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作者:日-森茉莉 当前章节:15479 字 更新时间:2026-6-22 20:37

 顎を仰向けたモイラの、褪《あ》せたような薄紅色の脣は半ば開《あ》いている。ピータアの様子を窺うようにもみえる下目遣いに見開いた眼は、居据ったしぶとい甘えの中にくぐもっている。モイラのくぐもりである。いつ、どこから持って来たものか? 母親の胎内からか? 太い、肥え切った蚕。水灰色の鈍いくもりと、重みを持った、あの蚕のくぐもりだ。

 ほっと、短い呼吸《いき》をつき、ピータアはゆっくりと、モイラの上に屈《かが》みこんだ。ピータアの黒い、上瞼にひっついた眼を間近に見たモイラは、半ば開いた脣を泣きかけた子供のように歪め、腕を高く曲げて眼を蔽い、かすかに身を捩じった。モイラの香気が強く発つ、ピータアがその腕をひき毟《むし》る、暗い眼がちらとピータアを視、歪んだ脣のまま、がっくりと、モイラは顔を横に伏せた。

 ピータアはモイラの肩を掴んで寝台に押しつけ、火のような呼吸《いき》を吐いたが、一息つくとゆっくりと背中のフックを外した。縁《へり》に三角形の枠のある、太く荒い格子の窗硝子が、午の鈍い光を反射している、蒸されるような部屋の中で、まだ固さを残しながらに熟した十七歳のモイラの肉体《からだ》は再びピータアの犠牲《いけにえ》台の上に置かれた。最初の時のピータアの、烈しいがやさしい愛撫は酷《むご》い遣り方に変っている。胸の尖端から加えられた啄《ついば》みは残虐で鋭い。はっきりと伝わるモイラの怯えがピータアの残虐をあおる。切なげな、断《き》れ断《ぎ》れの呼吸《いき》をついて逃れようとするモイラの下で、三分幅の鉄を格子に組み、藁のマットを置いたピータアの寝台《ベツド》が啼くような音をたてて軋む。ふと、生温かなものがひろがり、それが腰の番《つが》いに響くのを覚えてモイラは戦慄の中で抵抗の力を失くした。殆ど哀れみを覚えさせずにはおかないモイラを、ピータアはその生温かな戦慄から放とうとはしない。次第に弱まってゆくモイラの短い呼吸《いき》に、残虐なものをいやが上にもあおられ、ピータアはわれにもあらず残虐を繰り返し、その儘何度か、恐ろしい陶酔の中に陥ちこんで行った。

 ようよう、残酷からモイラを解き放したピータアは、モイラの肩の両脇に突いた掌に半身を支えて、モイラを見下ろした。顎を空に、屍のような体を横たえ、腰の辺りを襲う強い余炎に力無くくねるモイラに据えたピータアの眼は、まだ熄《や》みやらぬ残虐への慾求を潜め、むしろ静かに、暗い。何かを断ち切ろうとするようにピータアは体を起して、足元の洋服をモイラの体にかけて遣り、時計の針を確かめた。三時を四十分近く廻っている。モイラの横に体を延ばした時、ふと|※[#「足+宛」、unicode8e20]《もが》くように動いて、モイラがピータアを仰いだ。ピータアの眼は怒張していた虹彩が消えて、陰気に光っている。ピータアの仕科に愕いたのだろう、両端が下がって半ば開いた、哭くような脣、何か異様なものを見た子供のような眼が暗く曇って一瞬ピータアを見たが直ぐに外《そ》れて、又仰のけにがっくり頭を落した。琥珀《こはく》色の、湿り気のある、可哀らしい肉の柱のような右腕が出て、(熱い……)というように、洋服の襟を掴んでひき下げようとする。その胸の辺りに、どこかに、しぶとい媚が見える、意識して遣《や》っているのか、そうでないのかわからぬ、重みのある媚びだ。閉め切った部屋の中で、モイラの皮膚の下から蒸し出される、ピータアを挑撥して止まぬモイラの香気は、二年前の、百合の茎から摘出した香気に加えて何かの果実のような酸味が加わっていて、それが今日、モイラが部屋に入って来た時からピータアを襲いつづけている……今の今まで、嗜虐《しぎやく》と言ってもいい残虐に駆りたてられていたピータアだが、ピータアの理性はどこかで覚めていて、その残虐には危いところで埒《らち》を越えぬ刃止めがなされていた。と、ピータアは信じていた。モイラの体に、何かの痕を残さぬようにしていた。〈ピータアの神〉に従って遣《や》っているのだ、という、どんな時にもピータアを離さぬ意識がある。モイラを横たえたのが、祖父のサチンの寝台の上だという誇りもあった。嗄《か》れ嗄《が》れのモイラの吐息にも手を弛めぬ、残虐な愛撫は、気品を失わなかった、とピータアは信じていた。今日の狂気には限らない。日頃、(俺は莫迦なことはしない)という自負を持っているピータアだった筈だ。それがこのモイラの、意識しているとも、無意識とも明瞭でない媚び、あらがいえぬ圧しのようなものに会ってピータアは、眼がくらんだようになって、抑えようにも抑えられぬ疼《うず》きを、覚えた。ピータアは咽喉元に突き上げてくる熱い塊のようなものを嚥《の》み込んだ。

