饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15383 字 更新时间:2026-6-22 21:38

たかチャンの約束より、優梨と美亜を優先したアタシ。

たかチャンを傷つけ、嘘をつかせてしまった。

頭の中で、友情と彼氏が葛藤する──

……やっぱり、無視できないよ。

アタシは気持ちを固め、たかチャンにメールを送った。

〈会うのを放課後じゃなくて、たかチャンの学校の後にしてもいい?優梨に何かあったみたいだから、放課後に聞いてあげたいんだ…〉

赤い糸 きっとわかってくれるはず……。

アタシは返信を待った。

──優梨は大切な親友だ。

たかチャンとは夜でも会えるけど、門限のある優梨は放課後しか会えないし……。

今日は優梨を優先したかった。

ブー…ブー…ブー…

──きた!

急いで携帯を開く。

そこには、目を疑うような文字が並んでいた。

〈嫌だ。優梨とは電話で話せばいいだろ?〉

……ダメなの?

〈何かあったみたいだし、優梨は親友だもん…今日だけだから、わかって!〉

キーンコーンカーンコーン──

返信と同時に授業は終わり、放課後になってしまった。

ブー…ブー…ブー…

〈無理!待ってるから来いよ!〉

……そんなぁ。

なんでわかってくれないの?

夜には会えるのに──

「はぁ……」

溜め息をつき、優梨に断りのメールを作り始めた。

たかチャンが無理っていうなら、行けないよ……。

ブー…ブー…

メールの文章を作っていると、優梨から電話がかかってきた。

赤い糸 「──はい。どうしたの?」

「……グスッ……め、芽衣ぃ……」

──えっ?

優梨、泣いてる?

優梨の声は震え、鼻声になっている。

「どうしたの!?」

「……アタシ、どうしたらいいのか……わかんないよ……ウウウッ……」

「──え!?」

「芽衣ぃ……会いたいよぉ……」

優梨に何があったの!?

まったくわからなかった。

いつもアタシより全然大人なのに……。

こんなに泣いてすがる優梨は、聞いたことがない。

「……ど、どこいるのっ?」

「……グスッ。芽衣の高校ぉの……前ぇ……。今から来てぇ……」

どうしよう……。

行ったらまた、たかチャンを怒らせる。

アタシは即答できなかった。

「……グスッ。やっぱ……ダメだよね……」

「……」

「か……帰るね……」

帰ろうとする優梨……。

──ッ!

たかチャン、ごめんっ! !

アタシはバッグをつかみ、走り出した──

たかチャンには悪いと思うけど、泣いてる優梨を無視できない。

赤い糸 校門を出ると、塀に背をつけて下を向く優梨の姿が見えた。

「──優梨っ! !」

「芽衣……」

優梨は顔を上げ、アタシを見る。

その顔は化粧がくずれ、涙に濡れていた。

「どうしたの!? 何があったの?」

「……ご、ごめんね。来ちゃって──」

「いいから! とりあえず場所変えよっか……」

アタシは優梨に駆け寄り、抱きながら立たせた。

……どうしたんだろう。

優梨に何が?

ふたりは学校の近くのカラオケボックスに入った。

「ここなら皆に聞かれる心配もないし……、何があったか話して?」

「……心配かけてごめんね」

優梨はソファーに座り、涙を拭いながら言う。

「アタシ……どうしたらいいんだろ──」

そして優梨は天井を見上げた。

頬を伝い、次々と涙がこぼれ落ちる……。

「……」

「あたし、お腹に赤ちゃんがいるんだって……」

「──!?」

……嘘でしょ?

耳を疑った。

「8週目らしいよ……」

優梨は他人事のように言い、お腹を優しくなでた。

赤い糸 「病院行ったの?」

「うん……今日早退して行って来たんだ」

「そっか……」

……間違いとか、気のせいじゃないってことだよね。

優梨のお腹に、命があるってことだよね?

