饭饭TXT > 海外名作 > 《红线》作者:[日]芽衣/译者:王欣【3部完结】 > 赤い糸.txt

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作者:日-芽衣/译者:王欣 当前章节:15389 字 更新时间:2026-6-22 21:38

美亜も隣でガタガタ震えている。

「……そー言えばユリは? 逃げた?」

「──帰った。キレて出てったよ」

ほかの3年の男が言った。

「あいつ呼び出そーぜ」

「あぁ……」

コータはその男たちの所に行き、話し始める。

何か、嫌なことが起こる予感がした──

赤い糸 「──ッ……ヒック……グスッ……」

綾は床に顔をつけ、泣いていた。

「──出てくる。綾、逃げんなよ」

話が終わったのか、コータと男たちは部屋を出て行った。

……どうなるの?

アタシと美亜は部屋に入り、ソファーに腰を下ろした。

「──綾っ」

菜穂さんは綾に駆け寄って行く。

「……ごめん。……グスッ……ごめんね」

綾はアタシと美亜を見て、謝った。

頬は赤く腫れ、口元も切れて腫れている。

制服に赤い染みができていった──

「──もういい……」

「うん……」

今の綾を見て、アタシも美亜も責めることはできなかった。

「ごめん……」

綾は涙を流し、謝り続ける。

「……コータが忘れられなくて好きで。芽衣チャンは彼氏いるのにコータの気持ち奪って……好きでもないのに、コータとイチャついてたのが許せなかった。それなら……レイプしてもいいって思った。レイプすればコータからも離れていくって思った。ほんとにごめんなさい」

綾の涙と謝罪の言葉に、嘘はないように見えた……。

赤い糸 綾の言葉に、胸が痛む……。

確かに、アタシはコータの優しさを利用した。

アッくんを忘れるため……。

悠哉を忘れるときにアッくんを利用したように、コータも利用した。

綾はアタシを恨んだよね。

レイプされたことは嫌だし、忘れられそうもないくらいに今もつらいよ。

だけどアタシの軽はずみな行動が、みんなを傷つけた。

そして、今回の事件に繋がった。

「……もう、いいよ。アタシも悪かったから──」

素直に口から出た言葉。

綾は目を丸くしてアタシを見ていた。

「美亜にしたこと、ユリのこと、あの男たちのことは許せない。でも、アタシが綾さんにしたことは……」

「芽衣ちゃ……ウウッ……」

泣き崩れる綾を、菜穂さんが支える。

美亜は複雑そうな顔で、その光景を見ていた。

「……美亜もユリから男取ったことがあるの。ユリの彼氏とヤッて、ユリから横取りした……」

美亜がボソッと言った。

「だからマックで?」

「うん……。絶対許さないって言われた。ユリにムカついたけど、罪悪感もあったんだ……。ユリ、その彼氏が全部初めてだったんだって。やり方は汚いけど、美亜もユリの立場だったら同じことをしたかもしれない……」

もう誰も、何も言わなかった。

赤い糸 ?~?~?~

「あ……アタシの……」

菜穂が携帯を取り出した。

「ダイくんだ……」

ダイとは、さっきの3年の男の中のひとり。

菜穂さんは、アタシたちに断ってから電話に出た。

「──はい……うん……えっ!? コータが?」

菜穂さんは驚いた様子でアタシを見る。

そして、深刻そうにダイと話し続けた。

「……うん、わかった。じゃあ、待ってる」

電話を切って、溜め息をつく菜穂さん。

……何があったの?

コータに何が?

「警察にいるって……」

「えっ!?」

「……コータたち、捕まった。ダイくんは、うまく逃げたらしいけど……」

バタバタバタ

階段を駆けのぼる音がする。

「──綾! 警察来るぞ!」

「!?」

廊下から顔を出したのは、今電話をしていたダイだった。

後ろには同じ3年のハルという男もいる。

──何が起こったの!?

