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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15370 字 更新时间:2026-6-22 21:38

このまま心配をかけ続けるのはダメだよね。

アッくんを忘れれば、きっと食事もできる。

気持ちだって明るくなれる。

アタシは部屋に戻り、ミヤビに電話をした。

「昨日の話だけど、やっぱり会ってみる」

「マジで!?」

「明日だよね?」

「うんっ!」

アッくんを忘れて先に進むために、できる限りのことをしてみよう。

新しい出会いで、アタシの気持ちは変わるかもしれない。

アッくんを諦めれないと決めつけて、立ち止まってばかりいるのはもうやめる。

先に進まなきゃ。

だけど──

この出会いは、間違っていたんだ。

愁と出会ったせいで、アタシは大切なモノを失った──

赤い糸destiny 心のサプリメント

翌日の夕方──

アタシは、繁華街の一角にあるコンビニにいた。

このコンビニが、ミヤビとの待ち合わせ場所。

今も、ミヤビの友だちに会うことには迷いがある。

それに、不安だった。

やっぱり帰ろうかな……。

何度も迷い、そわそわとしながら雑誌の立ち読みをして時間を潰した。

待ち合わせ時間までは、あと少し。

?~?~?~

いきなり鳴った携帯の着信音に、ビクッと体が震える。

着信はミヤビからだった。

「ミヤビ? もうコンビニにいるよ」

緊張を隠して、平然を装って話した。

「あたしも、もう着くよ。愁……てゆうか、芽衣チャンに紹介したい人と一緒にいるからっ。あと、もうひとり男の子も一緒!」

会いたいっていう人は、愁っていうんだ。

どんな人なんだろう。

はぁ……。

緊張するよ。

バクバクバク──

心臓は、さっきまでよりも激しく鳴り続けた。

赤い糸destiny 「──あっ! 芽衣チャン見つけた!」

「えっ?」

携帯から聞こえるミヤビの大声。

アタシが雑誌から目を上げると……、

「待たせてごめんね!」

目の前のガラスの奥には、笑顔で手を振るミヤビの姿があった。

その斜め後ろには、男がふたり立っていた。

「出てきてっ!」

「う、うん……」

とうとう来ちゃった。

アタシは読みかけの雑誌を棚に戻し、店外に出た。

外に出ると、ミヤビはさっそくふたりの男を紹介し始める。

「芽衣チャン、待たせてごめんね! ふたりとも同じ中学の同級生なの。こっちが愁で、芽衣チャンに紹介したい人。こっちは智輝だよ」

ミヤビは男を順番に紹介した。

愁は……いかにもチャラい人っていう感じ。

確かに顔はかっこいいけどアタシのあまり好きではないタイプだった。

「よろしくねぇ~」

「はい……」

「可愛いっ!! 写真よりリアル芽衣がいーな!」

アタシの気持ちを知らない愁は、浮かれたようにベラベラと話す。

そのひと言ひと言が、本当にバカっぽい話し方で、そんな愁を見ていると、気分が悪かった。

赤い糸destiny 初対面なのに馴れ馴れしくて、「芽衣」と呼び捨てにされたのも嫌。

「俺、智輝! よろしくねっ」

「よろしく……」

智輝は愁に比べて、少しはマシな男だった。

わざとらしい笑顔が似合うホストみたいな男。

「芽衣も俺らのことは、愁、智輝って呼んでね! 今日は楽しもうよっ!」

「あ、うん……」

やっぱり、新しい出会いなんか期待するモノじゃないな。

まったくトキメキもない。

もうすでに、家に帰りたくなってしまった。

──4人はコンビニの前から場所を変え、すぐ近くにある雑居ビルの一室の前にきた。

そこは、繁華街で遊び慣れてるアタシでも知らない小さな店。

愁や智輝の先輩が経営しているバーらしい。

「今日は休みだから、ハコ借りてるんだよねぇ。飲もうぜぇ!」

「芽衣チャン、ミヤビ。……どうぞ」

ガチャッ

笑顔で鍵を開け、ふたりを中に通す智輝。

赤い糸destiny 「──すごいっ!」

アタシはすぐに驚きの声をあげた。

