饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15364 字 更新时间:2026-6-22 21:38

「もう、何があっても絶対に離さない。ずっと一緒にいような! ……今から芽衣はオレの彼女だからな」

「──うん! また、よ、よろしくお願いしますっ」

彼女……かぁ。

アタシ、アッくんの彼女なんだ。

もう……絶対にあなたのそばから離れない。

絶対にそばにいる。

「大好きだよ」

「オレも」

だから……アッくん。

あなたもアタシを、ずっと離さないでね。

アタシをずっと抱き締めていてね──

赤い糸destiny すごく幸せ。

本当に幸せな時間。

だけど、この幸せの陰では、涙を流している人がいる。

そのことを、アタシはすっかり忘れていたんだ──

誰かを苦しませて幸せになった恋。

それが、このままうまくいくわけなんてなかった。

ねぇ、アッくん。

何があっても、アタシのことを離さないって言ったよね?

ずっと……ずっとそばにいてくれるよね?

ねぇ……何があっても、

絶対に一緒にいようね──

赤い糸destiny このままずっと

?~?~?~

屋上の床で、今度はアタシの携帯が鳴り響いた。

「あっ、沙良かも?」

「待たせてるかもしれないし、そろそろ下に降りるか?」

アタシは小さくうなずいた。

この瞬間、夢のような甘い時間は終わってしまった。

まだ、アタシの気持ちの1000分の1も伝えられてないけど……。

これから時間はたっぷりあるもん。

少し名残惜しいけど、アッくんの腰に回した手を離して、携帯を手に取った。

ディスプレイには、予想通り沙良の名前が表示されていた。

「はぁい」

「ねぇねぇ、どこに消えちゃったの? 今、優梨チャンたちと一緒にいるんだけど」

「マジで? 今から行くねっ!」

アタシはそう伝え、電話を切った。

「じゃあ行くか!」

「う、うん……」

「あれ? 何かあったのか?」

笑顔のアッくんとは反対に、少し考え込んでしまった。

今から行くとは言ったけど、みんなの前にアッくんと現れるなんて、考えただけで照れちゃうよ。

みんなにからかわれる自分の姿が目に見える……。

赤い糸destiny お互いに愛し合ってることがみんなに知れるときって、なんでこんなに恥ずかしいのかな?