(俺は何をするか知れない……もう離して遣らなくては……そうでないと俺は……)

 再びモイラの咽喉に伸びたピータアの掌が根元を抑えつけようとするように見えたが、熱いものに触れたように直ぐに外され、仰のいた顎を捉まえて、モイラの顔を自分の方にひき向けた。脣は歪んで開《あ》いた儘、怯えた眼をしたモイラの顔は脣が妙に膨らんでいる。

「もう時間がない……」

「レモネェドがある。嚥《の》むか?」

 モイラの顎がピータアの掌の中で、肯《がえ》んじるように微かに動いた。半身を起しかけたピータアが言った。

「まだ起き上れないだろう?」

 顎が又動いた。目が平常《いつも》のモイラの目になって、うっとりとしたような曇りを出してピータアを見上げている。ピータアの、憎悪か、惑溺かわからぬものが燃え上がる。

(抑えなくてはいけない……まだ稚いんだこの女は。蛇のような反応をしていながら、まるで子供だ……だが底に持っているものがある……それを意識していないとは言えない)

 ピータアの様子に幾らか安心したのだろう、モイラの目は自らも得知らぬ、媚びのつやを出して凝とピータアにあてられている。ふと香気が強く、発った。ピータアの眼が光り、形のいい脣が再び嗜虐の色を纏って戦《わなな》いた。

 モイラは体を悶え、顎を捉まえているピータアの掌に両掌をかけて必死に|※[#「手へん+宛」、unicode6365]《も》ぎ離そうとしながら、

「……帰る……」

 と呟くように言い、懸命に身を起こし、いただきの膨んだ二つの乳を露《あら》わに寝台を下りた。

 飛び立つように起き上りざまピータアがモイラの肩口を強く、小突いた。

 中心を失ったモイラの体が跳《と》ぶように前へのめって、ピータアの卓《つくえ》の角に眼の下を強く打ちつけ、どこかの骨がどうかした人のように床にくず折れた。

 飛びついてモイラを抱き上げ、寝台に横たえるとピータアは、両掌にモイラの頭を挟み、顔を起こした。ピータアの掌の中でがくりと、モイラの顔が俯向いた。顔を覗くと、モイラは恐ろしげに眼を瞑《つむ》り、脣は弛んで、全く勢いを失くしている。右腕はぐたりと折って投げ出されている。傷は皮膚が切れているがわずかで、大したことはない。痕にはならない、と、ピータアは判断した。唯|地腫《じば》れがして、表面が暗紫色を帯びている。

 モイラが恐怖に大きく眼を見開いた。眉が顰《しか》んで、脣は細かな上歯をわずかに覗かせて開《あ》いている。

「大丈夫だ。冷やせば直ぐによくなる。……待っておいで」

 ピータアは洗面器を取り、扉に鍵をかけておいて、飛び出して行った。氷室までかなりの距離があったので、階段を駆け上がったピータアは扉の前に、極度の不安を現して立っているドゥミトゥリイを見出した。氷を見たドゥミトゥリイは直感的に発熱などではない、モイラがどうかされた、と思ったのだろう、|顳※[#「需+頁」、unicode986c]《こめかみ》の血管がみるみる怒張したが、ピータアに頭を下げ、扉の前から退《すさ》った。

「怪我をさせた」

 ピータアが短く言って扉を開け、先に入った。ドゥミトゥリイは黙って洗面器を受取り、ピータアが指で示す抽出《ひきだ》しから氷割りを探し出して、洗面器の上で砕き始めた。細かく砕いた氷をピータアが薄く剥がした脱脂綿を当てた上に当て、ドゥミトゥリイが手早く裂いて出すガァゼを手に取った。ドゥミトゥリイがそっと、抱えるように持ち上げるモイラの頭から顎にかけて、器用に繃帯をかけながら、ピータアはドゥミトゥリイを見ずに横顔を見せた儘で、言った。

「痕にはならない。子供が膝を擦り剥《む》いた時の傷と同じだ」

 ドゥミトゥリイの眼にもそれは、認められた。

「さあ……いいか。そっと起きてごらん」

 ドゥミトゥリイが扉の外に出て行くのを見送り、ピータアはモイラを抱き起して下着を着けさせ、洋服を着せて遣り、靴下を履かせると扉を開け、モイラを扉口までつれて行った。扉口で立止まったピータアはモイラの肩を抱いてドゥミトゥリイを視た。気持が鎮まって来ていたドゥミトゥリイは、自分を凝と見るピータアの目から、男の哀しみを受けとった。ドゥミトゥリイは黙って眼を伏せた。

