつもりなんだよ」

「ごめん……」

この束縛は、たかチャンなりの愛の形で優しさ。

──わかってる。

だけど、この優しさの束縛が、アタシの首を絞めていくんだよ。

アタシを苦しめて、悩ませているんだよ──

たかチャンとの電話を切ったあと、アタシは優梨に電話をした。

優梨の家にはすでに美亜もいるらしい。

アタシも行きたいと伝えると、ふたりは驚いて言った。

「たかチャンはいいの?」

「平気!」

ふたりの問いに、明るく答えた。

……傷ついた様子のたかチャンのことは気にかかる。

だけど──

自然と顔に笑みがこぼれた。

──楽しみ! !

寝起きの顔を思いっきり洗い、スッピンのまま走って優梨の家に向かった。

赤い糸 「久々ー! !」

「芽衣ー! !」

3人で揃ったのは、春休み以来だった。

そんなに月日は経っていないのに、懐かしく感じる。

「芽衣も来れるとは思ってなかった!」

「アタシもっ!」

「来てくれて嬉しかったぁ!」

3人は中学時代のように、輪になって座った。

そして、近況を語り合う。

「ねぇ、海斗クンってどんな人なの!?」

優梨の問いに、美亜の顔は赤く染まっていった。

恋をしてから、ほんとに美亜は可愛くなったなぁ……。

「……海斗クンはねぇ、マジでかっこいいのぉ? それに、優しいんだぁ」

「まぁ、確かに顔はいいよね!」

「──でしょ!? ジャニーズなら、○○クンに似てるよねぇ?」

……そこまではいってない気がするけど。

まぁ、そこはつっこまないことにしよう。

「そーなんだぁ! でも、いい人に会えて良かったね!」

「うん! ! 美亜、頑張るよぉ☆ 優梨はどうなの? ナツくんとは相変わらず順調なの?」

「──え?」

美亜の質問に、優梨の顔が一瞬曇った。

赤い糸 だけど──

すぐに優梨はいつも通りの顔に戻る。

「順調だよ?」

「そっかぁ~☆」

嬉しそうに笑う優梨。

さっきの顔は、何なんだろう……。

──気にかかる、あの顔。

まぁ……順調らしいし、気のせいかな?

「芽衣は……なんだかんだでも、変わらずラブラブだよねぇ」

「──!? アタシ? アタシは……」

いきなり話をふられ、動揺してしまった。

「うーん……順調なのかなぁ?」

「毎日会えるんだから、順調でしょ!?」

「そうでもないかも……束縛ひどすぎるし、勘ぐり病もひどいもん」

「──まぁ、そうだよねぇ。たまに優梨もいきすぎかなって思うけど……愛してる証拠だよ?」

「確かに! 愛がないとできないよ! クラスの男子と話すだけで、怒るらしいもんね」

ふたりは笑っていた。

アタシもつられて笑顔になる。

たかチャンの束縛や妄想や勘ぐりは嫌だけど……、「愛してる証拠」と言われ、ほんとに嬉しかった。

アタシはたかチャンに不満を感じつつも、愛してるんだな──

……そう実感した。

赤い糸 気づけば、夜の8時をまわっていた。

「もうそろそろ帰ろうかなぁ?」

「……もう!?」

「はやっ! !」

「うん。帰るよぉー」

まだ3人でいたいけどね……。

それより、アタシはたかチャンに会いたかった。

傷つけたことも謝りたい。

優梨の家を出ると、すぐにたかチャンの携帯に電話した。

トゥルルルル……

〈留守番電話センターに転送します〉

機械的な女性のアナウンスが聞こえる。

……あれ?

携帯に出ないなんて、珍しいな。

?~?~?~

「──あっ!」

たかチャンからメールがきた。

〈今、ミツと拓弥と酒井と4人で遊んでる!どうした?〉

……まだ一緒なんだね。

会えないかな?

自分から断ったくせに、たかチャンからのメールはショックだった。

〈そっかぁ…今から会いたかったんだぁー。〉

すぐに返事がくる。

〈芽衣が優梨チャンや美亜と遊ぶって言ってたから、まだかかると思った。今は無理だから、夜中に会おう。11時くらいは?〉

11時かぁ……。

赤い糸 ──やっぱり、帰っちゃおうかな?

無理して会うことないし……。

アタシはたかチャンの家に向かうのを止め、自宅方向に引き返そうと足を止めた。

──そのときだった。

視界に……いるはずのない人が歩いて来た。

「……え?」

人違いだよね?