それって、すごく幸せなことなのにね──

「みんなに会うのが恥ずかしいな」

「まぁな。でも、みんなが集まってるから恥ずかしいのも1度で済むじゃん。見せつけてやろーぜ」

「そっか……。こうなったらいっそのこと、隠さないで堂々と行っちゃう? ──ねえ、手繋ご」

恥ずかしさを消すように、強くアッくんの手を握った。

アタシはアッくんが好き。

からかわれたって、それは祝福なんだよね。

「なんかさ、こうやってると中学に戻ったみたいだな」

「うん。うちらが始まったのも屋上だったし」

?~?~?~

「あっ……急いで下りよう!!」

携帯の着信に急かされ、固く手を握りあったまま屋上から校内へと戻った。

この後、美亜の教室前では、想像通りの光景が繰り広げられていた。

「キャーッ」

「良かったね!」

みんなの嬉しそうな大声や歓声が廊下に響いた。

アタシはアッくんと手を繋いだまま、照れ笑いをした。

赤い糸destiny 「屋上で何してたかは聞かないけど……! 本当に良かった!」

優梨はアタシたちをからかいながらも、ナツと手を取り合って喜んでいた。

沙良と彼氏サンは、驚きすぎて声を失っていた。

「さっき芽衣たちをからかったばかりなのにっ! 本当にびびった!」

美亜は驚きながら、パシャッとポラロイドカメラのシャッターを切った。

「芽衣チャン、ラブラブ!」

「彼氏できたんだぁ」

まわりにいた友だちからも声をかけられて、幸せの絶頂を感じながら、アッくんと微笑み合った。

それからも、アタシとアッくんは愛を育み続けた。

アタシのすべてがアッくん色に染まっているよ。

楽しくて幸せな毎日。

好きな気持ちは止まることを知らず、膨れ上がっていった。

あなたと手を繋いで歩けることが幸せ。

つき合って、あなたの温もりを感じることが幸せ。

あなたがそばにいてくれることが幸せ。

あなたに「好きだ」って言ってもらえることが幸せ。

数えきれないほどの幸せに、身も心も溶けてしまいそう。

好きな人に愛されてると、こんなにも人生が変わってしまうんだね。

赤い糸destiny 幸せな時間が経つのは早くて、気がつけば、すでに暦は11月を示していた。

プチデートになっている朝の登校中──

「アッくん。もうすぐ1カ月記念だねっ!」

アタシはそう言い、アッくんに笑いかけた。

中2のときは1カ月記念の日に別れてしまった。

今回こそは、ちゃんと記念日を祝いたい。

「──だよなっ。最近おふくろの店でバイトしてるから何か買っとくよ!」

「マジで!? ちょー嬉しいっ」

人目も気にせずアッくんに抱きついてしまった。

アタシにとってアッくんは、ポカポカとあたたかい陽だまりのような存在。

安心できて、アタシの居場所はここだって思えた。

でも、ひとつだけ、陽だまりには影を感じるの。

?~?~?~

「また電話……」

「ごめんな。クラスのヤツだよ」

「本当にそう? 電話鳴りすぎだよね」

影とは、この電話のこと。

アッくんと一緒にいるときにはいつも携帯が鳴っていた。

一度や二度じゃない。

それに、アッくんは一度だってアタシの前で電話に出ていないんだ。

赤い糸destiny 幸せな時間が経つのは早くて、気がつけば、すでに暦は11月を示していた。

プチデートになっている朝の登校中──

「アッくん。もうすぐ1カ月記念だねっ!」

アタシはそう言い、アッくんに笑いかけた。

中2のときは1カ月記念の日に別れてしまった。

今回こそは、ちゃんと記念日を祝いたい。

「──だよなっ。最近おふくろの店でバイトしてるから何か買っとくよ!」

「マジで!? ちょー嬉しいっ」

人目も気にせずアッくんに抱きついてしまった。

アタシにとってアッくんは、ポカポカとあたたかい陽だまりのような存在。

安心できて、アタシの居場所はここだって思えた。

でも、ひとつだけ、陽だまりには影を感じるの。

?~?~?~

「また電話……」

「ごめんな。クラスのヤツだよ」

「本当にそう? 電話鳴りすぎだよね」

影とは、この電話のこと。

アッくんと一緒にいるときにはいつも携帯が鳴っていた。

一度や二度じゃない。

それに、アッくんは一度だってアタシの前で電話に出ていないんだ。

赤い糸destiny アッくんと一緒にノブさんのお店へ行った日もそう。

思えばつき合う前から、頻繁に携帯が鳴っていた。

あのころはそこまで気にならなかったけど、彼氏になってからは妙に気になる。

なんでいつも出ないんだろう。

「出なくていいの?」

遠慮がちに尋ねると、アッくんは笑いながら答えた。

「芽衣と一緒のときは邪魔されたくないし」

「そっか……」

アッくんは不安がるアタシの手を握った。

前に聞いたときも、同じような答えが返ってきた。

ねぇ、アッくん。

本当にそれだけ?

今日は、これでもう4回目の電話だよ──

そう言いたかったけど、口には出せなかった。

追求して、うざく思われたくなかった。

「芽衣、どうした?」

「ううん。別に何もないよ」

モヤモヤした気持ちをごまかすように笑った。

アッくんはアタシを見つめた後、腕を引いて、ギュッと抱き寄せた。

「えっ……ちょっと!? みんな見てるっ──」

腕の中で、真っ赤になりながら慌ててしまった。

赤い糸destiny 突然のアッくんの行動に、道行く人々もアタシたちをジロジロと見ていた。

「ね……ねえってば……」

「急に抱き締めたくなっただけっ」

「え、ええっ」

自分から抱きついたときは人目なんか気にならないのに、アッくんから抱き締められると、脳の奥が痺れて恥ずかしくなるよ……。

「アッくん……」

「ん?」

「大好きぃ」

恥ずかしいと思いながらも、アタシの口からは愛の言葉が溢れ出した。

そして……さっきまでのモヤモヤなんて、すぐに消えていった。

アタシはこんなにも愛されているんだ。

電話のことだって、きっとただの友だち。

彼女のアタシが、こんなに愛をくれる彼氏を疑ってどうすんの?