店内は外観から想像がつかないくらいお洒落で、今までのバーのイメージが覆される程だった。

バーカウンターは、まるでデザイナーズマンションのモデルルームのよう。

そして、白い皮張りのソファーの席もある。

「初めてバーに来たぁ! キレイだねっ」

ミヤビは楽しそうにはしゃぎ、店内を見渡していた。

アタシの視線も、つられてキョロキョロとしてしまう。

「いい店でしょ!」

「うん、そうだね」

自慢げな愁の言葉にも、素直に答えてしまう。

智輝はバーカウンターの中に入り、お酒を用意し始めた。

「ミヤビは何飲む?」

「あたしはカシスオレンジ!」

ミヤビはソファーに座り、智輝に答える。

「じゃあ、芽衣は?」

「アタシは……コーラで」

「──えっ?」

智輝の手が一瞬止まった。

赤い糸destiny そして、笑いながら智輝と愁は言う。

「ダメだよー。お酒飲もうぜっ! 薄く作るからさっ」

「芽衣、乾杯しよ!」

ほんと無理だよ……。

アタシはお酒に弱い。

いつもすぐ酔って、頭が回らなくなってしまう。

だから、気を許した相手としか飲まないと決めていた。

「ほんと飲めないの。ごめんねっ」

「そっかぁ……」

アタシがお酒を断ったことで、店内には気まずい空気が流れた。

その空気に気づいたミヤビがフォローを入れた。

「飲めないのは仕方ないじゃん。代わりにあたしが飲むからさっ! 芽衣チャンにはコーラで酔ってもらおう」

「ミヤビ……」

「ねっ、そうしよ!」

ミヤビに言われ、智輝と愁はアタシに飲ますのを諦めたようだ。

……はぁ。

本当にもう帰りたい。

アタシはやっぱり、愁と智輝とは合わないよ。

「かんぱーい!」

カチン──カチッ、カチン──

飲み物の用意ができると、4人はソファーに座って乾杯した。

もう気まずい空気は消えていて、愁も智輝も笑顔になっていた。

赤い糸destiny ……だけど、今も、アタシの気まずさは消えない。

アタシを除く3人は、クラブのイベントの話で盛り上がっていた。

クラブに行ったことがないアタシには、さっぱりわからない話。

つまんない。早く帰りたいな。

その気持ちだけが強まっていった。

表面的にはアタシも合わせて楽しそうにしたけど、本当は全然楽しくない。

「芽衣はほんっと可愛いーよなぁ。今度、一緒にクラブ゛行こ」

時間が経つにつれ、酔った愁が絡んできた。

髪を撫でられたり、くっつかれて……。

アタシの腕に、ポツポツと鳥肌が立っていく。

「ごめん、トイレ……」

そんな愁に耐えきれなくなり、アタシはトイレに逃げ込んだ。

バタン──

「はぁ……」

個室に入り、ついつい溜め息をこぼした。

撫でられた髪が気持ち悪くて、ゴシゴシとティッシュで拭った。

好きな人にされると嬉しい行為だけど、どうでもいい人にされると苦痛なだけ。

アタシの心は、愁にまったく動かなかった。

赤い糸destiny トイレから戻ってからは、少し愁との間に距離を取った。

そして、口説いてくる愁を愛想笑いでかわす。

……アタシ、何してるんだろ?

愛想笑いをしながらも、ふと疑問に思った。

……なんでアタシはここにいるの?

いる意味ないよね。

もう、帰ろう。

アタシがそう思ったとき──

「そろそろやる?」

愁は嬉しそうに笑い、ポケットから小さな錠剤を数粒取り出した。

「持ってたの!?」

「俺にもくれよ!!」

ミヤビと智輝は、目を輝かせて愁の持つ錠剤を見つめている。

愁はアタシに視線を向け、笑いかけた。

「まず芽衣に1個あげるよっ!」

アタシの手のひらに、錠剤がひと粒乗せられる。

……これ、何?

アタシは手のひらの錠剤をじっくりと見た。

薬やサプリメントのようだけど……。

「……え? あ、あの、これって?」

「やったことないの?……これは、タマだよ。エクスタシーってやつ」

「えっ──」

赤い糸destiny エクスタシーって……麻薬だよね?

アッくんが、前にしていたクスリもこれだった。

「あ、あたしはやらないからっ!」

「いーじゃん!! やろうよ!!」

「──嫌っ!」

そんなモノ、したくない!