「父親はナツくん?」

「もちろんナツだよ。たぶん、春休み中にできたんだと思う」

……そうなんだ。

実感がわかなくて、アタシは優梨のお腹に手を伸ばす。

優梨はその手を軽く握り、お腹に導いた──

「まだお腹は出てないけど、どうぞ?」

涙でグシャグシャな顔で笑う優梨。

嬉しそうな、悲しそうな、母親の笑顔……。

優梨のお腹は、相変わらずへこんでいた。

ここに命があると思うとヘンな感じがする。

「このことナツくんには言ったの?」

「……ううん。絶対言いたくない」

「なんで!?」

ナツくんが父親なのに。

なんで言わないの?

「堕ろせって、ナツの口から言われるのが怖いんだ。それに──ナツには罪を背負わせたくない……苦しむのはあたしだけで充分だから、ナツには知らせたくない」

赤い糸 優梨は涙を流しながらも、しっかりとした口調で言った。

「だけど、ふたりの子供なんだよ? それに……産むことは考えてないの?」

「──ッ……産める訳ないじゃん……うちら、まだ高1だよ? ナツは夢を追いかけて、隣の県でサッカー頑張ってるんだから──邪魔したくないの……」

優梨は寂しそうに呟く。

──でも、そんなのって……。

「ねぇ、優梨……アタシは話し合ったほうがいいと思うよ? 赤ちゃん、産みたくないの?」

「それは……どうしたらいいのか、自分でもわからないの……どうしよう、芽衣……」

?~?~?~

優梨が両手で顔を覆ったとき──

携帯が鳴った。

「優梨の携帯じゃない?」

「あ……うん。──アッくんだ」

──えっ!?

アッくん?

「さっき、アッくんにも電話してたの……でも、繋がらなくて──出てもいい?」

「うん……」

久しぶりに聞くアッくんの名前に、少し複雑な心境になる──

赤い糸 たかチャンとつき合うことになったとき、アタシとアッくんは、お互いに距離をあけた。

そして、卒業してから一度も会っていない。

アタシの高校から歩いて10分ほどにある商業高校に進学したことは聞いているけど……。

優梨はしばらく話し、電話を切った。

「どうだった?」

「あのね……今からアッくんが来たらまずいかな?」

「──マジで!?」

アッくんが来る?

ここに?

?~?~?~

今度はアタシの携帯が鳴った。

〈あと10分で電車乗れよ! !そうしないと遅刻になるからな! !〉

たかチャンからのメールだ。

携帯の時刻を見ると、4時半を少し過ぎていた。

……どうしよう。

行かないと、また怒らせる。

だけど──

「……たかチャンから?」

「うん……。もう行かなきゃ間に合わないかも──」

「そっか……今日は少しでも話せて良かった。芽衣はアタシの親友だから……」

優梨は寂しそうに笑い、アタシに手を振った。

……これでいいの?

アタシは親友を置いて行くの?

赤い糸 迷いながらもバッグを持ち、立ち上がった。

「また後で電話するから……」

「……うん」

部屋を出ようとし、ドアに手をかける……。

でも……どうしよう。

ここを離れてもいいの?

アタシがつらいとき、助けてもらったのに……。

ドアノブを握り締めたまま、アタシは動けなかった。

「……やっぱ、残るっ!」

「えっ!?」

「たかチャンにはメールして断るから……」

──やっぱり行けない!

6限目から考え抜いた末、優梨を取った。

たかチャンには、

〈優梨といるから今はいけない。夜に会おう〉

とメールする。

「アッくん来ても平気だよ。これからどうするか、3人で考えていこう?」

「……芽衣ありがと」

優梨は泣きながらメールを打っていた。

……たかチャン怒ったかな?

きっと、怒ってる──

しばらくすると、部屋にアッくんが現れた。

変わらないなぁ──

「あれ!? ──芽衣?」

「あ……。さっき言ってなかったよね?」

「……」

赤い糸 アタシに会いたくなかった?