次第に近くなり、顔がはっきりとわかるようになったとき……。

「芽衣じゃん!」

人影は、芽衣に声をかけた。

「酒井……何してんの?」

「久々ー! 今、拓弥とふたりで待ち合わせてるところ! 高橋は来ないけど、芽衣も行く?」

「……あ。アタシはいいや。あのさ……たかチャンと一緒にいた?」

──いた。

そう言ってほしい。

だけど……。

「高橋はいないよ! 今日、断られたぁ。芽衣と一緒じゃないんだぁ……」

酒井の声が、アタシを奈落の底に突き落とす──

たかチャン。

アナタは今、何をしているんですか?

赤い糸 アタシは、なぜか平然を装って答えた。

「そっか! 一緒かと思ったよ。今、優梨たちと会って帰ってるところなんだ。またね!」

「おう! !」

バクバクバクバク

気持ちとは裏腹に、鼓動が速まって足も震えてきた。

地面に立つだけで苦しかった。

たかチャン、嘘ついたんだね……。

──そう思うと、涙が出そうになる。

だけど、嘘をつかれた惨めな姿は、誰にも見せたくない。

酒井がどこかに行くまででいいから、アタシの足、しっかり地面に立たせて──

酒井は手を振って歩きながら、スッと角をまがった。

そして、視界から消えた。

ペタン

アタシはそのまま地面に座り込んでしまった。

「あはは……」

なぜか、笑いが溢れてくる。

アタシ……、何してんだろう。

たかチャンがアタシに嘘ついたこと、誰にも知られたくなくて──

酒井にも、知らないフリをした。

?~?~?~

〈返信ないけど11時でいい?ダメならこのまま酒井んちに泊まるよ?〉

たかチャンからのメールだ。

赤い糸 ……酒井んち?

今、酒井に会ったんだけどね。

喉まで出かかった言葉を、胸に閉まう。

……そして、

アタシはそのまま、携帯の電源を切った──

……優梨の家に戻ろう。

帰った意味がなくなってしまったアタシは、優梨の家に引き返した。

頭の中で、たかチャンの声がグルグルと回る……。

たかチャンが嘘をついた。

たかチャンが嘘……ついた。

その事実が、頭にこびりついて離れない──

家に着くと、玄関で優梨が迎えてくれた。

美亜はちょうど帰ったところらしく、入れ違いになってしまったようだ。

「どうしたの? 忘れ物?」

「……ううん、違う。じ、実は──」

──話そうとしたときだった。

急に唇が震え始めて、声の代わりに、涙が溢れて来た。

「──何かあったの!? とりあえず、アタシの部屋に行こっ……」

「──ッ……グスッ……」

優梨に手を引かれ、アタシは優梨の部屋に向かった。

赤い糸 「……たかチャンが……嘘……グスッ……嘘をついたのぉ……」

「え? 嘘って、どしたの?」

困惑する優梨。

アタシは泣きながら説明をした。

混乱してうまく説明ができなかったけど、優梨は優しく聞いてくれた。

嘘ついたなんて、信じたくない。

だけど……、優梨に話したことで、たかチャンの嘘は現実なんだと実感してしまった。

「……浮気とか?」

「──!?」

まさか……。

それはないよね?

すべてを聞き終えた優梨の口から出た言葉に、一瞬息すらできなくなった。

体が固まり、不安は強まっていく。

──そんなこと考えたくもないけど、もしかして……。

アタシの不安と疑惑は、どんどん増していく。

「ねぇ、どうしよう? 浮気だったら……」

「あ、あの……万が一だよ、万が一。多分違うよー」

動揺するアタシを見て、慌てて優梨は訂正した。

「浮気してるなんて……」

優梨の声は、今のアタシには届かなかった。

頭の中に、悪い想像ばかりが広がっていく──

「非通知でたかチャンにかけてみようかな……」

「……?」

「非通知なら、電話に出るかもしれないし……」

たかチャンを騙すような行為だってことはわかってる。

──だけど、アタシは携帯を手に取った。

電源を入れ、たかチャンの番号の前に184をつける。

「それでいいの? もし出て、浮気してたら嫌じゃない!?」

「だけど、このままじゃ……」

今、たかチャンが何をしてるか知りたい。

メールなら嘘をつけるけど、電話なら周りの音から事実がわかるかもしれない。

どうしよう……。

知りたくないけど、知りたいよ──

ピッ

躊躇しながらも、通話ボタンを押した。

トゥルルルル……

呼び出し音が鳴る度に、胸がギューッと痛くなる。

鼓動が早まっていく……。

「──はい」

5回目の呼び出し音で、携帯からたかチャンの声がした。

そして──

「キャハハハッ?」

「……だよねぇ 」

たかチャンの声と一緒に、女の声も耳に入ってきた。

予想していた最悪な現実が突きつけられる──

「誰?」

「……」

頭が真っ白になった。

鼓動はさっきよりも激しく鳴り、体中から冷や汗が出てくる。

なんて話せばいいの?