麻薬を勧めてくる3人が怖くて……、

「帰るっ──」

アタシは鞄を持って立ち上がった。

「気持ちいいのに」

「嫌なこと、忘れられるよっ!」

「心のサプリメントって感じだよ」

引き止めようとする3人を振り切り、アタシはバーを飛び出した──

繁華街を抜け出して家に向かった。

本当に驚いた……。

3人があんなことをしてるなんて。

アタシはショックを隠せなかった。

「──あっ!!」

ふと握り締めた手に、小さな違和感を感じる。

まさか……。

まわりの人々に見られないように、そっと手を開いた。そこには、汗で少し湿った錠剤があった。

赤い糸destiny スウッと頭から血の気が引いていく。

──焦って持ってきちゃったんだ。

どうしよう。

こんなところに捨てて行くわけにもいかないし……。

仕方ないっ。

アタシはポケットの奥にタマを突っ込んだ。

家に帰ったら、紙に包んで捨てよう。

そう決めて、足早に家に向かった。

こんなモノは、少しでも早く捨てたかった──

「ただいま」

?~?~?~

家に着くと、タイミングよく携帯が鳴り始めた。

「……もしもし」

「おー。何してた?」

「今、家だよぉ」

「なんか声、暗くないか?」

電話の相手は、海斗だっだ。

さっきのことを思わず愚痴ってしまった。

「今日、ミヤビに男の人を紹介してもらったの」

「えっ」

「でも最悪だった。行かなきゃ良かった」

胸に留めておくことができず、アタシはすべてを海斗に話した。

忘れようと思って愁に会ったことや、タマを持ってきてしまったことも。

赤い糸destiny 話し終わると、海斗は強い口調で言った。

「もうミヤビに関わるなよ。愁ってやつもそう。ミヤビの地元の中学って、すげぇ評判悪かったんだよ。ガスやシンナー好きのヤツらが多いって噂だし、クラブ好きならクスリやってもおかしくないよ。本当に関わるなよ!」

アタシはウンとうなずいた。

そして、厳重にティッシュでくるんだタマをゴミ箱に捨てた。

「今、捨てたよ! ミヤビって性格良くて、いい子だと思ってたのになぁ」

「クスリは人格も変えるんだぞ。俺はどんなにいいヤツでも嫌い」

海斗はキッパリと断言する。

クスリって怖いな……もうクスリになんか、出会いたくないよ。

「──あっ! そういえば、用事は何だったの?」

「おー、すっかり忘れてた。俺、美亜に告るから! その報告なんだ」

「ええっ!?」

……海斗が美亜に告白?

美亜にはミツがいるのに?

アタシは海斗の決意に驚いた。

だけど、少し考えると、海斗の気持ちもわかるような気がしてくる。

赤い糸destiny 「やっぱ、好きなら好きだって告白したいじゃん。美亜には振られると思うけどな。でも、もしかしたらうまくいくかもしれないだろ? 結局、告らねーと先に進まないじゃん」