 ドゥミトゥリイは(では)、というように低く頭を下げ、ピータアは、まだ衝撃が去りやらぬ中にも明らかに、自分が深く、根のようなところで、絡《から》め取ったのだと思う男の様子を見とどける眼をしているモイラに、鋭い、嘴のような眼をあてると、黙って扉を閉めた。

 ドゥミトゥリイはモイラの足元を見て、瞬間|躊躇《ためら》ったが決心したようにモイラを横抱きに抱きかかえた。階段を下りながらドゥミトゥリイは、モイラが、肩に手を掛けて掴まることもしない、何も言わず、眼で訴えもしないが、自分への信頼をひそめているのを見て取った。胸の奥で血が荒れ狂うのを覚え、ドゥミトゥリイは燃え上がろうとする胸の火を抑えた。ドゥミトゥリイは自ら自分の不謹慎を戒しめ、抑えつけ、モイラを抱えた肱で玄関の扉を開けると、辺りに素早い眼を配り、モイラをシイトに横たえた。そうしておいて、誰もいないのを見定めておいた管理室の電話に飛びつき、稲本軍医と浅嘉町とに電話をかけた。ドゥミトゥリイが車に帰り、慎重な運転で浅嘉町の家に着いたのは五時を四五分廻っていた。一時から四時までピータアの部屋に居て、四時半には浅嘉町に着く筈であったのだ。

    *    *

 林作の書斎の長椅子寝台《ソフア・ベツド》にぐったりしているモイラは、まだ衝撃から完全に自由になっていない。林作が直ぐに着せ替えた、紅地木綿の普段着がひどく似合っている。この夏林作が、輸入品の中から除《の》けておいた、濃い紅地に、大きな白い水玉《ドツト》の夏服は、広く開いた襟と袖口とにつけたゆるやかなフリルに、これも白の太い縁取りが入っている。二三日前に精養軒に、ロオスト・ビイフ入りのサラドゥを頼んだが、いつものいい肉がないというので、林作は肉が入ってからそれと一緒に届けさせようと思っていたのである。林作が風邪をひいた時に頸に巻く、黒い紋羽二重の布で電球を包《くる》んだ薄暗い光線の中で、モイラはうっとりとしたような目を開《あ》いている。

 繃帯は除《と》らずにそっとしてあるが、ドゥミトゥリイの電話でピータアの言葉をきいていて、林作はモイラの傷の状態の不安からは救われていた。ドゥミトゥリイも、必ず痕《あと》にはならぬと思うと、見たところを述べている。自分と同じ程度に、モイラの顔が損じられることに衝撃を受けるにちがいないピータアとドゥミトゥリイとの眼に間違いはあるまいと、林作は思っている。稲本に往診を頼んだ、ドゥミトゥリイの電話をきくと、稲本は西片町に往診に行っているが、出来得る限り早くそちらに伺うだろうという夫人の言葉を得ている。

 モイラの枕元に自分の肱掛椅子をひき寄せて掛け、モイラを見遣る林作の微笑は、いつもの林作の顔である。モイラが常にその中に抱かれ、包みこまれる、何もかもを、すべてを察知している、林作の表情である。だがその日の林作はその微笑いの中に、一抹の不安を隠していた。林作の頭にはピータアがモイラの体に、最初の時のような恋の痕跡を残していはせぬか、という不安が萌《きざ》している。林作はピータアを、じっくり観察したことはない。道で擦れちがったことがあるきりだが、しかもピータアの燃え上がっている時にしか、見ていない。だがピータアの中に知性と、ストイックなものを見当ててはいる。だが石沼で、朝と夜とに二度見たピータアは二度とも、恋に陥った間際のピータアである。ピータアは黒い水着の下の胸の火を、隠しもあえず、自分の前にその精悍な姿を現わした。ふとした時に脳裡に現われるピータアは紛れもなく、火酒をあおり、腰を低め、ルパァシカの胸を叩き、長靴を交互に蹴上げて踊る、露西亜民族の男であったのだ。そうして林作は、二度目に見た、今年の夏のピータアに、モイラを捉える手段《てだて》を失った懊悩の二年間の間に、充分に培われたらしい、サジスティックな激情の萌芽を見ているのだ。

 モイラはドゥミトゥリイが電話をかけたのも知っていた。稲本が直ぐに来るだろうことも、林作が天上に電話で巧《うま》く話をすることも、報らされている。ピータアが氷を当てながら、ドゥミトゥリイに言った言葉も聴いている。