露骨に黙るアッくんに、不安がよぎる……。

──少しの間の後、アッくんは少し笑って言った。

「久々だな。制服、似合ってる」

「アッくんもね……」

初めて見た制服姿のアッくんは、中学時代の学ランより似合ってる気がした。

嫌がられてないみたいで、良かった……。

──だけど、今はそれどころじゃない。

「優梨……話せる? アタシから話そうか?」

「──うん……ゴメンね」

優梨は切なそうに顔をしかめ、両手で顔を覆う。

つらいだろうな。

不安だよね──

「さっきの電話の話、ほんとなのか?」

「妊娠8週だって……」

「……」

口に出すのがつらかった。

アタシたちが大人なら、愛し合うふたりの子供なんだから、祝福できたのに──

アタシは優梨から顔を反むけた。

姿を見てたら、次の言葉なんか言えないよ……。

赤い糸 優梨のお腹にいる小さな命に、死刑を宣告する言葉。

「……ナツくんに内緒のまま、堕ろすんだって」

「優梨……そうなのか?」

問いかけるアッくん。

優梨は顔を覆ったまま、小さく頷いた。

「それはやめろよ。ナツと話し合えよ」

「ナツくんを悩ませたくないみたい……」

「芽衣に聞いてるんじゃない。優梨に聞いてんだよ」

アッくんは優梨の横のソファーに移動する。

そして、顔を覆う両手を下ろさせた。

目をジッと見るアッくんと、斜め下を見て視線をそらす優梨……。

「優梨はそれでいいのか? ナツは父親だ。子供は優梨だけの子供じゃないだろ?」

「……ナツの邪魔したくないの。心配かけたくないし、子供ができたことで気まずくなるのは嫌なの──」

「──は?」

「堕ろして、何事もなかったようにする……それが一番いいでしょ?」

見る見るうちに、アッくんの顔色が変わっていく。

アタシは、黙ってふたりの様子を見ていた。

赤い糸 「……だったら、最初から作るんじゃねーよ。避妊しなかったら子供できんの当たり前だろ!? ナツにも責任あんだろ? ──子供の命はそんなに軽いのかよ! !」

バンッ

「──ッ! !」

アッくんはやり場のない怒りをぶつけるように、壁を叩いた。

「アタシだって──ウッ……アアッ……」

優梨はアッくんの肩にしがみついて泣く。

アタシには、優梨の気持ちもアッくんの言い分もよくわかる……。

見ているのがつらかった。

「ほんとは……ウウッ……こ、こんなことしたくないっ! ナツの赤ちゃん……グスッ……産みたいよ。堕ろせって言われるの……わかるからっ……それなら言わないで堕ろしたい──」

……優梨。

やっぱり産みたいんじゃん。

好きな人の子供なんだから……。

どんな状況だって、嬉しく思う瞬間があるんだろう──

?~?~?~

あ……。

たかチャンだ。

時計を見ると、針は5時過ぎをさしている。

……どうしよう。

待ってるのかな──

赤い糸 腕時計から顔を上げると、優梨と視線がぶつかった。

「──たかチャン?」

「……」

この状況だし、電話なんて出れないよ……。

それに、アッくんの前だ。

アタシの幸せを願って、背中を押してくれたアッくん。

今出たら、たかチャンは怒鳴りちらしてキレるだろう。

そんな姿、見せれないよ──

プチッ

アタシは電話を切り、サイレントに設定した。

「……大丈夫か?」

「うん、平気。学校の友達だったから……」

アタシは嘘をついた。

そして、携帯をバッグにしまう。

「ごめんね……話、続けてっ」

携帯はバッグの中でもピカピカと光り、着信を知らせている。

たかチャンがかけ続けているんだろう。

なんでたかチャンはいつもこうなの?

アタシの都合を何も考えず、束縛する……。

「なぁ、優梨。産みたいなら、なおさら言ったほうがいいと思うぞ。ナツに話せよ。産みたいって伝えろよ」

「……無理だって言ったじゃん」

「だから……言わなきゃわかんねーだろ?」

アッくんの言葉に、優梨は戸惑っていた。

赤い糸 優梨とナツのことを真剣に考え、アッくんは一生懸命に話し続ける。

友達思いなところも変わってないね……。

トクン──

アタシの心臓は、大きく脈を打った。

たかチャンは、どうして友達を大切にさせてくれないんだろう。

アッくんと全然違うね。

──ダメッ! !

比べたらダメだよ……。

アタシ、何してんだろ?