「ねぇ……アッくんもアタシのことが大好き?」

「当たり前だろ」

「じゃあ……好きって言って?」

アタシは、アッくんの背中に回した手に力を入れる。

そして、いたずらっ子のような笑顔でアッくんを見た。

「今度言う!」

「えーっ? ヤダ」

「ヤダじゃないって。もう行くぞっ」

赤い糸destiny アッくんはぶっきらぼうに言って体を離し、アタシの手を掴んで歩き出した。

「アッくん、顔が真っ赤だよっ。1カ月記念日にはいっぱい好きって言ってもらおうっと」

「──あっ。そういえばその日って日曜だよな?」

「うん。どうしたの?」

アッくんは何かを考えついたのか、急にニコッと笑う。

そして、ひとつの提案をした。

駅でアッくんと別れ、高校に向かった。

アタシの足取りは軽く、顔には笑みが浮かんでいた。

……笑みというより、ニヤけているといった方が合っているのかもしれない。

「おはよん!」

小走りで駆け寄ってくる美亜に、肩を叩かれた。

「あっ、おはよっ! ──ていうか、ちょっと聞いてっ!!」

「え? どうしたの? 朝から元気だねぇ」

テンションの高いアタシを見て、少し引き気味な美亜。

アタシはお構いなしに、よりいっそうデレッと顔の表情を緩ませた。

「あのね、アッくんにお泊まり誘われちゃったぁ!」

「えっ!? やったじゃん!」

赤い糸destiny アッくんからの提案は、このこと。

──「芽衣、日曜の朝から会うなら土曜から一緒にいた方がよくない? それ、考えといて」

アッくんに言われた言葉が頭に浮かんだ。

「嬉しかったよー!! でも、土曜から一緒ってお泊まりだよね? やっぱりエッチとかもあるよね?」

「ブッ……アハハハッ」

「もうっ……笑いことじゃないの!」

アタシとアッくんは、この約1カ月間で何も進展がないままだ。

抱き合うことはあっても、キスすらしていない。

「笑ってごめんね! 前にアッくんと経験済みでも、やっぱ恥ずかしいモノなんだねっ」

「当たり前じゃん! なんか、余計に恥ずかしいかも……。エッチなんか1年以上やってないし、やり方すら忘れてるよー」

「アハハハハッ、可愛いっ! やっぱ笑っちゃうよ!ごめんね! アハハッ!!」

美亜はお腹を抱えて爆笑している。

「相談する相手を間違ったーっ」

「アハハッ! ごめんってば。まぁ、あたしなら勝負下着とムダ毛の処理するかなぁ。前より見た目悪い体だと、なんか幻滅されそうじゃない?」

笑いすぎの美亜は、涙目になりながら言った。

赤い糸destiny 「確かにそうだよね! アタシ、胸が小さくなったんだ。しばらく前に食事とれなくて痩せたから……」

「胸? 見た目じゃわかんないけど」

男の人って、胸が大きい人が好きっていうイメージがあった。

前より小さくなってたら、ショック受けちゃうかな?

そう思うと、エッチというより体を見せることに対して臆病になってきた。

「胸のことは、海斗にでも相談しよっか。勝負下着はある?」

「あっ……それは一応あるっ!」

「アハハッ! やらしいっ! なんか、自分のことみたいに恥ずかしくなるよ」

ふたりで一緒に笑いながら、その後もエッチに必要なモノについて語り合った。

朝からこんな話で盛り上がるなんて、本当に久しぶり。

恥ずかしいけど……嬉しくもある話。

麻美チャンのことがあったころは、アッくんとエッチなんて考えてもみなかった。

不安だけど、早くアッくんとひとつになりたいな。

エッチしたいというより、肌を重ね合いたい。

きっと、すごく幸せな気持ちになれるはず──

赤い糸destiny 教室に着いて、海斗を見つけると、すぐに駆け寄って聞いた。

「おう、おはよ!」

「おはよ! いきなりだけど変な相談してもいい?」

「いいけど……」

アタシは海斗の耳元に顔を寄せ、小声でさっきの悩みを話す。

「そんなことで悩んでるのか?」

話を聞き終えた海斗は、呆れたように言った。

「そんなことって。かなり大きな悩みだよ」

「女ってくだらないことばっかり悩むよな。好きな女が小さくても関係ないって」

海斗は、笑いながら答えた。

「本当に?」

「本当だよ。俺は巨乳好きだけど、美亜はマジ胸ないだろ?」

「確かにっ!」

リアルな男の意見を聞き、ホッと安心できた。

「そういえば──」

海斗は何か思い出したように携帯のスケジュールを開く。

「土曜っていつの?」

「今週だよ」

「マジで!? 芽衣たちが良かったら、一緒にカラオケ行かねぇ? 美亜と約束してんだけど、ふたりじゃつまんないよなって話してたんだよ」

みんなでカラオケ……それ、いいかも!