警察って……、聞きなれない言葉。

訳がわからない不安が胸を支配して……。

心臓が──

強く、早く、動き出した。

赤い糸 ──ダイとハルから聞いた話はこうだった。

コータは部屋にいた男以外にもユリと繋がりのある仲間に連絡をし、ユリを捕まえた。

そして、ユリにレイプした男を呼び出させた。

男たちはコータがいるのを知らずにノコノコとやって来た。そして、乱闘になった。

それを見かけた近所の住人が警察に通報。

ダイとハルは逃げ切れたけど、コータたちはパトカーに乗せられてしまった。

暴行を加えたから、傷害罪になってしまったんじゃないか……。

そして、レイプの話も出るだろう。

ここには加害者も被害者もいるから、警察が来るはず……。

──そういうことだった。

「どうしよう……」

綾が周りをキョロキョロ見て、頭を抱えた。

真っ青な顔をして……ガタガタと震える

赤い糸 決意

「どうしよう……怖い──」

綾は、独り言のようにつぶやいた。

──どうしようって、こうなることも想像できたでしょ?

綾の気持ちを聞いて、ボロボロな姿も見て、許せるように頑張ろうとは思えたけど……。

警察に捕まるのは、また別の話じゃないの?

当たり前なんじゃないの?

罪を償うのは、当然の報いじゃないの?

ガタンッ

バタバタバタ……

綾はバッグを抱えて、部屋を出て行った。

……誰も止めない。

止めても逃がしても、いずれ捕まるのは明確だった。

それより、コータが心配だよ……。

どうなっちゃうの?

アタシのせいで──

「コータに会えるの?」

「わかんない……ハァ」

ダイは溜め息をついた。

?~?~?~

携帯が鳴る。

──こんなときに……。

「……はい」

アタシは無愛想に出た。

「……」

「誰!?」

こんなときに、無言電話なんて……。

「誰って聞いてんでしょ!?」

「……芽衣」

「えっ?」

聞き慣れた優しい声。

赤い糸 ……悠哉。

緊張が溶けていく──

「どうした? キレてるけど……」

「……」

返す言葉がなかった。

こんなときなのに、悠哉の声で安心する自分……。

「……グスッ」

「──泣いてるのか?」

「ウウッ……悠哉ぁ……」

緊張の糸が切れ、涙がこみあげてくる──

しばらく経つと、悠哉が姿を現した。

ダイから連絡が来て、呼び出されたらしい。

「……後で話そう」

悠哉はそう言うと、ダイたちと隣の部屋に行った。

「もぅ帰ろうかな。いろいろあって疲れた」

美亜はバッグを手に取り、立ち上がる。

「芽衣は? まだ残る?」

「……うん。そうしようかな」

「じゃあ、また明日ね」

菜穂さんもジュースを買いに行くと言い、美亜と一緒に部屋を出て行った。

部屋にひとりきりになったアタシは、タバコに火をつけた。

今日は、疲れた……。

体も、心も。

それに、コータはどうなっちゃうんだろ……。

アタシと美亜のことで、関係ないコータを巻き込んでしまった。

コータ、ごめんね。

赤い糸 15分ほど経った頃、悠哉が部屋に戻って来た。

アタシの顔を見て、一瞬気まずそうな表情をする──

アタシがレイプされたこと……、ダイくんたちから聞いたんだね。

悠哉には知られたくなかったな……。

コータのこともあるし、バレちゃうのは仕方ないけど。

「──芽衣、帰ろう」

「でも……」

「コータ、今日は警察から出られないらしいよ」

そっか……今日は出られないんだ。

それなら、帰ったほうがいいよね。

……こんな状況なのに、悠哉とふたりきりの帰宅に胸がドキドキしてしまう。

そんな自分が嫌だった。

悠哉は忘れたはず……。

春菜の彼氏なんだよ。

それに、ケリをつけにいってくれたコータは今も警察にいる──

浮かれるなんて、最悪な人間だよ。

体だけじゃなくて、アタシは心まで汚れてしまったのかな……。

こんなアタシ、生きてる価値ってあるのかな?