海斗は迷いが振っ切れたように、明るく言う。

いいな……。

好きな人に告白できる海斗が羨ましかった。

振られるのがわかるのに、それでも告白したい気持ち、今のアタシにはわかるよ。

「海斗、頑張ってね! アタシが失恋パーティしてあげる!」

「お、おいっ! まだ振られるって決まった訳じゃないだろ!?」

「あ……ごめんっ」

ふたりで笑い合った。

こんな風に笑うことができるのは、似たような立場のふたりだからだね。

先に進もうとする海斗と、進めなくて立ち止まるアタシは正反対だけど。

堂々と告白できる海斗が本当に羨ましい。

麻美チャンと約束をしてるから、アタシは告白なんかできない。

それなのに、アッくんへの想いは募っていく。

ただ胸を痛め、アッくんを想い続けるだけ。

いつまでこんな状況が続くんだろう──

赤い糸destiny 幸せへの嫉妬

翌日、優梨の家へ遊びに行くと、玄関で優梨と梨夏が出迎えてくれた。

「いらっしゃい」

「あっ! また梨夏タン大きくなったねぇ」

よく遊びに来るけど、梨夏は会うたびに成長してる気がした。

体も大きくなり、髪も少し伸びて女の子らしくなった。

「アー! アー! ウウー」

優梨の腕の中から、梨夏が何かを話しかけてきた。

まだアーとウーしか言えないから、なんと言ってるのかはわからない。

可愛らしい梨夏の声──

「今日もお姉ちゃんと一緒に遊びまちょうね」

「アー、アー!」

「いないいなーい……バアッ!!」

「キャハハハッ」

アタシにあやされ、梨夏はさらに楽しそうに笑っている。

「芽衣のこと、大好きだもんねー」

優梨はそう言いながら、梨夏の頭を優しく撫でた。

……幸せそう。

いつも優梨と梨夏の間には、優しい空気が流れていた。

あたたかくて、この空気の中にいると、すごく癒される。

赤い糸destiny アタシも優梨のように、可愛い我が子を抱いてみたい。

「梨夏タンを抱っこしたいよー!」

「うん、いいよ」

優梨は答えながら、胸から梨夏を離す。

落とさないように慎重に梨夏を受け取り、アタシは梨夏を優しく抱いた。

「いつもの甘い匂いがするねっ」

梨夏に鼻を近づけると、頬や体からミルクのような赤ちゃん特有の匂いがしてくる。

「あーっ! 可愛いっ」

「でしょ! 親バカになっちゃうよ。……あっ! 立ち話もなんだから、とりあえずリビングに行こ!!」

梨夏に夢中で、玄関だと忘れて話し込んでしまった。

優梨に連れられ、アタシはリビングに入る。

「そういえば、写真ができ上がったんだ!」

リビングに入ると、優梨は嬉しそうに1冊のアルバムを持ってきた。

梨夏を優梨に返し、ページを開く。

赤い糸destiny そこには……無邪気に笑う梨夏と、幸せそうな家族の風景がたくさん写っていた。

「この梨夏、可愛いでしょ? あとは、ナツの試合の写真とか」

優梨は1枚ずつ写真の説明をして、満面の笑みを浮かべる。

「いいね、この写真」

「そうでしょ!」

アタシは答えながらも、本当は複雑な気持ちだった。

たくさんの幸せそうな写真たち。

それはいつもアタシの過去を思い出させる……。

アタシは、赤ちゃんのときの写真を1枚しか持ってない。

その写真の中では、小さなアタシがひとりぼっちで梨夏と同じように無邪気に笑っている。

アタシも梨夏のように、愛されて育ったのかな?