アタシもふたりきりだと緊張しちゃいそうだ。

赤い糸destiny 「うん! いいねっ! アッくんに聞いてみる」

「行けたら行こうぜ」

海斗に返事をして、アッくんにメールを打った。

?…?…?…

すぐに快い返事が返ってくる。

「──あ! 行こうだって」

「そっか! マジ良かった~。実はさ……土曜に告ろうと思ってんだよ」

「えっ!? マジで!!」

海斗は苦笑いをしながら頷いた。

「ふたりきりだと告るまでの時間がきついし。マジで助かったよ。最近さ、美亜が悩んでるの気づいてた?」

「えっ?」

いきなりの問いに、アタシは美亜の姿を思い浮かべた。

頭には、ニコニコ笑う美亜しか浮かばない。

「あたしなんか誰にも必要とされてないとか言ってんだよ。あと、ミツの話して落ち込んだり。だから、ひとりはお前のことが好きで必要なヤツがいるって知ってほしいんだよな。……振られるのは確実だけどっ」

ズキッ──

海斗の言葉に胸が痛んだ。

──美亜はミツのことも忘れてきて、元気な美亜に戻ってきていると思っていた。

赤い糸destiny アタシや優梨の前じゃ、そんな姿を見せなかったから。

「たぶん、芽衣たちには彼氏がいるから、話しにくかったんじゃないか?」

「親友なのに気づいてあげれなかったよ。最初は気を遣ってたけど、最近のアタシは浮かれてばっかりだったし……。アッくんのノロケ話もしちゃってた」

よく考えれば……まだ忘れられなくて当たり前。

明るく振るまったって、好きな人はそう簡単に忘れられない。

それは、アタシもよくわかってたはずだったのに……。

「あんまり自分を責めんなよ。やっとアッくんとつき合えたんだから、色ボケすんのが普通だろ? 美亜も芽衣たちのことは喜んでるし。カラオケに芽衣たちを誘おって話、美亜が言ってたんだ。芽衣も俺も、これから一緒に美亜のこと支えてこうぜ」

海斗のフォローを聞きながらも、アタシの心はどんどん沈んでいった。

そういえば最近、放課後に美亜と遊んでいない。

それも、アタシがアッくんとつき合ってからだ。

いろいろ悩みながらも笑顔で一緒にいてくれた美亜。

アタシとアッくんの姿を見聞きして、つらいときもあっただろうな……。

それでも笑顔でいてくれたのは、きっと美亜の優しさだ。

赤い糸destiny 抜け出せない

アタシは、土曜日までにゆっくり美亜と話そうと決意した。

だけど、こんなときに限って、まったく美亜と時間が合わない。

「ゴメン! 予定があって。土曜に話そう」

そう断られてしまい、土曜を待つしかなかった。

金曜の放課後──

悩んだ末、アタシは優梨に会いに行った。

「うーん。美亜と話し合うより、知らないフリして気遣ってあげる方がいいんじゃない? 彼氏のいるあたしたちが何か言っても、同情されてるみたいで嫌な気分にさせるかも……」

話を聞いた優梨は言う。

……そうなのかな。

違うような気がしながらも、そう言われるとそんな気もしてきた。

「美亜を気にしすぎてアッくんと距離あけるより、いつものように楽しんできなよ! 美亜のことは、今は話してくれるまで待った方がよくない?」

「うーん」

どうしたらいいのか悩んでしまう。

心がグチャグチャに混乱したまま、土曜の朝が来た。

?~?~?~

「うぅ……」

携帯の着信音に起こされ、ベッドの中で体をよじらせた。

赤い糸destiny 時計を見ると、まだ朝の9時だった。

「休みの朝からもうっ……」

アタシは寝惚けた頭のまま、携帯を掴んで通話ボタンを押す。

「はぁい……」

「あっ、寝てた?」

「……うん。フワァ……どひたのぉ?」

電話の相手はアッくんだ。

こんな時間に電話なんてめずらしいな。

「ごめんな! 昨日、おふくろの店を手伝ってたんだ。そしたら──あっ、見間違いかもしれないんだけど……」

「ん? 何かあったぁ? ファァ……」

アクビをし、眠い目を擦った。

……見間違い? アッくんは何を見たのかなぁ?