──声も出ない。

「──チッ。誰だよ? ……イタ電か!?」

「陸、誰ぇ?」

「切っちゃえー?」

怒るたかチャンの声。

そして、耳に障る女の声が聞こえる。

……女が陸って呼んだ。

なんなの?

アタシだって陸なんて呼んだことないのに……。

──アタシの彼氏に馴れ馴れしくしないで!

女の声に、頭に血がカーッとのぼっていった。

「黙ってんなら切──」

「つーか、何やってんの? 誰といんの!?」

女の声で、さっきまでの不安や恐怖は消えた。

代わりにアタシの頭の中は、苛立ちに支配されていく。

怒りで体が震えた──

赤い糸 浮気

「……芽衣か?」

恐る恐る、たかチャンは言った。

──芽衣か? ……だって。

はぁ!?

「何してんの!?」

「あ……あのさ……拓弥の知り合いの女がいて……たまたま今、話してたところだったんだよなぁ」

「──はぁ? 拓弥クンは今、酒井とふたりで遊んでるんじゃないの?」

「何言ってんだよ……一緒だってメールしただろ?」

「嘘つきだね。あと、陸って呼んだ女って誰なの?」

しどろもどろになりながらも、嘘をつき続けるたかチャン。

それがアタシを、余計に腹立たせていく──

「誰なの!?」

「だから……」

「拓弥クンの知り合いが、なんでたかチャンを陸って呼ぶの!? ──嘘つかないでよ! ! アタシ、さっき酒井に会ったんだからっ! ! ほんとは何してんの!?」

悔しい……。

ほんと最低だよ──

赤い糸 頭の中がグチャグチャに混乱していく……。

「……今から行く。どこにいんの?」

「もういいよっ。浮気してる人になんか会いたくもないっ!」

「──浮気はしてないって! 会って話すから、話聞いてくれよ! !」

「もういいってば! しばらく会いたくないからっ! !」

ピッ

プー…プー…プー…

アタシは一方的に通話を切り、そのまま電源も切った。

これ以上、言い訳も何も聞きたくない。

「……大丈夫?」

「ハァ……大丈夫じゃないよ……」

優梨の声に、カッとなっていた頭から血が引いた。

怒りも消えていく。

そしてアタシの胸には、虚しさだけが残った──

「ありえないよ……一緒にいる女たち、誰なんだろ」

たかチャンが浮気するなんて、思ってもみなかった。

あれだけ毎日一緒にいて、束縛されて……。

愛されてるって思っていたのに。

ねぇ?

あれは偽りの愛情表現だったの?

赤い糸 優梨はアタシを諭すように言う。

「ちゃんと話し合ったほうがいいんじゃない?」

「……もういいよ。会いたくないもん」

「芽衣……会わなくていいの?」

コクン──

アタシは首を縦に振った。

──しばらく優梨と話し、アタシは重い気持ちで家に帰った。

頭の中がたかチャンでいっぱいで、ベッドに入っても眠れない。

今、何してるんだろ……。

まさかさっきの女と!?

……ううん、違うっ!

そんな訳ないよねっ!?

自問自答を繰り返し、嫌な想像を消すように頭を振る。

気になって仕方ないよ。

やっぱり、素直に会えば良かった。

意地を張らずに話し合えば良かった。

メール、きてるかな?

不安に耐えきれなくなり、アタシは携帯の電源を入れた。

?~?~?~

受信7件。

すべてたかチャンからのメールだった。

〈電話して!〉

〈話したいから電話かけて!〉

同じような文章で、電話してという内容のメールが6件。

赤い糸 そして最後の1件のメールは……。

〈今、芽衣んちの前にいる。来てくれるまで待ってるから!〉

……えっ?

受信時刻は、夜の11時過ぎだ。

今は──

携帯の待ち受け画面を見ると、AM03:35と表示されていた。

4時間半も前のメールだし、もういないよね?