優梨とナツを見ると、記憶にない産みの親の姿と重ねてしまうときがあった。

──お父さんは手術の前、封筒を手渡してきた。

産みの親の所在が書かれた紙が入っている封筒。

……あれは、今も封を閉じたままだ。

気にはなるけど、まだ開く勇気がない。

あの封筒の中にはどんな事実が詰まっているんだろう。

赤い糸destiny 気がつくと、優梨の腕の中で、梨夏は小さな寝息を立てていた。

優梨は抱いたままベビーベッドの横に行き、そっと梨夏を寝かせた。

「やっと寝たぁ……」

肩や首をポキポキと鳴らしながら、疲れた顔をして、片手で腰をトントンと叩いている。

「……おばさんみたい」

「もぉっ! 子育てって大変なんだからっ」

そう言いながらも、優梨の顔は赤く染まった。

優梨は恥ずかしそうにしたまま、ソファーの横にあったメイクボックスを開く。

「あれ? 化粧って、どこか行くの?」

「そうそう、今日の夜、ナツが帰ってくるんだ。練習や試合があるから、3日間くらいしかいられないらしいんだけどね」

……そういうことかぁ。

優梨は嬉しそうに化粧を始めた。

その顔は、少しずつ母から女の顔へと変わっていった。

「最近はナツくんとどうなの?」

「普通だよ。それより芽衣は?」

優梨はファンデーションを塗りながらアタシに言った。

「ア、アタシは……」

優梨からの質問に即答できない。

赤い糸destiny 「それって……何かあるってこと?」

「まぁ……」

「アッくん?」

「それは……」

ズバッと当てられ、動揺してしまった。

「……芽衣。まだ好きなんでしょ?」

アタシは優梨の問いに、首を横に振って否定をした。

優梨は麻美も友だちなんだし、どんどん好きになってるなんて、言えないよ。

「あの日は言い過ぎてごめん。責めてごめんね」

以前、優梨に言われた言葉が、頭の中でグルグルと回る。

『諦めなよ。

麻美チャンに譲ってあげなよ。

そんなんじゃ、芽衣も幸せになれないよ……』

──これが、アッくんを諦めるキッカケの言葉になっていた。

毎日これを思い出す。

そして、これが現実。

わかるのに、実行できない自分が嫌だった。

「謝らないでっ。正しいんだから……」

「それは……」

優梨は言葉を止め、考え込むように下を向いた。

そして──

「こんな話、今の芽衣にするべきじゃないかもしれないけど……」

優梨は顔を上げ、アタシを見つめる。

赤い糸destiny 「……何かあったの?」

また優梨の視線は、下を向いてしまった。

どう話せばいいのか、悩んでいるように見えた。

「最近、あのふたりは会ってないらしいんだ。何か知らない?」

「えっ? あのふたりって……」

「麻美チャンから電話がきて……。最近の麻美チャン、少しおかしいんだよね。怖いってゆうか……」

麻美がおかしい?

怖いって、何があったの?

それに、ふたりが会ってないって、どういうこと?

「ちょっと前、麻美チャンと会ったでしょ? あの日から変わっちゃったの」

あの日って……。

麻美とマックで話して、アッくんを諦めるって結論を伝えた日。

麻美は全部知ってて、アタシは諦めるって話した。

あの日から、そんなことになってるなんて……。

「アタシ、アッくんと関わらないって約束をしたのに」

「それは、麻美チャンからも聞いた。ほかには何か話してない? 傷つけるようなこととか」

傷つけるようなこと?

赤い糸destiny アタシが傷つけたことといえば、まだアッくんが好きなことと過去にセックスをしていたことだと思う。

だけど、それは麻美チャンも知っていた。

それ以外に、何か言ってしまった記憶はない。

「ごめん……。わかんない」

優梨は落ち込んだアタシを見て、申し訳なさそうな顔をした。

「こんな話をして、ごめんね。最近の麻美チャン、アッくんの携帯が繋がらないだけで発作が起きたりするの。精神的にもまいってて……。芽衣と同じで、毎晩眠れないんだって」

麻美チャンもそうなんだ。

そう思うと、また胸が痛んだ。

アタシも苦しいけど、アッくんのそばにいれる麻美チャンだって、同じように苦しんでいるんだね。

「ごめんね──。芽衣だってつらいのに……」

「ううん……」

アタシの中でも麻美チャンの中でも複雑な気持ちが残っているんだね。

麻美チャンも苦しんでるなんて、知らなかったよ。

「なんか……芽衣も麻美チャンも友だちだから、本当につらい。アッくんがふたりいたらいいのにね」

優梨は悲しそうに笑った。

赤い糸destiny ──ねぇ、アッくん。

アッくんは、アタシよりも麻美チャンを選んだ。

だけど、この三角関係に、終わりはあるのかな?

アタシも麻美チャンも、ずっと苦しんでる。

そして、これからも苦しみ続けるよ。

アッくんがそばにいても、アタシのことで苦しむ麻美チャン。

麻美チャンを傷つけて悩み、アッくんを諦めようともがくアタシ。

「つらいよ……。どうしたらいいのか、わかんない」

いつになったら、みんなが楽になれるの?