少し考えてはみるが、あまりにも眠すぎて頭が働かない。

「あ……やっぱりなんでもない」

「ふえっ? 何それ?」

「多分違うわ! マジ忘れて!! 起こしてごめんなっ」

よくわからないまま、一方的に電話は切れてしまった。

──今の電話はなんだったんだろ?

疑問に思いながらも、携帯を枕の横に置く。

普段なら言葉の続きが気になるけど、今はあまりにも眠いよ……。

アタシは布団をかぶり、また眠ってしまった。

赤い糸destiny 午後3時──

「行ってくるね!」

家族に声をかけ、笑顔で玄関を飛び出した。

ブーツの踵を鳴らしながらマンションを出ると、アッくんが待っていた。

「アッくん!」

「おぅ」

声をかけながら、愛しいアッくんの元へと走り、思いきり抱きついた。

「お、おいっ……何やってんだよっ」

「会えて嬉しい!!」

照れ屋のアッくんは恥ずかしそうに笑った。

その笑顔は太陽のよう……。

アタシは溢れ出す気持ちをこらえきれず、アッくんをさらに強く抱き締めて甘えた。

待ち合わせ場所に着くと、海斗が手を振りながら近づいてきた。

「美亜は?」

「まだー。もう来んじゃない? ──アッくんひさびさ!」

「ひさびさっ。ていうか、男にアッくんって呼ばれんの気持ち悪いからアツシでいいよ!」

「じゃあアツシでっ。俺も海斗って呼び捨てにして!」

早速、アッくんと海斗は意気投合して話している。

赤い糸destiny 午後3時──

「行ってくるね!」

家族に声をかけ、笑顔で玄関を飛び出した。

ブーツの踵を鳴らしながらマンションを出ると、アッくんが待っていた。

「アッくん!」

「おぅ」

声をかけながら、愛しいアッくんの元へと走り、思いきり抱きついた。

「お、おいっ……何やってんだよっ」

「会えて嬉しい!!」

照れ屋のアッくんは恥ずかしそうに笑った。

その笑顔は太陽のよう……。

アタシは溢れ出す気持ちをこらえきれず、アッくんをさらに強く抱き締めて甘えた。

待ち合わせ場所に着くと、海斗が手を振りながら近づいてきた。

「美亜は?」

「まだー。もう来んじゃない? ──アッくんひさびさ!」

「ひさびさっ。ていうか、男にアッくんって呼ばれんの気持ち悪いからアツシでいいよ!」

「じゃあアツシでっ。俺も海斗って呼び捨てにして!」

早速、アッくんと海斗は意気投合して話している。

赤い糸destiny アタシはまわりを見渡し、美亜の姿を探した。

時間が経っても、美亜はなかなか現れない。

携帯を取り出して電話しても、呼び出し音だけが虚しく鳴り続けるだけ。

「電話出ないよぉ……。美亜って遅刻多いからさぁ」

「だよな! いつも待たされるっ」

「メールして、先にカラオケ入んない?」

11月の冷たい風に、3人の体温は奪われ、寒くて風邪をひいてしまいそうだ。

「そうだね。30分待っても来なかったら行こう」

「おぅ」

時間を見ると、あと少しで待ち合わせ時間から30分になる。

美亜……早く来ないかな?