元カレと今カレを比べるなんて、最低だよね……。

しばらく3人は話し合い、ひと晩考えることになった。

「また明日どこかで集まろ。優梨も体が大変そうだし」

「──ありがと」

「じゃあ、駅に向かうか!」

3人はカラオケを出て、駅に向かって歩き出す。

優梨は少しずつ、笑顔をのぞかせるようになった。

ふたりに話して、少しは気持ちが楽になったのかな?

「もう空が暗いな」

「何時かな? 門限ヤバいかもっ……」

時計を見ると、夜の7時半になっていた。

たかチャン、怒ってるだろうな……。

電話したいけど、今は授業中だよね。

後で謝らなきゃ……。

赤い糸 地元の駅に着くと、たくさんの学生たちで溢れかえっていた。

「あっ! あれ、佐々木だよな?」

「あっちには翠じゃん」

「同じ中学の人、けっこーいるもんだねっ」

人混みから知り合いを探して盛り上がる3人。

優梨も精神的に落ち着いたのか、久々に会う友人と話し込んでいる。

優梨の気持ちが楽になったみたいで、ほんとに良かった。

これからが大変だしつらいだろうけど……。

アタシなんて何もできなかったから、アッくんのおかげだね。

優梨を家に送り届け、アッくんとふたりで夜道を歩いた。

懐かしいな……、ふたりきりの帰り道。

まるで、中学時代に戻ったようだね。

「懐かしいな。中学んときみたいだな……」

「──えっ……」

同じことを思ったことに驚いた。

トクン──

──また心臓が。

なんなの?

この変な気持ち。

未練?

──何か違う。

じゃあ、なんだろう……。

「送るよ!」

「えっと……」

アッくんが昔のように言った。

前なら当たり前だったことだけど……、でも、今は、彼氏がいる。

赤い糸 「大丈夫だよ。ひとりで帰れるし☆」

アタシは笑顔で言う。

「……でも──」

「平気だって!」

「……そっか。そうだよな。高橋も気分悪くなるだろうし……」

アッくんは少し寂しそうに笑った。

……ごめんね。

優しさを踏みにじってしまったようで、胸が痛んだ。

「もう、ここでいいよ。また明日ね!」

「……あ、あぁ」

「じゃあね!」

なんとなく気まずい……。

そんな空気に耐えきれず、アタシはアッくんに別れを告げた。

笑顔を作り、手を振って歩き出す。

しばらく歩くと、自宅のマンションが見えてきた。

……帰ったら優梨に電話をしよう。

ひとりきりになって、また悩んでる気がする。

タッタッタッ──グッッ

「キャァ! !」

後ろから近づいた足音とともに、アタシは強く腕をつかまれた。

──誰っ!?

「ちょっと来いよ」

「──え!?」

……なんでここに!?

アタシは前を向いたまま、地面に視線を落とした。

赤い糸 振り向かなくったって……、アタシの後ろにいるのは、誰だかわかってる。

「……学校は?」

「はぁ!? 行ける訳ねーだろ! こっち向けよ! 」

腕を引っ張られ、むりやり後ろを向かされる。

そのとき、アタシの目に映ったのは……。

怒りに満ちた目をしたたかチャンの姿だった。

「なんで電話シカトしてんだよ!」

「……ごめんっ」

「──だから、聞いてんだろ!?」

ビクッ

たかチャンの大声に、体が震えた。

「GWに話し合ったばっかだよな! なんでお前は同じことばかり繰り返すんだよ! !」

ドスッ

「──うっ……痛っ」

腹部に鈍い痛みが走った。

たかチャン、怖いよ……。

腹部を両手で押さえ、しゃがみ込む。

たかチャンは、アタシを殴った右手の拳を開いて

そのまま振りかざしてきた──

バシッ

「──! !」

真上から降ってきた痛みに、アタシは声もあげれなかった。

何が起きているのかわからなくて……。

頭の中が、真っ白になる──

赤い糸 痛みで呆然としてしまった。

そして、頭の中に次々と恐怖の意識が生まれていく──

……怖いよ。

こんなの、たかチャンじゃない。

このままだと、何されるかわかんない……。

「──嫌っ! !」

アタシは立ち上がり、マンションに向かって走り出した。

逃げなきゃ……。

早く、逃げなきゃ──

「──おいっ! 待てよ! !」

追い駆けてくるたかチャンの声。

走りながら振り返ると、こっちを睨みつけていた。

──ッ! !