早く、こんな状態から抜け出させてよ──

ピーンポーン──

「……あっ。ちょっと出てくる」

「うん」

優梨はスリッパをパタパタと鳴らし、小走りで玄関に向かっていった。

「はぁ……」

残されたアタシの口からは、溜め息が漏れる。

「ただいまぁ! 予定より早くてびびっただろ? 梨夏は!?」

玄関から、ナツの声が聞こえてきた。

帰ってきたんだ──

アタシ、お邪魔だよね。

「リビングだけど、今はちょっと……」

「梨夏に会いたい!」

「──えっ!! ちょっと、ナツ!?」

赤い糸destiny 「梨夏っ! パパだよ~」

「待って!」

ナツは優梨を無視し、リビングに駆け込んできた。

「梨夏ぁ! 元気に──あれ!?」

そして、アタシに気づいて立ち止まる。

「来てたんだ! 優梨、早く言えよ!」

「だから待ってって言ったのに。恥ずかしい」

親バカを見られたナツは、照れ臭そうに笑った。

それを見て、優梨も恥ずかしそうに笑う。

ふたりの間に幸せそうな空気が流れた。

思わずアタシは、ふたりから視線をそらす。

仲良さそうなふたりの姿を、見ていられない。

胸には、ドロドロした感情が込み上げてきた。

アタシはこんなにつらいのに、ふたりは幸せでいいよね。

「もう帰るね」

「えっ?」

「また来るよ。お邪魔しました!」

アタシは早口で言い、逃げるように玄関へ向かった。

「──芽衣!?」

後ろから慌てて優梨が追いかけてきた。

だけどアタシは立ち止まらなかった。

無言でパンプスを履く。

赤い糸destiny 「ご、ごめんっ! いきなりナツが来るとは思わなくて」

背中から、優梨の申し訳なさそうな声が聞こえた。

アタシは背を向けたまま答える。

「また連絡するね。お邪魔しましたっ」

「め、芽衣っ……」

優梨の声は悲しそうな声で……震えていた。

すぐに罪悪感が込み上げる──

「……ごめんっ」

振り返ることができず、謝りながらドアに手をかけた。

仲が良いふたりを見た瞬間、心の底から、嫉妬や妬みがわき出してきた。

つらくて、汚い気持ちが溢れてしまいそうになった。

優梨は何も悪くない。

ごめんね……。

ガチャ──

アタシはドアを開き、優梨の家を出た。

こんなの……ただのやつ当たり。

そうわかってたのに、耐えきれなかった。

最悪なアタシ。

親友の幸せを喜べないなんて、アタシの心は、そんなに余裕がないの?

もう嫌だよ。

アタシは疲れて歩けなくなるまで、ひたすら歩き続けた。

赤い糸destiny 現実逃避

1時間近く歩き続け、アタシは家に帰った。

ドアを開くと、家の中からは楽しそうな春菜の笑い声が聞こえてきた。

そして、玄関には男物の靴。

「おかえり! 悠哉が来てるから、3人でファミレス行かない? 今日、悠哉のバイト代が入ったんだよ」

春菜の部屋のドアが開き、その隙間からは悠哉の笑顔も見えた。

……どこに行っても、みんな幸せそう。

アタシの居場所なんかないよ。

脱いだパンプスをもう一度履きなおし、家を飛び出した。

マンションの外に出ると、なぜかそこには美亜の姿があった。

美亜は無表情な顔をしながら、ゆっくりと歩いてくる。

「ど、どうしたの?」

「……」

少しずつ距離が縮まって、美亜が近づいてきた。

ふたりの距離が、あと3メートル程になったとき……。

「芽衣……どうしよう──」

そう言って、美亜は顔を歪ませた。

目からは、大粒の涙がボロボロと溢れ出している。

「どうしたの!?」

アタシは美亜に駆け寄り、とっさに美亜を抱き締めた。

赤い糸destiny 「もう……グスッ……どうしたらいいのか……わ、わかんないっ……。ウウウッ……」

「ねぇ? 何があったの!?」

美亜は、細い肩を震わせて泣いている。

いったい、何が?

こんなふうに泣くなんて──

「あ、あたし……ミちゅ……に……ウウッ」

「ミちゅって何? ──あっ! ミツのこと!?」

泣きながらうなずく美亜の背中を優しくさすった。

アタシの肩に、美亜の涙がポタポタと落ち続けた。

「と、とりあえず……家に入らない?」

「グスッ……ごめんね」

「いいから……」

美亜はいっこうに泣きやむ様子がない。

「こんなに暑い陽射しの中で泣き続けたら、具合が悪くなっちゃうよ」

いまにも崩れ落ちそうな美亜の体を支え、マンションの中に戻った。

「ウウウッ……」

「──キャッ!」

美亜はマンションの中で何度もよろけ、ふたりで転びそうになってしまった。

こんなにフラフラになるなんて。

ミツと美亜の間に、何があったの?

赤い糸destiny 家に帰ると、春菜と悠哉の靴がなくなっていた。

きっと、隣の悠哉の家にいるのだろう。

「美亜、靴脱げる?」

「う……うんっ……。お邪魔します──」

美亜はフラフラしながらミュールを脱いだ。

「あっ!」

「──ッ! 痛ったぁ……」

バランスを崩し、美亜は転んでしまった。

「大丈夫!?」

アタシは慌てて抱き起こそうと手を伸ばした。

だけど、美亜はアタシの手を拒否して呟いた。

「もぉー嫌だぁ……グスッ。ミツは浮気するし、転んでお尻は痛いし……」

「ええっ!? ミツが浮気っ!?」

美亜は涙でグシャグシャになった顔をあげ、胸の奥から絞り出すように叫んだ。

「ミ、ミツに振られたの!」

「嘘っ!?」

「浮気相手の女が妊娠したんだってさ。マジ最悪……」

予想もしなかった話に呆然としてしまった。

ミツが浮気?