まだ5月になったばかりだから、外は寒いし……。

アタシは携帯を閉じて、毛布を頭から被った。

──だけど……。

頭の中に、たかチャンの誕生日の日の光景が浮かぶ。

寒い中、アタシを待っていたたかチャン。

氷のように、冷たくなった手のひら……。

もしかして──

アタシはベッドから降り、パジャマにジャケットをはおった。

そして、静かに家を抜け出す。

きっと、いる訳ない。

……だけど、もしかしたら?

アタシは階段を駆け降りた──

赤い糸 ウィーン

オートロックの扉を出ると、外はシンと静まり返っていた。

やっぱいる訳ないよね。

──足を止め、引き返そうとしたとき。

「──ックション! ゴホッ……ゴホッ──」

「──!?」

外から咳き込む声が聞こえた。

まさか……。

アタシは声のする方向に走った──

暗がりの中、マンションの脇に座り込む人影。

「……たか…チャン?」

声をかけると、座り込む人影はアタシの方を振り向いた。

月明かりに照らされたその人は──

「なんでいるの? もう、真夜中だよ……」

「待ってるって、メールしただろ……ゴホッ……」

寒そうに震えるたかチャンだった。

……なんで待ってんの?

馬鹿じゃないの?

アタシははおっていたジャケットを脱ぎ、たかチャンに駆け寄った。

そして、座り込むたかチャンの肩にジャケットをかける。

「………さみぃ。やっと出てきたな」

「馬鹿っ! ! 風邪ひくじゃん! !」

「馬鹿は風邪ひかねーから、大丈夫!」

そう言い、たかチャンは笑った。

赤い糸 「とりあえず、うちに行こ?」

「……いいの?」

「仕方ないじゃん……」

アタシはたかチャンに手を伸ばした。

──冷たっ……。

アタシの手を握るたかチャンの手は、冷えきっていた。

部屋に入ると、たかチャンは床にペタンと正座をした。

「──な、何!?」

「今日はほんとにごめんなっ。悪かったと思ってる!」

たかチャンは頭を下げた。

「……今日は、何してたの?」

「ミツと海斗と一緒にカラオケ行ってた。……途中で海斗が同中の女を3人呼んで、6人で遊んでた」

「……ふうん」

平然を装いながら答えるアタシ。

本当は頭が混乱して……、気を抜くと、全身が震えそうだった──

電話でわかっていたけど、たかチャンの口から事実を聞きたくなかったよ……。

「──そ、それで?」

「ただ、カラオケ行って帰っただけ……」

「……」

聞きたいことは山ほどあるのに……。

臆病なアタシは、何も聞けなくなった。

「芽衣、許してもらえない? もう誘われても絶対に断るから……」

赤い糸 「……」

許してしまいたい気持ちと、絶対許せない気持ちで揺れる心──

「もう、絶対にしないから……嘘つかないから──」

「……信じれない」

一度やったことは、二度も三度も繰り返してしまうんじゃないの?

アタシは一度もたかチャンを裏切ってないのに……。

束縛だって我慢してる。

友達より、いつもたかチャンを優先してた。

それなのに、たかチャンはアタシを裏切ったんだよ──

「……簡単に、信じれないよ」

「信じて……」

「……わかんない」

本当にどうしたらいいのかわからない。

好きだから……。

信じてたから……。

その分、今日はショックや怒りが強かった。

「だから……もうしないって言ってんだろ?」

「……信じれないもん」

「いい加減、わかってくれよ! 何で信じてくんねぇの? ハァ……」

そんな簡単に許せないよ。

たかチャンは溜め息をついた。

そして……。

「芽衣チャン、お願いだから許してよー……」

「──ッ! !」

たかチャンが立ち上がり、ベッドに押し倒してきた──

赤い糸 「──ッ……何してんの!? 嫌っ……」

「許してくれたら、離してあげる?」

「──はぁ!?」

開き直ったように笑うたかチャン。

アタシはベッドに押さえつけられ、身動きが取れなかった。

「芽衣が好きだから、もうしないっ! ! 機嫌直してっ☆」

「……はぁ!? ちょっといい加減にしてよっ!」

振り払おうと、バタバタもがく。

──すると、たかチャンはふざけるのをやめた。

「元はといえば、芽衣も悪いだろ? 芽衣が美亜たちと会わなければ、俺だって行ってねーし!」

「アタシのせいにしないでよっ! 最低だねっ!」

開き直ってごまかして……。

しまいにはアタシのせい!?