あと少し……、あと少しで家だからっ──

必死にマンションに駆け込み、エントランスを通り抜ける。

携帯につけているオートロック用の鍵を取り出し、慌ててドアを解除した。

ウィーン

バタバタバタ

「ハァ、ハァ……」

アタシは階段を駆けあがった。

「待てよっ!」

「──ヒッ! !」

後ろから、たかチャンの気配が近づいてきた。

………嫌っ!

誰か……、誰か助けてっ! !

少しずつ距離が縮まっていくふたり──

赤い糸 ガチャッ

間一髪、自宅に逃げ込んだ。

ドアを閉め、すぐに鍵とロックをかける。

「ハァ、ハァ……」

恐怖と家に着いた安心感で……、腰が抜けたように、玄関に座り込んでしまった。

?~?~?~

アタシを恐怖の底に突き落とすように、たかチャンからの着信音が鳴り響く──

アタシは座りこんだまま、ドアを見つめた。

このドアの1枚先には、たかチャンがいるだろう……。

──そう思うと、体がガタガタと震え始めた。

彼氏なのに……。

大好きなはずなのに──

怖くてたまらない。

翌日──

アタシは寝不足で学校へ行った。

あれからずっと、たかチャンからの電話が鳴り続けている。

頭がヘンになりそうだった。

学校で授業を受けても、まったく集中できなかった。

そして放課後──

アタシは疲れきった体で、優梨とアッくんとの待ち合わせ場所に向かった。

いつどこでたかチャンに会うかわからない。

周りを見回しおびえながら、待ち合わせの場所へと急いだ。

赤い糸 大切なモノ

待ち合わせ場所に向かうと、遠くにアタシを待つふたりの姿が見えた。

「──ゴメンッ! 遅くなったぁ!」

「平気だよっ☆」

走りながらふたりの元に急ぐ。

──あれ!?

近づいて気づいたのだが、アッくんの陰にはひとりの女の子が立っていた。

優梨と同じ制服を着ている。

小柄な可愛い女の子。

その子は片手でアッくんのブレザーのジャケットの裾をつかんでいて……。

「あ、あのー」

「──あ、この子は麻美チャン。あたしのクラスメイトなんだ!」

アタシの視線に気づいたのか、優梨が言った。

「──麻美です。こんにちは」

「あ……こ、こんにちは」

麻美は笑顔で頭を下げる。

その笑顔に、アタシの胸にはモヤモヤした気持ちが込み上げてきた……。

もしかして、麻美チャンは──

「あたし、アツシの彼女ですっ? 芽衣チャンよろしく!」

「えっ……」

アッくんと目を合わせ、照れたように笑い合う麻美。

麻美はアタシとアッくんのことを知らないのか、無邪気にアッくんに甘えている。

赤い糸 そして4人は昨日のカラオケに入った。

アッくんの隣には、ピッタリと麻美がついている。

部屋に入っても麻美の態度は変わらない……。

アッくんの横のソファーに座り、甘えた声で話す。

気づけばふたりは手を握り合っていた。

──優梨が悩んでるのに、その態度は何?

麻美の態度にイラついていく。

優梨はアッくんと麻美の様子を、少し寂しそうに見つめていた……。

──この女、最低。

「てゆぅか、なんでアッくんの彼女が来てんの?」

「──え? アタシ優梨の事情聞いたし、仲いいから……来ちゃいけなかったかな?」

「だったら、その態度やめたら? ──優梨の気持ち、わかんない?」

麻美に対しての苛立ちを、思わず言葉に出してしまった。

部屋の中が、シンと静まりかえる。

「──ちょっと芽衣……そんなイラつかなくても……」

「だって──」

麻美とアタシの間に入り、止めようとする優梨。

アッくんはその様子を見て、麻美から少し離れて座り直した。

赤い糸 アタシの態度に驚いたのか、麻美は黙って目を伏せた。今にも泣きそうに顔をしかめ、軽く唇を噛んでいる。

……そして、小さな声で優梨に謝った。

「ゴメンね……」

こらえきれなかったのだろう。

謝罪の言葉を言い終わった直後、麻美の頬には涙がつたっていった。

「──ッ! オレが悪いんだ。麻美とつき合い始めたのに、ずっと忙しくて……会いたいって言われても、ずっと断ってた。……今日はつき合ってから初めて会ったんだよ。麻美の気持ちもわかってくれないか? 優梨には悪かったと思ってる。麻美じゃなくて、全部オレが悪いから……本当にゴメン……」