悠哉との時間を楽しみにしてしまった自分に、どんどん嫌気がさしていく……。

赤い糸 ──複雑な想いを抱え、アタシは悠哉と外に出た。

ふたりはゆっくり、家までの道を歩いた。

外は陽が沈んで暗く、少し肌寒い。

もう夏は終わってしまったんだ──

「……こんなふうに悠哉と歩くの、久々だね」

「そうだな」

妹のような存在になろうと決意した日以来、悠哉への気持ちに蓋をしたはずだった。

だけど一緒にいると、悠哉に恋してたときの感覚が戻ってくる。

避けたりほかの人でごまかして、悠哉への気持ちに蓋をしてたのに……。

蓋の中で、気持ちは生き続けてたんだね。

アッくんへの気持ちもあるけど、それともまた違う悠哉への気持ち──

「……髪に葉っぱついてる」

そっとアタシの髪にふれ、葉を取る悠哉。

「──ッ」

カーッと顔が赤くなり、熱くなる。

「悠哉、お姉ちゃんとは順調?」

最低なアタシは、うまくいってないという答えを期待しながら言った。

いきなりの質問に、少し戸惑う悠哉。

「普通だよ……」

悠哉はうつ向いて、無愛想な声で言う。

──アタシには、わかったよ。

赤い糸 幼馴染みだし、ずっと大好きで悠哉を見てきたんだもん。

アタシにバレないように隠して答えたけど……。

幸せなんだよね。

傷ついたアタシに気を使ってるんだよね。

嘘でもうまくいってないなんて言えなくて……。

普通──

そうごまかしたんだね。

「そっかぁ……」

うまくいってなければいいと思ったアタシ。

やっぱ、アタシはアタシが嫌いだよ。

ズルいし、人より自分のことばかり考えてる。

迷惑かけて、傷つけて……。

ほんと、アタシっていう人間に嫌気がさしていく──

ゆっくり歩いたはずなのに、いつのまにかマンションの前に着いていた。

「何かあったら、俺のことも頼れよ!」

悠哉はそう言い、アタシの頭をクシャクシャなでてくれた。

「頼りないけどねっ!」

笑顔で答えた。

おちゃらけて言ったけど、スゴく嬉しかった。

顔が赤くなっていくのがわかったよ……。

「歩いたら、暑くなっちゃった!」

赤くなる顔を隠すように、手で顔をあおいだ。

赤い糸 ──家に帰ると、リビングが騒がしかった。

ガシャーン バリンッ

「だから……なのよ! !」

「……なんだろ! !」

何を言ってるのかはよくわからないが、罵りあうような両親の声──

……ただ事じゃない。

靴をあわてて脱いで、バッグを部屋にほうり投げた。

廊下を走り、リビングのドアに手をかけたとき──

「お前が芽衣をしっかり見なかったからだろ! 昔からこうなると思ってたんだよ! !」

「人のせいにしないでください!」

……アタシのこと?

ドアにかけた手を離し、立ち止まる。

聞きたくない……。

だけど、足が動かなかった。

両親の言い争いは続く。

「どーしてこうなったんだ……。やっぱりあの夫婦の血なんだな!」

「あなたっ! !」

パシッ

皮膚を思いきり叩く音。

「お前……」

「あっ──叩いたのは悪かったわ。──だけど、それは言わない約束じゃない!」

心臓がバクバクと音を立てる。

聞いてはいけないことを聞いてしまっている気がした。

あの夫婦って、何のこと?