ふざけないでよ……。

頭に血がのぼっていく──

「いい加減にしてって言ってんでしょ!? なんなの!? ──もういい! 別れるっ! ! 毎日束縛ばっかりで、嫌気がさしてたの! ついてけな──」

バシッ

左頬に痛みがはしった。

……?

何が起きたの?

アタシ……。

──叩かれた?

たかチャンは、アタシを睨みつけた。

「はぁ!? ふざけんな!」

赤い糸 まるで、何かが乗り移ってしまったようだった。

こんな顔、見たことがない──

「てめぇが一緒にいなかったのが悪ぃんだろ!? 別れねぇからな! 俺と友達、どっちが大事なんだよ! !」

「……え?」

「え? じゃねーだろ! 答えろよ! !」

ビクッ

怒鳴り声に体が震えた。

怖いよ。

質問の意味も、わからない……。

メチャクチャだよ──

叩かれた左頬が、ズキズキと痛み出した。

どうしたらいいの?

「……たかチャン。怖いよ……急になんで──」

「前からずっと気になってたんだよ! いつもいつも俺より高校のヤツばっか見て──なぁ? そうだろっ!?」

たかチャンはアタシの肩をつかみ、グイグイ揺さぶった。

されるがままのアタシ。

「年始ぐらいにコータ君からも聞いたよ! お前、コータ君とヤッてたらしいじゃん! ! しかもコータ君を利用するだけして、捨てたんだろ!? そんなん聞いて、不安になんねーヤツいるかよ!」

──聞いてたんだ。

たかチャンの目は、怒りから悲しみに変わっていった。

赤い糸 「……だってそうだろ!? 俺だっていつ捨てられるかわかんねぇーじゃん!」

「たかチャン……」

肩をつかむたかチャンの手が、フッと緩んだ──

そして、たかチャンはそのままアタシを強く抱き締めた。

「……俺の気持ち、わかるか? 芽衣を……自分の彼女のことを……芽衣チャンは危ないから気をつけてねぇとヤバいぞ……って……そぅ言われた俺の気持ち──芽衣はわかるか? ……束縛してねぇと不安になんだろ」

たかチャンの声は震えていた。

ビクッ

叩かれた左頬をなでられ、思わず体が固まる……。

「──ッ。怖がるなよ……もう叩かないから。ごめんな。痛かったよな……」

それは、いつもの優しいたかチャンの声だった。

「……ウ……ウウッ……」

気が緩み、思わず泣いてしまった。

怖かった……。

怖かったよ……。

「ごめん……もう絶対にしないから。浮気もしないし、芽衣を怖がらせないから──」

たかチャンはアタシの涙を拭い、赤くなった頬を優しくなでた……。

赤い糸 異常な行動

そして、アタシとたかチャンはベッドで愛を確かめ合った。

たかチャンを不安にさせたアタシが悪いんだ。

アタシがたかチャンに浮気させてしまったんだ……。

たかチャン、ごめんね。

このときから、アタシは感覚がおかしくなってしまったのかもしれない。

暴力を振るわれたのに。

恐怖があった分……、その直後の優しさを、とても幸せに感じてしまった。

思わず振るってしまった暴力は、たかチャンを少しずつ狂わせていく──

GWが明けると、アタシは前と変わらない日々に戻った。

毎日高校へ通い、放課後はたかチャンと会う。

そして、必ず1日の報告をした。

──今日何があって、誰と何をしたよ?

アタシの話を、たかチャンは笑顔で聞いていた。

いろいろあったけど、こうして好きな彼氏に会えるのは幸せなんだよね……。

アタシは、そう思った。

だけど……、そんな日々は、すぐに崩壊する。

人間は、そう簡単に変われないものだった──―

赤い糸 きっかけは、5月の末に届いた1通のメールだった。

ブー…ブー…ブー…

6限目も終わりに近づいた頃、アタシの携帯が震えた。

……たかチャンかな?

先生にバレないように、そっと携帯を開く。

──あれ?

どうしたんだろ?

〈放課後、会いたい。無理?〉

優梨から短いメールが入っていた。

優梨は、たかチャンの束縛も放課後に会ってることも知っている。

その優梨が頼むんだから、きっと何かあったに違いない。

──だけど、今日も放課後、たかチャンが駅に迎えに来るだろう。

どうしよう……。

──ふと、GW初日を思い出した。

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