そう思いながら冷たくなる両手を擦り合わせた。

だけど……。

「じゃ、行くか」

「うん」

美亜は現れないまま、30分が過ぎてしまった。

「美亜の遅刻癖にはまいるよ~」

「本当にそう!」

「来たら言ってやろ」

3人は苦笑いをしながら、街のはずれにあるカラオケ屋へと向かった。

そこはチェーン店のカラオケ屋より安くて、みんなでよく利用するカラオケ屋。

赤い糸destiny 部屋に入っても、美亜のいないカラオケは盛り上がらなかった。

告白しようと決めていた海斗は特にそう。

気まずそうにタバコばかりを吸っていた。

そして、気がつけばもう夕方の5時になっていた──

「遅すぎじゃねぇ?」

「本当に遅いよな。美亜は遅刻しても約束破るようなヤツじゃないし」

だんだん3人も不安になってくる。

携帯は相変わらず繋がらないまま。

何かあったんじゃないかという不安が、胸に広がっていった。

「俺、先に帰るよ。また来週話そうぜ!」

しばらく経つと、海斗は荷物をまとめて立ち上がった。

赤い糸destiny カラオケに入ってから、もうすでに2時間が過ぎている。

「えっ? 帰るの?」

「美亜も来ないし、ふたりきりの方がいいだろ?」

海斗はそう言い、寂しそうに笑った。

部屋の中には気まずい空気が流れる──

「海斗、飯でも食いにいかない? オレらも出るよ」

「うん! どっか入ろう」

アッくんは海斗に気を遣ったのか、そう言って伝票を掴んだ。

アタシもそれに合わせ、鞄を持って立ち上がる。

……美亜は今、何をしているんだろう。

その心配は、だんだんいら立ちに変わってきた。

「邪魔じゃん……」

「邪魔じゃねーって! 気を遣うなよ。──なぁ、芽衣」

「うん」

海斗はその言葉を聞いても、申し訳なさそうに首を横に振る。

そして、小さく溜め息をついた。

「……ごめんな。今日は帰るよ」

「そっか……。アッくん、うちらも一緒に出よ?」

アッくんはコクンとうなずく。

そして3人はカラオケ屋を後にした。

「寒っ……」

外に出ると、すでに陽は暮れていた。

「もう冬だな」

「マジ寒っ……」

横に並び、ネオンがつき始めた街を歩き出した。

身を切るような冷たい風が、余計に虚しい気分にさせた。

「美亜、ありえない。バックレって初めてだよ」

「まぁ……何かあったんじゃないか?」

「海斗! なんでフォローすんの? 告ろうって思ってたんでしょ?」

もともとの約束をしていた海斗が、美亜をかばう。

きっとなんでも許せるくらい、美亜が大好きなんだね。

その気持ちがひしひしと伝わり、海斗の気持ちを考えると胸が痛かった。

赤い糸destiny ?…?…?…

「あっ……」

メールの着信音が鳴り、急いで携帯を開いた。

「美亜かな!? ──あっ。違った……」

メールの送り主は、前にも入ってきた嫌がらせメールの主だった。

しかも──

〈死ね死ね死ね死ね……〉

死ねという文字が、数えきれないくらいに並んでいた。

「もおっ。なんなのコイツ!」

美亜にいら立っていることもあり、乱暴に携帯をしまった。

「……どうした?」

明らかに様子が変わったアタシを、海斗が心配そうに見る。

「ううん、なんでもない。間違いメールがきたの」

「それならいいけど……」

そして3人はまた、無言で街を歩き出した。

……本当は、なんでもないなんて真っ赤な嘘。

この嫌がらせメールは、毎日のように入ってきていた。

最近は、非通知の嫌がらせショートメールだって来るようになっている。

気持ち悪い。

そして、陰湿で怨みがこもった文章を読むたびに怖くなった。

拒否して余計に酷くなったら嫌だから、拒否することもできないまま。

赤い糸destiny なんとなくだけどアタシには相手の検討がついていた。

だから……今はなんでもないって言うしかない。

この話をするとアッくんが傷ついてしまう。

……嫌がらせのメールが届き始めたのは、アッくんと会うようになってから。

多分、アッくんとアタシが会うことを気に入らなく思っている人が送り主。

──それは、ひとりしか思い浮かばなかった。

……送り主は、麻美チャンだろう。

「キャハハハッ」

突然アタシの耳に、聞き覚えのある笑い声が入ってきた。

海斗も気づいたのか、急に足を止めた。

「ねえ……。今の声って……」

「……だよな。空耳じゃないよな?」

アッくんは聞き逃したのか、不思議そうにふたりの顔を見比べた。

「……よねっ」

会話はよく聞こえないが、確かに美亜の声が近づいてくる。

……なんで?

なんで美亜が?