赤い糸 リビングのドアの前にアタシがいることなんて知らない両親は、ヒステリックに会話を続けた。

「ろくでなしの子供を引き取るなんて、だから反対だったんだ。お前の幼馴染みの子供だから仕方なく引き取ったが、そうじゃないなら俺は春菜だけで充分だった!」

リビングがシンと静まる。

?~?~?~

「あっ……」

携帯が鳴った。

ヤバッ……。

そう思ったが、遅かった。

リビングの扉が開き、赤い目をして涙をこぼすお母さんが顔を出した。

「芽衣……聞いてたの?」

アタシは答えなかった。

リビングのソファーに座るお父さんは、アタシと目が合うとパッとそらした。

「芽衣、あのね……違うのよ………」

しどろもどろに言い訳を始めようとするお母さん。

頭の中がグチャグチャになっていく──

「もういいよっ! !」

アタシは叫んで家を飛び出した。

赤い糸 後ろから、お母さんがアタシを呼ぶ声がした。

無視をして、耳をふさいでマンションを飛び出した。

疲れても、走り続けた。

頭の中で、お父さんの声がこだまする──

ろくでなしの子供。

春菜しかいらない……。

アタシは……いらない子供なんだ。

走り続けると、見慣れた中学の校舎が見えた。

アタシは校門の脇に、ペタッと座り込んだ。

「ウッ……ウウウッ……」

たえていた涙が溢れて、止まらなかった。

胸が痛くて、

両親の言葉が突き刺さる──

そして、レイプや裏切りや、いろいろなつらい出来事が頭を占めていった。

アタシは、どうしたらいいんだろう。

家には帰れない。

どこにも行けない……。

「アタシ、生きてる意味あるのかな?」

……ないよ。

小さく、そう聞こえた気がした。

ブーン

遠くから、車のヘッドライトが近づいてきた。

「アタシ……消えたほうがいいのかな? ……うん、アタシなんて消えてしまえばいい」

アタシはゆっくりと立ち上がった。

「みんな、ごめんね……」

赤い糸 ヨタヨタと歩き出す。

なぜか恐怖心はなくって……。

近づくヘッドライトが夜道を明るく照らす。

照らされた道が、天国への入り口に見えた──

「もう、すべて忘れて楽になれるよね……」

歩道から車道に引き寄せられるように、アタシは車の前に飛び込んだ──

キキーーッ ドンッ! !