 モイラは幾らか元気が出たらしい。林作に凝と眼をあて、薄い掛布の下で胸の辺りから腰をくねるようにした。モイラの眼には、どこか一部が女になっている、しかも中に魔を持っている女の、したたかなものが窺えるが、モイラ自身は意識してはいない。モイラは林作に、ピータアから受けた衝撃の恐怖を訴えているのだが、モイラの中の、幼い時から持っていた魔が、モイラの知らぬところでしぶといものを出して、凝と、林作を見据えるのだ。

 林作が紅い木綿の衣《きもの》に蔽われたモイラの肩を軽く叩いた。

「ピータア君が前とちがったのだね……そうだろう?……」

 林作の、稚い娘に微笑いかける微笑の中に、今は何かの、別な要素がある。どこかに、大人の女にものを言うようなところがある。林作の内部と、モイラの内部とで父親と、既《も》うどこかで女になっている娘とが対《むか》い合っているのだ。

 林作が後を続ける。

「……モイラがそうしてしまったのだ。そうだろう?……モイラの中にいる悪い魔ものが遣《や》ったのだね。モイラはよくわかってはいないのだろうが……」

 稚い悪魔の仔を見て微笑っている、親の悪魔は、肱突きに肱を突いた右掌で頬を軽く支え、モイラの心の中を覗くようにして、見た。

(困った奴だ。太い奴だと、言って遣《や》ってもいいのだ。……最初がピアノの教師だったが、今度はピータアだ。だが中にある火を抑えて、外に出さぬようにしているドゥミトゥリイの傷手《いたで》が、他の誰のよりも酷《ひど》いかも知れぬ。あれは今日、兄の掌で、モイラを抱いて来たが……それでいてこれはまだ子供だ。本人はよくわってはいない。もっとも意識した悪魔で狂気になる男もいないだろう……問題は天上君だが……モイラには嘘が吐《つ》けない。嘘の吐《つ》けない悪魔というのは困ったものだ……)

 支えた右掌の人差指で、深く窪みの入った林作の頬が、独白とは別な、好色とも言えぬこともない、艶めいた微笑いを浮べている。

 やがて、ドゥミトゥリイの案内で入って来た稲本軍医は、モイラの繃帯に上からそっと触ったが、この儘で置くのがいいだろうと、言った。ドゥミトゥリイに、何を下に当てたかを、聴いていたのである。脱脂綿に橄欖《オリイヴ》油を塗らなかったのがいけなかったので、今はこの儘そっとしておいて、傷口が固まるのを待った方がいいだろうと、いうのだった。幼い時からモイラを診ている稲本にはモイラが、小さな子供のようにも、又自分の娘のようにも見えるのだろう。モイラに、結婚前に恋人のあったことを、林作から打ち明かされている稲本は、ドゥミトゥリイの様子から大凡《おおよそ》の察しがついているらしく不安気で、言葉少なに帰って行った。天上の家に診に行くことも請け合い、繃帯がずれて来てもその儘、上からそっと抑えるように縛っておいて、痛まずに繃帯が除《と》れるようになったら手当てに行くからと、言い置いて、行った。

 稲本軍医が帰ると林作は、卓上電話で天上を呼び出した。

「やあ、今日はモイラを一寸遅く帰します。いや、いやなに、例の妙な癖が出て、ピアノの椅子から跳《と》んだのです。傍《そば》にあった椅子の角に眼の下を打《ぶ》つけたのですが、稲本君が今帰ったところです。心配はないということで、……ええ、小さい頃膝小僧を擦り剥いた時の状態より軽い。傷が元通りになるのは僕が見てもわかる。稲本君が厚めに繃帯を巻いたので、見たところは大袈裟だが……繃帯は痛まずに除れるまでその儘にしておくのがいいということで。自然に外れたら手当てに行くということです。ええ、本人は大分|衝撃《シヨツク》で今、書斎に寝かせています。これから飯を食わせて、ええ、ドゥミトゥリイがむろん送って行きます。ああ、いえ、こっちこそご心配をかけます。じゃあ」