相手が妊娠?

そして、美亜を振った?

何を言ってるのか……まったく理解できなかった。

赤い糸destiny 「訳わかんない……」

思わず声が漏れる。

そのひと言は、美亜に火をつけてしまった──

「あたしだって訳わかんないよっ! そんな女の子供なんて……腹でも蹴って流産させてやりたい!! もう嫌っ……嫌ぁ──アアッ……」

叫びは号泣へと変わり、美亜は両腕と顔を床につけて泣き崩れた。

「美亜……」

泣きじゃくる美亜の背中を撫でていると、ミツへの怒りがわいてきた。

……ミツはそんな男じゃないと思ってた。事実ならミツも浮気相手もひどいよ。

泣き疲れたのか、美亜がゆっくりと床から顔を上げた。

「……大丈夫?」

「グスッ……うん…」

美亜は鼻声で答え、少しだけ笑みを浮かべた。

「思いっきり泣いたから……ち、ちょっとだけ……スッキリした……」

涙で崩れたメイクで笑う美亜の姿……。

その姿に胸が痛み、見ているアタシがつらかった。

赤い糸destiny 落ち着いた美亜を連れ、玄関から部屋に移動する。

「これ使って」

「ありがと……」

部屋に入ると、美亜にティッシュの箱を手渡した。

美亜は鼻をかみ、涙で濡れた顔を拭う。

そして、詳しく事情を話し始めた。

最近、ミツの様子が変だったこと。

さっきまでミツの家にいて、ベッドで黒髪の長い毛を見つけてしまったこと。

喧嘩になり、ミツが浮気したと白状したこと。

そして、その女に子供ができたから、別れてほしいと言われたこと。

──話を聞けば聞くほど、体は怒りでプルプルと震えた。

ミツに対して、怒りの感情が爆発しそうになる。

拳を握り絞め、アタシは震える体を抑えた。

「どうしたらいいのか、わかんないよ。あたし、浮気されたってミツが好きなのに……」

美亜は弱々しく言い、涙を浮かべた。

カチッ──

美亜は、苦しみをごまかすようにタバコを吸った。

その姿が痛々しくて、見ていられなくなった。

赤い糸destiny 「……あの女、許せないよ」

美亜はタバコを吸いながら、悔しそうに呟いた。

時間が経つにつれ美亜の悲しみは、いら立ちに変わってきたようだ。

「タメなんだけど、高校とかは行ってないらしいの。妊娠して人の男を取るなんてマジ卑怯!」

「中卒で働いてるの? じゃあ、けっこうギャルとかで遊んでる女なんじゃない?」

美亜は首を横に振り、鞄から1枚の写真を取り出す。

その写真の中では、ミツと真面目そうな少女が仲良く微笑んでいた。

「えっ……」

「喧嘩したとき、ミツの部屋で見つけたの。たぶん、相手はこの女」

……あれ!? この女、どこかで──

「──あっ!! 思い出した! この女、ガソリンスタンドの新人! 入れ違いみたいな感じだったから、ほとんどかぶってないけど」

「マジで?」

「うん、吉岡弘子! 間違いないよ!」

吉岡サンは、真面目な人だった。

まさかミツの浮気相手が吉岡サンなんて──

「バイクのガソリン……ミツは、たかチャンのバイト先で入れてるって言ってた」

美亜は思い出したようにポツンと呟く。

赤い糸destiny 「その吉岡って女、どんな女なの?」

美亜に聞かれ、アタシは記憶の中の吉岡サンを思い浮かべた。

影が薄くって、あまり話した記憶もないけど……。

「吉岡サンは、真面目で地味な人だったよ、お弁当作ってバイトに来たりして。お金に困ってたみたい。なんでミツがそういうタイプの子を選んだのかわかんないよ」

アタシの話を聞き、美亜は溜め息をついた。

「もぉやだ……。ミツと別れたくない」

「美亜……」

「吉岡って女、なんなのっ!? ほんと嫌! もうムカつくっ──」

美亜がいら立ちを発散するように手を振り払ったとき、

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