体に鈍い衝撃──

体が空を飛んで地面に叩きつけられ、意識が遠のいていく……。

あぁ、死ぬんだ。

コンクリートの地面が冷たくて、気持ちいいな……。

みんな、さよなら。

アタシ……やっと解放されるんだね──

赤い糸 夢の中で

「春ちゃん、芽衣ちゃん~!」

懐かしい声がする。

アタシは、小さい頃によく遊んだ公園にいた。

座り込んで、大好きだった砂場で穴を掘る。

隣には、小学生くらいの姉の春菜が山を作っていた。

「帰るよー」

「はぁい!」

遠くで呼んでいるのは、5年前に死んだお婆ちゃんだ。

目尻が垂れてクシャッと笑うお婆ちゃんの笑顔。

大好きなお婆ちゃんの笑顔だった。

小学生の頃、両親は共働きで家にはあまりいなかった。

お婆ちゃんが親代わりにアタシたちを育ててくれていた。

砂場で山を作り続ける春菜に、声をかける。

「お姉ちゃん、行かないの?」

「まだ、行かないよ」

「ふぅん……」

アタシはスカートについた砂を払い、立ち上がった。

赤い糸 そして、お婆ちゃんの所へ歩き始めた。

「じゃあね、お姉ちゃん」

「行くの?」

頭をコクンと下げ、アタシは歩き出した。

「芽衣ちゃん、行こうか?」

お婆ちゃんと手を繋ぐ。

シワシワであたたかい手……。

「お婆ちゃん、芽衣ね、寂しいんだ」

「どうしたの?」

アタシは、お婆ちゃんに抱きついた。

「芽衣はね、いらない子で、よその子なんでしょ?」

「そんなことないわよ」

「ううん……違うよ」

お婆ちゃんの胸に顔をうずめて、アタシは泣いた。

「芽衣……」

「??」

抱きついて、回していた腕の感触が違う。

お婆ちゃんよりがっしりして、ゴツゴツした筋肉質な体で──

「誰?」

「俺だよ」

顔をあげると、悠哉の悲しそうな顔があった。

赤い糸 アタシはパッと離れた。

「お婆ちゃんは!?」

「帰ったよ」

悠哉はアタシの頭をなでて言った。

「何かあったら頼れって言ったばかりだろ……」

悠哉は優しく言った。

「もう、ダメだよ」

「ダメじゃない! 見ろよ! !」

悠哉が指さした。

そこには、白く狭い部屋にひとつのベッド。

包帯をまかれた人が、寝ていた。

隣には、真っ赤な目をしたお母さんと春菜。

ふたりとも頬がこけて、髪がボサボサだった。

部屋のドアが開き、優梨と美亜の姿が見えた。

「芽衣っ!」

「ウウウッ……」

泣き崩れるふたり。

次は、ナツくんが来た。

そして、先生。

クラスメイト。

3年の友達たち……。

みんな泣いていた。

「これでも、いらない子なのか?」

悠哉はアタシに問いかけた──

赤い糸 そして、手をさしのべてくれる。

「こっちに、おいで」

「芽衣をみんな待ってるから……」

さし出された手のひらを、キュッとつかんだ。

みんなの涙が──

アタシに戻って来いって言ってくれている。

そして……。

アタシは意識を回復した。

医者は、「奇跡だ」と言った。

お母さんと春菜は、人目もはばからずに号泣していた。

「1週間も目を覚まさなかったのよ」

「植物状態も覚悟してくださいって言われて……」

げっそりと痩せたふたりの姿を見て、自分のしてしまったことに後悔が押し寄せた。

……逃げて死ぬんじゃなくて、事実を受け止めていこう。

だって──

こんなに周りの人たちがアタシを大切にしてくれてる。

きっと、事実を聞いてもアタシは大丈夫……。

前までのアタシは死んだんだ。

生まれ変わったんだから……。

赤い糸 両親

面会時間が終わりに近づいて、友達たちは帰って行った。

病室には、お母さんと春菜とアタシだけ。

「ねぇ、お母さん。アタシのこと、教えて」

「えっ……」

「アタシは誰の子供なの?」

お母さんは、動揺していた。

「何言ってんの? ねぇ、お母さん」

何も知らないのか、春菜は不思議そぅな顔で笑い、お母さんを見た。

そして、お母さんの真剣な顔を見て──

「……えっ」

黙ってしまった。

「お姉ちゃんも知らなかったんだ……」

「そうよ。芽衣が20歳になったらすべて話そうと思ってたの」

「20歳じゃないけど、全部話して欲しい」

お母さんは、アタシのベッドの横に椅子をずらした。

訳のわからない展開に、春菜は混乱しているようだった。

「芽衣にはわかって欲しいんだけど、私は春菜も芽衣も変わりなく愛してる。同じように、大切な我が子だと思う。私がお腹を痛めて産んだんだ。私の子供なんだ。そう思っている。芽衣は私の可愛い娘だからね」

お母さんは優しく微笑んで、横になっているアタシの髪をなでた。

赤い糸 「あなたの産みの親のマチ子は、私の親友だった。中学、高校が同じで仲良くなったの。可愛くて小さくて、今の芽衣はマチ子によく似てる。マチ子には芽衣のほかに、春菜と同い年の子供がいるの。よく春菜は一緒に遊んでいたわ。

でも、ある日、マチ子の旦那さんがいなくなった。芽衣にとっての父親になるんだけど。すごくいい人だったんだけどね、芽衣の父親は……」

お母さんは言葉を濁した。

「ここまできたら、全部隠さないで話して欲しい。アタシは大丈夫だから……」

アタシの真剣な眼差しを見て、お母さんは覚悟を決めたようだった。

「あなたの父親は、暴力団だった……」

「えっ!?」

春菜は思わず声をあげ、両手で口を押さえた。

暴力団って、ヤクザだよね?

アタシは、ヤクザの娘だったんだ──

赤い糸 お母さんは言葉を続けた。

「あなたの父親は、罪を犯して逮捕されてしまったの。芽衣が1歳にもならなかった幼い頃よ。それからマチ子はノイローゼになってしまったの。3歳と赤ちゃんのふたりの子供を抱え、旦那さんもいなくて、寂しさやストレスを溜め込んでしまった。そして、耐えきれずに……ウッ……自分で命を……アアッ……」