 膝小僧を擦り剥いた状態、というところでは軽い笑い声をたてたりして話す林作の話は天上に疑いを挟ませなかった。だが、電話を切る前に、車で迎えに行こうと言い出そうとした時、天上は何かが自分を引き止めるのを、感じた。不思議な感覚である。何ものかが細い、弱い力で、だがあらがい得ぬ力で、後《うしろ》からひいたような感じを、天上は覚えた。後頭部の皮膚の裏で、細い、だが強い糸が後《うしろ》からひいたのだ。同時に背筋を走り抜ける、ぞっとするような感覚があった。天上は我に返ると、重いものを置くようにして、受話器を置いた。モイラが林作の家で怪我をしたことに疑惑を抱いたのではない。林作が話した理由以外にどんな場合がある、と考えたのではない。理由はないのだ。だが天上は林作の書斎に入って行くということに強い抵抗を覚えた。今、自分があの二人のいる部屋へ入って行くことは、何かいやな眼に会うことになる、自分が喜劇的な役割をつとめることになる、そんな恐怖が天上を、襲った。何がどうだから抵抗がある、というのではない。全く理由はないのである。林作も、天上が電話を切る直前の様子に、感ずるものがあった。天上の沈黙の中に何か解《げ》せぬものがあったのだ。もともと天上は林作とモイラとを前に置いて、見ていることに苦痛を感ずる。そんな時、林作のふとしたそぶり、言葉のはしばしに、二人の間に出てくるなにかに、天上の神経を痛めるものがあるのは常のことである。天上はモイラを実家に遣《や》っている時に迎えに来たことはない。極く稀なその日は、父親と娘の日にしておいて遣ろうという、それが天上の、夫としての思い遣りだと受けとるのは表面的な受けとり方だと、林作も思っている。その父娘《おやこ》と天上との関係はとうに、互いの間で知れていることである。だが今の天上の無言の中にあったものは、受話器の向うに感ぜられた余韻はそれだけではない。それもあるが、それだけではない。

(俺の想像が当っているとすると、守安という男はかなり敏感だが……モイラを溺愛しているためだろう)

 と、林作は思った。そうして、

(今日は下手に早く帰さぬ方がいいだろう。慌《あわ》てたようすを見せることはまずいだろう。なにも明確《はつきり》疑問を起しているという訳ではない。要心をして見せることは疑惑を抱かせることになる)

 と、思案した。

 林作が受話器を置いて椅子に戻ると、モイラは不敵な思いの中に沈んでいるらしい。片耳に、電話の様子は聴いていたのだろうが、大してそこへ気を取られてはいなかったようだ。

 恐怖の後《あと》で、一人の男の燃え上がりを杯の底まで、一滴《ひとしずく》も余《あま》さず自分のものにしたことを自覚したのだ。可哀らしい肉食獣は、まだ生々しい衝撃の記憶の中で、男の恋の肉片を思うさま食いちらした満足に浸っている。微笑を底に潜めた林作の目に、幾らかの苦みが加わる。(仕方のない奴が)という愛《いと》しみとは別に、(なかなかの奴だ)という共感がある。してやったり、という気持がある。気分のいい、藁床《わらどこ》の上に転がり廻る獣のような、不思議なよろこびが、林作の中に生じている。石沼の二階の、板張りの部屋で、ピータアと密会した直後のモイラといた時の、空間になにかが漂う、音の無い音のような一つの情緒が今、薄暗い書斎の内部に紛れもなくただよい、林作の娘を見遣る微笑いに、苦味《にがみ》と、幾らかの鋭さを添加している。モイラも今はそこに気づいている。林作を見る懶《ものう》げな目の中に、林作は仲間の、共感者の色を、見当てていた。

 林作はモイラが、軽いとはいえ怪我をしていることを考えて、もよを呼んで献立を訊《き》いてみると、やよに習った、鶏の叩き肉をいためて馬鈴薯のマッシュで包《くる》んだコロッケだというので、鶏ならいいだろうと言ったが、牛肉の肉汁《スウプ》は止めさせて、時間はかかるが野菜を幾種類か使った野菜|清汁《スウプ》を新しくとらせることにした。モイラの勉強机を運ばせ、もよが荒れた掌でがさがさいわせながら拡げた、野葡萄の地紋のある真白な卓子《テエブル》掛けで急|拵《ごし》らえの食卓が出来た。鱒の塩焼に蜆の三州味噌汁などの、林作の分と一緒に鶏肉のコロッケ、温い清汁《スウプ》が並ぶと、暗い電燈の下の、楽しい晩餐が始まった。

 もよが、彼女なりに気を利かせて、冷たくした生のトマトの輪切りを、大皿に盛って運んで来た。もよは牟礼家に来る前に、他の家に勤めていて気に入られていたのを、やよの懇請で別な理由を申し立ててこっちに来ているので、常に前の雇い主に済まない気持で、肩をすぼめるようにしている。やよによく似た性情の女である。モイラが、もよが皿を卓子《テエブル》に置くや否やフォオクを伸ばして一切れ突刺して脣《くち》に入れながら、そんなもよをじろりと、見た。

「あたしの匙は?」

「うん、これは美味《うま》そうだ。モイラの匙は柄に飾りのあるやつだ。やよが教えて行ったろう?」

 もよはモイラをチラと見てから林作を見、

「はい」

 と答えて、顔を赤くし、肩をすぼめて、退《さが》って行った。林作が言葉をかけなかったらどうなったろうと、思われるほどである。もよは牟礼の家に来てそろそろ半年になるが、まだこの家に馴れていない。もよは漁師の娘であるというためばかりではなく地の黒い、固肥りの胸を痛めることが多いのだ。