アッくんはとっさに麻美をかばい、優梨に謝った。

麻美の頬に流れ続ける涙を袖で拭ってあげて……。

麻美のために必死になっている。

──アッくんは、麻美チャンをホントに好きなんだね。

ズキッ

アタシの胸は痛んだ。

……この痛みは、アッくんが麻美を大事にしてるから?

赤い糸 そう思った瞬間──

頭に、あの人の笑顔が浮かんだ。

アタシにも、こうして守ってくれる人がいるよね?

たかチャンは──

いつもアタシを守ってくれた。

イジメにあったときも、しつこいナンパにあったときも、側で守ってくれた。

暴力は怖かったけど、それよりもたくさんの優しさや愛をくれたはず──

たかチャンと話したい。

たかチャンに会いたい……。

「オレ、麻美を家に送ってくる。それから戻って来ていいかな? ほんとゴメンな──」

「ゆ、優梨……ごめんっ……グスッ」

アッくんに肩を抱かれ、麻美は謝りながら部屋を出て行った。

「……優梨、大丈夫?」

「うん、平気ぃ…それより、麻美チャンつれて来て気まずかったよね。ゴメンね」

「……こっちこそ、感じ悪くしてごめん」

麻美チャン、ごめん……。

あまりにもキツく当たり過ぎた自分を反省した。

「──あたし、結論出したんだ」

優梨は、アタシの目をジッと見つめた。

赤い糸 結論って──赤ちゃんのことだよね。

何も言わないで堕ろすなんて、間違ってる気がする。

ひとりで痛みを背負うなんて、つら過ぎるよ……。

優梨に視線を向けると、愛おしそうにお腹をなでている姿が目に映った。

優梨は小さく息を吐いて、口を開く──

「あたし……ナツに話す。全部気持ち伝えて話し合うよ」

「……優梨」

「不安だけどね。あたしは決めたの──この子を産みたい」

優梨は笑った。

優しくて──

強い意思をもった母親の笑顔だった。

「あたしひとりの問題じゃないってわかった。命って、そんなに軽いものじゃないよね……ここで何も言わないで堕ろしたら、きっと後悔する……ナツに会って、とことん話し合うよ。それが一番だよね?」

良かった……。

アタシは優梨の言葉に、ホッと安心した。

「素直に気持ち伝えて、話し合ってね。頼りにならないかもしれないけど、何かあったらまた話して──」

優梨はアタシの返事を聞き、嬉しそうに頷く。

──優梨の気持ち、ナツに届いてほしいよ。

赤い糸 「芽衣も、たかチャンと話し合いなよ。何かあったんでしょ? 芽衣を見て、わかってたよ。アタシも頑張ってナツに話すから、芽衣も話して。さっきから、ずっと携帯鳴ってる……たかチャンなんでしょ?」

サイレントにしてある携帯は、今もテーブルの上でカラフルなライトを点滅させていた。

たかチャンからの着信を知らせるライト。

「──出てみたら?」

「……」

そっと携帯に手を伸ばす。

折り畳まれた携帯を開き、通話ボタンに親指を置いた。

「あ……」

携帯を持つ手が……ガタガタと震え始める。

通話ボタンを押すことができない。

……なんで?

さっき、会おうって思えたじゃん。

話し合いたいって思ったのに、なんで!?

──気持ちとは裏腹に、アタシの体はたかチャンの恐怖に怯えていた。

「──ッ!」

アタシは携帯を畳み、テーブルの上に戻す。

体中に冷や汗が染み出て、震えが止まらない。

「……芽衣、何があったの?」

優梨は不安そうにアタシを見つめた──

赤い糸 優梨の問いかけも、耳に入ってこなかった。

優しかったたかチャン。

大好きな笑顔。

──そして、怒りに満ちたあの顔。

アタシを殴る姿……。

「い……嫌っ──」

頭の中は、どんどんおそろしい思い出に支配されていった。

頭を抱え、頭の中からたかチャンを追い出すように頭を振る──

……どうしたらいいの?