お母さんは顔を手で覆った。

声を押し殺しているようだけど、指の隙間から涙と声がもれていた。

「……まさか、今の芽衣と同じで自殺しようとしたの……? 死んだの?」

お母さんは泣き続けた。

その姿が、アタシの問いの答えだったと思う。

見ず知らずの母。

記憶にも残らない程早く、アタシの元から消えてしまった母──

涙は出なかった。

だけど……。

胸が締めつけられて、苦しかった。

赤い糸 アタシの母親は自殺していた。

父親はヤクザ……。

「父親は、生きてるの? 何をしてるの? お姉ちゃんと同い年の子供は?」

「わからないわ」

「そっか……」

これ以上は、聞けなかった。

お母さんが傷つき泣く姿を見て、切なかった。

「ねぇ、なんでお父さんは病院に来ないの?」

「……」

お母さんは黙った。

春菜も、黙って下を向いている。

「ねぇ……」

「お父さん、出て行ったから!」

アタシの言葉を遮るように、春菜が言った。

「出て行ったって、どうゆうこと!?」

「お母さんたち、別居してるのよ。お父さんは春菜の高校から2駅の所に部屋を借りて住んでるの」

「アタシのせい!?」

お母さんは首を横に振った。

「違うわよ……」

そう言ったお母さんは、悲しい笑顔をした。

「アタシのせいで……」

お母さんや春菜の顔が見れなかった。

「アタシ、やっぱり死ねば良かったんだ……」

「芽衣! !」

パシンッ

乾いた音が病室に響いた。

赤い糸 「バカなこと言ってるんじゃないわよ! !」

春菜がアタシの頬を叩いて、ニラんだ。

目がうるみ、涙がこぼれ落ちそうになっている。

「また自殺しようとしたら、許さない! 死んだら許さない! !」

春菜の大きな瞳から、ポロポロ涙が溢れてきた。

叩かれた頬が痛くて、春菜の気持ちが痛くて、アタシの胸や瞼が熱くなった。

「芽衣のせいじゃない……たとえ、そうだとしても、私は間違った事をしていないと思ってる。早く元気になって、春菜と一緒に3人で、芽衣の大好きなお買い物に行こうね」

お母さんは、泣きじゃくる春菜の頭をなでた。

「お母さん……お姉ちゃん……」

それからしばらくして、アタシは退院した。

折れた肋骨はまだ痛いけど、擦り傷はだいぶ良くなった。

「おかえり」

お母さんは笑っていた。

お父さんのいないリビングが寂しかったけど、誰もそのことにはふれなかった。

赤い糸 ふたり暮らし

あの事故から4ヶ月。

季節は夏から冬に変わって、年末になっていた。

お父さんのいない家にも慣れ、アタシの怪我も治った。

コータは警察に捕まって留置場に入った後、鑑別所に送られて審判で保護観察になった。

今は普通に学校に来て、一般社会で生活している。

そして……。

思い出したくないけど、あのレイプの男たち。

アイツらは今も塀の中にいる。

アタシが入院中、警察が美亜と一緒に来た。

そして被害届を提出。

アイツらは、ほかにもレイプをしている常習犯だった。

逮捕された後、ひとりは少年院に送致され、残りは成人だったから刑務所に行ったと聞いた。

綾はすぐに自首した。

計画したのはユリで、綾は関係がないことが男たちの証言で明らかになったこともあり、綾は留置場に数日入って釈放された。

赤い糸 すべての計画を立てたユリは、今も行方不明──

何をしてるのか、誰も知らない。

ユリは罪を償うより、逃げる道を取った。

時間が経ち、最近は事件の話もユリの話も出なくなった。

そしてアタシの心や体の傷も癒えてきている。

深夜まで遊ぶこともほぼなくなり、平凡な毎日に戻っていた。

今日は12月31日。

明日から新年だ──

アタシと春菜は、お母さんのおせち作りを手伝っていた。

大量にテーブルに並ぶお正月の料理。

「つまみ食いはダメよ」

黒豆に手を伸ばすアタシに、お母さんが言った。

「いーじゃん!」

「まぁだ!」

母とじゃれ合うアタシ。

春菜は横でクスクス笑う。

「春菜、お友達の分を詰めてあげて~」

「わかったぁ!」

春菜のクラスメイトにも、お裾分けする予定。

あとは悠哉のお家と、近所のお婆さんにも。

夜の9時頃、すべての用意が終わった。

「やっとできたぁ!」

リビングのソファーに、バタンと倒れ込む。

「はぃ、もう少ししたら年越し蕎麦のお手伝いもよろしくねー!」

「えーっ……」

お母さん、人使いが荒すぎっ! !