 ドゥミトゥリイは用事の口しか利かぬが、温い気持を持っていることは伝わってくる。だがやよにきいてみると露西亜人との混血児《あいのこ》だということで、もよにとっては見たことのない人間である。林作も自分を気に入っている様子で、劬《いた》わって呉れる。だが、この家の、元いた家とは異《ちが》う雰囲気がもよには馴染めぬのだ。ことに全く物を言わないモイラをもよは恐れていた。

(稀《たま》には宿《とま》らせて、朝飯《あさめし》を一緒にくいたいものだ……)

 林作は、トマトを又もフォオクに突き刺しているモイラを見遣り、独り心に呟いたが、モイラはフォオクでコロッケを突き崩し、もよの持って来た自分専用の匙で清汁《スウプ》と飯と肉料理とを、交る交る脣に運ぶことにただ、熱中している。

(大分腹が空いていたのだな。だが動物のような奴だ……刹那、刹那のことより頭にない。可哀らしい動物だな)

 面白いものを見るような微笑いが、林作の頬に浮んだ。

 七時半近く、車の支度が出来た。モイラがドゥミトゥリイに輔《たす》けられて車に乗り、紅い普段着を入れた風呂敷包みを持ってドゥミトゥリイが運転台に乗りこむのを、玄関に立って見届けた林作は、ふと胸にひろがる不安を覚え、書斎への階段をゆっくりと、上って行った。

(爆発物だ……)

 書斎の扉を閉め、紙巻を一本抜いて火を点けた林作は心の内に独白した。

(天上守安はあの男なりに、静かな生涯を送ることが出来た筈だった。そこへ俺が爆発物を送りつけてしまったのだな……)

    *    *

 顔半面が繃帯で包まれたモイラが、車を下りて門内に入った時、モイラは花園の中の道を近づいてくる伊作を見た。繃帯の蔭から伊作を見た時モイラは、秘密を持って帰って来たのだよ、というような、どこやら事ありげな顔つきを隠そうとしなかった。モイラは、頭にあるものがそのまま顔に出る自分なのだということを知っていた。それもあったが、花々の厚く重なった闇の中からその痩せた体を、いやな物怪《もののけ》のように現わして来た伊作を見た瞬間、モイラのふてぶてしさが腹の底から滲《にじ》み出たのである。車が浅嘉町の家を出た時から、モイラは苛々していた。又もう一度あの家に帰るのだということが、退屈な人間の集まっている家の中に帰って行くのだということが、いやだった。ピータアと林作とに会い、ドゥミトゥリイにかしずかれて来たこの日、モイラはことさらに天上に、伊作に、嫌厭を覚えたのである。いつ何時《なんどき》来るかも知れぬ磯子にも、その天上の家の、退屈な人間たち全部に、嫌厭を、抱いたのだ。表面慇懃な様子で、伊作は尚も数歩歩み寄って立ち止まり、頭を下げた。顔を上げざまモイラをチラと見た伊作の眼は、鶏小屋の外に吊した貝の内側のように、光った。伊作は既に天上から、モイラの怪我について聴いて居る。そうしてその出来事《アクシダン》に、なにかを、感じていた。もやもやとした、外側との間に境目《さかいめ》のない、禍を運んで来る暗い、湿った靄のようなものを感じとっていたのだ。

 この日、モイラが牟礼家に行ったことを知っていた伊作は、既《も》う薄暗い花畑に出て、薄紅と白との暈《ぼ》かしのと、薄黄との天竺《てんじく》牡丹(球形のダリア)を剪《き》り、天上の食卓を飾ろうと邸に入った。台所で食堂の花壜を洗い、花の水切りをしていると、自分と並んでサラドゥの野菜を刻んでいる台所女中のともえの後《うしろ》に立って指図をしていた李がつと、退《ど》いたので振り返ると女中頭の本間いしが後に立っていた。

「食堂の花? 相変らず旦那思いだね。今日はモイラ様はお帰りが遅くなるんだそうだよ。どうしたんだか、旦那は黙っているがね」

 本間いしを認めると直ぐに顔をもとに戻した伊作は無表情に水切りをつづけている。

 ふと、サラドゥの萵苣《ちさ》の香いが立ち、それが伊作の寂寥を強めた。伊作が花を挿《さ》した花壜を持って出て行くと、本間いしはそれを尻目|遣《づか》いに見送り、

「全く張合いのない……旦那によく似ているよ」

 と、呟いた。

 食堂には電燈が点いていて、もう天上がそこに立っていた。

「花か。綺麗だ……モイラが怪我をして少し帰りが遅くなる。あれは運動というものが嫌いで、あまり活溌な動作をせぬ女だが、稀《まれ》に椅子に乗って跳び下りたりする。子供の頃からだ。それはお前も知っていたな。……今日牟礼さんの家で、ピアノの椅子から跳んだ拍子に椅子の角に眼の下を打ったのだ。林作さんの電話では大したことはないが、皮膚が一寸切れたということだ。それで今日は少し遅くなる……」