あんなに優しく守ってくれたたかチャンの姿が……。

おそろしいたかチャンに書き消されていくよ──

話し合いたいと思うのは頭の中だけで、体と心は悲鳴をあげている。

こんなにも、体が拒否をしてしまう。

「アタシ、昨日たかチャンに会ったんだ……また、殴られた。──ねぇ、優梨……優しいたかチャンと、怖いたかチャン、どっちがほんとのたかチャンなのかな……」

アタシは独り言のように、答えなんかない質問を投げかけた。

赤い糸 ──この日の夜

アタシは駅前で、学校帰りのたかチャンを待っていた。

胸にはひとつの想いと決意を抱えている。

震えそうになる体を堪え、今でも迷ってしまう想いを押さえる。

……逃げちゃいけない。

アタシの気持ちを伝えよう。

そう自分に言い聞かせ、アタシは電車が着く度に改札を見つめた。

6本目の電車が駅に着いたとき──

改札から流れ出すサラリーマン達の中に、ひとりだけ浮いているたかチャンの姿が見えた。

──来た!

どうしよう!?

いざたかチャンの姿を見ると、頭の中が混乱していく。

足もすくんでしまい、体が動かない──

たかチャンは改札を出ると、片手に持っていた携帯電話を開いた。

?~?~?~

たかチャンの動きに合わせ、アタシの携帯が鳴り始める。

──たかチャンの電話の相手はアタシだ。

近くにいると知らないたかチャンは、携帯を鳴らし続けた。

覚悟を決め、通話ボタンを押す。

赤い糸 「……はい」

「め、芽衣!? やっと出たよ……」

たかチャンは、ホッとしたように話した。

その声に、胸がキューッと締めつけられる……。

「無視してごめん……」

「俺こそ、この前……本当に悪かった。女に手をあげるなんて、最低だよな……」

たかチャンは駅の脇にしゃがみ込んで……。

ドスン

「──えっ!?」

バランスを崩して、地面に尻もちをついてしまった。

「……プッアハッ……アハハハハッ」

恥ずかしそうにお尻を上げ、しゃがみ直すたかチャンの姿が滑稽で……、緊張の糸は切れ、笑ってしまった。

たかチャンは真っ赤に染まった顔で、周りをキョロキョロ見渡している。

「……な、なんで笑ってんの? なんかあったのか? ……あれ? もしかして──」

周りを見るたかチャンの視線が止まって……、アタシの視線とぶつかった。

その瞬間──

アタシの笑いは消え、ふたりの間には沈黙が流れた。

「……なんでいんの?」

「あっ……」

たかチャンは立ち上がり、ゆっくりと歩み寄って来た。

ふたりの距離が縮まっていく──

赤い糸 たかチャンはアタシの目の前まで来て、足を止めた。

「どうしてここに?」

「……話したかったから、駅前で待ってたの」

「芽衣……」

たかチャンはアタシの言葉を聞き、パッと嬉しそうな顔をした。

──ッ……。

そんな顔、見れない。

アタシはたかチャンから目を反むけた。

だって……アタシは……。

これから、あなたに告げる、

ずっと考えていた、別れの台詞を──

「俺んちで話さない? 芽衣の好きなチョコ買ってあるんだ!」

「……ううん、ここで話したい」

「なんで?」

「……」

アタシの態度に、たかチャンの顔色が変わっていく。

「アタシは……」

「……なに?」

「もう……」

急激に早まっていく鼓動──

言うって決めたのに、なかなか口が開けない。

今までの楽しかった思い出が頭をよぎって、溢れ出しそうになる涙を、グッと堪えた。

そして──

「──アタシと別れて」

胸の中から、声を絞り出す──

赤い糸 たかチャンは、言葉が理解できないみたいだった。

しばらく呆然としてから、ゆっくりと口を開く。

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