──今、アタシたちが立っているのは繁華街から少し外れた場所。

まわりには、クラブとバーとコンビニくらいしかなかった。

赤い糸destiny 「──いたっ!」

まわりを見回していた海斗が、右斜め前を指した。

そこには、愁とミヤビと仲良く歩く美亜がいた。

「──ッ!」

アタシは声にならない叫びをあげ、美亜に向かって走り出した。

頭の中は怒りと悲しみで、メチャクチャに掻き乱された。

「──っうか、何やってんの!!」

美亜の腕を掴み、大声で怒鳴る。

そして、3人の姿をニラみつけた。

「あ……あれ?」

「『あれ?』じゃねーし!」

美亜は、驚きながらもヘラヘラと笑う。

「芽衣チャン、ひさびさ~」

「なんでそんなに怒っているのぉ~?」

愁とミヤビも笑いながらアタシに話しかけてきた。

その姿に余計ムカついて……。

ブチン。

頭の奥で、何かが切れた音がした──

「お前ら、マジふざけんなよ!」

アタシは腕を掴む手に力を入れ、美亜の体を引きずる。

「ち、ちょっと……」

「こっち来なよ」

戸惑う美亜を引きずったまま、海斗に向かって歩いた。

愁とミヤビは今の雰囲気を察したのか、サッと姿を消す。

赤い糸destiny 「芽衣っ! ちょっと落ち着け! ただ、約束に来なかっただけだろ!? なんでそんなにキレるんだよっ!」

海斗が駆け寄ってきて、興奮するアタシを押さえた。

アタシは美亜の腕を掴んだまま、その場に立ち止まった。

「だって美亜は───ッ……な、なんでもない」

海斗に言い返そうとして、慌てて口を閉じた。

海斗とアッくんは、美亜がクスリをしていたことを知らない。

ただ約束を破っただけの美亜を怒鳴りつけていると思っているのだろう。

「海斗……。アッくんも……」

美亜はそう言うと、気まずそうに下を向いた。

「芽衣!」

海斗の後ろから走ってきたアッくんに腕を掴まれた。

「……」

アタシは不満な気持ちを抱えながらも美亜から手を離した。

「……ごめん」

美亜はうつ向いたまま小さく呟いた。

ごめんって……なんの意味のごめんなの?

美亜の肩は小さく震えていた。

その肩を、海斗は優しく抱いた。

「海斗……。手を離して」

「芽衣……」

「いいから離して。アタシ、美亜に話があるんだよね」

赤い糸destiny 海斗……。

海斗のこともアタシのことも、美亜はみんなを裏切っているんだよ。

「美亜! 話したいんだけど!」

「──おい! ちょっと待てって!」

アッくんはさっきよりも強い口調でアタシを止める。

美亜は海斗の肩に抱かれながら、アタシをチラチラと見ていた。

──この状況ってまるでアタシが悪者じゃん。

「……もういい。アタシ、帰るから」

「……」

何もかも……すべてが嫌になる。

もういい。

もういいよ……。

「芽衣っ」

「もういい! ついてこないで!」

踵を返してアタシは歩き出した。

──ここにいたくない。

海斗の陰に隠れる美亜も、困ったような視線を向ける海斗やアッくんも……すべてが嫌だよ。

「だから待てよ! なんでそんな態度なんだよ……。美亜と何があった?」

後ろから追いかけてきたアッくんに腕を掴まれた。

すぐにその手を振り払い、アタシは歩き続けた。

「──おい!」

「……嫌っ」

「本当になんだよ。海斗も美亜も心配してるから戻るぞ」

赤い糸destiny アタシは強引なアッくんに連れられ、下を向きながら海斗と美亜の元にしぶしぶ戻った。

「どうしたんだよ……」

海斗はそう言いながら眉間に皺をよせた。

その手は今も大切そうに美亜の肩を抱いたまま。

アタシは何も答えることができなかった──

「なぁ……」

「……」

「美亜も芽衣も変だぞ。話せよ」

一瞬、美亜と目が合う。

しかし美亜はすぐに視線をそらした。

「えっ? まさか──」

……その美亜の表情をアッくんは見逃さない。

急に真顔になり、ジッと美亜の顔を見つめた。

見られていると気づいたのか、美亜はすぐにうつむいた。

「美亜……。顔上げろ」

「な……なんで?」

「いいから上げろ」

美亜は明らかに動揺し、顔を両手で覆った。

「アツシまでなんだよっ」

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