「それは……」

「稲本君というモイラを小さい頃から診ている軍医が診て、傷は痕にはならぬということだ」

「さようでございますか。それはよろしゅうございました」

「迎えに行って遣ろうかと思ったが。……いや、……もう退《さが》ってよい。ああ、それから今夜はどうも食慾がない。料理を箸をつけぬ内にとり分けて、持って行かせるから晩飯にたべておくれ」

「はい。勿体のうございます」

 伊作は低く頭を下げて、退《すさ》って行った。

 扉口で一度振り返った伊作を、天上は凝と見遣り、そうして、(もう行け)というように顎を掬《しやく》うようにした。

 林作がひそかに思い遣《や》っていたように、やよはひどく苦しい立場に立たされていた。やよは一昨年《おととし》の夏、モイラの上に起きたことについては、唯驚き恐れるばかりであった。やよは、この家に来てからのモイラの心持を、わからぬのではない。だが、石沼の家の階段の下で、モイラから無理やりに懐に押し込まれ、預からせられた紙切れといい、この頃のドゥミトゥリイの様子といい、モイラの周囲には何か秘密な気配がある。モイラの部屋から出てくるドゥミトゥリイは、平常《いつも》の暗い顔が一層暗くなっていて、可怕いように見える。何か言いかけようと思ってもそれが出来ぬ。それらの一切があの、露西亜の嫩い人に関係しているのではないだろうか。そんなことには疎いやよの胸にも、その疑惑は今では抜き難いものになって来ている。その不安が、それでなくても周囲《あたり》に気を置いているやよをいよいよ身の置きどころのない思いに追い遣るのだ。

 やよは李に頼まれて裏庭にパセリを摘みに出て、戻って台所口から入ると、本間いしが立ちはだかるようにして、立っていた。

「ちょいと、モイラ様は今日はお帰りが遅《おく》れるとさ……何があったか知らないけどね」

 と、本間いしは言った。

 やよが不安を抑えて、ともえの仕事を手伝っているところに食堂の呼鈴が鳴った。本間いしが行きはすまいかと思ったやよは、急いでエプロンで濡れた掌を拭きながら食堂に、行った。エプロンで掌を拭かぬようにと、やよは林作から躾けられている。それは長いこと習慣になっていたのだが、やよは落つきを失くしていた。廊下でやよはハッとしてエプロンの皺を伸ばし、食堂の扉を開けた。天上は静かに、卓子《テエブル》に着いていた。天上の深い静かさが、やよの心《しん》の臓《ぞう》を掴んだ。

 邸の近くにある呉服屋で反物を買い、暇を見て縫い上げた、細かい縦縞の中に玉菊をおいた、地味な浴衣の体を小さくして、やよは天上の言葉を聴いた。伊作の挿したダリアの鮮かな色がやよの胸を切なくする。やよは天上の様子の中に、言葉の表面には出ていないなにものかを、感じないではいられなかった。

 林作の電話を聴いた後《あと》で、ふと湧いて出たおののきのようなものが、そのおののきの小さな細胞のようなものが天上の中で、思いもかけず分裂して殖《ふ》え、それが天上の胸の底に落ちている。それが、天上が隠していようとしても、やよには見せまいとしても、その気遣《きづか》いの隙き間を破って天上の様子の上に現れる。それがやよに伝わるのだ。モイラの怪我という胸のいたむ衝撃を、それでなくても抱《かか》えているやよは、この天上の、不吉な匂いを漂わせている様子にひしがれて、凝と頸を肩の間に埋めるようにして、天上の話を聴いた。そうして俯向いた顔を一層低く下げた。

「ひどいお怪我でなくて、よろしゅうございました」

 と、呟くように言い、跫音を盗むようにして、退って行った。

 一《ひと》箇所《ところ》には笑いをさえ混じえた、林作の完璧な演技は、やよの真実な、嘘いつわりのない不安な様子と、明瞭《はつきり》と見て取れる恐怖とによって一挙に突き崩された、と、天上は見た。質実な性情を裸に剥《む》いた、このやよの様子に眼をあて、天上は哀れみを抑え得ぬと同時に、そのやよの哀れさの中に、自分を嘖《さいな》む何者かが自分に向けて突きつける白い刃を見た。だが天上は、やよの、身も世もない、というような様子を見ていて、気の毒に思う一方で、大きな肥えた人間というものは、それが大きく肥えていればいるだけ、哀れさも深いものだと、そんな気楽なことを想った。

(大分神経が緊張している)