赤い糸 ソファーに座りながら、テレビを見た。

紅白を見たり、K1を見たり……。

お母さんに言われた通りに、年越し蕎麦のお手伝いもした。

奮発して買った高いお蕎麦は美味しくて、食べ終わる頃には日付が変わりそうになっていた。

3……

2……

1……

「明けましておめでとうございますっ!」

3人でテーブルを囲んで頭を下げた。

?~?~?~

?~?~?~

アタシと春菜の携帯が、騒がしく鳴り始めた。

優梨、美亜、ナツくん、コータ、菜穂さん……。

そして、悠哉。

〈あけおめ!今年もヨロシクな。今年はあんまり心配させんなよっ!〉

「はいっ!」

思わず声に出して答えてしまった。

最近、悠哉とはまた仲良く過ごせている。

時には親友、時にはお兄ちゃん。

大好きな悠哉は、いつもアタシの必要な役割にピタッとなってくれて……。

悠哉と一緒にいると楽しい。

居心地がいい……。

しばらくテレビを見て、早めにベッドに入った。

朝から大掃除とおせち作りをしたから、疲れて眠い。

「いい初夢がみれますように~」

アタシは眠りについた。

赤い糸 昼前に起きると、春菜の姿はなかった。

友達のところにおせちを持って行ったらしい。

お母さんがおせちの入った重箱を出してくれて、ふたりで少し遅い朝食を取った。

「やっぱり、この黒豆美味しい~☆ だし巻き卵も! ウン ?」

自分をほめたくなるほど、お手伝いしたおせちは美味しかった。

ドンドン口に運んで、10分ほどで満腹……。

「もぅ、お腹いっぱいだょ~~~」

「たくさん食べてくれて、良かったゎ!」

「うん! 芽衣、もーすぐ初詣行ってくるね。お母さんは悠哉ママと行くんでしょ?」

「そうね。お隣に挨拶に行って、そのまま行ってくるね」

そしてお母さんは、しばらくしてから家を出た。

アタシは少しダラダラしてから、ゆっくり用意。

今年はいいことがありますように──

そう考えながら、髪をしっかり巻いた。

?~?~?~

メールの着メロが流れる。

〈用意終わったら、優梨の家に集合!〉

美亜からだ。

今日の初詣は、3人で地元で有名な神社へ行く予定にしている。

その神社は、恋愛の神がいる神社らしい。

何かいい予感がする。

赤い糸 用意を終えてマンションを出ると、外は雪がちらついていた。

「寒い……ハァ……」

冷える両手に息をかける。

息が真っ白だ。

寒すぎて、いつもより道のりが長く感じる。

優梨の家に着く頃には、手が痛くなってしまった。

ピンポーン

「おじゃまします!」

家族はいないみたいだった。

そのまま優梨の部屋に向かった。

いつものように勝手に優梨の部屋に入る。

ガチャッ

「寒かったぁ~!」

優梨の部屋に入ると、優梨は紙に何か書いていた。

アタシの顔を見て、それをパッと隠す。

「あ!? 芽衣!」

「何、隠したの~?」

優梨は真っ赤になっていた。

「え、えっと……」

「なぁに?☆」

「ナツくんが……やっぱ、やめた! 恥ずかしいもん! !」

「言ってよー! ! 何!? ナツくんと何~~!?」

ナツくんは、優梨の好きな人じゃん!

何があったのか、気になるっ! !

「ナツくんと何があったのぉー?」

問いつめるアタシ。

真っ赤になる優梨。

赤い糸 優梨は真っ赤な顔のまま、ちょー幸せそうに笑った☆

「……まさか?」

「つき合うことになった☆」

「マジ! ! やったじゃん! !?」

アタシは優梨の手を取って、大はしゃぎしてしまった。

「ずっと好きだったもんね! 良かったね!」

「さっきメールきて、コクられたのぉっ! でね、今、初手紙書いてたぁ☆」

「ほんと良かったねっ!」

親友の幸せは自分のことのように嬉しい!

「……どしたの?」

アタシたちの大騒ぎの意味がわからず、ドアの前に立ち尽くす美亜。

「美亜~~~! !」

「えっ!? ……キャーッ!」

アタシと優梨は美亜に抱きついて大騒ぎをする。

訳を話すと、美亜も大騒ぎで……。

初詣には、しばらく行けそうになかった。

そして2時間後──

「寒いっ!」

「ガタガタする……」

震えながら、初詣のお参りをするために行列に並んだ。

?~?~?~

「ナツからだぁ☆」

優梨は嬉しそうに笑いながら、電話に出た。

寒さも忘れたようにデレデレ。

アタシはタバコに火をつけて、寒さをまぎらわしている。

美亜はというと……。

赤い糸 ガタガタ震えながらグチっている。

「もうダメだ! 美亜限界だから、リタイアして近くのおでんの屋台に行っていい?」

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