 と思い、天上は頭を左右に弛く、振った。

 伊作が台所口を出る時、「お食事はお運びしていいようだ」と、李に言って行ったので、やよはから拭きした通い盆を配膳台に置き、冷たい魚の皿、サラドゥを並べると、清汁を熱くして、吸物椀に注いだ。やよの顔色の悪いのを見た李は、「わたしが代りましょう」と言って、前掛けを外し、通い盆を持って行った。ともえに運ばせては粗相をしかねないのだ。いしが代ればいいのだが、と、李は心の内に怒った。

 李が、燈《あかり》の下に並べた、馬鈴薯とレモンを添えた冷たい鱒に、萵苣《ちさ》とトマト、グリイン・アスパラガスの盛り合わせに玉葱の薄切りとパセリを散らしたサラドゥ。やよが心を籠めて造《こし》らえたらしい、海老の擦り身団子に、種抜きした白瓜の輪切りをあしらった清汁。吸い口の青柚子。それらの色彩《いろ》が、壁に黒い影を落している天竺牡丹の薄紅、薄黄と映え合うように美しいが、天上の眼にその夜の燈火《ひ》は冷たく見え、食卓の色彩《いろ》は言い知れぬ悲哀を伴っていた。

(確かに事があった、というのではない。それなのにこの俺のとり乱しかたは、どうしたのだ。いや、何かがある……それでなくて……)

 天上はとつ、おいつ、想いながら、脣もとに自嘲の笑いを浮べ、箸を取った。

 伊作をもう一度、嘲りをひそめた眼で凝と見ると、モイラは伊作と挨拶を交しているドゥミトゥリイをそこに残して、一人玄関に入った。出迎えた他の雇人たちには眼もくれず、モイラはやよに顎を掬《しやく》って、やよと居間に上った。

 用意した着替えを出して来たやよが、口籠るように言った。

「旦那様が……」

「うん」

 モイラはやよに手伝わせて洋服を脱いだ。

「お風呂を召しませんでした。お料理も……」

「黙っておいで」

 モイラが言った。

 モイラはほんの一寸でも湯が熱いと、痛くて入れない。それで、その日は林作が湯加減を見た湯に一人で入った。もよは、モイラの傍に来るとおずおずして、火傷《やけど》をした皮膚に触るようなさわり方でモイラの体に触れ、背中に湯をかけようとして耳の上辺りまでかけたりするので、一人で入ったのだ。紅い普段着と一緒に、林作が買い取っておいた暗い橙《オレンジ》色の海綿に石鹸の泡をふくませたのを手に、頸から体をぞんざいに擦り、暑さと恐怖で浮いた汗を流したモイラの体は、新しい香気を放っている。

 やよが差し出す、白に薄藍色の二本縞の普段着を押し戻し、

「赤い洋服……」

 と言った時、憚《はばか》るようなノックの音がした。

 やよが扉を細めに開けると、ドゥミトゥリイが扉の影に隠れるようにして立っていて、見馴れた濃い鼠の縮緬の風呂敷包みを差し出した。やよはその包みが、今モイラの言った、赤い洋服であろうと、それを受け取り、黙って引返すドゥミトゥリイを見送った。二人の召使いは廊下の突当りの部屋にいる天上に何となく気を兼ね、不安な想いを無言の中に交していた。モイラが、やよの手から引ったくるようにして真紅《あか》い洋服を着ると、真紅《あか》い木綿の色がよく似合って、やよの眼にも、どこかの外国の女のようにみえる。モイラは鏡の前の椅子にかけて足を組み、黒い靴下を脱ぎ、やよの顔を凝と見ると、寝台にもぐり込んだ。

(やよはわかっているんだ。……やよがあんな顔をしていれば守安もあんな変な顔になるんだ。きっと、……。そうなればいいんだ。あんな、口から涎を流している獣《けもの》みたいな守安なんか)

 モイラは一旦《いつたん》ひき被《かぶ》った掛布をうるさそうに剥《は》いで、やよに背中を向け、こう、心の中に、呟いた。

 九時にはまだ二十分余りあるが、モイラには時間の観念がない。再びいやな家の中に還って来たことへの不機嫌で寝台にもぐりこんだのに過ぎない。掛布の中から立ち昇る、なにかの靄のような香気の中で、モイラは凝と眼を開《あ》いていた。窓のある側の隅に、雲の形をした汚染《しみ》のある高い天井に、部屋の隅に、空間に、退屈の空気が張りつめている。

 睡気が差して来ているがモイラの神経の尖端《さき》は生きていて、天上の跫音が、廊下の突当りの居間を出て、一度隣の寝室に入って明りを点け、そうしてから、この部屋に入って来る常時の定《き》まった物音に不快《いや》な予期を抱いている。だが物音はしない。どの位経ったのかモイラはいつか、ずり落ちるような深い睡りの中に、陥《お》ちていた。

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